障害年金の遡及請求とは?成功するための3つの重要ポイント

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過去の障害年金をさかのぼって請求する方法を「遡及請求」と言います。

申請できると知らなかった場合の為にもうけられた申請方法なのですが、診断書を取り付ける際に制約があり、通常の申請より難易度が少し高い申請方法です。

今回の記事では、「自分は遡及請求できるのか?」「どんなことができれば遡及請求できるのか?」確認して頂くための3つのポイントと、遡及請求成功時の受給金額の確認の仕方についてご説明していきます。

 

1 障害年金の遡及請求とは?

障害年金には請求方法が3つあるのをご存じでしょうか。

以下の3つの請求方法のうち、障害年金の遡及(そきゅう)請求とは、「制度を知らなかったなどの理由で障害認定日から1年以内に障害年金を請求できなかった場合、現在までの最大5年分の障害年金をさかのぼることができる」請求方法を指します。

 

請求方法 診断書
障害認定日請求 障害認定日から1年以内に請求をおこなう方法 障害認定日以後3か月以内の診断書1
事後重症請求 障害認定日は障害の状態が軽かった場合やカルテの破棄等の理由で障害認定日時点の診断書がかいてもらえない場合に、今後の障害年金を請求する方法 請求日以前3か月以内の診断書1
遡及請求 障害年金の制度を知らなかった等、何らかの理由で障害認定日から1年以内に障害年金の請求をしなかった場合に、障害認定日から現在までの障害年金をさかのぼって請求する方法

障害認定日以後3か月以内の診断書1

請求日以前3か月以内の診断書1

2

 

遡及請求が認められれば結果の通知後にさかのぼった分の年金が一度に振り込まれますが、遡及請求でさかのぼることができるのは過去5年分までです。

仮に障害認定日が10年前で、その日頃に障害年金を受け取ることができる状態であっても、5年分は支払いの時効が成立し受給できなくなります。

可能であればさかのぼって年金を受け取りたいとは思いますが、その分提出書類が多かったり簡単に受け取れなかったりと苦労します。

以下では、あなたの現在の状況で遡及請求ができるのか確認して頂けるよう、遡及請求の重要ポイントを3つご説明していきます。3つのポイントに全て当てはまれば遡及請求ができますので、請求方法を迷われている場合はぜひ確認してみてください。

 

2 遡及請求を可能にするためにクリアすべき3つのポイント

障害年金の遡及請求ができる場合、満たしているポイントは以下の3つです。

  1. 初診日が特定できている
  2. 障害認定日頃の診断書を取得できている
  3. 障害認定日頃の症状が等級に該当する

順に説明していきます。

 

2-1 初診日が特定できている

遡及請求する場合には障害認定日頃の診断書が必要ですが、その診断書を用意するには、初診日を特定しなければなりません。

なぜなら原則、「初診日から1年6か月経った日」が「障害認定日」になるからです。この日を受診状況等証明書など医療機関が発行する証明書で特定できていれば、遡及請求の成功に1歩近づきます。

また、障害年金を受給するための条件として設けられている、保険料の納付要件のためにも初診日の特定は必要不可欠です。

「初診日」は具体的に以下のような日を指します。

 

初診日とは・・・?

  • 障害の原因となった傷病につき、はじめて医師または歯科医師の診療を受けた日
    (パニック障害、心因反応→うつ病になった場合は、パニック障害等を診断された日)
    (糖尿病→糖尿病性腎症・人工透析になった場合は、糖尿病と診断された日)
  • 先天性の知的障害の場合は出生日
  • 先天性の心疾患や発達障害、網膜色素変性症などの場合は、初めて診療を受けた日
  • 先天性の股関節脱臼の場合は、
    完全脱臼したまま生育した場合→出生日
    青年期以降になって変形性股関節症が発症した場合→発症後にはじめて診療を受けた日
  • 健康診断で異常が発見された場合は、健康診断の結果を受けて初めて診療を受けた日

といった日を指します

上記はほんの一例です。

初診日がどこになるのかわからない場合は、年金事務所の窓口や、弁護士・社会保険労務士に相談すると特定することができます。

詳しくは「障害年金の初診日証明の方法と重要な確認ポイントを解説」の記事をご覧ください。

 

