年金の未納があっても障害年金がもらえる場合があります!

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障害年金は年金保険料に未納期間があると受け取れない、と聞いたことはありませんか?
一般的な保険が、保険料を納めていなければもらえないのと同じように、障害年金も年金保険料を納めていなければ受給できませんので、受給するには条件(納付要件)を必ず満たしている必要があります。

基本的に年金事務所で納付要件を確認してもらい、申請できないと言われてしまった場合、くつがえすことは非常に難しいです。

今回はいまいちど納付要件を確認したい!納得がいかない!という方に対して、納付要件を詳しくご説明していきます。

 

1 障害年金の納付要件とは

障害年金の納付要件、きちんと理解できていますか?

障害年金の納付要件とは、「初診日までの一定期間、年金保険料を納めていること」を指します。次の「3分の2要件」か「直近1年要件」のうちどちらか1つでも満たしていれば、納付要件を満たします。

2つの納付要件の確認方法を、例を挙げて説明しますので確認してみましょう。

 

1-1 3分の2以上納付しているか

3分の2以上納付しているか

3分の2要件は初診日の属する月の前々月までに納めた納付すべき期間のうち、3分の2以上の期間、年金保険料を納付していることが条件です。

用語が少し難しいですが、たとえば初診日が3月15日だとしたら、3月の前々月、つまり1月までに納めた年金保険料が審査の対象になります。

納付済み+免除期間が保険者期間のうち3分の2以上

このとき免除期間も納付済みと同じように扱われますが、「初診日の前日までに免除申請しているか」が重要なポイントです。

初診日をすぎてから免除申請をした期間は、「初診日の前日の時点では未納だった」とみなされます。

 

1-2 直近1年要件

直近1年要件

直近1年要件は「初診日の前日の時点で65歳に達していないこと」を前提として、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納が全くないことが条件です。

初診日の前日の時点で65歳になっていた人は、3分の2要件でのみ審査されます。

こちらも用語をかみくだいて説明しますと、たとえば初診日が3月15日だとしたら、3月の前々月、つまり1月までの直近1年間に年金保険料の未納がまったくないことが条件です。

初診日の属する月の前々月から1年間の間にまったく未納が無い

初診日がある月の前々月までの直近1年間の間、すべて免除申請をおこなっていた場合もこの要件を満たしますが、

  1. 免除の申請を初診日の前日までにおこなっていたこと
  2. 一部免除の場合は、支払う必要がある金額を初診日の前日までに支払っていること

が条件です。

 

1-3 初診日後に後納しても納付要件は満たさない

上記でも少しふれましたが、初診日を過ぎてから年金保険料を後払いしても、納付要件は満たしません。納付要件は、初診日の前日の時点でどのくらい年金を納めているかによって審査されるからです。

初診日の前日の時点で未納になっている期間は、後払いをしても、納付要件を見るうえでは未納のままですので、後払いをしても納付要件は満たしません。

後払いしても納付要件は満たしません

年金保険料は通常2年(免除期間については10年)さかのぼって後払いできます。これは65歳以降に受給できる老齢年金の金額を少しでも増やすための制度で、そういった面では後払いをすることでメリットがあるのですが、障害年金の納付要件を確認する際は注意しなければならないポイントです。

 

2 未納があっても障害年金を受け取れるケース

お問い合わせ頂いた際、
「年金の未納があると障害年金は受け取れないのでしょうか?」
「過去、年金を払っていませんでしたが、今は払っているので受け取れますか?」
といったご質問をいただくことがありますが、実際には【初診日の前日の時点でどのくらい年金を納めているのか】が重要であることを、ここまででご理解頂けましたでしょうか?

ただし、未納があっても場合によっては障害年金が受けられることがあります。
次の章では未納があっても障害年金を受け取れるケースをご紹介します。

 

2-1 免除申請している期間は納付済みとみなされる

1章でもお伝えしましたが、たとえ年金を払っていなくても、初診日の前日までに免除申請をした期間は未納とみなされません。

免除申請をした日は、年金事務所のお客様相談室で照会してもらうことができます。

 

生活保護を受けていた期間は自動的に免除申請済みになる

生活保護を受けていた期間の年金保険料は、自動的に免除期間となります。

経済的な事情で保険料の免除申請をしたことがある方や、生活保護を受けていた期間がある方は、免除期間があるはずなので年金事務所で確認してもらいましょう。

 

2-2 正しい初診日で確認を!

突然ですが、納付要件をご確認いただいた日は本当に正しい初診日でしょうか?

