大動脈瘤・大動脈解離で障害年金をもらえる2つのケースとポイント

大動脈解離に苦しむ女性
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大動脈瘤や大動脈解離を発症したとき、多くの場合は人工血管やステントグラフトの挿入手術を受けることになります。

発症をきっかけに以前のように働くことができなくなったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんなとき障害者の生活を支えてくれる制度のひとつに障害年金があります。

障害年金が受給できた場合、最低でも年間58万4500円が支給されます。障害年金があるかないかで生活は大違いです。

しかし、障害年金は申請すればすべての方に支給されるものではありません。障害年金を受給するためには、日本年金機構の定める一定の条件を満たしている必要があります。

今回は大動脈解離の障害年金の認定基準や申請する際のポイントをご説明します。

この記事を読めば、ご自身が障害年金を受給できるかどうかおおよその目安がわかるはずです。

 

1 初診日に厚生年金に加入していることがポイント

障害年金では、初診日に加入していた年金制度によって、受給できる年金の種類が決まっています。

初診日とは「病気のために初めて病院を受診した日」のことです。

初診日に厚生年金に加入していた場合には障害厚生年金、国民年金に加入していた場合には障害基礎年金の対象になります。

障害厚生年金では1級から3級のいずれかに該当した場合、障害基礎年金では1級または2級のどちらかに該当した場合に障害年金が支給されます。

また、障害年金では、それぞれの傷病について「このくらいの障害の程度であれば〇級相当」と基準が設けられています。これを障害年金の認定基準と言います。

認定基準では大動脈解離には3級についての規定しかありません。つまり、よほど症状が重い場合や合併症や後遺症がない限りは3級以上に認定される可能性はほぼありません。

初診日に厚生年金に加入していた場合は3級でも障害年金を受給することができますが、それに対して、初診日に国民年金に加入していた場合は3級では障害年金が支給されません。

そのため、大動脈解離で障害年金を受給するためには、初診日に厚生年金に加入していたことがひとつの大きなポイントになります。

 

2 大動脈瘤・大動脈解離で障害年金を受給できる2つのケース

認定基準によれば、大動脈解離で障害年金を受給できるのは主に2つのケースがあります。

 

2-1 人工血管を挿入していて労働に支障が生じているケース

1つは人工血管またはステントグラフトの挿入置換を受けており、労働に支障が生じているケースです。

大動脈瘤・大動脈解離を発症した場合、多くの方は「人工血管の挿入置換」または「ステントグラフトの挿入置換」手術を受けることになります。

人工血管の挿入は大動脈瘤・大動脈解離の障害年金の認定の大きなポイントになりますが、ただ単に人工血管を挿入しているだけでは障害年金を受給することはできません。

もうひとつのポイントが「労働に支障が生じる程度の症状であること」です。
人工血管の挿入置換手術を受けることで、日常生活や労働に全く支障なく、発症前と変わらない生活を送ることができる方もいらっしゃいます。

全くの無症状で、日常生活や労働に全く支障が出ていない場合は、障害年金の認定基準には当てはまらず障害年金を受給することはできません。

心疾患の診断書では、日常生活や労働への支障の程度を5つの段階に分けて示した「一般状態区分」という項目があります。

障害年金を受給するためには、以下の区分のうち少なくとも「イ」「ウ」のいずれかに該当する必要があります。

区分 一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起きているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 

2-2 難治性の高血圧を合併しているケース

2つめは、大動脈瘤・大動脈解離に難治性の高血圧を合併しているケースです。

大動脈瘤や大動脈解離はほとんどの場合、元々高血圧症を患っている方が発症する病気です。そのため、一度、治ったとしても高血圧を合併している場合は再発のリスクは大幅に高くなります。

そのため、適切な治療を行っても改善しない難治性の高血圧を合併しているケースも障害年金の対象となります。

難治性の高血圧の定義は下記の通りです。

難治性高血圧とは…

塩分制限などの生活習慣の改善を行った上で、適切な3薬以上の降圧薬を適切な用量で継続して服薬しても、収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90nnHg以上のもの

 

3 診断書を依頼する際の注意点

障害年金を申請するためには医師の作成した診断書を提出する必要があります。診断書は障害年金の申請にあたって一番重要な書類です。

障害年金は書類審査であり、審査官と一度も面談することなく提出した書類の内容ですべてが決まってしまいます。

どんなに症状が重くても、日常生活に支障が出ていても、提出した書類でそれが伝わらなければ不支給になってしまうこともありえるのです。

どんなに症状が出ていても、そのことが診断書の記載されていなければ、ないものとして扱われてしまいます。お医者さんに診断書を作成してもらったら、記入漏れがないかしっかり確認してください。

診断書記入ポイント

診断書記入ポイント

 

4 人工血管を挿入したその日から障害年金を請求できる!

障害年金は通常、病気やケガのために初めて病院を受診した日(初診日)から一定期間を経過しなければ、障害年金を請求することができません。

この期間は原則1年6ヶ月と定められており、1年6ヶ月経過した日のことを「障害認定日」と言います。

この障害認定日には一部例外があり、人工血管やステントグラフトもその例外のひとつです。

人工血管やステントグラフトを挿入した場合は、病気のために初めて病院を受診した日から1年6ヶ月が経過していなくも、手術を受けたその日から障害年金を請求することができます。

ただし、手術を受けた日が初診日から1年6ヶ月よりも後だった場合は、1年6ヶ月経った日から障害年金を請求することができます。

人工血管を挿入したその日から障害年金を請求できる

 

6 まとめ

今回は、障害年金における大動脈瘤・大動脈解離の認定基準についてご説明しました。

大動脈瘤や大動脈解離で障害年金を受給することができるのは、主に下記の2つのケースです。

(1)人工血管を挿入していて労働に支障が生じているケース
(2)難治性の高血圧を合併しているケース

大動脈瘤や大動脈解離では原則3級の規定しかありませんが、合併症があったり、手術の後遺症がある場合には、その程度によって更に上の等級に認定される可能性もあります。

この記事が皆さんの障害年金申請のお役に立てば幸いです。

 

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  • 西川 暢春
  • 西川 暢春

    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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