障害年金を1型糖尿病の症状でもらうための2つのポイント

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いわゆる生活習慣病としてあげられる「2型糖尿病」とちがい、「1型糖尿病」は症状の進行が早かったり、突然発症することが多いようです。症状が重いことによって、通院費や医療費がかさみがちです。

そんなとき、障害年金といった社会保障を収入として受け取ることができれば、家計の助けになります。

年金も保険の一種ですので、一定の年金保険料を納めている必要があるなど条件がありますが、症状が認定基準に該当すれば、障害年金を受給することができます。

今回の記事では、1型糖尿病の症状で障害年金を受給するための、認定の目安や注意点をご説明します。

 

1 条件を満たせば1型糖尿病で障害年金を受給できる

1型糖尿病は障害年金の対象疾患です。しかし、1型糖尿病になっていれば障害年金が支給されるわけではなく、年金機構の定める一定の基準を満たしている必要があります。
詳しい基準をご説明する前に、まず、障害年金の制度について簡単にご説明します。

障害年金とは・・・?

病気やケガなどが原因で日常生活や仕事に支障が出ている方を対象に支給される年金です。

 

原則、病気やケガのために初めて病院を受診した日(初診日といいます)から1年6ヶ月後から受給することができます。

 

また、障害年金は原則として20歳から64歳までの方が請求することができます。障害年金には初診日に加入していた年金制度に応じて2つの種類があります。

 

障害基礎年金

<支給対象>

〇病気やケガのために初めて病院を受診した日の加入年金制度が国民年金の方

・自営業、アルバイト、学生等
・厚生年金加入者の配偶者(第3号被保険者)
・20歳より前に初診日があり年金に加入していなかった方(先天性疾患等)

<年金額>

1級 年間97万4125円(月 8万1177円)
2級 年間77万9300円(月6万4941円)

障害厚生年金

<支給対象>

・初診日に厚生年金に加入していた方
※20歳より前に初診日があっても、厚生年金に加入していれば障害厚生年金の対象者です。

<年金額>

1級 報酬比例の年金額×1.25+障害基礎年金1級(年間97万4125円)
2級 報酬比例の年金額+障害基礎年金2級(年間77万9300円)
3級 報酬比例の年金額(最低保障額 年間58万4500円)

障害基礎年金では日本年金機構の定める障害等級1級又は2級に認定された方に、障害厚生年金では1級から3級に認定された方に障害年金が支給されます。

 

障害年金を受給するためにはおおまかにいうと2つの条件を満たしている必要があります。

 

(1)【保険料の納付要件】
   初診日の前日時点で、以下のいずれかの条件を満たしていること。
   ①初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。
   ②初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険 料の未納がないこと。

 

(2)【障害の程度の要件】
   障害の程度が日本年金機構の定める基準に該当していること。

(1)の保険料の納付要件を満たしていなければ、どんなに症状が重くても障害年金を受給することはできません。自分が納付要件を満たしているかは、お近くの年金事務所で確認することができます。

納付要件を満たしていることがわかれば、次に重要なのは(2)の障害の程度の要件です。初診日に国民年金に加入していた方は1級又は2級、厚生年金に加入していた方は1~3級のいずれかに認定される必要があります。

 

2 1型糖尿病の認定基準

障害年金では、それぞれの傷病について「このくらいの障害の程度であれば〇級相当」と基準が設けられています。これを障害年金の認定基準と言います。

1型糖尿病の認定基準は以下の通りですが、具体的には診断書の記載事項である「検査成績」と日常生活への支障の程度を示す「一般状態区分」が重視されています。

これら2つの項目をもとに、下記のとおり認定基準が定められています。

等級障害の程度
3級

必要なインスリン治療をおこなってもなお血糖のコントロールが困難なもので、
次のア~ウのいずれかに該当し、
かつ、「一般状態区分表
のウまたはイに該当するもの

(ただし検査日より前に90日以上継続して、必要なインスリン治療をおこなっていることについて確認ができた者に限り、認定する。)

(ア)内因性のインスリン分泌が枯渇している状態で、空腹時または随時の血清Cペプチド値が0.3ng/mL未満を示すもの

(イ)意識障害により自己回復ができない重度低血糖の所見が平均して月1回以上あるもの

(ウ)インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスまたは高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上あるもの

障害年金には障害の状態に応じて1~3級までの等級が設けられていますが、1型糖尿病の症状だけで日常生活に大きな支障を生じさせるほど重い症状が出ることは少ないため、3級の認定基準しか設けられていません。

表中にでてくる「一般状態区分表」とは、診断書の記載項目の1つです。
障害によって日常生活にどの程度支障が生じているかを、以下の5つの段階に分けて示されています。
生活状態などが下の表のイまたはウ以上に該当していれば、障害厚生年金の3級に該当する可能性があります。

