人工透析で障害年金を申請する前に確認すべき書類準備の手順

男性患者

病気やけがなどによって仕事や生活に困っている方は「障害年金」をもらうことができます。

人工透析療法を受けている人も条件を満たせば障害年金をもらうことができますが、実は病院や年金事務所に何度も行く必要があったりと、なかなか一筋縄ではいかないことが多いです。

今回の記事では人工透析療法を行っている人へ障害年金の申請方法をお伝えするとともに、申請前によくある困った事への対処法についてご説明いたします。

1 年間最低約78万円の障害年金がもらえる!

人工透析をおこなっている人は原則2級の障害年金を受け取ることができます!(昭和61年より前に初診日がある場合は3級)血液透析、腹膜透析のいずれの透析方法であっても同じ「人工透析」として扱われますので、等級や金額に差はありません。

まず簡単に障害年金の制度についてご説明します。

 

1-1 障害年金とは

障害年金とは、病気やけがなどによって、仕事や生活に困っている方が受けることができる年金の一つです。

日本年金機構が認定し支給している国の制度で、年金の納付要件・障害状態の程度などの受給できる条件を満たしていれば、受給することができます。原則、20歳から65歳になる前々日までに申請しなければならないという年齢制限がありますのでご注意ください。

また、通常、初診日(人工透析を受けることになった原因疾患で初めて病院を受診した日。たとえば糖尿病性腎症の場合は、糖尿病で初めて病院を受診した日のこと。)から1年6か月経過しないと障害年金を申請することができませんが、初診日から1年6か月経過する前に人工透析治療を始めた場合は、その日から障害年金を申請することができます。

 

各等級と受給できる金額

等級は1~3級がありますが、初診日がある月に支払っていた保険料によって該当する等級が変わります。

初診日に国民年金に加入していた場合(障害基礎年金):1級もしくは2級
初診日に厚生年金に加入していた場合(障害厚生年金):1級、2級、もしくは3級

各等級で受給できる最低金額は以下の通りです。

1級:年間97万4,125円
2級:年間77万9,300円
3級:年間58万4,500円

上記の金額に、障害基礎年金の場合は18歳になった年度末までの子どもの分
障害厚生年金の場合は18歳になった年度末までの子どもの分と配偶者の分が加算されます。
(これらを障害年金の「子の加算」、「配偶者の加給年金」と呼びます)

 

1-2 年金の納付状況によっては受給できない

さきほど簡単にご説明しましたが、障害年金を受給するには年金の納付要件と障害状態の程度といった、一定の条件を満たしている必要があります。

年金機構の認定基準には「人工透析をおこなっている方は原則2級」との記載があるため、人工透析をおこなっている方は自動的に障害状態の程度を満たすのですが、年金の納付要件は人によって満たさない方がいらっしゃいます。

この年金の納付要件を満たしていないと、障害状態の程度を満たしていても障害年金は受給できないので注意が必要です。

 

年金の納付要件

年金の納付要件とは以下のことを指します。
(1)もしくは(2)に該当しなければ要件を満たしていないので、障害年金を受給することができません。

初診日の時に、国民年金、厚生年金、共済年金に加入していた方、もしくは20歳未満の方で

(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること(原則)

または

(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(特例)

実際に上記の納付要件を確認するには、いままでの納付記録の確認が必要です。お近くの年金事務所の窓口で確認してもらうことができますので、基礎年金番号がわかるものを持参の上相談に行きましょう。

なお、事前に電話で相談予約をしてから行くと、窓口前で待たずにすみます。

 

2 人工透析で障害年金を申請する手順

障害年金の申請で重要な書類は「初診日を証明する書類」「診断書」「病歴・就労状況等申立書」の3枚です。これらの書類を集める際の手順を以下でご説明していきます。

 

2-1 受診状況等証明書を初診病院で書いてもらう

障害年金の申請において、初診日を証明することは必要不可欠です。初診日は、人工透析の原因疾患で最初に受診した病院で「受診状況等証明書」を書いてもらうことで証明できます。

 

2-2 初診病院で受診状況等証明書を書いてもらえなかった場合

人工透析で障害年金を請求する場合、初診日のある病院で受診状況等証明書を書いてもらえないケースが良くあります。諦めず次の方法を実践してください。

 

