10分でわかる!健康保険の傷病手当金の支給条件、支給額、申請手順

ひらめく女性
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「健康保険の傷病手当金とはどんな制度でしょうか?」

傷病手当金は、病気やけがで働けない場合に健康保険から毎月お金が支給される制度です。
申請方法もそれほど難しくありませんが、いくつか重要な注意点があります。

今回の記事では、健康保険の傷病手当金の支給条件、支給額、申請手順、申請時の注意点をご説明します。

この記事を読んでいただければ、迷わずに傷病手当金の申請をすすめられるようになります。

それでは見ていきましょう。

 

1 健康保険の傷病手当金とは?

健康保険の傷病手当金は、健康保険加入者が病気やけがで働けなくなり、給与がもらえない場合に、1年6か月間、給与の額の約3分の2相当額が健康保険から支給される制度です。

なお、加入している健康保険の種類によっては、支給期間が1年6か月より長いケースや、支給額が給与額の3分の2より多くなる制度が設けられている場合もあります。

 

2 受給には4つの条件が必要!

健康保険の傷病手当金の受給のためには4つの条件を満たすことが必要です。

条件1:業務外の病気やけがで治療中であること
条件2:病気やけがで仕事ができない状態であること
条件3:4 日以上仕事を休んでいること
条件4:休んでいる期間中に給与の支払いがないこと

以下で1つずつ見ていきましょう。

 

2-1 条件1:業務外の病気やけがのために治療中であること

健康保険の傷病手当金を受給するためには、業務外の病気やけがで治療中であることが必要です。

業務中のけがや通勤中のけがは労災保険の給付対象のため、傷病手当金の給付を受けることはできません。

 

2-2 条件2:病気やけがで仕事ができない状態であること

健康保険の傷病手当金を受給するためには、病気やけがで仕事ができない状態であることが必要です。

病気やけがで仕事ができない状態のことを「労務不能」といいます。

傷病手当金を受給するためには、主治医の診断を受けて、支給申請書に労務不能であるという主治医の意見を記載してもらう必要があります。

 

2-3 条件3:4 日以上仕事を休んでいること

健康保険の傷病手当金を受給するためには、3日連続して仕事を休み、かつ4日目以降にも休んだ日があることが必要です。

病気やケガのために仕事を休んだ最初の 3 日間は「待機期間」として傷病手当金は支給されません。

待機期間の3日が経過した後、4 日目から傷病手当金が支給されます。

 

待期期間に関する注意点

重要な注意点は、待期期間の3日については連続して 3 日間休んでいることが必要であるということです。

例えば、連続して 2 日休んだ後、出勤した場合は待機期間が成立せず、傷病手当金を受給することはできません。

そして、待機期間には、欠勤だけでなく、有給休暇や土日祝などの公休も含まれます。

例えば、土日が休みの会社では、金曜日に欠勤した場合、金土日の3日間で待機期間3日が経過しますので、月曜日以降も労務不能の場合は、傷病手当金の対象となります。

 

2-4 条件4:給与の支払いがないこと

健康保険の傷病手当金を受給するためには、休業している期間中に給与の支払いを受けていないことが必要です。

休業中であっても有給休暇を利用するなどして給与が支給されている場合は、傷病手当金を受け取ること はできません。

これは、傷病手当金は、病気やケガによって働くことができず給与がもらえない場合に支給されるものだからです。

ただし、給与が支給されている場合でも支給される給与額が傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。

 

3 傷病手当金の支給額

傷病手当金の支給額は給与の約 2/3 が原則的な額になります。

ただし、毎月の給与は残業時間などによって変動し、必ずしも一 定ではありません。そこで、傷病手当金の計算にあったっては、「標準報酬月額」という値を使って下記のとおり計算します。

傷病手当金の支給日額=支給開始日以前12ヵ月間の標準報酬月額の平均額÷30日×2/3

上記の計算式で、1日当たりの支給額を計算し、これに労務不能により休業した支給対象日数をかけた額が、傷病手当金の支給額になります。支給対象日数は休業期間中の公休日も含めた日数であり、例えば土日が休みの会社は土日も入れた休業期間中の日数が支給対象日数になります。

なお、計算に使う「標準報酬月額」は毎年7月に従業員1人1人についてその従業員の給与を基準に健康保険組合が決定する額です。標準報酬月額についてより詳しく知りたい方は、以下のページをご参照ください。

標準報酬月額について

 

4 傷病手当金の申請手順

傷病手当金の申請のためには、傷病手当金申請書を記入して提出する必要があります。

傷病手当金申請書の書式は、健康保険組合によって異なっており、あなたが加入している健康保険組合の書式を使用する必要があります。
申請書の用紙や記入例は健康保険に連絡すれば送ってもらうことができます。

