障害年金の対象者は?対象となる病名や障害の程度を解説!

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障害年金の制度を聴いたけれども自分が対象になるかどうかわからず悩んでいませんか?

障害年金は、原則としてあらゆる病気や障害が対象です。うつ病やがんなど、患者数が多い病気についても、仕事や日常生活に支障が生じている場合は対象となります。

この記事では、障害年金の対象者の範囲についてできるかぎりわかりやすく説明します。
記事を読んでいただければ、あなたが障害年金の対象になりそうかどうか、だいたいの目安をつけていただけるはずです。

対象になる場合は1日でも早く請求したほうが良いです。
それでは見ていきましょう。

 

1 障害年金は原則としてあらゆる病気や障害が対象

障害年金は、病気や障害のために日常生活や仕事に支障がある人に国から支給される公的年金です。

もらえる金額は人によって違いますが、月の平均の支給額は77,289円(平成26年の統計)となっています。

そして、冒頭でご説明したように障害年金は、病名を問わず申請することが可能です。特定の病気に支給されるものではありません。

この記事ではどの程度で病気や障害が重ければ障害年金の対象者になるかを、ご説明します。

そのうえで、障害年金を受給するために必要なその他の条件として以下の3つの条件についてもご説明したいと思います。

条件1:原則として20歳から64歳までであること

条件2:最初の通院日以前の年金の納付状況が基準以上であること

条件3:原則として最初の通院日から1年6か月が経過していること

以下で順番に見ていきましょう。

 

2 病気や障害で日常生活や仕事に支障がある方が対象

障害年金の対象者になるためには、日本年金機構が定めた認定基準以上の障害があることが条件になります。

以下では、どの程度の重さの障害であれば日本年金機構の認定基準以上となるのかをご説明したいと思います。

 

2-1 国民年金と厚生年金で対象者の範囲が違う

どの程度の重さの障害であれば障害年金が申請できるかは、あなたが初診日に国民年金に加入していたか、厚生年金に加入していたかで異なります。

「初診日」とは障害年金を申請する病気や障害で最初に通院した日のことです。

障害年金では、障害を重い方から順に1級、2級、3級と区別しています。

あなたが初診日に厚生年金に加入していた場合は、障害の程度が1級、2級、3級のどれかに該当すれば、あなたは障害年金の対象者になります。

これに対し、あなたが初診日に国民年金に加入していた場合は1級か2級に該当した場合にのみ対象になり、3級の場合は対象外です。

そして、どの程度の障害であれば、何級に該当するかについては、障害の内容ごとに日本年金機構が詳しい障害認定基準を設けています。

障害年金認定基準

 

対象者の範囲のおおまかな目安

正確な判断は前述の障害年金認定基準を参照する必要がありますが、どのくらいで何級になりそうかのおおまかな目安を説明すると以下のとおりです。

なお、障害年金の等級は、障害者手帳の等級とは全く制度が異なりますので注意してください。障害年金の等級は障害者手帳の等級とは全く関係なく、別に決定されます。

障害の部位 1級 2級 3級
精神疾患 うつ病、統合失調症などにより、身の回りのこともほとんどできないため、常に介助が必要な状態 うつ病、統合失調症などで1人では十分な食事や適切な入浴ができない状態 単純な日常生活はできるが、食事、入浴、買い物、通院、他人との意思伝達、緊急時の対応、銀行での入出金などの場面において、援助が必要になることがある状態
眼の障害 両眼の矯正視力の和が0.04以下の場合 両眼の矯正視力の和が0.08以下の場合 両眼の視力が両眼とも0.1以下の場合
両眼の視野がそれぞれ5度以内の場合
聴覚の障害 両耳の聴力レベルが100デシベル以上の場合 両耳の聴力レベルが90デシベル以上の場合 両耳の聴力レベルが70デシベル以上の場合
両耳の聴力レベルが50デシベル以上でかつ、最良語音明瞭度が50パーセント以下の場合
上肢の障害 両腕が全く使えない状態の場合 片腕が全く使えない状態の場合 片腕の3大関節(肩、肘、手首)のうち2つ以上の関節について動く範囲(可動域)が2分の1以下に制限されている場合
両手の指がすべてない場合 片手の指がすべてない場合
下肢の障害 両脚が全く使えない状態の場合 片脚が全く使えない状態の場合

