障害年金では、受給者の全体の7割の方に対して数年毎に診断書の提出が義務付けられています。受給者の障害の程度が障害年金の受給に相当するものかを確認するためです。
症状が良くなっている、または悪化していることが確認できた場合は、等級が変更される、もしくは支給停止になることもあります。
今回は、障害年金の更新は「いつ」「どんなふうに」おこなうのかなど、流れにそってご説明していきます。
【注】障害年金の更新制度は2019年5月に制度変更(以下、参照)があり、このページでは制度変更後の内容をもとにご説明しています。
目次
1.障害年金の更新の流れ
障害年金を受給している人のほとんどの方は、定期的に年金機構に診断書を提出する必要があります。これを一般的に「障害年金の更新」といいます。
更新は、受給者の障害の程度が障害年金の受給に相当するものかを確認するために設けられています。症状が良くなっている、又は悪化していることが確認できた場合は、等級が変更されたり、支給停止になることもあります。
更新は3年~5年毎の方が多く、受給者のお誕生日月の3か月前の月末に「障害状態確認届」という診断書が届きます。受給者はこれを医師に作成してもらい、その月の月末に役所や年金機構に提出しなければなりません。
▶参考:「障害状態確認届」について詳しくは、以下の参考記事をご覧ください。
2.あなたの更新時期はいつ?更新時期の確認方法
続いて、更新時期の確認方法についてご説明します。
初めての更新と2回目以降の更新で異なる箇所があるため、以下でそれぞれについて解説します。
(1)初めての更新の方
障害年金を申請した際に届いた年金証書を確認してください。書類の右下に『次回診断書提出年月日』という項目があります。これが初回の更新時期です。(「**年**月」と記載のある方は、更新の手続きが必要ない方です。(永久認定)
(2)2回目以降の更新の方
前回更新した際に、『次回の診断書の提出について(お知らせ)』というはがきが届いているはずです。このはがきに記載されています。
もし「年金機構から届いた書類を無くしてしまって更新時期がわからない」という場合は、ねんきんダイヤルか、お近くの年金事務所へ電話をして確認してみましょう。
3.診断書が届いたらすぐに作成を依頼する
更新の診断書は、必ず更新月の末までに指定の場所に到着するように提出する必要があります。
医師が診断書を作成するための期間も考えると、年金機構から更新の診断書が届いたら、すぐ医師に診断書の作成を依頼しなければなりません。
しかし、医師に現在の症状を正しく記入してもらわないと受給額が変更されたり、支給停止になってしまうことがありますので、診断書の作成はとても重要です。
以下では医師に診断書の記載を依頼する時のポイントをご説明します。
▶参考情報:診断書作成のポイントや更新時の診断書について、それぞれ詳しく解説した参考記事は以下をご参照ください。
(1)診断書の依頼の前にメモ書きを準備する
診断書を依頼する前に、自分の症状を医師に伝えるためのメモ書きを準備しておきましょう。
ただ診断書を主治医に渡すだけでは不十分です。あってはならないことですが、症状が悪化しているにも関わらず前回提出した診断書と内容が変わらず、適正な等級の障害年金を受けられないといったことも実際に起こっています。
現在の症状をきちんと診断書に書いてもらうために、下記についてメモを作成しておき、診断書と一緒に医師や病院窓口に渡してください。
▶︎参考:医師に伝えておくべき現在の状況(なるべく具体的に)
- 現在の日常生活状況、一人でできないこと、困っていること
- 就労状況、仕事中の制限や支援