なお、あなたが協会けんぽに加入している場合は、以下からも申請用紙の入手が可能です。

傷病手当金支給申請書

以下では傷病手当金の申請手順について、最も加入者が多い協会けんぽを例にあげながら説明しますが、基本的な手順はどの健康保険でも同じになります。

 

4-1 支給申請書のうち、本人が記載する部分を記入する。

支給申請書は、本人が記載する部分と会社に記載してもらう部分、医師に記載してもらう部分があります。

例えば、協会けんぽの場合、支給申請書は4枚の用紙がセットになっていますが、1枚目と2枚目はあなた自身が記載する欄です。
記入例を参考に記入してください。

 

4-2 会社記載部分について会社に記載をお願いする。

次に、会社に記載してもらう部分について会社に記載をお願いしましょう。

協会けんぽの場合、支給申請書の3枚目が会社に記載してもらう用紙になっています。

この会社記載部分は、前述の受給のための4つの条件のうち、条件3の「4 日以上仕事を休んでいること 」や、条件4の「休んでいる期間中に給与の支払いがないこと」を会社に証明してもらうための用紙です。

会社に人事担当者がいる場合は人事担当者に作成を依頼しましょう。

人事担当者がいない場合は上司に誰に作成を依頼すればよいか確認してください。前述の記入例も添えて担当者に記載をお願いすると丁寧です。

 

4-3 医師記載部分について医師に記載をお願いする。

最後に、医師に記載してもらう部分について主治医に記載をお願いします。

協会けんぽの場合、支給申請書の4枚目があなたの主治医に記載してもらう用紙になっています。

受給のための4つの条件のうち、条件1の「業務外の病気やけがのために治療中であること」や条件2の「病気やけがのために仕事ができない状態であること」を医師に証明してもらうための用紙です。
主治医に作成を依頼しましょう。

こちらも記入例も添えて記載をお願いすると丁寧です。

 

4-4 支給申請書を健康保険に提出する。

支給申請書ができたら健康保険に提出します。

通常は会社から健康保険に提出してくれることが多いですが、自分で直接、健康保険に郵送してもかまいません。

なお、申請先が協会けんぽの場合は、支給申請書のほか、添付書類が必要です。

1年以内に転職していて前職でも協会けんぽに加入していた場合 前職の社名、所在地、雇用期間などを記載した用紙
けがの場合

負傷原因届

交通事故など加害者がいるけがの場合

第三者行為による傷病届

申請先が協会けんぽ以外の健康保険の場合は、それぞれの健康保険に添付書類を確認してみましょう。

 

5 傷病手当金の支給期間

健康保険の傷病手当金の支給期間は支給開始日から1年6か月間が原則です。

この1年6か月は、実際に傷病手当金をもらい始めた日から数えます。
あなたが会社を休み始めた日から数えるのではなく、待期期間が終わって傷病手当金の対象となった日から数えて1年6か月です。

この1年6か月という期間は、仮にあなたの現在の職場での勤続年数が短くても短くなることはありません。

たとえ入社後1週間で病気休職することになったとしても、傷病手当金は1年6か月間支給されます。

また、あなたがパート社員や契約社員であっても、傷病手当金の支給期間は1年6か月です。たとえ、週3回勤務であっても、傷病手当金の支給期間が短くなることはありません。

傷病手当金の支給期間については、以下の記事でさらに詳しくご説明していますので、参照してください。

傷病手当金の支給期間1年6か月の数え方と期間経過後にもらえるお金

なお、傷病手当金の支給期間が終わっても仕事が難しい場合に申請できる制度として、「障害年金」の制度があります。こちらについては、以下の記事で詳しくご説明していますので、参照してください。

障害年金の受給資格は満たす?申請に必要な4つの条件を解説!

 

6 傷病手当金の申請のタイミング

傷病手当金は何か月分かをまとめて請求することもできますが、あまり長期間の分をまとめて請求しようとすると、申請に必要な医師の証明を得ることが難しくなることがあります。

そのため、傷病手当金は会社を病気やけがで休むことになったら、1か月ごとに請求していくのがおすすめです。

月給制の場合、勤務先で給与の締日が設定されていますが、その締日を過ぎれば、その月の分の傷病手当金の請求が可能になります。例えば、毎月月末締めの10日払いの会社であれば、8月の傷病手当金は8月の給与の締日である8月31日を過ぎた段階で可能です。

申請してから実際に支給されるまで約2週間から3週間のタイムラグがありますので、支給されるまでの間の生活が苦しくならないようにお金のやりくりの計画を立てておきましょう。

 