初診日とは、「障害年金を申請する病気やケガによって初めて病院を受診した日」のことを指します。

したがって、「障害年金を申請する病名が初めてついた日」であったり、「今かかっている病院を初めて受診した日」は初診日ではありません。

例えば、「ストレスや精神的な症状で2年前に心療内科にかかっていた。その後1年だけ体調が回復したので病院には行かなくなったが、1年経って症状が悪化して精神科にかかった。」という場合は、2年前に行った心療内科に初診日があると考えられます。

その他、障害年金を申請する病名と因果関係が認められる病名を、以前に診断されたことがある場合は、初診日が前にずれますので下記で確認してください。

申請傷病名と初診日

 

初診日が20歳前にあるケース

初診日が20歳以前にある場合、納付要件は問われませんので、年金保険料が未納でも受け取れます。(そのかわり、360万円以上の所得がある場合、障害年金の支給額に制限がつきます)

初診日はその症状、またはその症状の原因となるもののため初めて病院を受診した日のことを指します。
20歳前に、請求する症状に関係する病気などで病院を受診していないか、いまいちど確認しましょう。

 

任意加入期間に初診日がある場合は特別障害給付金が受け取れる

昔は主婦や学生は年金制度に加入してもしなくてもよかった。だから加入していなかったのに、納付要件を満たさないと言われた。という方はこのケースに該当するかもしれません。

実際に下記の期間に任意加入制度がもうけられており、この期間に国民年金制度に加入していなかったことで障害年金が受け取れない方については、「特別障害給付金」が受給できます。

  • 平成3年3月以前に国民年金任意加入対象であった学生
  • 昭和61年3月以前に国民年金任意加入対象であった、厚生年金等加入者の配偶者

特別障害給付金は任意加入期間がもうけられていたために、年金制度に加入していなかった方への救済措置です。ただし非常に難しい請求方法ですので、障害年金専門の弁護士や社会保険労務士に請求方法について相談したほうがよいケースです。

詳しくはこちらの年金機構のサイトでもご確認ください。

 

初診日が平成3年4月30日までにあるケース

また、以前の年金法では納付要件の見方が現在と違います。ご自身の初診日に対応する納付要件を確認するようにしてください。

なお、昭和61年3月31日までに初診日がある場合、納付要件が数年ごとに異なりますので年金事務所窓口や、障害年金専門の弁護士、社会保険労務士に納付要件を確認してもらいましょう。

昭和61年3月31日までに初診日がある場合

 

2-3 社会的治癒を検討する

社会的治癒とは、「治療をおこなう必要がなくなって、社会的に復帰している」ことをさします。

例えば学生の頃に初診日があったが、その後症状が良くなって治療を受けておらず仕事や日常生活にも全く影響のない期間が続き、その後症状が再燃した場合などに、社会的治癒を主張できる可能性があります。

このとき学生の頃の病気が、社会復帰後に「治癒」していたことが認められれば、再燃した病気は「別傷病」とされるので、初診日を「再燃した際に初めて病院を受診した日」として後ろにずらすことができます。

なお平成23年の社会保険審査会決議では、
“「社会的治癒と認められるためには、相当の期間にわたって、当該傷病につき医療(予防的医療を除く)を行う必要がなくなり、その間に通常の勤務に服していることが必要とされる」”

と「社会的治癒」を認めていますが、この「相当の期間」や「通常の勤務」に関する明確な基準はなく、「医療を行う必要がなかったこと」をどのように証明するのかも不明瞭なため、認められるのは大変稀なケースです。

1回目の申請では認められず、審査請求、再審査請求に進むことが多いので、早めに障害年金を専門とした弁護士や社会保険労務士に相談しましょう。(医師や年金事務所や市役所の職員でも知らないことが多いようです。)

 

3 障害年金以外の福祉制度

一般的な保険と同じように、障害年金も、保険料(年金)を納めなければ保険金(年金)は受給できません。納付要件を満たしておらず、障害年金が受給できないのであれば、他の制度を利用して生計を立てましょう。

障害年金以外にも、障害をお持ちの方向けに多くの福祉制度があります。多くの制度は窓口が各自治体になるので、市町村役所へ問い合わせましょう。

 

3-1 医療費に関する制度

(1)高額療養費制度

医療機関で支払った医療費が、国の定める上限額(月々)を超えた場合に、超えた分の金額を支給してもらえる制度です。上限額は年齢や所得に応じて定められています。

問い合わせ先:加入している健康保険組合(国民健康保険の場合は自治体役所の健康保険課)

 

(2)心身障がい者医療費助成制度

障害のある方が健康保険を利用して通院した際に、自己負担分の医療費を助成する制度です。各自治体で運営されている制度で、対象者や助成内容は自治体によって異なります。

障害者手帳を持っている方が対象になっていることが多く、申請にも障害者手帳が必要です。

問い合せ先:お住まいの自治体役所の福祉課

 

