障害年金と遺族年金は併給できる?5分でわかる制度と併給方法

遺族年金と障害年金を悩む女性
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障害年金と遺族年金は同時に2つ受給することはできるのでしょうか?

一言でご説明すると、65歳以上でなければ受給できません。

制度は非常に複雑で分かりにくいので、年金事務所の窓口で相談することが一番良いのですが、ただ行っても理解しきれなかったり、間違った案内を受けたときに指摘できないと不利益を被る場合もあります。

今回の記事では2つの年金制度と併給方法について簡単にご説明します。

これさえ理解できていれば、年金事務所に相談に行った時にお役にたてるでしょう。

 

1 遺族年金の受給権者とは

公的年金は、受給する人が65歳までの間は支給理由が異なる年金のうち、どちらか1つしか受け取ることができません。

ただし65歳に達すれば組み合わせて受給することが可能です。今回は2つの年金の併給、組み合わせ方などについてご説明いたします。

まずは遺族年金の制度について簡単にご説明します。

 

1-1 遺族年金とは

遺族年金は、「遺族基礎年金」、「遺族厚生年金」に細かく分類されます。

厚生年金に加入していた配偶者が亡くなった場合、遺族厚生年金が申請できますが、18歳未満の子がいるときはあわせて遺族基礎年金を申請、受給することが可能です。

遺族基礎年金

基本年額:779,300円+18歳以下の子の加算(第1子・第2子は年224,300円)

【以下の要件を満たす者が亡くなった時に、18歳以下の子のある配偶者または18歳以下の子が受給】(18歳以下の子がいない配偶者は受給できない)

  • 国民年金に加入していた20歳から60歳の方
  • 国民年金に加入しており、日本国内に住所がある60歳以上65歳未満の方
  • 老齢基礎年金の受給権を持つ方
  • 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている方
    (保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が10年以上ある)
遺族厚生年金

原則年額:報酬比例の年金額(納めた厚生年金保険料から計算される額)×3/4

65歳以上の配偶者に対する年額:(1)(2)のうち高額の方

(1)原則額
(2)原則額×2/3+配偶者自身の老齢年金等の額×1/2

【以下の要件を満たす者が亡くなった時に、当時その者によって生計を維持していた妻、18歳以下の子、55歳以上の夫・父母・祖父母、孫(兄弟姉妹は除く)】

  • 厚生年金に加入していた20歳から60歳の方
  • 厚生年金の資格喪失後、厚生年金加入期間中に初診日がある傷病により、この初診日から5年以内に亡くなった方
  • 障害年金1級または2級の受給権を有していた方
  • 老齢厚生年金の受給権を持つ方
  • 老齢厚生年金の受給資格期間を満たしていた方
    (老齢基礎年金の受給資格期間を満たしており、厚生年金保険加入期間が1ヶ月以上ある)

 

2 1つしか受け取れなくても請求手続きは必要

あなたが障害年金を受け取っている間に配偶者が亡くなって、遺族年金を受け取ることができるようになったら、遺族年金の請求手続きをおこないましょう。

65歳までの間は1つしか受給できませんが、年金機構に請求手続きをおこなうことで受給金額の大きい年金を受け取る選択ができたり、65歳になったときの手続きがスムーズになります。

遺族年金と障害年金のどちらかを選択受給する際には「年金選択受給申出書」を提出する必要があります。こちらの書類は窓口で簡単に記入して提出することができます。

 

2-1 60歳から65歳までも1つしか受給できない

昭和60年の法律改正で、厚生年金は65歳からの支給となりました。ただ突然65歳からの支給するわけにはいきませんので、この支給開始年齢を段階的におこなうことになっています。

これを「特別支給の老齢厚生年金」と言い、昭和36年4月1日以前の生まれの男性、昭和41年4月1日以前生まれの女性は、65歳より前に厚生年金部分を受け取ることができます。

この特別支給の老齢厚生年金は「老齢年金」の類に入ります。したがって、障害年金や遺族年金とはあわせて受給することができません。65歳になれば併給することができます。

 

3 65歳以上の組み合わせ受給の方法

これまでわかりやすく「併給」という言葉で説明いたしましたが、実際は併給ではなく「組み合わせ受給」になります。どういうことか、図を用いて説明します。

「年金は2階建て」という言葉を聞いたことはありませんか。
1階が基礎年金部分、2階が厚生年金部分です。

65歳以上の組み合わせ受給の方法

65歳になるとあなた自身の老齢年金の受給権も発生しますので、3つの年金の中から受給金額の高額さや非課税であることなどをふまえて組み合わせ受給して頂くことになります。(障害年金、遺族年金は非課税です。)