2-2 障害認定日頃の診断書を取得できている

原則、初診日から1年6か月後にあたる日のことを「障害認定日」といいます。

遡及請求をする際の診断書は、「障害認定日から3か月以内の症状」が書かれた診断書と、「請求日から3か月以内の現在の症状」が書かれた診断書の2通必要です。

さかのぼって請求する場合は、この「障害認定日から3か月以内の症状」が書かれた診断書の取得が1番重要です。この期間の診断書が取得できないと、遡及請求自体おこなうことができない場合があります。

医療従事者によっては障害年金制度のことを詳しく知らない場合もありますので、下記のように【いつの状態に関する診断書が必要なのか】伝えておきましょう。

 

【例:初診日が平成25年5月5日の場合】

診断書は初診日から1年6か月後の「平成26年11月5日から平成27年2月5日」の間の症状についてのものと、現在の症状についてのものを作成してほしいと伝える。

「障害認定日」とは・・・?

障害の程度の認定をおこなう基準日のことです。原則、「初診日から1年6か月経過した日」を指します。この日頃の症状が障害年金の認定基準に該当すれば障害年金を受給することができます。

 

【例外ケース】

初診日から1年6か月経過する前に以下のような日を迎えた場合は、その日が障害認定日になります。

障 害 施 術 障 害 認 定 日
聴覚等 咽頭全摘出 全摘出した日
肢体 人工骨頭、人工関節を挿入 挿入した日
切断または離断 切断または離断した日
脳血管障害による麻痺などの機能障害 初診日から6か月を経過した日
呼吸 在宅酸素療法(常時) 開始日

循環器

(心臓)

人工弁、心臓ペースメーカー、植込み型除細動器(ICD)

装着した日または移植した日

心臓移植、人工心臓、補助人工心臓
CRT、CRT-Dといった心臓再同期医療機器
胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤により人工血管(ステントも含む)
腎臓 人工透析療法 透析開始日から3か月を経過した日
その他 ストーマ設置(人工肛門造設、尿路変更術、新膀胱造設) 造設日または手術日
遷延性植物状態 その状態に至った日から3か月を経過した日

 

20歳前に初診日がある場合の障害認定日

怪我や病気の原因によって最初に病院に行った日が20歳前にある場合や、病気やケガが先天性である場合、障害認定日は「20歳の誕生日の前日」を指します。

診断書は「20歳の誕生日の前日の、前後3か月以内の症状」について書かれたものと、「請求日から3か月以内の現在の症状」が書かれた診断書の2通必要です。

 

【いつの診断書が必要か、確認しましょう】

1.20歳以降に初診日がある場合
  →障害認定日から3か月以内の症状のものと、請求日から3か月以内の症状のもの

2.20歳以前に初診日がある場合
  →20歳の誕生日の前日の前後3か月以内の症状のものと、請求日から3か月以内の症状のもの

 

2-3 障害認定日頃の症状が認定基準に該当する

障害年金は、申請できても認定基準に該当しなければ受給することができません。認定基準に該当しているか詳細に審査をしてもらうためには、診断書に空白や記載漏れが無いようにしてもらうことが必要です。

病院から診断書を受け取ったら、必ず記載内容を確認してください。特に障害認定日の診断書が期間外の日付だと、「障害認定日の症状を確認できないため」さかのぼって障害年金を受給することができない場合があります。記載内容について疑問点がある場合は必ず医師に相談して修正等してもらいましょう。

また、現在の症状の診断書は「現症日から3か月以内」に年金機構に提出しなければなりません。(診断書作成日ではありません。)障害認定日の診断書に期限はありません。

 

3 遡及請求に必要な書類

遡及請求をする場合は「障害年金の申請手続き7つのステップ」でご紹介した書類の他に追加で提出を求められるものがあります。提出漏れしている書類があれば基本的には年金機構から郵送で指示がありますが、なるべく申請時に一緒に出しておきたい、代表的な書類を2通ご紹介します。

 

1.障害給付請求事由確認書

障害認定日の障害状態が障害年金の等級に該当しない場合は、現在の障害状態での請求切り替えてもよいという確認書です。
この書類を提出しなければ、もし障害認定日の障害状態が等級に該当しなかった場合、改めて請求をやり直さなければなりません。必ず提出しましょう。

 

2.年金裁定請求の遅延に関する申立書

障害認定日が5年以上前の場合に提出します。冒頭でもお伝えしておりましたが、5年以上前の年金については、時効により支給されません。この書類は、その時効について理解しているという確認書です。

 

▶参考情報:「年金裁定請求の遅延に関する申立書」はこちら

 

