障害年金をがんでもらう場合の基準とおさえておくべき4つのポイント

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あまりよく知られていませんが、実はがんの症状でも障害年金を受給することができます。

この記事では、がんで障害年金を申請しようとしている方へむけて、どのようなところに気を付けるべきかなどをお伝えしていきます。

1 がんの症状でも障害年金を申請することができる

障害年金は病気やケガによって日常生活や仕事が制限されるようになった場合に、受給できる年金です。したがって、がんによって日常生活や仕事に支障がでている場合も、障害年金を申請することができます。

まず簡単に障害年金の制度についてご説明します。

 

1-1 障害年金とは

障害年金とは、病気やけがなどによって、仕事や生活に困っている方が受けることができる年金の一つです。

日本年金機構が認定し支給している国の制度で、年金の納付要件と障害状態の程度といった受給できる条件を満たしていれば、受け取ることができます。

原則、20歳から65歳になる前々日までに申請しなければならないという年齢制限がありますのでご注意ください。

 

各等級と受給できる金額

等級は1~3級がありますが、初診日(がんの症状で初めて病院を受診した日)のある月に加入していた制度によって、障害基礎年金か、障害厚生年金かが決まります。

初診日に国民年金に加入していた場合(障害基礎年金):1級もしくは2級
初診日に厚生年金に加入していた場合(障害厚生年金):1級、2級、もしくは3級

各等級で受給できる最低金額は以下の通りです。

1級:年間977,125円
2級:年間781,700円
3級:年間586,300円

上記の金額に、障害基礎年金の場合は18歳になった年度末までの子どもの分
障害厚生年金の場合は18歳になった年度末までの子どもの分と配偶者の分が加算されます。
(これらを障害年金の「子の加算」、「配偶者の加給年金」と呼びます)

 

1-2 年金の納付状況によっては受給できない

障害年金がもらえないケースとして、障害状態が年金機構の基準に該当しない場合の他に、年金の納付要件を満たさない場合が挙げられます。

年金の納付要件とは以下のことを言います。
(1)もしくは(2)に該当しなければ条件を満たしていないので、障害年金を受給することができません。

初診日の時に、国民年金、厚生年金、共済年金に加入していた方、もしくは20歳未満の方で

 

(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること(原則)

または

(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(特例)

ここにある初診日とは、がんの症状で初めて病院に行った日のことをいいます。健康診断で診断があった日は原則初診日ではありませんのでご注意ください。

実際に上記の納付要件を確認するには、いままでの納付記録の確認が必要です。お近くの年金事務所の窓口で確認してもらうことができますので、基礎年金番号がわかるものを持参の上相談に行きましょう。なお、事前に電話で相談予約をしてから行くと、窓口前で待たずにすみますのでご活用ください。

 

2 がんの認定基準

がんによる障害年金の認定基準は以下の通りです。申請するかどうか迷っていらっしゃる方は自分の症状が以下のうちどれにあてはまるか確認の上、ご検討ください。

下記の一般状態区分表は診断書に記載されていて、実際の申請の際には医師が選んだアからオの区分が重視されます。一般状態区分表の他に、診断書に記載された数値や自覚症状・他覚症状なども参考にされて等級が決定されます。

区分 一般状態 参考となる等級
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの 該当しない
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
例えば、軽い家事、事務など
3級
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は立ったり座ったりの活動が可能なもの 2級又は3
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は横になっており、自力では屋外への外出がほぼ不可能となったもの 2級
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日横にならざるをえず、活動範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの 1級

※人工肛門(ストーマ)や新膀胱の増設、尿路変更の手術をおこなっている場合は原則3級に認定されます。もちろん、障害状態によっては2級以上に認定される場合もあります。

 

3 がんの症状で障害年金を申請する際の4つのポイント

がんの症状で障害年金を申請する際に重要になるのは、「診断書」と「病歴・就労状況等証明」の2枚の書類です。

診断書は医師、病歴・就労状況等申立書は請求者が作成する書類ですが、作成方法にコツがありますので、以下の4つのポイントを実践してください。

 

3-1 診断書は2枚提出する

障害年金を申請する際に使用する診断書は症状別に分けられておりますが、年金機構の指定書式としてがん用の診断書はないので、がんの場合は「その他の障害用の診断書」を使用することになっています。

しかし「その他の障害用の診断書」は記載できる欄が限られており、症状を年金機構に伝えるには足りません。したがって、がんに関する「その他の障害用の診断書」と症状にあった診断書の2枚を提出し、障害状態を審査してもらうことが重要です。

例えば手術をして生じた創部痛や関節痛、手足のしびれなどの症状があるのでしたら、具体的にどの程度しか身体が動かないのか申告するために「肢体の診断書」を2枚目の診断書として提出しましょう。

他にも以下のがんや症状がでている場合は、「その他の障害用の診断書」と併せて、症状にあった診断書を提出してください。

がんの種類 診断書の種類
肺がん 呼吸器疾患の障害用
咽頭がん、舌がん そしゃく・嚥下・言語機能の障害用
腎臓がん、肝臓がん 腎疾患、肝疾患の障害用

骨転移による神経圧迫
しびれ、麻痺、関節障害

肢体の障害用
心疾患 循環器疾患の障害用
眼腫瘍 眼の障害用
聴器がん、中耳がん 聴覚・鼻腔機能・平行機能の障害用

 