(「(2)更新時に働いている場合の診断書の注意点」で少し詳しくご説明いたします。)
(2)更新時に働いている場合の診断書の注意点
あなたが精神疾患や「がん」で障害年金を受給している場合、更新の際に働いていると症状が軽く見られてしまい、障害年金が打ち切りになったり、等級が下がったりするケースがあるため、注意が必要です。
診断書の作成を依頼する時は以下に注意してください。
1.仕事上の制限や援助について詳細に書いてもらう
病気やケガが原因で仕事の内容に制限があるとき、援助を受けているときは、必ずそのことを診断書に記載してもらいましょう。
例えば、
- 職場に出勤できても体調が悪くなることが多く、休ませてもらうことがある
- 公共交通機関による通勤が困難なので家族に車で送ってもらっている
といった場合は、その旨を診断書に記入してもらうよう、医師に伝えてください。
2.職場でおこったトラブルについて詳細に書いてもらう
病気やケガが原因で、職場でトラブルがある場合は、その具体的な内容を医師に記載してもらいましょう。
例えば、口頭での指示内容を理解できず、まちがった作業をしてしまって怒られることが多い、パニックになるなどあれば記載してもらうように医師に伝えてください。
3.日常生活での支援を詳しく書いてもらう
仕事以外でも、日常生活での支障について詳しく診断書に記載してもらうことは大変重要です。
例えば、精神疾患の診断書であれば、以下のような内容が例として挙げられます。
▶︎参考:精神疾患の場合の日常生活での支障の例
- 食欲がなく、家族の援助がなければ食事をとれない。
- ちらかっていても掃除や片付けができない、洗濯ができない。
- 金銭管理ができず、お金を使いすぎる。
- 家族以外との会話や交流をしようとしない、できない。
(3)しばらく通院していない場合
最初の申請の時、あるいは前回の更新の時からしばらく通院していないという方もおられると思います。
その場合、何度か通院して症状を見ないと診断書は書けないと医師に言われることもあるので、更新月が近づいてきたら、診断書を依頼する前に診察を受けておくことがお勧めです。
(4)病院が変わった場合
前回診断書を書いてもらった病院から転院したという方もおられると思います。
更新用の診断書の作成を依頼するのは、病院が変わる前の医師でも、現在の主治医でもどちらでもかまいません。
現在の主治医に依頼する場合は、前回年金機構に提出した診断書のコピーがもし手元にあれば、主治医に参考にしてもらうことができるので持参しましょう。
4.診断書を書いてもらったら内容を必ず確認する
医師に診断書を書いてもらったらそのまま年金機構に送られる方が多いようですが、必ずご自身で内容を確認してください。次回の更新時に比較できますので、できればコピーをとるようにしましょう。
必要な個所に空欄がないか、自分の症状の重さや、日常生活での不十分が伝わるように記載されているかどうか確認しましょう。
更新時は自分で症状を伝えられる「病歴・就労状況等申立書」を提出する必要がないので、あなたの症状は診断書でしか伝えられません。
もっと詳しく書いて欲しい、記載内容に間違いや疑問がある場合は、医師に修正を依頼しましょう。
5.診断書の提出先について
更新の診断書の提出先は以下の通りです。
▶︎参考:診断書の提出先
障害基礎年金 | 市区町村役場の国民年金課 |
障害厚生年金 | 日本年金機構 (〒168-8505 東京都杉並区高井戸西3丁目5番24号) |
大事な書類ですので郵送で送る場合は書留やレターパックを使用されることをおすすめします。
(1)提出期限に間に合わない場合は事前に連絡を!
