障害年金は身体障害でも申請が可能です。
認定の審査をする機関は日本年金機構で、身体障害者手帳とは別なので、基準や等級も違います。
もし手帳を取得していなくても、障害年金の基準に該当していれば年金を受給することも可能です。
今回の記事では年金の納付条件や、障害の認定基準をご説明した上で、申請の際に重要になる3つの書類の作成方法や注意点をご説明いたします。記事をお読みいただき、障害年金の受給対象か検討してみましょう。
1 障害年金の制度と等級
障害年金は、障害の程度や年金の納付状況について審査され、認定された後に受給できる年金です。
したがって、申請すればだれでも受給できるものではありません。また、身体障害者手帳と障害年金は制度が全く別のものなので、等級や認定基準も異なります。
手帳を持っていなくても障害年金を受けられる場合があるので、申請を検討してみてください。
まずは簡単に、障害年金の制度についてご説明します。
障害年金とは・・・?
原則、病気やケガのために初めて病院を受診した日(初診日といいます)から1年6ヶ月後から受給することができます。
障害年金には初診日に加入していた年金制度に応じて2つの種類があります。
障害基礎年金 |
<支給対象> 〇病気やケガのために初めて病院を受診した日の加入年金制度が国民年金の方 ・自営業、アルバイト、学生等 ・厚生年金加入者の配偶者(第3号被保険者) ・20歳より前に初診日があり年金に加入していなかった方(先天性疾患等) <年金額> 1級 年間97万4125円(月 8万1177円) 2級 年間77万9300円(月6万4941円) |
障害厚生年金 |
<支給対象> ・初診日に厚生年金に加入していた方 ※20歳より前に初診日があっても、厚生年金に加入していれば障害厚生年金の対象者です。 <年金額> 1級 報酬比例の年金額×1.25+障害基礎年金1級(年間97万4125円) 2級 報酬比例の年金額+障害基礎年金2級(年間77万9300円) 3級 報酬比例の年金額(最低保障額 年間58万4500円) |
障害基礎年金では日本年金機構の定める障害等級1級又は2級に認定された方に、障害厚生年金では1級から3級に認定された方に障害年金が支給されます。
障害年金を受給するためにはおおまかにいうと2つの条件を満たしている必要があります。
(1)初診日の前日時点で、初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。 もしくは、初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。【保険料の納付要件】
(2)障害の程度が日本年金機構の定める基準に該当していること【障害の程度の要件】 |
以下で順に上の2つの条件についてご説明します。
2 身体障害(肢体)の認定基準
障害年金では、傷病によって「このくらいの障害の程度であれば〇級相当」と基準が決まっています。これを障害年金の認定基準と言います。
上肢、下肢、体幹脊柱の障害別に認定基準がわかれています。
両手・両脚の四肢全体に症状がある場合は、症状の重い部位で障害の程度を判断し、認定されます。
認定の基準を症状別に説明すると以下の通りです。
2-1 腕・手(上肢)の障害の認定基準
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 両腕の3大関節(肩・肘・手首)中それぞれ2関節以上の関節が、以下a~cのいずれかに該当するもの |
(a)日常生活において支障をきたす角度で硬直しているもの | |
(b)関節の可動域が通常の1/2以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの | |
(c)筋力が著しく減少、または消失しているもの | |
両腕のすべての指が欠損しているもの | |
両腕のすべての指の用をなさないもの | |
指の著しい変形、麻痺による高度の脱力、関節が日常生活に支障のある角度でまがって硬直している、切り傷や火傷の痕による指の埋没又は可動域制限をおこしている、指があってもそれがないのとほとんど同程度の機能障害があるもの | |
2級 | 両手のおや指及びひとさし指、または中指が付け根から欠損しているもの |
両手のおや指及びひとさし指、または中指が用をなさないもの | |
片腕の機能に著しい障害を有するもの | |
片腕のすべての指が欠損しているもの | |
片腕のすべての指の機能に著しい障害を有するもの | |
3級 (障害厚生年金が申請できる方のみ) |
片腕の3大関節のうち、2関節の用をなさないもの |
長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害をのこすもの | |
片腕のおや指及びひとさし指を失ったもの、またはおや指もしくはひとさし指を併せ片腕の3指を失ったもの(「指を失う」とは第一関節以上を欠損した状態のこと) | |
おや指及びひとさし指を併せ、片腕の4指の用をなさないもの |
2-2 脚・足指(下肢)の障害の認定基準
