障害年金の申請、複雑でわかりにくいですよね。
診断書の記載内容やその他の書類に不備があると申請しても不支給になりますので、申請は弁護士などの専門家に依頼することがベストです。
依頼する弁護士を上手に選ぶことで、早く確実に障害年金の申請を開始することができます。
この記事では、障害年金の申請を弁護士に依頼するメリットや依頼する弁護士の選び方についてご紹介します。
それでは見ていきましょう。
1,弁護士に依頼すれば6つのメリットがある
結論からいうと、障害年金の申請を弁護士に依頼することには以下の6つのメリットがあります。
(1)メリット1:
自分で申請することによる失敗を防ぐことができる
一番大きなメリットは、「自分で申請することによる失敗を防ぐことができる」という点です。
障害年金の申請には、障害の内容ごとの様々な注意点があります。
また、重要な必要書類として、医師に作成してもらう診断書のほかに、病歴・就労状況等証明書という発症から現在までの経緯を自分でまとめた書類を準備することになります。
そして、診断書の内容の不備や、診断書と病歴・就労状況等申立書の不整合が原因で、予想外に不支給の結果になってしまうことがあります。
▶参考情報:障害年金の不支給決定!くつがえすための2つの方法
しかも、年金事務所に一度提出した書類は年金事務所の記録として残り、次回以降の審査の際にも参照されますので、一度不備のある書類を出してしまうと、再申請しても通らない可能性すらあります。
障害年金に精通した弁護士に依頼すれば、このような失敗を防ぎ、申請が通るべきケースについては確実に申請を通し、あなたにとって最大限有利な形で受給を開始することができます。
この点が障害年金の申請を弁護士に依頼することの最大のメリットといえるでしょう。
監修者:「西川 暢春」からのワンポイント解説!
この段落で記載した、障害年金の申請に必要な診断書など必要書類については、以下で詳しく解説していますので、参考にご覧ください。
(2)メリット2:
自分で申請するより早く障害年金を受給できる
障害年金の申請では、過去の分にさかのぼってもらえる「遡及請求」という請求方法ができる場合もありますが、さかのぼって請求が可能な場合は限定されています。
そのため、「事後重症請求」といって請求書を出した月から年金がもらえる方法で申請することが多いです。
そして、障害年金の申請を自分でやろうとすると、何度も病院や年金事務所に相談して書類を集め、あるいは自分で書類を作成したりする必要があり、プロにまかせるよりも請求が遅れてしまうことが普通です。
「事後重症請求」では、請求書を出した月の分の年金から受給開始になりますので、請求が遅れた期間の年金はもらうことができません。
障害年金の申請に精通した弁護士に申請を依頼することで、自分で申請するよりも早く必要書類を作成して障害年金の請求を提出することができます。
そしてその分早く受給を開始することができます。
その結果、早く受給を開始でき、その分だけ多くの年金をもらうことができることも、申請を弁護士に依頼するメリットの1つです。
監修者:「西川 暢春」からのワンポイント解説!
この段落でご紹介した障害年金を過去の分にさかのぼってもらえる「遡及請求」については、以下で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
(3)メリット3:
弁護士にしかできない調査方法で受給につながることも!
障害年金の請求では、初診日が重要です。
初診日というのは、あなたがその障害の原因となった病気やけがで最初に病院に行った日のことです。
最初に行った病院にカルテが残っておらず初診日がわからないケースでは、原則として障害年金を受給することができません。
この点、弁護士には、弁護士のみに法律上認められている独自の調査方法があり、「23条照会」と呼ばれています。
この23条照会により、初診日が判明して、年金の受給に成功するケースがあります。
この23条照会は弁護士ならではの制度であり、弁護士に依頼したからこそ障害年金の受給が認められるケースの1つです。
監修者:「西川 暢春」からのワンポイント解説!
この段落で解説した、障害年金の申請にあたって初診日の重要性についてや、弁護士ならでの調査方法「23条紹介」については、以下の詳しい解説もあわせてご覧ください。
▶参考情報:障害年金を事後重症請求で請求する際の4つの初診日特定方法
▶参考情報:障害年金の初診日証明の方法と重要な確認ポイントを解説
▶参考情報(外部サイト):日本弁護士連合会Webサイト「弁護士会照会制度」
(4)メリット4:
病院が協力的でないケースにも対応できる!