4 結果と年金証書の見方

結果の通知は以下の3つのパターンで届きます。

  1. 年金証書だけ届いた
  2. 不支給通知書と年金証書が届いた
  3. 不支給通知が2通届いた

こちらも以下で順にご説明いたします。

 

4-1 年金証書だけ届いた

最初に届いた年金証書は障害認定日頃の症状についての認定結果です。

現在の症状についての認定結果は、その約1か月後に届く「初回支払額通知書」や「支給額変更通知書」で確認できます。
現在の症状についても障害年金が認められているか不安な方は、お近くの年金事務所にお問い合わせください。

 

4-2 不支給通知書と年金証書が届いた

不支給通知書は障害認定日の結果、年金証書は現在の症状についての審査結果です。
初回振込は通知が届いてから約1か月~1か月半後になります。

障害認定日の症状が等級にあらたないという結果について不服がある場合は、その部分だけ審査請求をすることができます。くわしくは、「障害年金の審査請求、不服申し立て!弁護士が教える4つのポイント!」をご覧ください。

 

4-3 不支給通知が2通届いた

残念ながら障害認定日、現在の症状のどちらの症状も障害年金の等級に該当しなかった場合、不支給通知書が同時に2通届きます。

こちらのケースも審査請求をすることができます。くわしくは、「障害年金の審査請求、不服申し立て!弁護士が教える4つのポイント」の記事をご覧ください。

 

5 遡及請求にまつわる2つの疑問

最後に、障害年金の遡及請求に関する、よくある2つの疑問にお答えしたいと思います。

 

5-1 障害認定日頃の診断書がない!遡及請求はできないの?

諦めるのは早いです!

 

診断書はカルテの記載を基に作成されていなければならないので、障害認定日頃に病院を受診していないと診断書を作成してもらうことができないのですが、先天性の疾患など、明らかに障害認定日時点で認定基準に該当する症状があった場合、様々な方法によって遡及請求が可能になる場合があります。

たとえば、障害認定日の期間をはさむように前後の症状について診断書を作成してもらうことが挙げられます。ただしこれはイレギュラーな対処法です。

はさんだ期間が1年以上の長期であったりすると認定を受けられない場合もありますので、申請前に障害年金専門の弁護士や社会保険労務士に相談してください。

 

5-2 さかのぼる期間に社会保障を受けていました。返納しなければなりませんか?

遡及請求が成功した場合、障害年金か社会保障分かどちらか少ない金額の方を返納しなければなりません。

 

障害年金をさかのぼって申請する期間中に、生活保護、労災保険、傷病手当金、損害賠償金などを受けていた場合、どちらか少ない金額の方を返納しなければなりません。

ほとんどの場合は、遡及請求が成功したお知らせ(支給額決定通知書など)が届いたタイミングで、いままでに支払っている分を差し引いた額しか支払いませんといった案内があります。よく確認してください。

 

6 遡及請求を確実に申請したい人は弁護士や社労士に相談する

障害年金は1度申請してしまうと申請した記録が年金機構に残ってしまうので、1度目の請求で不支給になってしまうと2回目以降の申請で認定されるのが難しくなります。

たとえば、1回目に申請した際の障害認定日分の診断書が不備だらけで不支給となってしまった場合、きちんと書き直してもらった診断書を再提出して再度申請しても、「同じ期間の症状に関する診断書なのに、なぜ記載が違うのか」という理由で申請が通らないケースもありえます。

確実に認定されるためには、障害年金専門の社会保険労務士等に代理で申請してもらうことが有効です。お近くの障害年金に強い社労士は、以下おりお探しいただけますので、ご参照ください。

 

▶参考情報:「障害年金に強い社労士を探す」はこちらから

 

7 まとめ

今回の記事では、障害年金の遡及請求を成功させるためのポイントとして

 

  1. 初診日が特定できている
  2. 障害認定日頃の診断書が取得できている
  3. 障害認定日頃の症状が認定基準に該当する

 

上記3つをご説明いたしました。これらがクリアできていれば、遡及請求が成功する確率は高いです。

また、遡及請求の場合はさかのぼれる期間に時効があるので急いで請求しなければなりません。
基本的にご本人やそのご家族でも請求できますが、一刻も早くより確実な請求をおこないたい場合は、障害年金専門の弁護士や社会保険労務士に申請代理を依頼しましょう。

 

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  • この記事の監修者
  • 西川 暢春
  • 西川 暢春

    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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