知的障害で障害年金を受給するための5つのポイント

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知的障害で障害年金が受給できるってご存知ですか?
今回は、認定基準や書類作成時のポイントまで徹底解説します!

1 知的障害で障害年金がもらえる!

知的障害で障害年金が受給できることをご存知の方は少ないのではないでしょうか。知的障害は障害年金の支給対象疾患です。
ただし、単に申請書類を提出すれば支給されるものではなく、日本年金機構の定める一定の基準を満たしている必要があります。
どのような場合に支給されるのか理解し、ポイントをおさえて申請することで障害年金を受給できる可能性が上がります。

まず、障害年金の制度について簡単にご説明します。

障害年金とは・・・?

病気やケガなどが原因で日常生活や仕事に支障が出ている方を対象に支給される年金です。

原則、病気やケガのために初めて病院を受診した日(初診日といいます)から1年6ヶ月後から受給することができます。

障害年金には初診日に加入していた年金制度に応じて2つの種類があります。

 

障害基礎年金

<支給対象>

〇病気やケガのために初めて病院を受診した日の加入年金制度が国民年金の方

・自営業、アルバイト、学生等

・厚生年金加入者の配偶者(第3号被保険者)

・20歳より前に初診日があり年金に加入していなかった方(先天性疾患等)

障害厚生年金

<支給対象>

〇病気やケガのために初めて病院を受診した日の加入年金制度が厚生年金の方

※20歳より前に初診日があっても、初診日時点で厚生年金に加入していれば障害厚生年金の対象者です。

障害基礎年金では日本年金機構の定める障害等級1級又は2級に認定された方に、障害厚生年金では1級から3級に認定された方に障害年金が支給されます。(支給額は等級によって異なります)

障害年金を受給するためにはおおまかにいうと以下の2つの条件を満たしている必要があります。

 

(1)初診日までに加入期間の2/3以上の保険料を納めている
   若しくは過去1年間に保険料の未納がないこと【保険料の納付要件】

 

(2)障害の程度が日本年金機構の定める基準に該当していること【障害の程度の要件】

 

知的障害は原則、出生日が初診日として扱われます。
そのため、(1)の保険料の納付要件は問われません。保険料を納めていなくても受給することができます。
重要なのは、(2)の障害の程度の要件です。知的障害の場合、支給されるのは障害基礎年金のため、1級又は2級に認定される必要があります。

それでは、実際どのくらいの症状であれば認定されるのでしょうか?

ここからは知的障害の認定基準についてご説明します。

 

2 知的障害の認定基準

障害年金では、傷病によって「このくらいの障害の程度であれば〇級相当」と基準が決まっています。これを障害年金の認定基準と言います。認定基準によると、知的障害で各等級に相当する障害の状態は以下のように定められています。

等級 障害の状態
1級 知的障害があり、食事や身の回りのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活で常時援助が必要とするもの
2級 知的障害があり、食事や身の回りのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの
3級 知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの

おおまかにいえば、常に誰かの援助がなければ日常生活がおくれない方が1級、日常生活に支障が出ている方が2級ですが、具体的にどのような状態であれば「日常生活に支障が出ている」というのかこれだけではわからず、実際その曖昧さから地域によって認定内容にかなりの差が生じてしまっていました。

この地域差を解消するために、認定基準をより具体的に示した「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が平成28年9月に発表され、新たに審査の基準となっています。

この等級判定ガイドラインによると、診断書の記載事項である「日常生活能力の判定」及び「日常生活能力の程度」に応じて等級の目安が定められています。

※「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」とは

■日常生活能力の判定

日常生活にどのような支障があるかを7つの場面に分けて評価したものです。

※請求者が一人暮らしをした場合、可能かどうかで判断します。

(1)適切な食事 配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることができる
(2)身辺の清潔保持 洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。また、自室の清掃や片付けができる
(3)金銭管理と買い物 金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできる
(4)通院と服薬 規則的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができる
(5)他人との意思伝達及び対人関係 他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行える
(6)身辺の安全保持及び危機対応 事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができる
(7)社会性 銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。また、社会生活に必要な手続が行える

各項目を

1

出来る
2 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
3 自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる
4 助言や指導をしてもできない若しくは行わない

の4つの段階にわけて評価します。

※(4)の通院と服薬については、知的障害の方は基本的に定期的な通院や服薬が必要な傷病ではないので、記入されていなくても問題ありません。

 

■日常生活能力の程度

日常生活能力を総合的に評価したものです。

1 知的障害を認めるが、社会生活は普通にできる。
2 知的障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
3 知的障害を認め、家庭内の単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
4 知的障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
5 知的障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。

具体的な等級の目安は次の通りです。

▷障害等級の目安(PDF)

