軽度の視力低下であればメガネやコンタクトレンズで矯正できることが多いですが、網膜剥離の症状を放置してしまうと手術で治すことができず、視力を回復させることができない場合が多いようです。
生活への支障は想像以上かと思いますが、障害年金を申請して、65歳になる前から年金を受給することができるのをご存じでしたでしょうか。一定の年金額を納めていて、認定基準に該当する症状であれば受給することが可能です。
今回の記事では、障害年金を申請する前に確認すべき、受給するための2つの条件と、申請書類に関するポイントを説明していきます。
監修者:「西川 暢春」からのワンポイント解説!
関連情報として、障害年金の認定基準についての基礎知識を以下の記事で解説しています。参考にご覧ください。
1 網膜剥離でも障害年金を受給できる!
網膜剥離による視力障害・視野障害も、障害年金の受給対象です。
メガネやコンタクトレンズなどで矯正した視力でも日常生活や仕事に支障がある場合は、申請を検討しましょう。
2 受給するための2つの条件とは
障害年金を受給するには、以下の2つを同時に満たしている必要があります。
- 「認定基準に該当する症状であること」
→障害の程度を判断するために、等級とその等級に値する障害の程度が「認定基準」としてもうけられています。
認定基準に該当する傷病でなければ受給することができません。
なお障害者手帳と障害年金はまったく別の制度ですので、手帳の等級と同じ等級の年金を受けられるというものではありません。
- 「年金の納付要件を満たしていること」
→年金制度もおおまかには一般的な保険と同じ仕組みですので、年金保険料を払っていないと受給できません。
網膜剥離で初めて病院を受診した日(初診日)までに納めた期間が、基準以上である必要があります。
1つずつ以下で詳しく説明していきます。
2-1 認定基準に該当する症状であること
眼の障害においては、視力・視野・その他眼の周辺機能について認定基準がわかれています。
視力障害の認定基準
原則、眼鏡やコンタクトレンズ、眼内レンズを使用した状態での矯正視力で計測します。
一部例外として以下にあたる場合は、裸眼で計測します。
- 矯正不能
- 眼が矯正に耐えられないもの
- 矯正によって両目で物を見た時に左右の目で物の大きさや形が違って見えてしまい(不等像視)、両目で物を見ることが困難であることが、医学的に証明されている場合
視力障害の認定基準の表
※障害手当金については4章でご説明します。
続いて、視野障害の認定基準をご紹介します。
視野障害の認定基準
視野障害の認定基準は以下の通りです。
大きくて白い半球体の「ゴールドマン視野計」および「自動視野計」という大きな機械で計測します。
視野障害の認定基準の表
※求心性視野狭窄:網膜色素変性症や緑内障などにより、視野の周辺から欠損が始まって見えない部分が中心に向かって進行するもの。
※輪状暗点:リング状に視野が欠けているもの。
2-2 年金の納付要件を満たしていること
ここまでで、どの程度の障害であれば障害年金の等級に該当するかについてご説明しました。
しかし障害年金は、障害状態の他に、初診日までの「年金の納付要件(条件)」も満たしていなければ受給できません。
以下を確認してみましょう。
年金の納付要件
初診日の時に、国民年金、厚生年金、共済年金に加入していた方、もしくは20歳未満の方で以下の(1)もしくは(2)のどちらにも該当していなければ、障害年金を受給することができません。
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること(原則)
または
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(特例)
自分が納付要件を満たしているか分からない場合は、お近くの年金事務所で確認しましょう。
3 障害年金を受給するために重要な3つの書類
ここまでで、障害年金が受給できる人の条件についてご説明してきました。
続いて障害年金の申請準備にあたって、重要な書類の取り付け方や作成の方法についてご説明していきます。
必要書類はたくさんありますが、病院で取りつける「受診状況等証明書」、「診断書」以外は、基本的にご自身で作成したり、取り付けることができるものです。
その中でも申請にあたって特に重要な3つの書類について、ご説明します。
3-1 受診状況等証明書
「受診状況等証明書」とは、視力や視野の症状のために初めて病院を受診した日(初診日)を証明するための書類です。障害年金の受給資格や納付状況を確認するために、かならず初診日を証明しなければなりません。
初診日のある病院で作成を依頼しましょう。(診断書を書いてもらう病院が初診病院である場合は必要ありません。)
しかし、病院でのカルテの保管期間は5年ですので、カルテが破棄されていたり、病院が廃院になっていて受診状況等証明書がとれないことがあります。
