障害年金の認定医制度についてわからず悩んでいませんか?
障害年金の申請をした後にどのように審査され、判断されるのか、気になると思います。
今回は、障害年金の審査、判断に大きくかかわる認定医制度について解説します。
読んでいただければ、きっと、障害年金の申請や審査についての不安を解消していただけるはずです。
それでは見ていきましょう。
目次
1 障害年金の認定医とは?
障害年金の認定医とは、日本年金機構からの依頼を受けて、障害年金の審査を担当する医師をいいます。
現在、すべての障害年金の請求について認定医による審査が行われています。
2 認定医はどんな人か?
認定医は、「精神の障害」、「肢体の障害」、「内部の障害」、「眼や聴覚等の障害」の各分野ごとに経験のある医師が選ばれて就任しています。
日本年金機構に現在の認定医の選考方法について問い合わせたところ、医療関係団体の推薦に基づき、担当障害分野について一定の経歴があり、社会保険制度に理解のある医師を選んでいるとの回答でした。
2016年4月1日時点での認定医の年齢については以下の通り公表されています。
障害基礎年金 | 障害厚生年金 | |
年齢 | 年齢 | 年齢 |
最年少の障害認定医 | 33歳 | 46歳 |
最年長の障害認定医 | 85歳 | 82歳 |
平均年齢 | 61.6歳 | 63.3歳 |
これから見ると若い認定医もいますが、平均年齢は60歳を超えており、ベテランの医師が認定医に就任しているケースが多いといえるでしょう。
【注】障害厚生年金、障害基礎年金とは?
障害年金には主に障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。
初診日(障害の原因となった病気やけがで最初に通院した日)にあなたがどの年金制度に加入していたかによって、あなたが2種類のうちどちらを請求するべきかが、以下のように決まります。
あなたが初診日に国民年金に加入していた場合…障害基礎年金の請求ができます。
あなたが初診日に厚生年金に加入していた場合…障害厚生年金の請求ができます。
2016年4月1日時点での認定医の人数は、237名と公表されています。
一方、毎年の障害年金の新規請求件数はおよそ11万件ですので、認定医1人あたりの裁定請求の件数は約400から500と推計されます。
このようにかなりの件数の審査を少ない認定医の人数でこなしていることがうかがえます。
そこで、認定医の多忙も考慮して、障害年金の申請にあたっては、障害の認定に関係のない記載はできる限りなくして、わかりやすく自分の障害の程度を伝えることが重要です。
3 認定医による審査の内容
では実際に認定にはどのように障害年金の審査を行っているのでしょうか?以下で見ていきましょう。
3-1 認定医は認定基準に基づいて審査を行う
障害年金の制度では、病気や障害ごとの認定基準が公表されています。
あなたが障害年金の申請をすると、この認定基準をもとに認定医が審査を行います。
具体的には、あなたの障害の程度が、認定基準に照らして障害年金の受給が認められる程度に達しているかを審査し、障害等級を決定します。
審査の間違いをできる限り防ぐため、1人の請求について1人の認定医が審査するのではなく、複数の認定医が審査を行うことになっています。
3-2 「診断書」と「病歴・就労状況等申立書」の2つが特に重要!
