障害年金の支給が突然止まってしまったら、再開してもらうのはどのような手続きをとればよいのでしょう?
税金対策などの諸事情で障害年金の支給を止めたい時は?
今回の記事では、上記2つの疑問について年金機構の申請書類とともにご説明していきます。
1 障害年金の支給が停止してしまうケース
障害年金の支給が止まってしまう理由はおおまかに以下の4つのケースに分かれます。
4つの理由ともに「支給が止まること」に変わりはありませんが、支給再開の手続きの方法が違います。間違った手続きでは支給は再開されませんのでご注意ください。
- 更新届を出したところ、等級に該当しなかった
- 所得制限がかかっている(20歳前に初診日がある方、特別障害給付金を受けている方のみ)
- 支給が差し止められている
- 損害賠償金を受け取っている
以下で順に再開させる方法などをご説明します。
1-1 更新届が等級に該当しなかった場合
障害年金の更新の際に提出した診断書(以後、更新届と言います)の内容が障害年金の等級に該当しないと、障害年金は支給停止になります。
更新の審査結果が出た月の年金分から支給停止になるので、届け出をだした月から審査結果が出た月の前月分までの年金の支給は保障されます。
結果に不服があるとき
更新届などで支給停止の通知が届いたが、初回申請時の状態より症状が悪化しているなどで支給停止の決定に不服がある場合は、審査請求をすることができます。
審査請求は結果を知った日から3か月以内に年金事務所に申し出なければなりません。
請求者ご自身でおこなうことができますが、結果を覆すためには参考資料などの提出が必要で非常に難解ですので、ぜひ弁護士や社会保険労務士に相談してください。
詳しくは「障害年金の審査請求、不服申し立て!弁護士が教える4つのポイント!」の記事をご参照ください。
【更新届で支給停止になった!支給再開までの停止期間を最小限におさえるポイント】
多少難しい請求方法ではありますが、障害年金の支給停止期間をなるべく最小限に抑える再開方法があります。審査結果を知った日から3か月以内に審査請求をおこない、後追いで支給停止事由消滅届を提出する方法です。
審査請求で支給が再開された場合、更新届で支給停止になった月の分からさかのぼって受け取ることができますが、支給停止事由消滅届は届け出をした月の翌月分からしか受け取ることができません。
審査請求の審査期間は平均6か月もかかる上、「障害年金の審査請求、不服申し立て!」の記事でもご説明しておりますが、審査請求で結果がくつがえる確率は高くありません。
したがって審査請求の結果を待ってから支給停止事由消滅届を提出するのではなく、期限以内に審査請求をおこない、その審査期間中に支給停止事由消滅届を提出すると、支給停止の期間を最小限におさえることができます。
再び障害年金を受けようとするとき
障害年金の支給が3か月以上停止されているときは、「支給停止事由消滅届」を提出しましょう。審査の結果、等級に該当すれば支給が再開されます。詳しくは、「これならできそう!障害年金を支給停止事由消滅届で再開させる方法」の記事をご参照ください。
1-2 所得制限がかかっている場合
本来障害年金には所得の制限はありませんが、20歳前に初診日がある方(20歳前傷病)や、特別障害給付金を受給している方は毎年7月に所得状況届の提出が必要です。
提出した所得額によって、その年の8月分から翌年の7月分までの1年間、障害年金が全額、もしくは一部支給停止になります。
制限がかかる所得額は20歳前傷病、特別障害給付金ともに同額です。下記の表にまとめましたのでご確認ください。
受給者の年間所得 | 360万4000円未満 | 360万4000円以上 | 462万1000円以上 |
障害年金 | 全額支給 | 1/2支給停止 | 全額支給停止 |
扶養家族がいる方は、この金額に扶養家族1人につき38万円を加えた額が所得制限額になります。
再び障害年金を受けたいとき
所得制限がかかっている間は障害年金を受けることはできませんが、毎年提出が必要な「所得状況届」で所得が減っていることが確認されれば自動的に障害年金の支給が再開されます。
ただし、障害年金の支給が止まっている間に「所得状況届」や「障害状態確認届(更新届)」を提出していなかった場合、支給が再開されないこともありますのでご注意ください。
1-3 支給が差し止められている場合