障害年金の申請では、病院に診断書の作成をお願いしなければなりません。
診断書は、障害年金がもらえるかどうかの結果に直接影響する重要な書類です。
ところが、筆者の経験からすると、病院が1回で十分な記載をしてくれず、申請を通すためには、診断書の修正をお願いしなければならないケースが多くなっています。
そして、このような、診断書の修正については、必ずしも協力的な病院ばかりではなく、非協力的な病院も存在します。
病院が協力的でないケースであっても、弁護士が申請を担当している場合、病院は不合理に依頼を断ることができなくなります。
これは、弁護士が担当することで、病院としても不合理な理由で協力を断れば法的なペナルティを受けるリスクを感じることになり、緊張感を持って対応することになるからです。
このように、病院が協力的でないケースでも、なんとか障害年金の申請を通すことができるという点も弁護士依頼のメリットの1つといえるでしょう。
(5)メリット5:
裁判による請求も検討できる
障害年金の制度は、複雑な制度上の問題や年金事務所のマニュアルの欠陥が原因で、本来、明らかに年金が認められなければおかしいケースで不当に認められないことがまれにあります。
この場合でも、弁護士に依頼して裁判をすることにより、国に障害年金の申請を求めることが可能です。
不合理な理由による不支給の場面で裁判による請求も選択できることも、弁護士に相談するメリットの1つといえるでしょう。
監修者:「西川 暢春」からのワンポイント解説!
この段落で解説した裁判について、障害年金の申請時に裁判をしたほうがよいケースなどを詳しく以下の記事で解説しています。参考にあわせてご覧ください。
(6)メリット6:
借金や交通事故の問題も相談できる
筆者の経験では、障害年金の申請をされる方の中には、障害年金以外の悩みを抱えておられる方が多くおられます。
例えば、借金の悩みがうつ病などの精神疾患の原因になっているケースがその典型例です。
この場合、障害年金の申請だけでなく、借金の整理(債務整理)も弁護士に依頼することで、病気の改善を期待することができます。
障害年金が受給できても、そのお金が借金の返済に回ってしまうようではあまり意味がありませんので、借金がある場合は弁護士に相談して、借金の整理も一緒に依頼することがベストです。
同様に、例えば、配偶者との別居や不和が精神疾患の原因となっている方は、離婚について弁護士に相談し解決することで、病気の改善を期待することができるでしょう。
さらに、交通事故による障害で障害年金の申請をお考えの方は、弁護士に相談すれば、交通事故の保険会社との対応についても弁護士に依頼することが可能です。
このように弁護士に頼めば、あなたが抱えているほかの問題も相談できることも大きなメリットといえるでしょう。
特に、メリット3からメリット6まででご説明した点は基本的に弁護士にしかあてはまりません。
監修者:「西川 暢春」からのワンポイント解説!
なお、障害年金の申請を専門家に依頼する場合の選択肢としては、弁護士のほかに社労士があります。社労士について詳しくは以下の記事で解説してますので、参考にご覧下さい。
▶参考情報:障害年金の申請代行を社労士に依頼する方法は?わかりやすく解説!
▶参考情報:障害年金に関する社労士費用ってどれくらい?必要な費用と相場を解説!
▶参考情報:障害年金に強い社労士を探す際はこちら
2,障害年金申請を依頼する弁護士の選び方
では、障害年金の申請を依頼する弁護士をどのように選んでいけばよいのでしょうか?
