障害年金の申請準備をはじめられる多くの方が、最初に受診状況等証明書の取付けをおこなわれるのではないでしょうか。たしかに取り付けることができれば、申請準備の第一関門を越えられるようなものです。
ただし、実は取り付けに非常に苦労するケースが少なくありません。
今回は受診状況等証明書の取り付け方から、内容の確認の仕方、さらには受診状況等証明書を取り付けられなかったときにどうしたら問題を解決できるか、ポイントを絞ってご説明していきます。
この記事をお読みいただき、受診状況等証明書にまつわる疑問を解決して、請求準備を進めていきましょう。
1 受診状況等証明書とは
「受診状況等証明書(PDF)」は、障害年金請求の中で1番重要な「初診日」を証明するための書類です。
この書類は医療機関に初診時の記録が残っていれば、病院で作成してもらうことができます。まれに主治医がいないと断られる場合があるようですが、医療機関が発行するものなので、主治医以外の医師でも作成することは可能です。
受診状況等証明書が取得できない場合、申請した書類が返却されてしまったり、「初診日」が認められず不支給になってしまうので注意しましょう。
1-1 初診日とは
初診日とは、「障害の原因となった傷病につき、はじめて医師または歯科医師の診療を受けた日」のことを指します。たとえば脳梗塞の後遺症の症状で障害年金を請求する場合は、脳梗塞によって初めて医師の診察を受けた日が初診日になります。
その他、因果関係が認められて同一傷病と扱われるケースは以下の通りです。
左の傷病で障害年金を申請する場合、右の傷病で初めて医師の診察を受けた日が初診日になります。
傷 病 名 | 左の疾患について、初診日になる傷病 |
糖尿病性網膜症 | 糖尿病 |
糖尿病性腎症 | |
糖尿病性壊疽、糖尿病性神経障害、 糖尿病性動脈閉鎖症、糖尿病性壊死 |
|
糸球体腎炎(ネフローゼ含む) | 慢性腎不全 |
多発性のう胞腎 | |
慢性腎炎 | |
肝硬変 | 肝炎 |
聴覚障害(化学療法の副作用) | 結核 |
肝炎(手術などによる輸血) | 輸血の必要な手術 |
大腿骨頭無腐性壊死(ステロイド投薬による) | ステロイド投薬が必要な傷病 |
事故による傷病が原因の精神障害 | 事故による傷病 |
脳血管の傷病が原因の精神障害 | 脳血管の傷病 |
呼吸不全(肺疾患の手術のうち) | 肺疾患 |
転移性悪性新生物 | はじめてなった部分にかかるがん |
1-2 初診日を証明しなければならない3つの理由
障害年金を受給するためには初診日を証明する必要がありますが、なぜ初診日を証明しなければならないのでしょうか?
以下の3つの理由のために初診日を特定する必要があります。順に確認していきましょう。
初診日に加入していた年金制度ごとに、支給される年金が異なるため。
初診日に国民年金に加入していた方、厚生年金を払っている配偶者の扶養に入っていた方、初診日時点で20歳未満だった方は障害基礎年金を受給することができます。
一方で初診日に厚生年金に加入していた方(共済年金加入者含む)は、障害厚生年金を受給することができます。
このように、障害年金は初診日に加入していた制度によって受給できる年金の種類が異なるため、どちらを受給できるのか確認するために、初診日を特定する必要があります。
初診日の前々月までの保険料の納付要件を確認するため。
障害年金の2つの受給条件のうち、「初診日のある月の前々月まで、一定期間保険料を納めているか」について調べるために、初診日を特定する必要があります。
この日をある程度特定できなければ、納付要件を確認する際の基準日が不明となってしまうので、納付要件が確認できず、障害年金を受給することができません。
初診日として認められる条件は非常に厳格ですので、できる限り【何年の何月】といった日付を特定する必要があります。
【障害年金の納付要件】
以下の2つのうち、どちらか1つを満たしていれば、障害年金の受給資格があります。
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること(原則)
または
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(特例)
障害認定日を確認するため。
障害年金を障害認定日(初診日から1年6ヶ月経った日)の症状のみで請求する方や、現在から障害認定日までさかのぼって請求する方にとってはこちらも重要です。
初診日が特定できなければ、障害認定日も特定することができません。そのため初診日を特定する必要があります。
2 受診状況等証明書作成の4つのポイント
費用は大体3,000円~5,000円程度ですが、病院によって異なりますので、事前に詳しく聞いておきたい場合はまず病院へ問い合わせてください。
なお、生活保護を受けている場合も、診断書や証明書は自己負担となります。
受給できた場合、必要経費として後で役所に請求してかかった費用を貰うことができる場合もあるので、これもあなたがお住まいの市町村役場で確認しましょう。
受診状況等証明書に使用期限は有りません。
2-1 ケガや症状で初めて受診した病院で作成してもらう
受診状況等証明書は、初診日のある病院で作成してもらう書類です。
初診日は病気やケガのために初めて病院を受診した日です。
誤診だったり、現在とは違う病名だったとしても、障害年金を申請するケガや病気の症状で初めて受診した病院で書いてもらいましょう。
2-2 初診年月日が書かれているか
記入いただいたものを受け取られたら、一番初めに確認して頂きたいのは受診状況等証明書の「(6)初診年月日」です。ここが空欄ですと提出しても意味がありませんので必ず記入してもらいましょう。
2-3 前院に関する記載はないか
「(5)発病から初診までの経過」の欄に、前に受診した病院に関する記載がないか確認してください。
