障害年金の子の加算についてわかりやすく解説

障害年金の子の加算について
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障害年金には請求者に子供がいるとプラスして受け取れる加算があるってご存知ですか?

今回は、そんな障害年金の子の加算の制度についてわかりやすく解説します。

 

1.障害年金の子の加算とは?

障害年金には、受給者に18歳未満の子(もしくは障害のある20歳未満の子)がいると、通常の年金に加えて支払われる年金があります。これを障害年金の子の加算といいます。

子の加算は障害年金2級以上に認定されていれば、障害厚生年金、障害基礎年金のどちらの受給者であっても支給されます。

ちなみに、18歳未満の子だけでなく配偶者がいる場合には、「配偶者加算」を受け取ることができますが、配偶者加算は子の加算と異なり、障害厚生年金の受給者のみに支払われるもので、残念ながら障害基礎年金の受給者には支給されません。

 

▶参考:障害年金の配偶者加算の制度については、以下の参考記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

障害年金の配偶者加算についてわかりやすく解説

 

それでは、障害年金の子の加算について詳しくご説明していきます。

 

(1)どんな人が対象になるの?

子の加算を受けるためには一定の条件があります。以下の条件をすべて満たした場合に子の加算がつきます。

 

  • 1.障害年金1級又は2級の受給権者であること
  • 2.生計同一関係があること
  • 3.加算対象の子が18歳未満であること(障害のある子は20歳未満であること)
  • 4.加算対象の子の年収が850万円未満(または所得が655.5万円未満)であること

     

    ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

     

    1.障害年金1級又は2級の受給権者であること

    子の加算は障害等級が1級若しくは2級の方にしか支給されません。

    障害厚生年金では年金を受け取ることができる等級が障害の程度によって1~3級まで決められていますが、3級に認定された方は残念ながら子の加算を受けることはできません。

     

    2.生計同一関係があること

    加算の対象になるのは、受給権者と同じ家計で生活している子です。これを生計同一関係と言います。

    具体的に言えば、下記に当てはまる場合は生計同一関係があると認定されます。

     

    ▶︎参考情報:生計同一に関する認定要件

    ア 住民票上同一世帯に属しているとき
    イ 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
    ウ 住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき

    (ア)現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
    (イ)単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき

    (ア)生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
    (イ)定期的に音信、訪問が行われていること

    ・参照元:厚生労働省「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて(国民年金法)」

     

    必ずしも同居している必要はなく、離れて暮らしていても、仕送りをしていたり、扶養に入っている等の事実があれば生計同一関係であると認定されます。

     

    3.加算対象の子が18歳未満であること(障害のある子は20歳未満であること)

    子の加算の対象になるのは18歳未満の子です。18歳になった年の年度末(3月31日)を過ぎた時点で加算の対象から外れてしまいます。

    また、障害のある子については20歳まで子の加算を受けることができます。ただし、障害があるすべての子が20歳まで加算の対象となるわけではなく、年金機構の定める障害の程度を満たしている必要があります。(年金機構の定める1級又は2級に該当する程度の障害)

     

    4.子の年収が850万円未満(または所得が655.5万円未満)であること

    加算の対象になるのは、年収が850万円未満若しくは所得が655.5万円未満の子です。一定の年収を超えると加算の対象から外れてしまいます。

     

    ▶︎参考:所得とは?

    所得とは収入額からその収入を得るためにかかった必要経費と障害者控除等の諸控除を除いたものです。市町村役場で発行される所得証明書等で確認することができます。

     

     

    (2)いくら支給されるの?

    子の加算の額は下記の表のとおりです。

     

    ▶︎参考情報:障害年金の子の加算額

    加算対象の子の人数 加算の額
    1人目・2人目まで 年間22万4900円(1人あたり)
    3人目以降 年間22万4900円(1人あたり)

     

    (3)どんな書類が必要なの?

    子の加算を受けるために必要な書類は、これから障害年金を申請する場合か既に障害年金を受給している方に子が生まれた場合によって異なります。

     

    1.これから障害年金を請求する場合

    これから障害年金を請求する方が子の加算を受けるためには、以下の書類が必要です。

     

    • (1)戸籍謄本(請求者と子の続柄の確認のため)
    • (2)世帯全員の住民票(請求者との生計同一関係を確認するため)
    • (3)在学証明書、学生証の写し、健康保険証の写し(健康保険等の被扶養者の場合)等(子の収入の確認のため)
      ※義務教育年齢以下の子については収入証明資料を提出する必要はありません。
    • (4)医師又は歯科医の作成した子の障害の程度を示す診断書(子の障害の程度の確認のため)
      ※障害のある子のみ提出します。

     

    書類が準備できたら年金請求書や診断書などの障害年金申請書類とあわせて年金事務所へ提出します。障害の程度が1級又は2級に認定された場合は、障害年金とあわせて子の加算を受けることができます。

     