3-2 診断書に記載が必要な症状や状態を医師に伝える

3-1でもご説明したとおり、「その他の障害用の診断書」はがん以外の様々な疾患でも使用されるため、年金機構が審査する際に必要な数値や症状の記載が指定されておりません。

そのため、年金事務所などで取り付けた診断書をそのまま医師に渡すのではなく、記載してほしいことを事前に伝えておかなければなりません。

 

【診断書に記載が必要な症状や状態】

(1)自覚症状:全身衰弱、倦怠感、発熱、身体の痛み(手術の痕など)、しびれ、感覚麻痺、貧血、下痢、嘔吐

(2)検査成績の欄:
・腫瘍マーカーの数値、組織診断検査、超音波検査、X線CT検査、MRI検査、血管造影検査、内視鏡検査などの結果
・他臓器への転移の有無、疑いがある箇所について
・放射線治療、抗がん剤治療、薬物療法などの治療方法について、治療期間やペース、投与量など

(3)人工臓器等
がんによる手術をおこなったことがある場合、ストーマを取り付けた場合は手術日

 

診断書には、上記を必ず記入してもらいましょう。数値で見ればわかるようなものであっても、記載がなければないものと判断される場合があるので気を付けてください。

できれば診察の際などに医師と面談をしながら診断書を書いてもらうと良いですが、難しい場合は診断書に鉛筆などで自覚症状を書いたり、メモ書きをつけた上で、医師に作成を依頼すると良いでしょう。

以下に、実際の診断書に記載が必要な症状や状態を記入したものをご用意しましたのでご参考になさってください。

 

3-3 発症後の状況について病歴・就労状況等申立書に具体的に記入する

ここからは病歴・就労状況等申立書の作成方法についてご説明します。

この書類は発症から現在に至るまでの病気の状態や、仕事に制限がでていたことなどを申し立てる書類で、発病した時から現在まで3年から5年に区切って記入します。

具体的に書くと長くなると思いますので、下書きをしたほうがよいでしょう。エクセル版の病歴・就労状況等申立書もあるのでご活用ください。

まずは下記を参考にして頂きながら、がんを発症してからの請求者の病歴と、就労状況について具体的に記入してみましょう。

受診していた期間について ・どのくらいの期間、どのくらいの頻度で何回受診したか

・入院した期間やどんな治療をして、改善したかどうか
(放射線治療やホルモン剤などの治療方法や、病院の受診頻度など)

・医師から言われていたこと、医師に話したこと
(がんの治療方法について医師と話したことや、食事療法の指導など)

・転医や受診を中止した理由
(引越したため、自覚症状がなかったため等)

・日常生活状況
(どんな症状があってどう困っていたか、具体的に。例:手術後、手足のしびれやむくみが酷く、ものを持ったり歩いたりすることが一人では困難になった、治療の副作用についてなど)

・就労状況
(週に何日、1日何時間働いているか。仕事中や仕事後に体調に変化があれば記入する。病気のため仕事に制限があれば記入する。例:手術のため退職したが、症状が重く、再就職できない等)

受診していなかった期間について

・受診していなかった理由
(経済的に行けなかった、病院に不信感があった等)

・自覚症状の程度
(いつどんな症状がどの程度あったか記入する)

・日常生活状況
(普段通りではなかったことがあれば記入する)

・就労状況
(病気によって仕事に支障がでていたか等)

また、がんで障害年金を請求する場合の病歴・就労状況等証明書のサンプル(PDF)も作成しましたので、例としてご活用ください。

 

3-4 診断書の記載内容と矛盾がないように確認する

診断書の「現在までの経過」の欄などと病歴・就労状況等申立書に矛盾があると、障害年金の審査結果に影響が出てしまう場合があります。

例えば診断書には「感覚麻痺」の欄になにも記入がないのに、病歴・就労状況等申立書に「両脚に感覚麻痺があり、ものにつまずきよく転ぶ」と書いてあったとします。この場合、障害年金の審査では「診断書に記載がないため、症状を認められない」として、実際より軽い等級に認定されてしまうことがあるのです。

こういったことを防ぐためにも、病歴・就労状況等申立書を記入したら、診断書の内容と照らし合わせて確認しましょう。診断書や病歴・就労状況等申立書に不備があっても、提出前であれば修正できます。

 

4 まとめ

今回の記事では、がんで障害年金を申請する際のポイントとして、がんの認定基準と、診断書と病歴・就労状況等申立書の作成方法についてお伝えいたしました。

障害年金は申請してから支払いがあるまで半年近くかかる場合もあります。初診日から1年6か月経っていればいつでも請求できますから、今すぐにお手続きされることをおすすめします。

 

患者団体や病院の方へ

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  • この記事の監修者
  • 西川 暢春
  • 西川 暢春

    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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