うつ病の障害年金認定基準と受給するためのポイント

悩む 若い女性

うつ病の患者数は110万人を超え、患者数は年々増加しています。
一度発症すると完治することは難しく、その症状は長引くことが多いといわれています。

そんなうつ病患者の生活を支えてくれる制度のひとつが障害年金です。

今回は、うつ病の障害年金の認定基準から、申請のポイントなどをご紹介します。

 

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1 うつ病で障害年金がもらえる!

うつ病は障害年金の対象となる病気です。

ただし、単に申請書類を提出すれば支給されるものではなく、日本年金機構の定める一定の基準を満たしている必要があります。
どのような場合に支給されるのか理解し、ポイントをおさえて申請することが重要です。

まず、障害年金の制度について簡単にご説明します。

障害年金とは・・・?

原則、病気やケガのために初めて病院を受診した日(初診日といいます)から1年6ヶ月後から受給することができます。

障害年金には初診日に加入していた年金制度に応じて2つの種類があります。

障害基礎年金

<支給対象>

〇病気やケガのために初めて病院を受診した日の加入年金制度が国民年金の方

・自営業、アルバイト、学生等

・厚生年金加入者の配偶者(第3号被保険者)

・20歳より前に初診日があり年金に加入していなかった方(先天性疾患等)

<年金額>

1級 年間97万4125円(月 8万1177円)

2級 年間77万9300円(月6万4941円)

障害厚生年金

<支給対象>

・初診日に厚生年金に加入していた方

※20歳より前に初診日があっても、厚生年金に加入していれば障害厚生年金の対象者です。

<年金額>

1級 報酬比例の年金額×1.25+障害基礎年金1級(年間97万4125円)

2級 報酬比例の年金額+障害基礎年金2級(年間77万9300円)

3級 報酬比例の年金額(最低保障額 年間58万4500円)

障害基礎年金では日本年金機構の定める障害等級1級又は2級に認定された方に、障害厚生年金では1級から3級に認定された方に障害年金が支給されます。

 

障害年金を受給するためにはおおまかにいうと2つの条件を満たしている必要があります。

(1)初診日の前日時点で、初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。

若しくは、初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。【保険料の納付要件】

 

(2)障害の程度が日本年金機構の定める基準に該当していること【障害の程度の要件】

(1)の保険料の納付要件を満たしていなければ、どんなに症状が重くても障害年金を受給することはできません。自分が納付要件を満たしているかは、お近くの年金事務所で確認することができます。

納付要件を満たしていることがわかれば、次に重要なのは(2)の障害の程度の要件です。初診日に国民年金に加入していた方は1級又は2級、厚生年金に加入していた方は1~3級のいずれかに認定される必要があります。

それでは、実際どのくらいの症状であれば認定されるのでしょうか。ここからはうつ病の認定基準についてご説明します。

 


2 うつ病の認定基準

障害年金では、傷病によって「このくらいの障害の程度であれば〇級相当」と基準が決まっています。これを障害年金の認定基準と言います。

認定基準によると、統合失調症で各等級に相当する障害の状態は以下のように定められています。

等級 障害の状態
1級 高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の症状があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの
2級 気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の症状があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級 高度の気分、意欲・行動の生涯及び高度の思考障害の症状があり、その症状は著しくないが、これが持続又は繰り返し、労働が制限を受けるもの
 (※ただし、障害基礎年金の場合は3級の時は障害年金が支給されません)

おおまかにいえば、常に誰かの援助がなければ日常生活がおくれない場合が1級、日常生活に支障が出ている場合が2級、仕事に支障が出ている場合が3級です。

平成28年9月より、認定基準をより具体的に示した「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が発表され、新たに審査の基準となっています。