以前他の病院に受診していた、といった記載があれば、その病院で改めて受診状況等証明書を書いてもらわなければならないので注意しましょう。
特に初診日がずっと昔にあると、記憶違いで実は別の病院が初診病院だったということが多くみられます。
また前医からの紹介状があった場合は、必ず紹介状のコピーをだしてもらい、受診状況等証明書と一緒に年金事務所へ提出して下さい。
2-4 傷病名が診断書と違っていても問題ない
取り付けた診断書と見比べた時に「(2)傷病名」が異なっていても問題ありません。あくまでも初診当時の傷病名となるので、あわてないようにしましょう。審査も問題なく行われます。
3 受診状況等証明書を書いてもらえなかった場合の初診日証明の方法
初診日がある病院のカルテがなく、受診状況等証明書を書いてもらうことができなかったとしても、資料を集めることができれば、初診日を証明することができます。
順を追ってご説明します。
3-1 受診状況等証明書が添付できない申立書を作成する
初診日がある病院で受診状況等証明書を取り付けることができませんでした、という申立てをするための書類を、「受診状況等証明書が添付できない申立書」と言います。
これは請求者自身が作成する書類です。
→受診状況等証明書が添付できない申立書(PDF)
3-2 初診日がある病院を受診したことがわかる参考資料を探す
受診状況等証明書を添付できない申立書を1枚提出しただけでは、年金機構に初診日を認めてもらうことはできません。
病院や学校などが発行した資料をもって、「この期間頃に」「この病院を受診した」ことを客観的に証明する必要があります。
初診日のある病院の名前と初診日頃の日付の記載がある、以下のような資料を探して、提出しましょう。
なにも見つからない
- 身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者手帳の申請時の診断書
- 母子健康手帳
- お薬手帳、糖尿病手帳、病院の領収書、診察券の写し
- 小学校、中学校の健康診断の記録や成績通知表
- 盲学校、ろう学校の在学証明、卒業証書
- 交通事故証明書、労災の事故証明書
- インフォームドコンセントによる医療情報サマリー
- 次に受診した病院のカルテの記録(氏名・日付・傷病名・診療科が確認できるもの)
- 初診日当時加入していた健康保険組合の診療報酬明細書
- 第三者証明 など
第三者証明とは
請求者が申し立てる初診日について、第三者が証言したことを資料として提出することができます。
この書類の正式名称は「初診日に関する第三者からの申立書」ですが、一般的に【第三者証明】と呼ばれています。
第三者証明を書くことができる人は、以下の2つのうちいずれかに該当する方です。
1.初診日頃に請求者が病院を受診していた事実を直接見たり、その当時聞いていたりしていた(*)請求者の3親等(本人またはその配偶者から見て、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、曾祖父母、曾孫、叔父叔母、姪甥)以外の親族や、隣人、友人、民生委員など。2名以上。
2.初診日頃に請求者を直接診た医師、看護師、その他医療従事者。1名でも可能。
(*)の例をご紹介します。
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第三者証明作成のポイント
「請求者が初診日頃に〇〇病院を受診していたことを知っている」と申し立てる書類ですので、初診日頃の症状を知っているだけ、病院を受診してたことを知っているだけでは通りません。
第三者証明の協力者を探すときは、初診日頃に初診日のある病院を受診していたことを知っている人を探してください。
また、申し立てるには当時の請求者の事情を知っていなければならないので、直近およそ5年以内に当時のことを聞いた、といった内容は第三者証明として申し立てることはできません。
第三者証明に協力してくれる人が見つかったら、書類を渡して書いてもらいましょう。書き方にコツがありますので、下記の記入例を一緒に渡して依頼することをおススメします。
‣初診日に関する第三者からの申立書(第三者証明)(PDF)
‣初診日に関する第三者からの申立書(第三者証明)(記入例)
3-4 初診病院のあとに受診した病院で受診状況等証明書を書いてもらう
受診状況等証明書は必ず必要な書類です。
初診日のある病院で書いてもらえなかった場合は、その次に受診した病院、その病院でも書いてもらえなかった場合は、更に次の病院へ依頼する、というように、順をおって記入を依頼していきましょう。
いままでに受診したいずれの病院にも書いてもらえなかった場合は、診断書の作成を依頼する病院に受診状況等証明書の作成を依頼しましょう。
4 初診日証明に困ったら
手元に参考資料は残っていない。第三者証明も取れそうにない…とお困りの方は、障害年金専門の弁護士や社会保険労務士に相談しましょう。
依頼者のために必要な書類を集めることに長けており、実際に弁護士や社労士に依頼したことで受給可能になった人はたくさんいらっしゃいます。中には裁判で国に初診日を認めさせたケースも出てきています。
障害年金に関する無料相談を行っている事務所も増えていますので、あきらめずにまずは相談しましょう。
5 まとめ
今回は障害年金請求において重要な「受診状況等証明書」についてご説明しました。
受診状況等証明書を初診日のある病院で取り付けられなかったとしても、今回ご説明した手順を踏んで、障害年金を受給できた方は弊事務所の依頼者に多くいらっしゃいます。
あきらめずに申請の準備をすすめていきましょう。
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