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 両脚の3大関節(股関節・膝関節・足関節)中それぞれ2関節以上の関節が用をなさないもの (次のいずれかに該当するもの) |
(a)日常生活において支障をきたす角度で硬直しているもの | |
(b)関節の可動域が通常の1/2以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの | |
(c)筋力が著しく減少、または消失しているもの | |
両脚の3大関節中それぞれ1関節が用をなさないだけであっても、その両足を歩行時に使用することができない場合 | |
両脚をともにくるぶしからつま先まで欠損しているもの | |
2級 | 両脚のすべての指を付け根から欠損しているもの |
片足のいずれか2関節以上の関節が用をなさないもの (次のいずれかに該当するもの) |
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(a)日常生活において支障をきたす角度で硬直しているもの | |
(b)関節の可動域が通常の1/2以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの | |
(c)筋力が著しく減少、または消失しているもの | |
3級 (障害厚生年金が申請できる方のみ) |
片足の3大関節中1関節が用をなさないだけであっても、その片足を歩行時に使用することができない場合 |
片足をくるぶしからつま先まで欠損しているもの | |
片足の3大関節のうち2関節の可動域が、障害の無い脚の可動域の2分の1以下に制限されたもの、またはこれと同程度の障害をのこすもの | |
長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害をのこすもの | |
片足をリスフラン関節(足の甲の関節)以上で失ったもの | |
両脚のすべての指の用を廃したもの (次のいずれかに該当するもの) |
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(a)親指は末節骨(つま先側の骨)の2分の1以上、その他の指は DIP関節(第1関節)以上で欠損しているもの |
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(b)MP関節(指の付け根の関節)またはPIP関節(親指以外の指の第2関節)の可動域が、通常の可動域の2分の1以下に制限されたもの | |
身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害をのこすもの | |
人工骨頭または人工関節を挿入したもの |
2-3 体幹・脊柱の障害の認定基準
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 腰掛、正座、あぐら、横すわりのいずれもできないもの |
横になっている状態、座っている状態から自力のみで立ち上がれず、他人、柱、杖、その他の器物の介護または補助によりはじめて立ち上がることができる程度 | |
2級 | 室内において杖、松葉杖、その他の補助用具を必要とせず、起立移動が可能であるが、野外ではこれらの補助用具の助けを借りる必要がある程度 |
脊柱の障害のため、日常生活における動作が一人でできるが非常に不自由な場合 【日常生活における動作】はおおむね次のとおり。
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3級 (障害厚生年金が申請できる方のみ) |
身体の後ろ側の首から尻までの部分に明らかな外的要因での変化のため、脊柱の可動域が通常の1/2以下に制限されたもの |
障害手当金 (障害厚生年金が申請できる方のみ) |
身体の後ろ側の首から尻までの部分に明らかな外的要因での変化のため、脊柱の可動域が通常の3/4以下に制限されているものや、頭蓋や首の第1・第2頚椎の異常で普段動かないはずの方向へ曲がってしまうもの |
より詳しい認定基準は下記をご参照ください。【日本年金機構 身体障害の認定基準】(PDF)
認定基準に該当するようであれば、次に、現在の障害や病気のために初めて病院を受診した日(初診日)までの間の年金を一定額納めているかどうか調べましょう。
3 初診日までの年金の納付要件を確認する
障害年金は、障害状態の他に、初診日までの「年金の納付要件(条件)」を満たしていなければなりません。以下を確認してください。
初診日の時に、国民年金、厚生年金、共済年金に加入していた方、もしくは20歳未満の方で (1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること(原則) または (2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(特例) |
上記の(1)もしくは(2)に該当する必要があります。
自分が納付要件を満たしているか分からない場合は、お近くの年金事務所で教えてもらいましょう。