まったくこのとおりに認定されるわけではありませんが、ひとつの大きな判断基準になるのではないでしょうか。

さて、ここまで知的障害の認定基準についてご紹介してきました。
ここからは実際に障害年金をもらうためにどうすればいいのか、ポイントをご紹介します。

 

3 審査で重視される2つの書類

障害年金は書類審査です。審査官と一度も面談することなく提出した書類の内容ですべてが決まってしまいます。どんなに症状が重くても、日常生活に支障が出ていても、提出した書類でそれが伝わらなければ不支給になってしまうこともありえるのです。

ここからは、障害年金の申請で特に重要な2つの書類とその記載のポイントをご説明します。

 

3-1 診断書

障害年金を申請するにあたって、一番重要なのは医師に作成してもらう診断書です。

2でご説明したように障害年金では、傷病によって「このくらいの障害の程度であれば〇級相当」と基準が定められており、等級判定ガイドラインでは診断書の記載事項を元に等級の目安が定められています。
そのため、障害年金はほとんど診断書の内容で決まるといっても過言ではありません。

▷診断書(PDF)

 

診断書作成のポイント
(1)受診前に日常生活状況についてまとめておく

2の認定基準でご説明したとおり、知的障害の等級判定においては日常生活能力の程度が重視されています。しかし、日常生活の状況について医師と十分に話ができている方は少ないのではないでしょうか。限られた診察時間内で症状のすべてを伝えることは困難です。医師に十分に伝わっていないために診断書の内容が実際の症状とそぐわないものになり、結果的に不支給になってしまうこともありえるのです。

もちろん実際の症状よりも重く書いてもらうことはできませんしするべきではありませんが、どんな症状があって日常生活や仕事にどんな影響が出ているかを伝え、症状に応じた診断書を書いてもらうことが重要なのです。
医師に症状を十分に伝えるために、事前に日常生活のどんな部分に支障があるか、どんなことに困っているのかまとめてから受診することをおすすめします。療育手帳や知能検査の結果などが手元にあればあわせて持参してください。

 

3-2 病歴・就労状況等申立書

診断書と並んで重要な書類が、病歴・就労状況等申立書です。

病歴・就労状況等申立書とは、発症から現在までの日常生活状況や就労状況を記載するもので、診断書のように医師に書いてもらうものではなく障害年金の請求者が自分で作成するものです。

どう書いていいのかわからない、何を書けばいいのかわからないと簡単に書いてしまう方もいますが、病歴・就労状況等申立書は日常生活にどのような支障がでているか、どんなことに困っているかを自分で伝えることができる唯一の書類です。診断書では伝えきれない日常生活状況を伝えることのできる重要な書類なので、ポイントをおさえてしっかり記載することが重要です。

▷病歴・就労状況等申立書(PDF)
▷病歴・就労状況等申立書(続紙)(PDF)

 

病歴・就労状況等申立書作成のポイント
(1)出生から現在までの状況を3~5年に分けて記載する

知的障害の場合、病歴・就労状況等申立書には出生日から現在までの日常生活状況や就労状況を記載する必要があり、記載要領では3~5年に分けて記載するように求められています。

知的障害の場合は幼少期、小学校低学年、小学校高学年、中学生、高校生、その後は3~5年ごとに分けて記入してください。覚えていないからといって10年、20年をまとめて書いてしまうと年金機構から書き直しを求められることがあるので、必ず3~5年の期間に区切って作成しましょう。

(2)具体的に記載する

病歴・就労状況申立書は主観ではなく客観的かつ具体的に記入することが重要です。自分がどう感じたかではなく実際にどんなことがあったかを具体的に記入するように注意しましょう。とは言っても実際にどんなことを書けばいいのかわからない方も多いと思いますので、病歴・就労状況等申立書に記載するべき事項を一部例示します。

病歴・就労状況等申立書の記載事項

  • 周囲の人(家族や友人等)との関係(人間関係でトラブルになることはなかったか等)
  • 日常生活でできなかったことや困っていたこと
  • 家族や周囲の人からの援助の有無やその内容
  • 就学時の様子(不登校、集団行動ができない、学習の遅れ等)
  • 特別支援教育歴(特別支援学校、支援学級、普通学級における個別支援等)
  • 施設の入所歴や福祉サービスの利用状況
  • その他障害に関する印象的なエピソード    等
(3)診断書との整合性に注意する

障害年金の審査においては医師の作成した診断書と請求者の作成する病歴・就労状況等申立書の整合性が重視されます。
例えば、診断書ではできないと書かれているのに、病歴・就労状況申立書ではできると書かれている場合、病歴・就労状況等申立書の内容が足を引っ張って、適切な等級に認定されないこともありえるのです。

知的障害の場合、ご本人ではなくそのご家族が病歴・就労状況等申立書を作成することも多いのではないでしょうか。自分の家族のできないことばかり書くことは気がすすまないかもしれませんが、ここは割り切って、客観的に見てどうかを考えることが重要です。

また、ずっと一緒に生活している家族だと周囲から見るとできていないことでも当たり前になってしまって症状を認識できていないこともあります。病歴・就労状況等申立書を書くときは、客観性を意識して書くようにしましょう。
そして、申請書類を提出する前に医師の作成した診断書と病歴・就労状況等申立書を見比べて、記載内容や症状の程度に矛盾がないかを確認してください。

 

4 知っておきたい5つのポイント

4-1 原則、初診日証明は不要!