片脚の3大関節(股関節、膝、足首)のうち2つ以上の

関節について動く範囲(可動域)が2分の1以下に制限されている場合

両脚の足首より下がない場合 片脚の足首より下がない場合
心臓疾患 心臓疾患により身の回りのこともできず常に介助が必要で、ベッドの周りで過ごしている場合 CRT、CRT-Dを装着している場合 心臓ペースメーカー、ICD、人工弁を装着している場合
心臓疾患により軽労働もできない状態の場合 心臓疾患により軽い家事や事務などはできるが肉体労働が制限される場合
腎疾患 腎疾患により身の回りのこともできず常に介助が必要で、ベッドの周りで過ごしている場合 人工透析を施行している場合 腎疾患により軽い家事や事務などはできるが肉体労働が制限される場合
腎臓疾患により軽労働もできない状態の場合

 

2-2 実際に申請が多い病名

次に、実際に障害年金の申請が多い病名をあげると以下の通りです。

障害の種類 病気や怪我の内容
精神の障害 うつ病、統合失調症、発達障害、高次脳機能障害など
知的障害 知的障害で仕事に著しい障害があるか働けない場合
てんかん 治療をしてもてんかん発作があり、仕事に制限がある場合
目の障害 視力障害、視野障害、網膜色素変性症、緑内障など
聴覚の障害 聴力障害
言語機能の障害 構音障害、失語症
手足の障害 腕や脚あるいは手足、指の欠損、関節の障害、偽関節、ジストニア
体幹、脊柱、肢体の機能の障害 脳血管障害、脊髄損傷、進行性筋ジストロフィー
呼吸器疾患による障害 肺結核、じん肺、呼吸不全、喘息
心疾患による障害 慢性心不全、弁疾患、心筋症、心筋梗塞、狭心症、難治性不整脈、心房細動、大動脈解離、先天性心疾患、CRTCRT-D、ペースメーカー、ICD装着
腎疾患による障害 慢性腎不全、ネフローゼ症候群、人工透析施行
肝臓疾患による障害 肝硬変、慢性肝炎、肝がん、肝臓移植
血液、造血器疾患による障害 難治性貧血、血小板減少性紫班病、凝固因子欠乏症、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、HIV
糖尿病 糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性壊疽
がん がんそのものによる障害、がんによる全身の衰弱、がん治療により起こる全身衰弱
高血圧 降圧剤非服用下で最大血圧140mmHg以上最小血圧90mmHg以上の高血圧
その他 人工肛門・新膀胱造設、遷延性意識障害、その他の難病

最後に「その他の難病」と記載したように、障害年金はあらゆる病気や障害が対象になり、表はあくまで申請が多い病気の例です。

 

人格障害、神経症、薬物乱用は対象外

なお、例外的に人格障害、神経症、薬物乱用による精神疾患は、精神病(統合失調症やうつ病)の病態を示していると診断されない限り、日常生活や仕事に支障があったとしても、障害年金の対象とはなりません。

【人格障害、神経症とは】

パーソナリティ障害、境界性・分裂病型などの人格障害、不安神経症、不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、パニック障害、社交不安障害、恐怖症、強迫性障害、心気症、ヒステリー、転換性障害、解離性障害、離人性障害、解離性同一性障害といった病気を指します。

 

これらの病気で障害年金の申請を考えている方は、主治医に、「精神病(統合失調症やうつ病)の病態を示しているといえるかどうか」について尋ねておくとよいでしょう。

 

3 条件1:原則として20歳から64歳までであること

次に、障害年金の対象者となるための、病気や障害の重さ以外の条件についてご説明していきたいと思います。まず、1つ目の条件として、障害年金の申請時に年齢が20歳から64歳までであることが原則として必要です。

19歳以前については特別児童扶養手当などが支給され、また65歳以上は基本的には老齢年金の対象となることから、いずれも障害年金の対象外とされているのです。

ただし、あなたが以下のいずれかにあたる場合は、65歳以上であっても、例外的に障害年金を受給することができます。

ケース1:初診日が65歳未満で、初診日から1年半以内に障害認定基準に該当する障害の状態になった場合

ケース2:初診日が65歳以上でも、その初診日のときに厚生年金に加入していた場合

ケース3:初診日が65歳以上でも、その初診日のときに国民年金の任意加入者だった場合

65歳以上の方でも障害年金を請求できる場合については以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご確認ください。
障害年金を受けている方が65歳になったら年金の受給方法はどう変わる?