認定医による審査はすべて書面で行われ、あなたが認定医にあって症状を伝えたり、口頭であなたの意見を伝える機会はありません。
障害年金の申請において提出しなければならない書類は多岐にわたりますが、特に重要になるのは、主治医に作成してもらう「診断書」と、請求者自身が作成する「病歴・就労状況等申立書」の2つです。
認定医による審査でもこの2つが主な審査対象になりますので次の章でご説明していきたいと思います。
4 認定医による「診断書」の審査内容
まず重要となるのが「診断書」です。ポイントとなる点は、障害の内容ごとに異なりますので、障害の内容ごとにご説明していきたいと思います。
4-1 精神疾患は日常生活や仕事への支障の程度が審査される
精神疾患で申請する場合、「病気によりどの程度日常生活や仕事に支障が生じているか」が、認定医による主な審査の対象になります。
診断書裏面の「2 日常生活能力の判定」の項目、「3 日常生活能力の程度」の項目が特に重要です。
(参考)精神の障害の診断書書式
例えば、診断書裏面の「2 日常生活能力の判定」の項目の中に、「適切な食事ができているか」とか「身辺の清潔保持ができているか」とか「金銭管理や買い物が可能か」などの記載項目があります。
このような記載項目から「病気によりどの程度日常生活や仕事に支障が生じているか」が審査され、年金がもらえるかどうかの判断に直結します。
しかし、これらの項目は医学的な内容というよりはあなたの日常生活に関することであり、主治医も必ずしも十分把握しているとは限りません。
そこで、主治医に診断書の作成を依頼する前に、自分でこれらの項目をチェックしてみてそのメモを主治医に渡して参考にしてもらうのがよいでしょう。
また、診断書ができあがった後は、必ず、自分の状況が診断書に正確に記載されているかチェックし、もし間違っている場合は修正してもらうことが必要です。
精神疾患の診断書の注意点についてのより詳しい解説は以下をご覧ください。
‣統合失調症の障害年金申請のポイント
‣うつ病の障害年金申請のポイント
4-2 身体障害は動作への支障の程度が審査される
次に身体障害で障害年金を申請する場合、「障害によりどの程度日常動作に支障が生じているか」が、認定医による審査の重要なポイントです。
診断書裏面の「⑱ 日常生活における動作の障害の程度」や「⑲ 補助用具使用状況」の項目が特に重要です。
(参考)肢体の障害の診断書書式
例えば、診断書裏面の「⑱ 日常生活における動作の障害の程度」の項目の中に、「つまむ動作ができるか」、「ズボンの着脱ができるか」などの項目がありますが、これらの項目の記載が審査され、年金がもらえるかどうかの判断に直結します。
ただし、これらの項目は医学的な内容というよりはあなたの日常生活に関することであり、主治医も必ずしも十分把握しているとは限りません。
そこで、主治医に診断書の作成を依頼する前に、自分でこれらの項目をチェックしてみてそのメモを主治医に渡して参考にしてもらうのがよいでしょう。
また、診断書ができあがった後も必ず、自分の状況が正確に記載されているかチェックし、もし間違っている場合は修正してもらうことが必要です。
身体障害の診断書の注意点についてのより詳しい解説は以下をご覧ください。
‣身体障害の障害年金申請のポイント
‣リウマチの障害年金申請のポイント
4-3 内臓や目、聴覚の障害は検査数値が重要な審査対象
内臓疾患や目や聴覚の障害の場合は、診断書に記入してもらう検査数値が認定医による審査の重要なポイントになります。
必要なすべての検査数値が記載されているかをよく確認しましょう。
また、内臓疾患については、診断書表面の「一般状態区分表」の記載も重要です。
アからオの選択肢のうち自分の症状にあうものが正しく選択されているか注意して確認してください。
診断書表面の「一般状態区分表」の記載欄の画像
内臓疾患や目、聴覚の診断書の注意点についてのより詳しい解説は以下をご覧ください。
‣人工透析の障害年金申請のポイント
‣がんの障害年金申請のポイント
‣視力障害の障害年金申請のポイント
‣聴覚の障害年金申請のポイント
5 認定医による「病歴・就労状況等申立書」の審査内容
認定医の審査で重要になるもう1つの書類が、「病歴・就労状況等申立書」です。この書類は、請求者本人が自分の病歴や仕事の状況を記載して作成するものです。
(参考)病歴・就労状況等申立書の書式
以下で認定医による「病歴・就労状況等申立書」の審査のポイントを見ていきましょう。
5-1 診断書の内容との矛盾がないか審査される