通常、障害年金を申請する時には病気やケガのために初めて病院を受診した日を明らかにする必要があり、初診の病院で初診日証明の書類を書いてもらったり、初診日がわかるような資料を集めたりしなくてはいけません。

しかし、知的障害は生来性疾患のため生まれた日が初診日とされています。そのため、他の傷病とは異なり、特に初診日の証明書類を提出しなくても申請ができるのです。
初診日の証明書の代わりに療育手帳の写しを提出すれば、初診日の証明として扱われます。

 

4-2 20歳になったら申請しましょう!

障害年金は20歳以上かつ初診日から1年6ヶ月経過した日(この日を「障害認定日」といいます)から申請することができます。知的障害の場合、出生日が初診日のため、20歳から障害年金の申請が可能です。

20歳になったら申請をすることをおすすめします。

 

4-3 仕事をしていても受給の可能性あり!

知的障害の方の中には障害者雇用制度等によって働いている方も多いのではないでしょうか。働いていると支給されないのではないか、そう考えてはいませんか?障害年金では単に仕事ができているという事実だけで不支給になることはありません。

等級判定ガイドラインでは、就労状況と等級判定について次のように記載されています。

(1)『一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、仕事の内容が保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な業務であれば2級の可能性を検討する。』

(2)『一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、他の従業員との意思疎通が困難で、かつ不適切な行動がみられることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。』

仕事をしているからといって障害年金の受給をあきらめることはありません。実際に仕事をしていても障害年金を受給している人はたくさんいます。

 

4-4 療育手帳の等級やIQとの関係は?

療育手帳の区分が軽度なので受給できないのではないかと聞かれることがありますが、軽度だからといって受給できないということはありません。等級判定ガイドラインでは療育手帳やIQと障害年金の等級判定について次のように記載されています。

療育手帳

『療育手帳の判定区分が中度以上(知能指数がおおむね50以下)の場合は、1級又は2級の可能性を検討する。それより軽度の判定区分である場合は、不適応行動等により日常生活に著しい制限が認められる場合は、2級の可能性を検討する。』

知能指数(IQ)

『知能指数を考慮する。ただし、知能指数のみに着眼することなく、日常生活の様々な場面における援助の必要度を考慮する。』

いずれも、障害年金の審査の際に考慮すべき要素として挙げられていますが、療育手帳の区分や知能指数によって障害年金の等級が決まるわけではありません。療育手帳の区分が軽度であったり、知能指数が50以上であるからといって障害年金の請求をあきらめる必要はないのです。

 

4-5 所得制限に要注意!

通常、障害年金に所得制限はありませんが、20歳前傷病による障害年金にだけは所得による支給制限があるため注意が必要です。通常、障害年金の支給を受けるためには一定以上の保険料を納めている必要があるのに対し、知的障害は先天性疾患のため納付要件は問われません。保険料を全く納めていなくても受給できる代わりに、受給者本人の所得による制限があるのです。

受給者の年間所得 360万4000円未満 360万4000円以上 462万1000円以上
障害年金 全額支給 1/2支給停止 全額支給停止

※所得とは・・・所得とは収入額からその収入を得るためにかかった必要経費と障害者控除等の諸控除を除いたも
       のです。市町村役場で発行される所得証明書等で確認することができます。

受給者本人の年間所得が360万4000円以上あると障害年金の1/2が支給停止に、462万1000円以上の所得があると障害年金が全額支給停止になります。
扶養家族がいる方は、これに扶養家族1人につき38万円を加算した額が所得制限額になります。

ただし、70歳以上の老人扶養親族については1人につき48万円、16歳以上23歳未満の特定扶養親族については1人につき63万円が加算されます。

所得制限額を超えた場合、その年の8月分から翌年の7月分までの1年間、障害年金が支給停止若しくは減額になります。

所得制限について詳しくはこちら

 

5 まとめ

今回は、障害年金における知的障害の認定基準をご説明し、審査において重視される書類として

(1)診断書
(2)病歴・就労状況等申立書

をあげ、それぞれの書類を作成する際のポイントをご説明しました。

障害年金は1級に認定されれば年間97万4125円、2級に認定されれば年間77万9300円が支給されます。障害年金があるかないかで生活は大違いです。しっかりポイントを抑えた申請をして障害年金を受給しましょう。