    2.遡及請求の場合は要注意

    遡及請求をすると最大過去5年までの障害年金をさかのぼって請求できます。障害年金だけでなく、それにつく加算もさかのぼって請求が可能です。ただし、さかのぼって加算をうけるためには障害認定日当時の生計同一関係や収入に関する証明資料を提出する必要があります。

    例えば、5年さかのぼって請求する場合、現在21歳で障害認定日当時16歳の子がいるとすると、現在は加算の対象から外れていますが、障害認定日当時は加算対象です。障害認定日当時に学生であったことを証明する在籍証明書や扶養に入っていたことが証明できる書類、また、現在は住民票を分けているのであれば、住民票の除票などが必要になります。

     

    ▶参考:障害年金の遡及請求については、以下の参考記事でも詳しく解説していますので参考にご覧ください。

    障害年金の遡及請求とは?成功するための3つの重要ポイント

     

    3.障害年金受給中に子が生まれた場合

    すでに障害年金1級または2級の受給者に子が生まれた場合(または養子縁組をした場合)、申請をすれば子の加算を受けることができます。

    申請には以下の書類が必要です。

     

    • (1)障害給付加算額・加給年金額加算開始事由該当届
    • (2)戸籍謄本
    • (3)世帯全員の住民票

     

    ▶︎参考情報:障害給付加算額・加給年金額加算開始事由該当届の書式については以下をご参照ください。

    「障害給付加算額・加給年金額加算開始事由該当届」(pdf)はこちら

     

    書類が準備できたら最寄りの年金事務所へ提出しましょう。

     

    ※以前は、障害年金の受給権発生時点で生まれていた子のみが加算の対象となっており、受給権発生後に出生した子については加算の対象外となっていました。しかし平成23年4月に法改正があり、現在は受給権発生後に生まれた子についても加算を受けることができるようになっています。

     

    2.子の加算が支給停止になるケース

    ここからは障害年金が支給停止になるケースをご紹介します。

     

    (1)子が加算の条件を満たさなくなったとき

    子の加算の条件に該当しなくなれば当然、支給停止になってしまいます。具体的には下記の事由に該当した場合は、子の加算が支給停止になります。

     

    • 加算対象の子が亡くなったとき
    • 加算対象の子が結婚したとき
    • 加算対象の子の年収が850万円を超えたとき
    • 受給権者の配偶者以外の者の養子になったとき
    • 離縁により受給権者の子でなくなったとき(養子の場合)
    • 加算対象の子の障害状態が回復したとき(18歳到達日以後の最初の3月31日以降)
    • 18歳に達した年の年度末を過ぎたとき(障害のある子は20歳になったとき)

     

    上記のうち、「18歳に達した年の年度末を過ぎたとき(障害のある子は20歳になったとき)」以外の事由が生じた場合は、以下の届出が必要になります。

     

    ▶︎参考情報:加算額・加給年金額対象者不該当届の書式については以下をご参照ください。

    「加算額・加給年金額対象者不該当届」(pdf)はこちら

     

    加算の支給事由に該当するにも関わらず手続きをしなかった場合、受け取りすぎた加算分の年金を返金する必要が生じます。なるべく早く手続きをしましょう。

    「18歳に達した年の年度末を過ぎたとき(障害のある子は20歳になったとき)」については18歳に達した年の年度末を過ぎると自動的に加算が停止になるため、手続きは必要ありません。

     

    (2)障害の等級が3級になったとき

    障害年金では一部の方を除いて、数年に1度、診断書の提出が義務付けられています。提出された診断書を元に障害の程度の見直しが行われ、症状が改善していることが確認された場合は、等級が下がることもあります。

    (1)どんな人が対象になるの?」でもご説明しましたが、子の加算は障害年金の1級又は2級でなければ受け取ることができません。

    もし、2級の障害年金を受け取っていた方が、障害の程度の見直しによって等級が下がってしまった場合、残念ながら子の加算も支給停止になってしまいます。

     

    3.子の加算と児童扶養手当の関係は?

    ここからは、子の加算に関して多くの方が疑問に思う児童扶養手当との関係について解説します。

    結論から言えば、障害年金の子の加算と児童扶養手当をどちらも満額受け取ることはできません。どちらの支給要件も満たしている場合、子の加算が優先して支給され、児童扶養手当の方が高い場合はその差額が支給されます。

     

    ▶︎参考:児童扶養手当とは?

