糖尿病の症状で障害年金はもらえる?重要な3つのポイントを解説

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20歳から65歳までの現役世代も、病気やケガが原因で日常生活や仕事に支障が出ている場合は年金を受け取ることができます。

この年金は「障害年金」といい、「糖尿病」も対象疾患で、症状が障害年金の認定基準などの条件に該当すれば障害年金を受け取ることができます。

今回の記事では、糖尿病の認定基準や診断書作成時に注意して頂きたいポイントをご説明していきます。

 

1 糖尿病でも条件をクリアしていれば障害年金を受けられる!

糖尿病は障害年金の認定対象です。年金機構の認定基準には、糖尿病は原則、「障害厚生年金3級」に認定するとされています。

この「障害厚生年金」とは、糖尿病の症状で初めて病院を受診した日(初診日)に厚生年金に加入していた方に支給される年金です。

初診日に国民年金に加入していたり、20歳より前に初診日がある方には「障害基礎年金」が支給されますが、こちらには3級がないので、症状が認定基準よりも重くないと受給するのは難しいでしょう。

障害年金とは?

病気やケガなどによって日常生活や仕事に支障が出ている方が受給できる年金です。

申請は20歳から65歳になる前々日までに行う必要があります。

日本年金機構が認定し、支給している国の制度で、年金の納付要件や障害の程度などの受給できる条件を満たしていれば、受給することができます。

 

障害年金の等級は1~3級ですが、初診日(病気のために初めて病院に行った日)に加入していた制度によって該当する等級が違います。

 

  • 初診日に国民年金に加入していた、または20歳前に初診日がある場合(障害基礎年金):1級もしくは2級
  • 初診日に厚生年金に加入していた場合(障害厚生年金):1級、2級、3級、もしくは障害手当金

(共済年金は現在、厚生年金と一元化されています)

厚生年金に加入している配偶者の扶養に入っている方(ご自身で年金を納めておられない方)は、国民年金加入者です。(第三号被保険者(年金機構PDF)、という扱いになります。)

 

 

2 障害年金を受けるための2つの条件

障害年金は、(1)障害の程度が認定基準に該当すること、(2)初診日まで一定以上の年金を納めていたことの2つの条件を両方とも満たさなければ受給できません。以下で順にご説明します。

 

2-1 症状が年金機構の認定基準に該当すること

1つ目の条件は、障害の程度が認定基準に該当するかどうかです。糖尿病単体での申請では原則障害厚生年金3級に該当すると決められています。

数値や症状の程度が重い場合(下記の一般状態区分表でエやオに該当する状態)は2級または1級に該当する可能性があります。

(*)具体的には、以下の1~3のすべてに該当する状態であれば、障害厚生年金3級に該当します。

 

1.90日以上インスリン注射をおこなっている方

 

2.次のいずれかに該当すること
(ア) 内因性のインスリン分泌が枯渇している状態で、
                 空腹時または随時の血清Cペプチド値が0.3ng/mL未満

(イ) 意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が
                 平均して月1回以上あるもの

(ウ) インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスまたは
                 高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上あるもの

 

3.一般状態区分表のイまたはウに該当すること

一般状態区分表とは、以下の表を指します。

日常生活の制限の程度についての表で、診断書作成医が該当する区分を選択します。

区 分 一   般   状   態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要な事もあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 

糖尿病性の目や腎臓の病気は認定基準が違う

血糖値の上昇によって目や腎臓に合併症が起きている場合は、症状の出ている場所に関する診断書で請求します。

たとえば、糖尿病性網膜症の場合は、眼の障害に関する認定基準によって認定されます。診断書もそれぞれ認定基準にあったものが必要です。

その他、以下の合併症の場合は認定基準が異なります。

運動障害を生じている糖尿病性壊疽(えそ) 肢体の障害に関する認定基準
激痛、著しい知覚の障害、
重度の自律神経症状がある糖尿病性神経障害
肢体の障害に関する認定基準
糖尿病性腎症(人工透析など) 腎疾患(ネフローゼ症候群等)に関する認定基準

 

2-2 初診日まで一定以上の年金を納めていたこと

糖尿病の症状で初めて病院を受診した日、または糖尿病であると初めて医師から告げられた日を「初診日」と言います。

この初診日までに一定以上の年金保険料を納めていることが2つ目の条件です。(一般的には年金の納付要件と言います。)

具体的には(1)もしくは(2)に該当しなければ条件を満たしていることが必要です。自分が条件を満たしているか分からない場合は、お近くの年金事務所に問い合わせましょう。

初診日の時に、国民年金、厚生年金、共済年金に加入していた方で、

(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること(原則)