年金機構は「現況届」などの定期提出(更新)が必要な書類で受給権者の状況を把握しています。これらの書類を期限以内に提出しないと、年金機構が受給者の状況を把握できないため、支給を一時的に差し止めてしまいます。
再び障害年金を受けたいとき
期限を過ぎてしまっていても届出を出せば支給が再開されます。しかし1度差し止めになってから届出を提出した場合、支給再開までに約2か月かかりますのでご注意ください。
届出の用紙を無くしてしまった場合は、「ねんきんダイヤル」に電話をしてもういちど送付してもらうか、お近くの年金事務所や街角の年金相談センターの窓口でお取り付け下さい。
1-4 損害賠償金を受け取っている場合
障害年金を受給するにいたった病気やケガの原因が第三者による行為(交通事故など)で、第三者から損害賠償金が支払われている場合、事故に遭った日から最大で36ヶ月の間、障害年金の支給が停止されます。
すでに障害年金の申請をしていて認定されている場合は、支給停止期間が満了すると自動的に支給が再開されます。特に必要な手続きはありません。
2 障害年金の支給を停止したいときの2つの申し出方法
税金などの関係で障害年金の支給を停止したい場合、障害の状態が「障害年金を受給できる状態か」によって提出する書類が変わります。下記をよくお読みいただき、適正な手続きをおこなって下さい。
2-1 障害年金を受けられる状態の場合
税金などの関係で一時的に支給を停止したい場合は、「老齢・障害・遺族給付支給停止申出書」を年金事務所へ提出しましょう。郵送でも受け付けてもらうことができます。申し出をした月の翌月分から支給停止になります。添付書類は特にありません。
再び障害年金を受けたいとき
「老齢・障害・遺族給付支給停止申出書」で支給を停止したあと、再開するには「老齢・障害・遺族給付支給停止撤回申出書」を年金事務所に提出します。再開申請時は以下の書類を添付しなければなりません。
【添付が必要な書類】
- 提出する日から1ヶ月以内に作成された住民票や戸籍抄本
(マイナンバーカードまたは通知カードの提示で省略することができます。) - 診断書、傷病によってはレントゲン画像や心電図
- 初診日が20歳前にある場合は所得状況届
- 子や配偶者などの加算が受けられる場合は、世帯全員の住民票の写しと戸籍謄本
- 義務教育を終了している18歳に到達する年度までの子がいる場合は、
子の所得証明書や在学証明書、学生証の写し - 配偶者がいる場合は、前年度の所得証明書や課税・非課税証明書
(障害厚生年金を受け取れる方のみ)
2-2 障害年金を受けられる状態ではない場合
病気やケガが改善したので支給を停止したいという場合は、「障害給付受給権者 障害不該当届」を年金事務所に提出します。特に添付が必要な書類はありません。「停止年月日」の欄以外全ての記入欄に必要事項を書いて提出しましょう。
再び障害年金を受けたい時
一度支給が止まってしまっている障害年金の支給を再開させる場合は、「支給停止事由消滅届」を提出します。以下の添付書類が必要です。こちらの書類については、「これならできそう!障害年金を支給停止事由消滅届で再開させる方法」の記事もご参照ください。
【添付が必要な書類】
- 請求者の年金証書(もしくは年金手帳などの基礎年金番号がわかるもの)
- 提出する日から1ヶ月以内に作成された住民票や戸籍抄本
(マイナンバーカードまたは通知カードの提示で省略することができます。) - 診断書、傷病によってはレントゲン画像や心電図
- 20歳前に初診日がある場合は前年度の所得証明書
- 子や配偶者などの加算が受けられる場合は、世帯全員の住民票の写しと戸籍謄本
- 義務教育を終了している18歳に到達する年度までの子がいる場合は、
子の所得証明書や在学証明書、学生証の写し - 加算対象の子が障害基礎年金1級もしくは2級に該当する障害状態である場合は、子の診断書
- 配偶者の加算が受けられる場合は、配偶者の前年度の所得証明書や課税・非課税証明書
3 まとめ
ここまでで、
- 障害年金の支給が止まってしまう4つのケースと、ケースによる支給再開申請の方法
- 障害年金の支給を停止したいときの2つの方法と、再び受給したい時の申請の方法
上記2点を詳しくお伝え致しました。
障害年金にまつわる書類は膨大です。間違った書類を提出して、手続きが遅れないようにご注意ください。
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