受診状況等証明書はどこかの病院で必ず書いてもらう

受診状況等証明書は、1院目で書いてもらえなかった場合2院目で、2院目でもだめなら3院目…というように、どこかの病院で必ず書いてもらわなければならない書類です。最低でもこの頃にこの病院に行っていました、ということを証明するためです。

その上で、受診状況等証明書を書いてもらえなかった病院についてはその病院ごとの「受診状況等申立書が添付できない申立書」を提出します。この書類は請求者が記入します。

 

受診したことが確認できる参考資料を提出する

この「受診状況等申立書が添付できない申立書」はあくまでも請求者の申立による書類ですので、病院やその他の機関が発行している、「1院目の病院を、いつ受診したか」がわかる書類の写しを参考資料として提出しなければなりません。具体的には以下のような書類を指します。

  • お薬手帳・糖尿病手帳・領収書・診察券(可能な限り診察日や診療科がわかるもの)
  • 生命保険、損害保険の給付申請時の診断書
  • 事業所等の健康診断の記録
  • 健康保険の給付記録(診療報酬明細書も含む)
  • 身体障害者手帳
  • 身体障害者手帳等の申請時の診断書
  • 母子健康手帳
  • 小中学校等の健康診断の記録や成績通知表
  • 電子カルテ等の記録
  • 第三者証明              など

最低でも1つはこれらの参考資料を見つけて提出しましょう。参考資料は多ければ多いほど信ぴょう性が増すので可能な限り探して提出すべきです。

 

参考資料が見つからないならプロに相談する

参考資料がない。もう何十年も前で、どの病院に行ったのかもわからない。という場合は、ぜひ障害年金専門の弁護士や社会保険労務士に相談することをおススメします。

専門家独自の方法を使って初診日を証明することができる場合もあり、最近では初回相談を無料でおこなっている事務所も増えているので、お近くの専門家に1度相談してみてはいかがでしょうか。

 

人工透析で初診日を証明しにくい理由

日本透析医学会が発表した「人工透析導入患者の原因疾患」では「糖尿病性腎症」が第1位で全体の4割を占めています。

この病気の原因疾患は糖尿病ですが、糖尿病はゆっくり進行していく病気であるがゆえに、初診日から20年、30年経って人工透析をされる方は少なくありません。現行の医師法(第24条)では、カルテは5年保存するようになっているので、それ以上経ってしまうと医師の判断で破棄しても良いことになります。

この結果、初診日が5年以上前のケースが多い人工透析での障害年金の申請の際カルテが残っていない場合が多く、初診日の証明が簡単にいかないことが多いのです。

 

2-3 診断書について

人工透析で障害年金を申請する際、診断書の記載内容について気を付けておきたいことは以下の2点です。

1.医師に日常生活状況や就労状況を伝えておく
2.診断書表面はなるべく記載漏れがないように書いてもらう

それでは順に説明していきます。

 

医師に日常生活状況や就労状況を伝えておく

診断書裏面下部に「16 現症時の日常生活活動及び労働能力」について記入してもらう欄があります。障害年金は仕事をしていても受給できますが、年金機構に現状を把握してもらうために必ず記入してもらわなければなりません。

医師に正確に記入してもらうためにも、日常生活で不便なことや仕事の状況を事前に説明しておきましょう。

 

診断書表面はなるべく記載漏れがないように書いてもらう

人工透析で障害年金を申請するには、診断書表面にある「腎疾患」の欄に症状や数値を記入してもらわなければなりません。診断書を受け取ったらすぐに確認し、空欄などがあれば加筆修正をお願いしてください。

なお人工透析の症状で提出する診断書は、糖尿病と肝臓の症状に関する記載欄があるので、これらの病気や症状が出ている場合も診断書に記載してもらう必要があります。

特に、糖尿病性腎症の場合は「糖尿病」の欄にも記入してもらわなければなりませんのでご注意ください。

 

2-4 病歴・就労状況等申立書について

発症から現在に至るまでの病気の状態や、仕事に制限がでていたことなどを申し立てる書類で、発病した時から現在まで3年から5年に区切って記入します。

具体的に書くと長くなると思いますので、下書きをしてから記入することをおススメします。日本年金機構のホームページには、Excel版の病歴・就労状況等申立書もあるのでご活用ください。