もちろん組み合わせをしないで受給することも可能です。

65歳以上の組み合わせ受給の方法

65歳になるまでは支給理由が異なる年金は1つしか受給できませんが、65歳の誕生日を過ぎた日からは、1階部分と2階部分を組み合わせて受給することができます。

基礎年金同士、厚生年金同士は同時に受給することができませんので注意してください。

 

3-1 組み合わせ方に関する相談は年金事務所へ

では実際にどう組み合わせたらよいのでしょう。

金額や組み合わせの方法については年金事務所のお客様相談室や、街角の年金相談センターで相談できます。

ただし組み合わせができるようになる65歳の直前くらいまでは金額が定まりません。65歳のお誕生日を迎えられる数か月前くらいに相談へ行くのがベストなタイミングでしょう。

 

障害基礎年金と遺族厚生年金を組み合わせる場合

組み合わせ方の一例として、ずっと障害基礎年金を受けていた方が配偶者の死亡によって遺族厚生年金と組み合わせ受給できることになったケースをご紹介します。

【例】

A子さんは人工透析療法を受けていて、障害基礎年金2級を50歳の時から受給しています。
58歳の時、老齢厚生年金を受給していた68歳の夫が亡くなりました。子どもはすでに20歳を超えています。

【受給の仕方】

A子さんは58歳の時にそれまで受給していた障害基礎年金と、夫の死去による遺族厚生年金の受給権を持つことになりました。このタイミングで遺族厚生年金の申請をしておくべきです。

ただし58歳から65歳までの7年間の間は、障害基礎年金と遺族厚生年金のどちらか一方しか受給できません。夫は年間200万円の老齢厚生年金を受給していました。

A子さんの障害基礎年金額(2級) 年779,300円

遺族厚生年金額 (夫の厚生年金額年200万円)×3/4=150万円

A子さんは金額が大きい遺族厚生年金を選択受給することになりました。
65歳まで受給し続け、65歳になる3ヶ月前に年金事務所で組み合わせ受給の金額を相談します。

老齢厚生年金 障害厚生年金 遺族厚生年金

20歳から60歳までに納めた厚生年金保険料から算出される。

27歳で結婚するまでの金額なのであまり高額ではないかもしれない。

初診日に厚生年金に加入していなければならない。

受給権なし

夫が亡くなってから受給しているので受給権がある。

年額150万円

老齢基礎年金 障害基礎年金 遺族基礎年金

20歳から60歳までの全ての期間で、国民年金を納付または免除していれば年額779,300

ただし未納期間の分減額される。

夫が亡くなってから免除を受けていたので満額受給することができない。

すでに障害基礎年金2級の

受給権を持っている。

年額779,300

18歳以下の子がいなければ受給できない。

受給権なし

表のように年金事務所でまとめたところ、受給権があって、かつ金額が高い、遺族厚生年金と障害基礎年金を受給することになりました。

もしあなたがこれから年金事務所へ組み合わせ受給の相談に行かれるのなら、ご自宅で上の表のようにまとめてから行かれることをおススメします。

窓口で確かめたいことや知りたいことを事前にまとめられるので、理解が深まります。

 

4 まとめ

いかがでしたでしょうか。

  • 65歳未満では併給できないが、申請はおこなっておくべきであること。
  • 障害年金と遺族年金は65歳になったら組み合わせ受給できること。
    (その時には自身の老齢年金もあわせて組み合わせの対象になること。)

この2点を中心にご説明しました。
ぜひあなたが組み合わせ受給する際などの参考にして下さい。

 

患者団体や病院の方へ

患者団体や病院の方、あるいは報道機関から、この記事を利用したいとのお問い合わせをいただくことがあります。
障害年金の制度を患者の方にお伝えいただく目的で使用いただくのであれば、無償で利用していただいて結構です。
ただし、以下のルールを必ず守っていただきますようにお願いいたします。

 

  • 記事は修正しないでそのまま使用してください。
  • 咲くやこの花法律事務所の記事であることは使用の際に明示をお願いいたします。
  • 紙媒体での使用のみとし、記事をインターネット上にアップロードすることは禁じます。
  • 患者団体または病院関係者、報道機関以外の方の使用は禁じます。

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  • この記事の監修者
  • 西川 暢春
  • 西川 暢春

    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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