納付要件を満たしていることがわかれば、障害年金の申請準備をしていきます。
4 障害年金を受給するための3つの重要書類と取付け方法
2章、3章では障害年金が受給できる人の条件についてご説明しました。
続いて障害年金の申請準備にあたって、3つの重要な書類の取り付け方や作成の方法についてご説明していきます。
4-1 受診状況等証明書
「受診状況等証明書」とは、現在の障害や病気のために初めて病院を受診した日(初診日)を証明するための書類です。
障害年金の受給資格や納付状況を確認するために、必ず初診日を証明しなければなりません。
初診日のある病院で作成を依頼しましょう。(診断書を書いてもらう病院が初診日のある病院と同じ病院であれば必要ありません。)
ただし病院のカルテ保管期間は原則5年ですので、すでに記録が破棄されていたり、病院が廃院になっていたりして、受診状況等証明書がとれないことがあります。
その場合は、病院の診察券や病院の紹介状、生命保険等の給付申請時の診断書などの参考資料と一緒に「受診状況等証明書が添付できない申立書」という書類を提出しましょう。
この時、参考資料に初診病院の名前、初診日頃の日付の記載があると、初診日の証明が通りやすくなります。
初診日証明について、詳しくは「障害年金の申請に必須!初診日証明の方法と書類の確認ポイントを解説」を参考にして下さい。
4-2 診断書
肢体の障害用の診断書を主治医に書いてもらいましょう。
障害認定日の症状を診断書に書いてもらう
原則、初診日から1年6ヶ月経った日(障害認定日)から3ヶ月の間の状態について書いてもらう必要があります。
ただし障害認定日が来る前に以下の状態に至った場合は、障害認定日が次のように変わります。
自分の障害認定日がいつかよく確認しましょう。
施 術 | 障害認定日とされる日 |
人工骨頭または人工股関節挿入 | 挿入置換日 |
四肢の切断・離断 | 切断・離断を受けた日 |
脳血管障害による運動機能障害 (脳出血、脳梗塞など) |
初診日から6ヶ月経過した日 (医師からリハビリの必要がない「症状固定」と言われていた場合) |
診断書を書いてもらった後のチェック項目
医師に診断書を書いてもらえましたら、必ず以下の点を確認してください。
記入漏れがあると、適正な審査がおこなわれず障害年金を受給できない事もあります。
以下の項目は共通事項です。記入漏れがないか確認しましょう。 |
|
左の症状がある場合は、右の記載欄に記入漏れがないか確認しましょう。 | |
・上下肢の切断、変形、麻痺がある場合 | 表面「(11)切断又は離断・変形・麻痺」の欄 |
・脊柱の障害の場合 | 表面「(12)脊柱の障害」の欄 |
・人工骨頭や人工関節を入れている場合 | 表面「(13)人工骨頭・人工関節の装着の状態」の欄 |
・肩・肘・前腕・手・股・膝・足関節に可動域制限がある場合 | 表面「(15)手(足)指関節の他動可動域」の欄 |
・肩・肘・前腕・手・股・膝・足関節に可動域制限がある場合 | 裏面「(16)関節可動域及び筋力」の欄 |
・上下肢が短くなるなど萎縮している場合 | 裏面「(17)四肢長及び四肢囲」の欄 |
4-3 病歴・就労状況等申立書
「病歴・就労状況等申立書」とは、発病したときから現在までの経過を3~5年に区切って申告するための書類です。受診状況等証明書や診断書と違い、請求者が作成する書類です。いままでの病状や日常生活、就労状況について請求者が直接申告できる唯一の書類ですので、下記をご参考にして頂き、具体的に記入してください。
受診していた期間について | ・どのくらいの期間、どのくらいの頻度で受診したか |
・入院した期間やどんな治療をして、改善したかどうか | |
・医師から言われていたこと | |
・日常生活状況 (具体的にどんな症状があって、どう困っていたか。) |
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・就労状況 (週に何日、1日何時間働いているか。仕事中や仕事後に体調に変化があれば記入する。障害のために生じている仕事の制限や職場での配慮があれば記入する。) |
受診していなかった期間について | ・受診していなかった理由 (症状が固定していて病院に行く必要がなかった、経済的に行けなかった等) |
・自覚症状の程度 (いつどんな症状がどの程度あったか。) |
|
・日常生活状況 (普段通りではなかったことがあれば記入する。) |
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・就労状況 (障害によって仕事に支障がでていたか等を記入する。) |
5 まとめ
今回の記事では、身体障害で障害年金を申請する際に確認しておきたい、
- 障害年金が受給できる条件(程度の基準と一定額の年金を納めているか)
- 申請に重要な3つの書類(受診状況等証明書、診断書、病歴・就労状況等申立書)
を説明いたしました。
申請までにも時間がかかりますが、申請した書類に不備があると審査に時間がかかります。
慎重に準備をすすめましょう。
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