この等級判定ガイドラインでは、診断書の記載事項である「日常生活能力の判定」及び「日常生活能力の程度」に応じて等級の目安が定められています。

※「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」とは

■日常生活能力の判定

日常生活にどのような支障があるかを7つの場面に分けて評価したものです。

※請求者が一人暮らしをした場合、可能かどうかで判断します。

(1)適切な食事 配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることができる
(2)身辺の清潔保持 洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。また、自室の清掃や片付けができる
(3)金銭管理と買い物 金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできる
(4)通院と服薬 規則的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができる
(5)他人との意思伝達及び対人関係 他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行える
(6)身辺の安全保持及び危機対応 事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができる
(7)社会性 銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。また、社会生活に必要な手続が行える

各項目を

できる
自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる
助言や指導をしてもできない若しくは行わない

の4つの段階にわけて評価します。

 

■日常生活能力の程度

日常生活能力を総合的に評価したものです。

精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。
精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
精神障害を認め、家庭内の単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。

上記の5つの選択肢から症状にもっとも近いものを選びます。

具体的な等級の目安は次の通りです。
障害等級の目安(PDF)

まったくこのとおりに認定されるわけではありませんが、ひとつの大きな目安になります。

これに加えて、等級判定ガイドラインでは、この他に等級判定の際に考慮すべき要素として以下の項目が示されています。先ほどの「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」と以下の項目を総合的に評価して等級が決定されます。

(1)症状又は状態
具体的な例
  • 適切な治療を行っても症状が改善せずに、非常に重いそうやうつの症状が長期間持続したり、頻繁に繰り返している場合は、1級または2級の可能性を検討する
(2)療養状況
具体的な例
  • 病棟内で、本人の安全確保などのために、常時個別の援助が継続して必要な場合は、1級の可能性を検討する
  • 在宅で、家族や重度訪問介護等から常時援助を受けて療養している場合は、1級又は2級の可能性を検討する。
(3)生活環境
具体的な例
  • 一人暮らしであっても、日常的に家族等の援助や福祉サービスを受けることによって生活できている場合(実際に家族等の援助や福祉サービスを受けていなくても、その必要がある状態の場合も含む)は、それらの支援の状況(または必要性)を踏まえて、2級の可能性を検討する
(4)就労状況
具体的な例
  • 就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型若しくはB型)及び障害者雇用制度による就労、就労移行支援については、1級または2級の可能性を検討する
  • 障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労している場合は、2級の可能性を検討する。

さて、ここまでうつ病の認定基準についてご紹介してきました。
ここからは実際に障害年金をもらうためにどうすればいいのか、ポイントをご紹介します。

 


3 審査で重視される2つの書類

障害年金は書類審査です。審査官と一度も面談することなく提出した書類の内容ですべてが決まってしまいます。

どんなに症状が重くても、日常生活に支障が出ていても、提出した書類でそれが伝わらなければ不支給になってしまうこともありえるのです。

ここからは、障害年金の申請で特に重要な2つの書類とその記載のポイントをご説明します。

 

3-1 診断書

障害年金を申請するにあたって、一番重要なのは医師に作成してもらう診断書です。

でご説明したように障害年金では、傷病によって「このくらいの障害の程度であれば〇級相当」と基準が定められており、等級判定ガイドラインでは診断書の記載事項を元に等級の目安が定められています。

そのため、障害年金はほとんど診断書の内容で決まるといっても過言ではありません。
だからこそ、診断書にどれだけ詳細に病状、日常生活の状況や就労の状況等を書いてもらえるかが重要なのです。

診断書(PDF)

 

診断書作成のポイント
(1)受診前に日常生活状況についてまとめておく

の認定基準でご説明したとおり、うつ病の等級判定においては日常生活能力の程度が重視されています。

しかし、日常生活の状況について医師と十分に話ができている方は少ないのではないでしょうか。限られた診察時間内で症状のすべてを伝えることは困難です。医師に十分に伝わっていないために診断書の内容が実際の症状とそぐわないものになり、結果的に不支給になってしまうこともありえるのです。