4 条件2:最初の通院日以前に年金を納めていたこと

次に、障害年金の対象者となる条件の2つ目として、初診日の時点の年金納付状況が基準以上であることが原則として必要です。

年金の納付状況が問題とされるのは、年金を誠実に納付してきた人にだけ障害年金を認めるという考え方に基づくものであり、「納付要件」と呼ばれます。

障害がどんなに重くても、初診日以前の年金の未納が多く、納付要件を満たさない人には障害年金は支給されません。

 

4-1 納付要件の原則的な判断基準

納付要件の原則的な判断基準は以下の通りです。
以下の2つのどちらかにあたれば、「納付要件」を満たします。

(1)初診日において65歳未満で、かつ初診日のある月の前々月からさかのぼって1年間の間に年金の未納がない場合

(2)20歳から初診日のある前々月までの期間のうち、年金の未納期間が3分の1未満の場合

もし、あなたが初診日の時点で配偶者の扶養に入っていた場合は、あなたの配偶者が上記の2つのどちらかを満たせば問題ありません。

この納付要件は初診日の前日の時点で満たしている必要があり、初診日の後に初診日以前に納めるべきだった年金を納付しても、それによって納付要件を満たすことはできません。

一方で、初診日より前に年金の納付について免除手続きを行っていた場合は、納付要件の判断において「年金の未納」とは扱われず、年金を納付していたのと同じ扱いを受けることができます。

あなたの年金の納付状況がわからない場合は年金事務所や弁護士・社労士への相談で調べてもらうことが可能です。

 

4-2 年金の納付状況は年金事務所で確認が可能

自分の年金の納付状況がわからない場合は、年金事務所に行って窓口で確認することが可能です。

具体的にはねんきんダイヤル(0570‐05-1165)に電話をして、事前に相談日時を予約したうえで、年金事務所に行って確認することができます。なお、年金事務所に行くときは必ず年金手帳を持参してください。

ただし、年金事務所に相談して調べてもらうと、相談の記録が年金事務所に残ります。

そして、後日、障害年金の申請をする際に提出する書類の内容が、年金事務所に相談した際のあなたの相談内容の記録と食い違っていると、障害年金の申請に支障が生じることがあります。

もし、年金事務所に相談の記録が残ることが不安な場合は、障害年金の相談を受け付けている弁護士事務所や社労士事務所に相談してから調べるのがよいでしょう。

 

4-3 初診日が未成年のときは納付要件は不問

初診日に未成年だった場合、例外として、年金の納付要件は問われないというルールがあります。

国民年金の加入は20歳以上からなので、初診日が20歳未満の場合は、初診日までに国民年金を納付することがそもそも想定できないため、年金の納付要件は不問とされています。

このルールにより、先天性の障害や知的障害、幼少期からの障害、20歳までの病気や怪我による障害の場合は、年金の納付要件を考える必要がありません。

 

5 条件3:原則として最初の通院日から1年6か月が経過していること

最後に、障害年金の対象者となるためには、初診日から1年6か月が経過していることが原則として必要です。

障害年金では、病気や怪我があればすぐに申請できるわけではなく、1年6か月経過してから申請できるというルールになっています。

これは、ある程度の期間治療しても治らないような障害のみを障害年金の対象とするという考え方によるものです。

 

5-1 1年6か月が経過しなくても申請できる例外的なケースもある

例外的に以下の病気や怪我については、初診日から1年6か月が経過しなくても申請が可能です。

障害の部位 障害の内容 障害年金の申請ができる日
上肢、下肢 人工骨頭又は人工関節を入れた場合 手術の日
手足を切断又は離断した場合 切断又は離断の日
呼吸器 喉頭全摘出の場合 全摘出した日
在宅酸素療法を行っている場合 在宅酸素療法を開始した日
心臓 心臓ペースメーカーやICDあるいは人工弁を装着したとき 装着の日
腎臓 人工透析をしている場合 透析開始後3か月を経過した日
膀胱 新膀胱を造設した場合 造設の日
肛門 人工肛門の造設、尿路変更術を施術した場合 手術後6か月を経過した日

これらの病気や怪我については、初診日から1年6か月を待たなくても「一定期間継続する障害である」と判断することができるため、1年6か月待たなくても申請が可能とされています。

 

6 まとめ

今回は、障害年金の対象者になるための条件についてご説明しました。

さらに進んで実際に障害年金の申請をすすめていくためには、まず、自分の病気や障害の内容ごとの申請のポイントを確認しておく必要があります。

咲くやこの花相談室でも、以下のページで、病気や障害の内容ごとの申請のポイントを解説していますので参考にしてください。

統合失調症の障害年金申請のポイント
うつ病の障害年金申請のポイント
人工透析の障害年金申請のポイント
がんの障害年金申請のポイント
視力障害の障害年金申請のポイント
聴覚の障害年金申請のポイント
身体障害の障害年金申請のポイント
リウマチの障害年金申請のポイント

 

患者団体や病院の方へ

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障害年金の制度を患者の方にお伝えいただく目的で使用いただくのであれば、無償で利用していただいて結構です。
ただし、以下のルールを必ず守っていただきますようにお願いいたします。

 

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  • この記事の監修者
  • 西川 暢春
  • 西川 暢春

    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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