箇条書き、話し言葉など、どのような書き方でも構いませんので、以下の2点に気を付けて記入してください。最初にある程度書いて、最後に診断書を見ながら確認してから清書、という作成方法がよいでしょう。

  1. 診断書の記載内容と矛盾がないように記入する
  2. 発症後の状況について具体的に記入する

こちらも順に説明していきます。

 

診断書の記載内容と矛盾がないように記入する

診断書の「現在までの経過」の欄などと病歴・就労状況等申立書に矛盾があると、障害年金の審査に時間がかかることがあります。病院を受診した順番や入院期間、手術日などは誤りが無いように注意してください。

 

発症後の状況について具体的に記入する

病気を発症してからの自分を客観的にみて記入すると良いでしょう。
提出するまでは何度でも書き直すことができます。下記を参考に記入してみてください。
また、参考程度に病歴・就労状況等申立書のサンプルもご用意いたしましたので、参考にしてください。

受診していた期間について ・どのくらいの期間、どのくらいの頻度で何回受診したか
・入院した期間やどんな治療をして、改善したかどうか
・医師から言われていたこと
(塩分を控えるように言われた、適度に運動するように言われた等)
・転医や受診を中止した理由
(引っ越したため、自覚症状がなかったため等)
・日常生活状況
(具体的にどんな症状があって、どう困っていたか。例:貧血、めまいが1日に何度もあるので自宅にいる時は横になっている。危ないので家事ができない等)
・就労状況
(週に何日、1日何時間働いているか。仕事中や仕事後に体調に変化があれば記入する。病気のため仕事に制限があれば記入する。例:週に3回の透析治療のため、フルタイムから5時間程度の勤務に変わった。等)
・その他、糖尿病などの原因疾患について医師から言われた時期や、透析を始めた時期などについて
受診していなかった期間について ・受診していなかった理由
(自覚症状がなかった、経済的に行けなかった等)
・自覚症状の程度
(いつどんな症状がどの程度あったか。例:仕事の後にだるさを感じることが多かったが睡眠をとると回復した等)
・日常生活状況
(普段通りではなかったことがあれば記入する)
・就労状況
(病気によって仕事に支障がでていたか等)

また、弊事務所で作成するような病歴・就労状況等申立書のサンプルもご参考いただけましたら幸いです。

 

3 人工透析と障害年金にまつわる疑問3点

ここからは、人工透析をおこなっている人からよくある質問にお答えします。

 

3-1 働いていても受給できますか?

→障害年金の認定基準には、就労に関する制限はありません。所得の制限もありませんので、仕事をしながら障害年金を受給することは可能です。(20歳前傷害の方を除く)

 

3-2 人工透析をおこなっていたら1級にはならないですか?

→透析治療後の症状や検査成績によっては、1級に該当する事もあります。

具体的には、血液検査でわかる内因性クレアチニン、クリアランスの値が10ml/分未満、血清クレアチニンが8mg/dl以上のどちらかを満たしていて、常に介助を必要とし、終日横にならざるをえないような場合は1級に認定されることがあります。

また、腎機能の症状とは因果関係が全くない別疾患で障害年金の2級以上に認定されている場合も、2つの傷病をあわせて1級になる場合があります。

 

3-3 腎臓移植を受けると障害年金は止まりますか?

→腎臓移植後2年間は予後観察期間とされており、手術後少なくとも1年はいままでの等級が継続されますので、移植を受けてすぐに支給停止にはなることはありません。

定期的に送られてくる障害状態確認届の診断書で、腎臓移植によって症状が改善されており、障害年金の認定基準に該当しないと認められれば、障害年金は支給停止になります。

なお移植後さらに腎機能が悪化し人工透析をおこなうことになった場合は、支給停止消滅届を提出することで支給が再開されます。申請を1からやり直す必要はありませんのでご安心ください。

 

4 まとめ

今回の記事では、人工透析で障害年金を申請するときに押さえておきたいこととして、

  • 初診日の具体的な証明方法
  • 診断書を医師に依頼する前に伝えておくことと、内容確認の方法
  • 病歴・就労状況等の具体的な書き方

の3点を具体的にお伝え致しました。

あなたが障害年金を申請される時に、この記事が少しでも役立てば幸いです。