このような場合は、病院の診察券や病院の紹介状、生命保険等の給付申請時の診断書などの参考資料と一緒に「受診状況等証明書が添付できない申立書」という書類を提出しましょう。
この時、参考資料に初診病院の名前、初診日頃の日付の記載があると、初診日の証明が通りやすくなります。
初診日証明について、詳しくは「障害年金の申請に必須!初診日証明の方法と書類の確認ポイントを解説」を参考にして下さい。
3-2 診断書
眼の障害用の診断書を主治医に書いてもらいましょう。
▶参考情報:眼の障害用の診断書(PDF)
ただしタウンクリニックや診療所には診断書を書くために必要な、ゴールドマン視野計および自動視野計などの測定機器が置かれていない場合があります。
これらの測定機器で計測していない場合、年金事務所に診断書を提出しても差し戻されてしまうので、必ず主治医に必要な測定機器がクリニックにあるか確認してください。
もしも必要な測定機器が無い場合は、総合病院などを主治医に紹介してもらいましょう。
医師に診断書を書いてもらえましたら、必ず以下の点を確認してください。
診断書(10)障害の状態の視力・視野について
- 眼鏡やコンタクトレンズ、眼内レンズを入れた状態での矯正視力を測定し、数値が記載されているか
- 測定できず空欄になっている場合は、余白などに「測定不能」等、説明書きがあるか
障害年金に必要な診断書については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にご覧ください。
3-3 病歴・就労状況等申立書
「病歴・就労状況等申立書」とは、発病したときから現在までの経過を3~5年に区切って申告するための書類です。受診状況等証明書や診断書と違い、請求者が作成する書類です。
いままでの病状や日常生活、就労状況について請求者が直接申告できる唯一の書類ですので、下記をご参考の上、具体的に記入してください。
受診していた期間について | ・どのくらいの期間、どのくらいの頻度で受診したか |
・入院した期間やどんな治療をして、改善したかどうか | |
・医師から言われていたこと (遮光レンズをかけるように言われた、白杖をつかうトレーニングを受けるように言われた等) |
|
・日常生活状況 (具体的にどんな症状があって、どう困っていたか。例:夜盲がひどく夜間は一人で外出できない、白杖と歩行補助がないと歩けない等) |
|
・就労状況 (週に何日、1日何時間働いているか。仕事中や仕事後に体調に変化があれば記入する。病気のために生じている仕事の制限や職場での配慮があれば記入する。例:週に2日、障害者雇用で音声入力ソフトを使ったPC事務の仕事をしている。等) |
受診していなかった期間について | ・受診していなかった理由 (自覚症状がなかった、経済的に行けなかった等) |
・自覚症状の程度 (いつどんな症状がどの程度あったか。例:視野狭窄のため歩行中に追い抜かれたりする時に見えなくて驚く、怖い等) |
|
・日常生活状況 (普段通りではなかったことがあれば記入する) |
|
・就労状況 (病気によって仕事に支障がでていたか等を記入する) |
4 障害手当金を受給するための条件
障害手当金は、障害の程度が3級よりも軽い場合に支給される一時金です。
網膜剥離のご症状で初めて病院を受診した日の時点で、ご自身で厚生年金に加入していた方だけが受給対象です。
この障害手当金は、2-1でご説明した認定基準や、2-2でご説明した年金の納付要件を満たしているとともに、以下の条件を満たしていれば受給することができます。
- 初診日から5年以内に症状が固定していること
→障害手当金は、申請する病気やケガの症状が固定していることが受給条件です。
症状が固定していること(症状固定)とは?
症状が固定していること(症状固定)とは、治療の効果が期待できなくなった状態のことを指します。
網膜剥離の場合、経過観察や今以上に網膜がはがれないように経過観察することが多く、視野や視力障害について投薬などをおこなわないケースもあるようです。
症状が固定しているか不明であれば、まずは主治医に相談してください。
また、障害手当金は症状固定日から5年以内に申請しなければ受給することができませんので、注意してください。
5 まとめ
この記事では、障害年金を網膜剥離のご症状で申請するための条件として、
- 認定基準に該当する症状であること
- 初診日までに一定期間年金を納めていたこと
の2つご紹介しました。
障害年金の申請は、提出書類が煩雑である上、申請書類のポイントをつかんでいないと不利益を被ることがあります。この記事を確認しながら、申請準備を進めていただけると幸いです。
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