診断書の提出が期限までに間に合わないと、年金の支給が一時的に止められてしまうことがあります。
どうしても提出期限に間に合わない!という場合は、事前に日本年金機構に連絡しておきましょう。診断書の提出が遅れた場合でも1ヶ月程度の遅れであれば、診断書の提出後の次の支給日に、停止していた分が合わせて支給されます。
6.更新の結果が出るのは提出月の約3か月後
更新の結果は、提出月の約3か月後に文書またはハガキで通知されます。
受給中の障害年金は、提出月から3か月後の分までは保障されており、その後の障害年金は、審査結果に応じて変更、または継続されます。
(1)更新前と同じ等級に該当すると認められた場合
更新前と同じ等級に該当すると認められた場合は、「次回の診断書の提出について」というハガキが届きます。
次回の更新の時期が記載されていますのでハガキは保管しておきましょう。
次回の更新の時も、年金機構から診断書の用紙が送られてきます。
(2)審査の結果等級が上がった場合
審査の結果等級が上がった場合、「支給額変更通知書」という書類が届きます。
支給額は診断書を提出した誕生日月の翌月分から変更になります。もしすでに前回の支給額が支払われてしまっている場合は、次の支給日に追加分が支給されます。
また、「次回の診断書の提出について」という書類には次の更新時期が記載されています。必ず保管しておいてください。
(3)以前より軽い等級に認定された場合
審査の結果、以前より軽い等級に認定された場合には「支給額変更通知書」という書類が届きます。
支給額は診断書を提出した支給停止の結果が届いた翌々月から変更になります。もしすでに前回の支給額が支払われてしまっている場合は、次の支給日に既払い分が減額されて支給されます。
審査結果に不服があるときは「審査請求」という手続きで等級を変更した判断について再度審査をしてもらうことが可能です。
また、更新時は障害の程度が軽かったが、結果を待っている間に悪化してしまった場合は、「額改定請求」という手続きにより、上の等級への変更を求めることができます。ただし「額改定請求」をするためには、原則として前回の申請(この場合は更新時)から1年以上が経過していなければなりません。
(4)支給停止になった場合
審査の結果障害の程度が軽くなっていると判断された場合は、「支給停止のお知らせ」が届きます。
この場合、支給停止の結果が届いた月の翌月分から障害年金が支給停止になります。
▶︎参考:支給停止になるのはいつから?
支給停止になる時期について、もう少し具体的に説明します。更新の際の審査には通常3か月かかるので、7月末に診断書を提出した場合、結果が出るのはおよそ10月、11月頃です。
年金は2か月分ずつ、後払いで支払われますので、7月に診断書を提出した方で、10月に支給停止の通知(不支給通知)が届いた場合は12月が最後の支給月になります。
結果通知が11月でも、12月が最終支給月になります。
審査結果が届くまでに支給停止になることはありません。
▶︎例:7月末に診断書を提出した場合
7月末 | 診断書提出 |
8月 | 6・7月分の支給 |
9月 | 奇数月なので支給なし |
10月 | 8・9月分の支給 |
不支給結果の通知 | |
11月 | 奇数月なので支給なし |
12月 | 10月分のみ支給 |
支給停止の結果に不服がある場合は「審査請求」という手続きで、更新を認めなかった判断について再度審査をしてもらうことが可能です。
更新時は軽い等級に該当したけれど、再び症状が悪化してしまったという場合は、再度初めから申請するのではなく、「支給停止事由消滅届」と診断書等を提出することによって、支給の再開を求めることができます。
▶︎参考情報:支給停止事由消滅届について詳しくは、以下の記事で解説しています。あわせてご参照ください。
7.まとめ
今回の記事では、障害年金の更新時の注意点、更新結果が届くまでの流れについてご説明しました。
更新後も障害年金が継続できるかは、提出する診断書の内容で決まります。
診断書が届いてから提出期限まで約3か月と短いですが、不備がないようにこの記事を参考にして下さい。
また、更新の結果が届くまで非常に不安な日々を送られる方もいらっしゃると思いますが、審査期間中は障害年金が突然止まるようなことはありません。結果が届くまでは支給額も変わりませんので、あまり気にせず結果を待つようにしましょう。
記事更新日:2023年6月7日
患者団体や病院の方、あるいは報道機関から、この記事を利用したいとのお問い合わせをいただくことがあります。
障害年金の制度を患者の方にお伝えいただく目的で使用いただくのであれば、無償で利用していただいて結構です。
ただし、以下のルールを必ず守っていただきますようにお願いいたします。
- 記事は修正しないでそのまま使用してください。
- 咲くやこの花法律事務所の記事であることは使用の際に明示をお願いいたします。
- 紙媒体での使用のみとし、記事をインターネット上にアップロードすることは禁じます。
- 患者団体または病院関係者、報道機関以外の方の使用は禁じます。