「病歴・就労状況等申立書」の表面には、発病から現在までの病状や日常生活への支障の程度について、3年から5年ごとに期間を区切って記載します。
また、裏面には、「日常生活状況」の欄があり、「着替え」や「トイレ」、「食事」といった項目について、それぞれどの程度支障があるかを記載する内容になっています。
これらの項目については、認定医が請求者の病状をよく理解するために審査が行われるのと同時に、主治医が作成した診断書との矛盾がないかも審査されます。
審査の結果、「診断書」と「病歴・就労状況等申立書」に矛盾が発見された場合、不明点や矛盾点を年金機構から主治医に確認をしたり、請求者に確認されることがあります。
診断書の記載と「病歴・就労状況等申立書」が矛盾していると判断される可能性のあるケースの例
例えば、身体障害で障害年金を申請する場合に、診断書では、「上衣の着脱」について「非常に不自由」と記載されているのに、「病歴・就労状況等申立書」には「着替え」について「自発的にできるが援助が必要である」に〇をつけている場合など
このように診断書との矛盾がないかが審査されるため、「病歴・就労状況等申立書」は自分の病状を詳しく書くことと同時に、主治医が書いた「診断書」と矛盾しないように書くということが重要です。
5-2 就労状況も審査される
「病歴・就労状況等申立書」の裏面には、「就労状況」に関する記載欄もあり、就労状況に関する記載も認定による審査では重要なポイントとなります。
特に精神疾患で障害年金を申請する場合や、心臓疾患、肝臓疾患、肺疾患などの病気で障害年金を申請する場合、仕事をしてしていることを理由に障害の程度が軽いとみられてしまうことがあります。
そのため、仕事をしている場合でも、仕事や通勤について会社に配慮してもらってはじめて仕事ができているという場合は、「病歴・就労状況等申立書」にその内容を詳しく記載することが重要です。
また、職場で障害や病気が原因でトラブルになったり仕事に支障が出たりすることがある場合は、その点も詳しく記載しましょう。
一方、身体障害や目や聴覚の障害で障害年金を申請する場合は、仕事をしているかどうかは、認定医による審査であまり重要視はされていません。
6 【補足】診断書を書いてもらう医師に指定はない
最後に補足としてご説明しておきたい点があります。
障害年金の申請を検討しておられる方の中には、障害年金の申請に必要な診断書を、「認定医」に書いてもらわなければならないと誤解しておられるケースがあります。
しかし、障害年金の診断書は主治医に書いてもらえばよく、「認定医」に書いてもらうわけではありません。
「障害者手帳」の申請では、「指定医」に診断書を書いてもらうことが必要なケースが多いですが、障害年金の場合は、診断書を書いてもらう医師の指定はありません。
あなたの病気や障害の内容を一番よく知っている主治医に診断書を書いてもらいましょう。
ただし、うつ病や統合失調症については、心療内科や精神科の医師に診断書を記載してもらわなければならないことが決められています(内科などの先生はだめです)。
しかし、それでも医師の指定があるわけではなく、心療内科や精神科の医師ならどなたに書いてもらってもかまいません。
なお、主治医によっては、診断書を書いてもらうことを依頼したときに、「あなたは障害年金をもらえそうだ」とか「あなたの症状ではもらえない」とかおっしゃる方もおられます。
しかし、それはあくまでその医師の予測に過ぎず、診断書を書く医師が、あなたが障害年金をもらえるかどうかを最終的に決定するわけではありません。
主治医が「あなたの症状ではもらえない」と言っていたとしても、正しい方法で申請すれば障害年金を受給できたケースもあります。
障害年金の受給の可否についての主治医の意見はあくまで一つの目安としてとらえておいていただくのがよいでしょう。
7 まとめ
今回は、障害年金の認定医制度や認定医による審査内容についてご説明しました。
認定医による審査のポイントをおさえたうえで、診断書や病歴・就労状況等申立書でポイントをふまえた対応をしていくことが重要です。
また、補足としてご説明した、障害年金では診断書を記載してもらう医師の指定はなく、主治医に診断書を記載してもらえば問題ないということもおさえておいてください。
障害年金について申請をお考えの方は、一度、無料相談が可能な機関に相談して見られることをおすすめします。
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