もちろん実際の症状よりも重く書いてもらうことはできませんしするべきではありませんが、どんな症状があって日常生活や仕事にどんな影響が出ているかを伝え、症状に応じた診断書を書いてもらうことが重要なのです。

医師に症状を十分に伝えるために、事前にどんな症状がどのくらいの頻度であるのかや、日常生活のどんな部分に支障があるか、どんなことに困っているのか等をまとめてから受診することをおすすめします。

 

3-2 病歴・就労状況等申立書

診断書と並んで重要な書類が、病歴・就労状況等申立書です。

病歴・就労状況等申立書とは、発症から現在までの日常生活状況や就労状況を記載するもので、診断書のように医師に書いてもらうものではなく障害年金の請求者が自分で作成するものです。

どう書いていいのかわからない、何を書けばいいのかわからないと簡単に書いてしまう方もいますが、病歴・就労状況等申立書は日常生活にどのような支障がでているか、どんなことに困っているかを自分で伝えることができる唯一の書類です。

診断書では伝えきれない日常生活状況を伝えることのできる重要な書類なので、ポイントをおさえてしっかり記載することが重要です。

病歴・就労状況等申立書(PDF)
病歴・就労状況等申立書(続紙)(PDF)

 

病歴・就労状況等申立書作成のポイント
(1)初診日から現在までの状況を3~5年に分けて記載する

病歴・就労状況等申立書には病気のために初めて病院を受診した日から現在までの日常生活状況や就労状況を記載する必要があり、記載要領では3~5年に分けて記載するように求められています。

覚えていないからといって10年、20年をまとめて書いてしまうと年金機構から書き直しを求められることがあるので、必ず3~5年の期間に区切って作成しましょう。

(2)具体的に記載する

うつ病の場合は、症状が軽減したり再発したりを長期にわたって繰り返すことも少なくありません。

一時的に症状が良くなったように思えても、その後症状が悪化することがあるため、うつ病の等級認定では発病からの症状の経過が重視されています。

また、3-1で診断書に日常生活状況や就労状況について詳細に書かれていることが重要とご説明しましたが、どれだけ医師が協力的でも診断書の限られた枠内に記入できることには限りがあります。日常生活状況や就労状況を一番よくわかっているのは請求者本人やそのご家族です。

自分の症状、どんなことに困っているのか、支障を感じているのかをしっかり伝えるためにも、病歴・就労状況申立書が重要になります。

病歴・就労状況等申立書には客観的かつ具体的に記入しましょう。自分がどう感じたかではなく実際にどんなことがあったかを具体的に記入するように注意しましょう。とは言っても実際にどんなことを書けばいいのかわからない方も多いと思いますので、病歴・就労状況等申立書に記載するべき事項を一部例示します。

病歴・就労状況等申立書の記載事項

  • 周囲の人(家族や友人等)との関係(人間関係でトラブルになることはなかったか等)
  • 日常生活でできなかったことや困っていたこと
  • どのような症状がどのくらいの頻度であるか
  • 自殺未遂や自傷行為の有無やその頻度
  • 家族や周囲の人からの援助の有無やその内容
  • 仕事をしている場合はその内容や周囲の人から受けている援助の内容、どのような支障が出ているか
  • 入院やグループホームやデイケア利用歴やその際の様子
  • その他障害に関する印象的なエピソード    等
(3)診断書との整合性に注意する

障害年金の審査においては医師の作成した診断書と請求者の作成する病歴・就労状況等申立書の整合性が重視されます。

例えば、診断書ではできないと書かれているのに、病歴・就労状況申立書ではできると書かれている場合、病歴・就労状況等申立書の内容が足を引っ張って、適切な等級に認定されないこともありえるのです。

申請書類を提出する前に医師の作成した診断書と病歴・就労状況等申立書を見比べて、記載内容や症状の程度に矛盾がないかを確認してください。

 


4 仕事をしていても受給できる?