    児童扶養手当とは、一人親家庭や父又は母が障害状態にある家庭を対象に市町村から支給される手当です。

     

    児童扶養手当は以下のいずれかの要件に該当する子を養育する者(父母以外でも可)に支給されます。(ただし所得による支給制限あり)

     

    ▶︎参考情報:児童扶養手当の要件

    対象児童 ・18歳に到達して最初の年度末(3月31日)までの子
    ・障害の状態にある場合は20歳未満の子
    支給要件 ・父母が離婚し1人親家庭である(母子家庭、父子家庭)
    ・父又は母が亡くなっている
    ・父又は母が一定の障害状態にある
    ・父又は母の生死が不明である
    ・父又は母から1年以上遺棄されている
    ・父又は母が1年以上拘禁されている
    ・母が未婚のまま子を産んだとき
    ・父母ともに不明である(孤児)

     

    児童扶養手当は「1人親家庭」に支給されるものとイメージしている方が多いと思いますが、実際には1人親家庭だけでなく様々な事情がある家庭に支給されるものであり、両親のどちらかが障害の状態にある家庭にも支給されます。

    厳密に言えば、障害の状態にある親の配偶者(例えば、母が障害の状態にある場合、その配偶者である父)に児童扶養手当が支給されます。

    以前は、子の加算と児童扶養手当を同時に受給することはできず、両方の受給権がある場合はいずれかを選択しなければいけませんでした。しかし、平成26年12月の法改正により、現在は子の加算と児童扶養手当を比べて児童扶養手当のほうが高い場合は、その差額の児童扶養手当を受け取ることができるようになりました。

     

    ▶︎参考:子の加算と児童扶養手当の図

    子の加算と児童扶養手当の図

     

    1人親家庭の場合は、子の加算も児童扶養手当も受け取る人が同一です。この場合も、子の加算が優先して支給され、児童扶養手当の方が高い場合はその差額を受け取ることができます。

    紛らわしいですが、子がいる家庭に支給される「児童手当」とは異なる制度です。また、児童手当の場合は障害年金との支給調整はなく、どちらも受け取ることができます。

     

    (1)別居、別世帯でも受け取れる?

    次に、子の加算に関して別居、別世帯でも受け取れるかについて解説します。

    答えはイエスです。別居、別世帯でも児童扶養手当を受け取ることができます。

    2.生計同一関係があること」でご説明しましたが、加算の対象になるのは「生計同一関係」がある子です。この生計同一関係については必ずしも同居していることや同一世帯であることを必要としません。実際に同じ生計で生活している事実があれば子の加算の対象になります。

    例えば、進学のために離れて暮らしていたり、離婚をして元配偶者が扶養している子であっても加算の対象になりうるのです。ただし、生計同一関係の証明のためにいくつかの書類を提出する必要があります。

     

    1.住民票上同一世帯の場合

    • 世帯全員の住民票

     

    2.別世帯になっているが、住所は同じ場合

    • それぞれの住民票
    • 生計同一関係に関する申立書

     

    ▶︎参考情報:別世帯になっているが、住所は同じ場合の申立書記入例は以下をご覧ください。

    「生計同一関係に関する申立書(別世帯)記入例」(pdf)はこちら

     

    3.住民票上の住所が異なっているが、実際は一緒に住んでいる場合

    • それぞれの住民票
    • 生計同一関係に関する申立書
    • 第三者の証明書または表1の書類

     

    ▶︎参考情報:住民票上の住所が異なっているが、実際は一緒に住んでいる場合の申立書記入例は以下をご覧ください。

    「生計同一関係に関する申立書(住所が違う)記入例」(pdf)はこちら

     

    4.別居しているが、経済援助や定期的な面会等がある場合

    • それぞれの住民票
    • 生計同一関係に関する申立書
    • 第三者の証明書または表1の書類

     

    ▶︎参考情報:別居しているが、経済援助や定期的な面会等がある場合の申立書の記入例は以下をご覧ください。

    「生計同一関係に関する申立書(別居)記入例」(pdf)はこちら

     

    【表1】

    • 健康保険被保険者証等の写し(健康保険の被扶養者になっている場合)
    • 給与簿又は賃金台帳等の写し(扶養手当等の対象になっている場合)
    • 源泉徴収票又は課税台帳の写し(扶養親族になっていることが確認できる場合)
    • 預金通帳、振込明細書又は現金書留封筒等の写し(定期的に送金がある場合)
    • その他、扶養関係や経済的な援助があることが確認できる書類

     

    書類の内容を元に審査が行われます。審査の結果、生計同一関係が認定され、「(1)どんな人が対象になるの?」であげたその他の条件を満たしている場合は子の加算を受けることができます。

     

    4.まとめ

    今回は障害年金につく子の加算についてご紹介しました。

    まず子の加算を受けるために下記の4つの条件があることをご説明しました。

     

    • (1)障害年金1級又は2級の受給権者であること
    • (2)生計同一関係があること
    • (3)加算対象の子が18歳未満であること(障害のある子は20歳未満であること)
    • (4)加算対象の子の年収が850万円未満(または所得が655.5万円未満)であること

     

    その後、申請に必要な書類や支給停止になるケースをご紹介し、児童扶養手当との関係などよくある疑問にお答えしました。

    子の加算がつくかつかないかで生活は大違いです。別居、別世帯だからといって加算をあきらめる必要はありません。しっかり書類を準備して子の加算を受けましょう!

     

    記事更新日:2023年3月11日

     

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    • この記事の監修者
    • 西川 暢春
    • 西川 暢春

      弁護士法人
      咲くやこの花法律事務所
    • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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