弁護士の選び方については、以下の点をおさえておきましょう。
(1)自分の症状について申請実績のある弁護士を選ぶ
弁護士を選ぶうえでまず知っておいていただきたいことが、すべての弁護士が障害年金の申請に精通しているわけではないということです。
弁護士の業務分野は、企業の顧問弁護士や相続、離婚などさまざまです。
障害年金に精通している弁護士は弁護士全体のごく一部です。
必ず、障害年金の申請について実績のある弁護士を選びましょう。
また、弁護士の中には障害年金全般に対応しているわけではなく、交通事故被害者の障害年金申請を中心に取り組んでいたり、離婚をきっかけとする精神疾患患者の障害年金申請を中心に取り組んでいるケースもあります。
障害年金の申請のポイントは、障害の内容ごとに異なりますので、あなたの障害について申請実績のある弁護士に依頼することが重要です。
インターネットなどで障害年金の申請を取り扱っている弁護士を探したうえで、弁護士事務所に電話し、自分の症状について障害年金の申請実績があるかどうかを確認してから相談にうかがうことをおすすめします。
(2)会って相談できる弁護士事務所を選ぶ
障害年金の相談は、実際に弁護士に会って相談することがベストです。
電話では、あなたの症状の内容や発症からの経緯がうまく弁護士に伝わるかどうかわかりません。
その結果、弁護士が、障害年金の申請方法や申請が認められるかどうかの見込みについて判断を誤ってしまう危険があるためです。
会って相談したほうがよいもう1つの理由は、電話でしか話したことがない弁護士に障害年金の依頼をしても途中で不安になって挫折してしまいがちだということです。
障害年金の申請を弁護士に依頼した後も、弁護士事務所が書類を作成するための聴き取りに応じたり、あるいは弁護士から指示された診断書の作成を病院に依頼したりする必要があります。
弁護士に依頼することによりあなた自身の負担は大幅に減りますが、それでもあなた自身がしなければならないことはあります。
途中であなたが挫折してしまうことがないようにするためにも、弁護士に会って相談して、弁護士事務所との信頼関係を作っておくことがおすすめです。
このような理由から、最初の1回だけでもいいので、会って相談することを前提に、あなたが行ける範囲の弁護士事務所を選びましょう。
もし、あなたが弁護士事務所に行けない場合は、あなたが信頼できる家族やケースワーカーに相談に行ってもらってもよいと思います。
(3)無料で相談できる弁護士事務所を選ぶ
弁護士に相談した結果、障害年金の申請が難しいという結論になることもあります。
そのため、最初から相談料がかかる弁護士ではなく、無料で相談できる弁護士に相談することがおすすめです。
(4)成功報酬型の弁護士事務所を選ぶ
最後に、費用の面ですが、できれば成功報酬型の弁護士事務所に依頼することがあなたにとってメリットになります。
弁護士の費用は通常、依頼時に支払う「着手金」と障害年金の申請が通ったときに支払う「報酬金」があります。
「着手金」については、着手金が必要な事務所と、着手金が不要な事務所がありますので、できれば着手金のない成功報酬制の事務所を選ぶことがおすすめです。
成功報酬制の事務所であれば、万が一結果が不支給だった場合に、あなたは弁護士に費用を支払う必要がありません。
ウェブサイトに費用を掲載していない事務所も多いので、費用が成功報酬型かどうかがわからない場合は、相談前に電話で問い合わせてみましょう。
以上ご説明した、「申請実績があるか」、「会って相談できるか」、「無料で相談できるか」、「成功報酬型の事務所か」という4つのポイントを見極めて、依頼する弁護士事務所を選ぶことがおすすめです。
3,弁護士に依頼した場合の障害年金の申請の流れ
最後に弁護士に障害年金の申請を依頼した場合の申請の流れについてご説明しておきたいと思います。
申請の流れは弁護士事務所によっても異なります。
以下は、筆者が代表を務めている咲くやこの花法律事務所にご依頼いただいた場合の申請の流れです。
(1)相談の予約
まずは弁護士事務所にメールや電話で問い合わせをしたうえで、相談の予約をします。
(2)弁護士に面談して相談する
弁護士に面談して相談し、障害年金がもらえる見込みの程度や金額の見込み、請求方法などについて、弁護士から説明を受けます。
(3)年金記録を確認する
障害年金がもらえる見込みがあるという判断になれば、年金事務所に年金記録を確認します。
これは障害年金をもらうための受給資格として、初診日の前までに年金を一定程度納付していることが必要になるためです。
これを年金の納付要件といいます。
年金の納付要件を満たしていないと、申請しても不支給になりますのでまず年金記録を確認します。
年金の納付要件については以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
▶参考情報:障害年金の納付要件を確認するための5つのステップ
(4)初診日を証明する書類の取り付け