実際に障害年金申請の代理業務を行う中で「仕事をしていても障害年金を受給可能か?」との問い合わせを多くいただきます。年金機構は単に仕事をしているという事実のみで支給対象外とすることはないと明言しています。

しかし、実際には仕事ができている(仕事ができる程度に症状が軽い)として不支給になった、あるいは不利な等級で認定されたのではないかと思われる事例が多くあることも残念ながら事実です。特に精神疾患の方は就労の可否が認定に強く反映される傾向があります。

2章であげた等級判定ガイドラインでは等級判定の際に考慮すべき事項として、就労状況が含まれています。就労している場合、重要になるのは職場でどのような援助を受けているか、仕事にどのような支障が生じているか、職場での対人関係等の点です。

単に就労をしているというだけで支給されないことはありませんが、適切に認定されるためには、診断書や病歴・就労状況申立書で就労状況について詳細に記載されていることが重要です。

 


5 初診日はいつになるの?

うつ病で障害年金を申請する際に問題になることが多いのが、初診日です。

初診日とは、簡単に言えば、「病気のために初めて病院を受診した日」のことです。障害年金を申請する際には、必ずこの初診日を明らかにする必要があります。

うつ病で障害年金を申請する際に、この初診日が問題になることがたびたびあります。それは、障害年金における初診日とはが必ずしも「うつ病」と診断された日ではないためです。

障害年金における初診日とは、「請求傷病と因果関係のある傷病で初めて受診した日」のことをさします。

初診日とは・・・?

障害年金において初診日として扱われる日には以下のようなものがあります。

○現在かかっている医師または歯科医師にはじめて診療を受けた場合
 →治療行為または療養に関する指示があった日

○同一の傷病で転医があった場合
 →一番初めに医師または歯科医師の診療を受けた日

○傷病名が特定されておらず、対象傷病と異なる傷病名であっても同一傷病と判断される場合
 →一番初めの傷病名の初診日

○障害の原因となった傷病の前に相当因果関係があると認められる傷病がある場合
 →最初の傷病の初診日

ここからは、うつ病の初診日として扱われることの多いケースをご紹介します。

 

5-1 うつ病と診断されるより前に別の精神疾患や神経症と診断された場合

うつ病の方の中には、不眠や気分の落ち込みなどの症状をきっかけに病院を受診された方も多いのではないでしょうか。なかには、なかなかうつ病と診断されず別の傷病の診断を受けていた方もいらっしゃるのではないかと思います。

こういったケースの場合、最初に診断された傷病とうつ病は因果関係があるとして、最初に診断された傷病のために病院を受診した日が初診日として扱われることがほとんどです。

うつ病の初診として扱われることの多い傷病として代表的なものを一部ご紹介します。
(例)不安神経症、神経症、社会不安症、パニック障害、適応障害 等

 

5-2 発達障害や知的障害とうつ病が併発した場合

発達障害や知的障害と診断された方が、後になってうつ病と診断されるケースも少なくありません。

一見、別の傷病で関係がないように思えますが、実は障害年金においては発達障害や知的障害とうつ病も因果関係のある傷病として扱われます。
これは、発達障害や知的障害が原因でうつ病を発症したと考えられるためです。

そのため、発達障害や知的障害と診断されている方がうつ病で障害年金を申請する場合、発達障害や知的障害で初めて病院を受診した日が障害年金における初診日になります。

 


6 まとめ

今回は、障害年金におけるうつ病の認定基準や審査の際に考慮される事項をご説明し、審査において重視される書類として

(1)診断書
(2)病歴・就労状況等申立書

をあげ、それぞれの書類を作成する際のポイントをご説明しました。

障害年金は1級に認定されれば少なくとも年間97万4125円、2級に認定されれば少なくとも年間77万9300円、3級に認定されれば少なくとも年間58万4500円が支給されます。障害年金があるかないかで生活は大違いです。しっかりポイントを抑えた申請をして障害年金を受給しましょう。

 

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