または

(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(特例)

初診日の時点で20歳未満だった方は納付要件は問われません。ただし年間所得が360万4000円以上であると、支給額に制限がかかりますのでご注意ください。詳しくはこちらの記事をあわせてご覧ください。

 

 

3 糖尿病で障害年金を受給するための3つの重要書類

ここまで、障害年金が申請できる条件についてご説明してきました。

続いては障害年金の申請準備にあたって、重要な書類の取り付け方や作成の方法についてご説明していきます。

 

3-1 受診状況等証明書

受診状況等証明書」とは、糖尿病の症状で初めて病院を受診した日(初診日)を証明するための書類です。

障害年金の受給資格や納付状況を確認するために、かならず初診日を証明しなければなりません

初診日に受診していた病院で作成を依頼しましょう。(診断書を書いてもらう病院が初診病院である場合は必要ありません。)

 

しかしながら糖尿病は進行がゆるやかで、初診日が30年以上前にあることも少なくありません。

病院でのカルテの保管期間は5年ですので破棄されていたり、病院が廃院になっていて受診状況等証明書がとれないことがあります。

このような場合は、病院の診察券や糖尿病手帳、生命保険等の給付申請時の診断書などの資料で初診日を証明できる場合があります。

初診日証明について、詳しくは「障害年金の申請に必須!初診日証明の方法と書類の確認ポイントを解説」を参考にして下さい。

 

3-2 診断書

糖尿病による障害用の診断書を主治医に書いてもらいましょう。

初診日から1年6ヶ月経った日の時点で認定基準に該当する場合は、障害年金をさかのぼって請求できる可能性があるので、診断書は「初診日から1年6ヶ月経った日から3か月の間のどこかの症状」のものと「現在の症状」の2通必要です。

医師から診断書を受け取ったら、必ず以下の点を確認してください。

  1. (11)一般状態区分表、(14)糖尿病、(16)現症時の日常生活活動能力及び労働能力、(17)予後に空欄はないか。
  2. (16)現症時の日常生活活動能力及び労働能力と(11)一般状態区分表に矛盾はないか。
  3. (9)にインスリン治療をいつからおこなっているか、詳しい日付の明記はあるか。

上記について必要な記載がないと審査が行えず、審査期間が3か月以上かかったり、場合によっては認定基準に該当しないとして不支給になってしまいます。

必ず自身で確認し、不備がある場合は医師に加筆・修正を依頼しましょう。

 

3-3 病歴・就労状況等申立書

病歴・就労状況等申立書」とは、発病したときから現在までの経過を3~5年に区切って申告するための書類です。

受診状況等証明書や診断書と違い、請求者が作成する書類です。いままでの病状や日常生活、就労状況について請求者が直接申告できる唯一の書類ですので、下記をご参考にして頂き、具体的に記入してください。

受診していた期間について ・どのくらいの期間、どのくらいの頻度で受診したか
・入院した期間やどんな治療をして、改善したかどうか
・医師から言われていたこと
(塩分を控えるように言われた、適度に運動するように言われた等)
・日常生活状況
(具体的にどんな症状があって、どう困っていたか。例:多尿でトイレに何度も立つ必要があった等)
・就労状況
(週に何日、1日何時間働いているか。仕事中や仕事後に体調に変化があれば記入する。病気のために生じている仕事の制限や職場での配慮があれば記入する。例:週に5日、18時間勤務。食事をとると血糖値が上昇するので午後に休憩を1時間おきでとっている。等)
受診していなかった期間について ・受診していなかった理由
(自覚症状がなかった、経済的に行けなかった等)
・自覚症状の程度
(いつどんな症状がどの程度あったか。例:仕事の後にだるさを感じることが多かったが睡眠をとると回復した等)
・日常生活状況
(普段通りではなかったことがあれば記入する)
・就労状況
(病気によって仕事に支障がでていたか等を記入する)

 

4 まとめ

今回の記事では、糖尿病で障害年金を申請する際に確認して頂きたい、認定基準と年金保険料の納付状況についてご説明し、その上で重要な3つの書類についてご説明いたしました。

ご存知の通り、糖尿病は症状がゆっくり進行していく病気です。

そのため症状が日常生活や仕事に支障がでるようになったころに障害年金を申請しようとしても、初診日が証明できず、結局認定してもらえなかった、といったことが非常に多く見られます。

 

もしあなたの症状が、現時点で障害年金の認定基準に該当しなかったとしても、初めて病院で糖尿病と診断された日がわかる診療報酬明細書(レセプト)や領収書などを保管しておくことをお勧めします。

 

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  • この記事の監修者
  • 西川 暢春
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    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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