7 傷病手当金の申請をする場合の注意点

最後に傷病手当金の申請の際の注意点をご説明しておきたいと思います。

 

7-1 会社との関係は良好に保つ。

傷病手当金の申請にあたっては、会社との関係が良好であることが重要です。

人によっては、会社でパワハラを受けて病気になってしまったり、あるいは病気がきっかけで会社との折り合いが悪くなってしまっている人もいると思います。

しかし、前述の通り、傷病手当金の申請用紙の一部は会社に記載してもらう必要があります。これを会社に書いてもらえなければ、傷病手当金の申請は極めて難しくなってしまうのが現実です。

傷病手当金の申請を考えると、会社との関係は良好に保っておくことをおすすめします。

 

7-2 主治医との関係も良好に保つ

傷病手当金の申請にあたっては、主治医との関係を良好に保つことも重要です。

これは、前述の通り、傷病手当金の申請にあたって申請用紙の一部を主治医に記載してもらう必要があり、主治医が労務不能と判断してくれなければ、傷病手当金の申請ができないからです。

 

7-3 退職を考えている人も申請は在職中にする。

病気で退職を考えていて、退職後に傷病手当金の申請を始めたいと思っておられる方もいると思います。

退職後に傷病手当金の申請を行うことができないわけではありませんが、かなり難しいのが実状です。そのため、退職するとしても、傷病手当金の最初の申請は在職中にすませておくことをおすすめします。

どうしても、退職後から傷病手当金の申請をする方は、以下の3点をおさえておいてください。

 

退職日の前日以前に3日以上連続して仕事を休んでいることが必要。

傷病手当金を請求するためには、退職日の時点であなたが傷病手当金を請求できる状態にあることが必要です。

このことから、退職日の前日以前に、3日以上連続して仕事を休み、待期期間を終えていることが必要になります。

 

退職日に欠勤していることが必要。

傷病手当金の請求のためには、退職日に欠勤していることが必要です。

退職日に出勤して給与をもらっている場合は、退職後も傷病手当金は請求できません。

これも、傷病手当金を請求するためには、退職日の時点で、傷病手当金を請求できる状態にあることが必要とされていることによるものです。

 

退職前の期間の欠勤について会社の証明が必要。

前述のとおり、退職日の前日以前に3日以上連続して欠勤し、退職日にも欠勤していることが必要ですが、この欠勤の事実については会社の証明が必要になります。

具体的には、4-2で説明した通り、傷病手当金の申請用紙の一部を会社に記載してもらうことが必要です。退職後に申請をする場合は、この申請用紙の記載を会社にどのようにして依頼するか考えておく必要があります。

退職後から傷病手当金の申請をスタートする場合は、この3つの点に注意してください。

 

7-4 現在の職場での在職が1年未満の場合は注意が必要。

在職中に申請をした場合でも、現在の職場での在職が1年未満の場合は注意が必要です。

これは、「もし支給期間中に退職した場合、退職日以前の健康保険加入期間が1年未満のときは退職後は傷病手当金は支給されない」というルールがあるためです。

この退職日以前の健康保険加入期間が1年未満かどうかの判断は、「退職日以前に同じ健康保険に連続して加入している期間」が1年未満かどうかで判断します。そのため、現在の職場での在職が1年未満であっても、以下の3つの条件をすべて満たす場合は、退職後も健康保険の傷病手当金の受給が可能です。

 

条件1:あわせて1年以上であること

現在の職場とその前の職場での健康保険の加入期間を合計すれば1年以上になることが必要です。

 

条件2:空白期間がないこと

前の職場を退職した翌日に現在の職場で健康保険に加入しており、健康保険の加入に空白期間がないことが必要です。

 

条件3:同じ健康保険であること

前の職場と現在の職場の健康保険が同じ健康保険であることが必要です。

現在の職場での在職が1年未満の場合は、この3つの条件をすべて満たす場合に限り、退職後も健康保険の傷病手当金の受給が可能です。

一方、現在の職場での在職が1年以上であれば、退職後も引き続き健康保険の傷病手当金を受給することができます。

 

8 まとめ

今回の記事では、健康保険の傷病手当金について、「受給のために必要となる4つの条件」や「支給額」、「申請手順」をご説明しました。

また、注意点として以下の点をご説明しました。

  • 会社や主治医との関係を良好に保つことが重要であること
  • 申請は在職中にしたほうがよいこと
  • 現在の職場で在職1年未満の場合は退職後はもらえなくなるケースが多いこと

これらの注意点さえ踏まえていただければ、申請自体はそれほど難しくありません。
申請から支給までにかかる期間を見越して、早めに準備し、申請しておきましょう。

 

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  • この記事の監修者
  • 西川 暢春
  • 西川 暢春

    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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