(3)難病医療費助成制度

国が定める330の特定疾患の障害者を対象に、医療費の減額を受けることができる制度です。
自治体によっては国が定める傷病とは別に、独自に助成対象の傷病をもうけていることがあります。

指定難病名一覧表(厚生労働省作成資料)(PDF)

問い合せ先:お住まいの自治体役所の福祉課

 

(4)自立支援医療

精神障害者の通院治療や身体障害者が手術を受けることによって確実に障害が除去・軽減される治療を対象に、医療費の自己負担額が軽減される制度です。

問い合せ先:お住まいの自治体役所の福祉課

 

(5)無料定額診療事業制度

低所得者などに医療機関が無料または低額な料金によって診療を行う事業です。
厚生労働省は「低所得者」「要保護者」「ホームレス」「DV被害者」などの生計困難者を対象としています。
生活が改善するまでの一時的な処置としての制度であり、自己負担額については個々人の状況によって変化します。

問い合せ先:お住まいの自治体役所の福祉課

医療費についてはこちらの記事(障害年金 医療費)でも詳しくご紹介しておりますので、参考にして下さい。

 

(6)医療費控除

1年間に多額の医療費を払った時に、税務署に確定申告を行うことによって、いったん支払った税金が還付(返金)される制度です。

医療費のほか、通院交通費や入院時の部屋代・食事代、医療器具の購入費、介護保険の在宅療養費、治療目的でのマッサージ施術費も控除の対象です。

問い合せ先:お住まいの自治体にある税務署

 

3-2 介護に関する制度

(1)公的介護保険制度

40歳以上の方全員が介護保険加入者となり運営している公的制度です。利用者は40歳以上の方限定です。

40歳から64歳の方が、市区町村が定める「介護保険の対象になる特定疾病(※)」が原因で要支援・要介護認定を受けると、介護サービス(在宅、施設、地域密着型サービス)を1割または2割負担で利用できます。

(※)特定疾病はこちらの厚生労働省のHPで確認できます。

問い合せ先:お住まいの自治体役所の介護保険課

 

(2)精神障害者居宅生活支援事業

精神疾患をお持ちの方が以下のような生活援助を受けられる、公的支援事業です。

【ホームヘルプサービス】

ホームヘルパーが訪問して、掃除、調理などの家事援助や通院の付き添いなどをおこないます。精神障害者手帳をお持ちの方が対象ですが、所得に応じて利用料が必要です。

【ショートステイ】

精神障害者の介護をおこなっている方が病気などの場合に、一時的に精神障害者をあずかってもらえる制度です。原則として7日以内であれば利用できます。

【グループホーム】

精神障害者が地域で共同生活を営むことを支援する制度です。食事の世話、日常生活における相談、指導などの援助をおこなうことで、自立生活を支援してもらえます。ただし一定程度の自活能力がある方が対象です。

問い合せ先:お住まいの自治体役所の保健福祉課

 

3-3 生計に関する制度

(1)生活困窮者自立支援制度

平成27年4月から実施されている制度です。各自治体が役場に相談窓口をもうけており、住宅確保給付金の支給や、就労訓練、家計収支の改善や家計管理能力の向上を目指した支援などをおこないます。

制度の紹介:(厚生労働省HP

お問い合わせ先:お住まいの自治体役所の生活福祉課、生活保護課

 

(2)生活保護

生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護をおこない、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的とされている制度です。

生活保護以外のあらゆる制度で給付を受けた上で、預貯金、資産(住宅や車、土地)がない状態で初めて申請できる制度です。支給される保護費は地域や世帯の状況によって異なります。

お問い合わせ先:お住まいの自治体役所の福祉事務所、市区町村役場の生活保護課

 

 

4 まとめ

いかがでしたでしょうか。
納付要件を満たしていないと言われてしまうと非常に「厳しい」と感じてしまう方もいらっしゃると思いますが、一方で、「国民全員が納める義務を負うが、経済的理由により納められない方は、申し出によって免除します」という一面も持っています。

一般的な保険と同じように、年金制度も、保険料(年金)を納めなければ保険金(年金)は受給できません。

障害年金を受給できない場合は、生活保護などを受けることによって生計を立てることができますので、お住まいの市区町村役場でご相談ください。

 

患者団体や病院の方へ

患者団体や病院の方、あるいは報道機関から、この記事を利用したいとのお問い合わせをいただくことがあります。
障害年金の制度を患者の方にお伝えいただく目的で使用いただくのであれば、無償で利用していただいて結構です。
ただし、以下のルールを必ず守っていただきますようにお願いいたします。

 

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  • 咲くやこの花法律事務所の記事であることは使用の際に明示をお願いいたします。
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  • 患者団体または病院関係者、報道機関以外の方の使用は禁じます。

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  • この記事の監修者
  • 西川 暢春
  • 西川 暢春

    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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