次に、初診日を証明するための書類の取り付けが必要になります。
この初診日については、年金の納付要件を確認するための基準になるため、客観的な書類による証明が必要になるものです。
通常は、初診日に通院していた病院に証明書を記載してもらい、年金事務所に提出します。
ただし、初診日に通院していた病院が廃院していたり、カルテが残っておらずに初診日がわからない場合は、別の方法で初診日を証明することが必要です。
弁護士事務所が初診日の証明について適切なアドバイスをし、初診日を証明する書類の取り付けをサポートします。
(5)診断書の作成
次に、障害年金の診断書を医師に作成してもらいます。
筆者の事務所では、障害年金の診断書を医師に書いてもらいやすいように、診断書の記載例を弁護士事務所で作成し、依頼者にお渡ししています。
また、診断書は障害年金の受給の可否を決める大変重要な書類になるため、診断書の作成が終わった段階で弁護士が診断書をチェックして、問題点がないかを確認します。
筆者の経験上、医師が作成する診断書に問題があるケースは多く、できあがった診断書を弁護士にチェックしてもらうことは非常に重要です。
(6)病歴・就労状況等申立書の作成
診断書の作成と並行して、弁護士事務所で病歴・就労状況等申立書という書類を作成します。
この書類も、障害年金の診断書の受給の可否を決める大変重要な書類です。
弁護士に依頼した場合、作成は弁護士事務所が行いますが、申請者本人としても、書類作成のために必要なヒアリングを受け、書類作成に協力する必要があります。
(7)その他必要書類の取り付け
診断書の作成や病歴・就労状況等申立書の作成のめどがたった段階で、その他の必要書類を取り付けます。
必要書類は、障害年金の請求方法や申請者に家族がいるかどうかなどによって異なってきますので弁護士事務所の指示に従いましょう。
年金手帳や年金振込口座の預金通帳など、申請者本人がもっている必要書類については、コピーをとって弁護士事務所に送ることになります。
(8)年金事務所に申請書類を提出
書類がそろった段階で弁護士事務所から年金事務所あるいは市町村役場に申請書類の提出を行います。
(9)年金事務所での審査
申請書類提出後は年金事務所での審査が行われます。
審査期間は3か月から6か月程度です。
この期間も、年金事務所からの連絡があれば弁護士事務所が対応します。
(10)受給開始決定
障害年金の受給が認められると、年金証書が届きます。
その後に年金事務所から支給開始月や支給額について書面が送られてきて、実際の支給が開始されます。
監修者:「西川 暢春」からのワンポイント解説!
障害年金の支給開始月や支給額については、以下の記事などで詳しく解説しています。こちらも合わせてご覧ください。
以上が、弁護士に依頼した場合の障害年金の申請の流れになります。
弁護士事務所のサポート受けることにより、自分で申請をするよりもずっと楽に、また、確実かつ迅速に申請をすすめることが可能です。
4,弁護士に依頼した場合の弁護士費用
最後に、弁護士に依頼した場合の弁護士費用についてもご説明したいと思います。
障害年金の申請の弁護士費用は弁護士事務所によっても異なります。
以下は、筆者が所属する咲くやこの花法律事務所における弁護士費用になりますが、参考にしてみてください。
(1)障害年金の申請の弁護士費用例
障害年金の2か月分相当額+消費税
※相談料は無料です。
※遡及請求により、障害年金を過去にさかのぼってもらえた場合はその額の10%+消費税が上記に追加されます。「遡及請求」とは障害年金の請求を過去にさかのぼって請求する方法をいいます。
※完全成功報酬制です。障害年金を受給できなかった場合は費用は一切かかりません。
(2)障害年金の審査請求、再審査請求の弁護士費用例
着手金:5万円
報酬金:障害年金の3か月分相当額+消費税
※相談料は無料です。
※遡及請求により、障害年金を過去にさかのぼってもらえた場合はその額の10%+消費税が上記に追加されます。
※着手金は原則として依頼時にお支払いいただきます。
※報酬金は障害年金を受給できた場合にのみお支払いいただきます。受給できなかった場合は報酬金は発生しません。
(3)障害年金の裁判、訴訟の弁護士費用例
着手金:35万円~+消費税
報酬金:具体的な事案に応じて事前に契約書により定める額
※このほか裁判については30分5000円(税別)の相談料をいただいております。
※着手金は原則として依頼時にお支払いいただきます。
※報酬金は裁判の結果、障害年金を受給できた場合にのみお支払いいただきます。受給できなかった場合は報酬金は発生しません。
5,まとめ
今回は、「障害年金の申請を弁護士に依頼するメリットと正しい選び方」とについてご説明しました。
また、弁護士に依頼した場合の障害年金申請の流れや弁護士費用についてもご説明しました。
この記事を読んで、障害年金の申請を一歩前に進めていただければ幸いです。
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