区分一 般 状 態 区 分
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起きているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 

2-1 初診日に国民年金に加入していた場合は受給が難しい

先ほどご説明したとおり、1型糖尿病のみの症状では原則として3級の基準しか設けられていません。

そのため、1型糖尿病で障害年金を申請する際には、1型糖尿病のために初めて病院を受診した日(初診日)に加入していた年金制度が重要になります。

1章の「障害年金とは…」でご説明したとおり、
初診日に厚生年金に加入していた場合には障害厚生年金(等級1~3級)、
初診日に国民年金に加入していた場合(主婦や学生を含む)や、初診日の時点で20歳前だった場合は障害基礎年金(等級1,2級)の対象になります。

初診日に厚生年金に加入していた場合は、保険料の納付要件を満たしており、1型糖尿病の障害の程度が年金機構の定める認定基準の3級に該当していれば障害年金を受給できます。

一方初診日に国民年金に加入していた場合、もしくは初診日の時点で20歳前だった場合は、障害の程度が3級に該当していても、障害年金は支給されません。

障害基礎年金を受給するためには、障害の程度が2級以上に認定される必要があります。

 

2-2 2級以上に認定されるためには

1型糖尿病によって日常生活に大きな支障が生じるような重篤な症状が出ている場合は、1型糖尿病でも2級以上に認定される可能性があります。

1型糖尿病のみで2級以上に認定されるためには、日常生活を送るにあたってしばしば介助が必要で、日中の50%以上は横になって過ごしており、自力での外出が不可能な程度、つまり2章でご紹介した一般状態区分表のうち少なくとも「エ」「オ」のいずれかに該当する必要があるといえるでしょう。

また、1型糖尿病を原因とする傷病((例)糖尿病性網膜症、糖尿病性壊疽、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症など)の程度や進行状況によっては、それらの傷病で2級以上に認定される可能性があります。

その他、1型糖尿病から腎不全に至った場合は、腎不全で障害年金を受給できる可能性があります。

詳しくは4-2をご覧ください。

 

3 診断書を依頼する際の注意点

障害年金を申請するためには、医師の作成した診断書を提出する必要があります。
診断書は障害年金の申請にあたって一番重要な書類です。

障害年金は書類審査であり、審査官と一度も面談することなく提出した書類の内容ですべてが決まってしまいます。

どんなに症状が重くても、日常生活に支障が出ていても、提出した書類でそれが伝わらなければ不支給になってしまうこともありえるのです。

お医者さんに診断書を作成してもらったら、記入漏れがないかしっかり確認してください。

糖尿病で申請する場合、診断書はこちらを使用します。
腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用の診断書(PDF)

【診断書表】

【診断書裏】

 

 

4 知っておきたい3つのポイント

 

4-1 初診日を証明するためにできること

障害年金の請求においては、「初診日」を特定することが大事なポイントです。

初診日とは、病気のために初めて病院を受診した日のことを指します。この初診日を基準として、支給される障害年金の種類が変わったり、障害認定日(障害年金の請求ができるようになる日)が決まったりします。

1型糖尿病は20歳前に診断されることが多い病気です。重症化して障害年金を請求するタイミングでは、初診日が何十年も前にあって、病院にカルテが残っていなかったり、病院自体が廃院になっていたりして、初診日を証明することが困難な場合もあります。

初診日を証明するためには、初めて受診した病院(1院目)から【受診状況等証明書】をとりつける必要がありますが、この証明書を1院目で取得できなかったときは、2院目、3院目…とどこかの病院で書いてもらい、提出しなければなりません。

2院目、3院目のカルテに、「1院目に〇年ごろ受診していた」ことが記載されていれば、それを受診状況等証明書に書いてもらったり、カルテの写しを参考資料として提出し、初診日を申告することが可能です。

その他参考資料として、初診日のある病院の名前と初診日頃の日付の記載がある、以下のような資料を探して、提出することができれば、初診日を証明することができます。

  • 身体障害者手帳申請時の診断書
  • 母子健康手帳
  • お薬手帳、糖尿病手帳、病院の領収書、診察券の写し
  • 小学校、中学校の健康診断の記録や成績通知表
  • インフォームドコンセントによる医療情報サマリー
  • 初診日当時加入していた健康保険組合の診療報酬明細書
  • 第三者証明(友人や3親等以外の親族が、1院目を受診していたことを証言する書類)  など

初診日の証明方法について、詳しくはこちらの記事も参考にしてください。

障害年金の申請に必須!初診日証明の方法と書類の確認ポイントを解説

 

4-2 合併症を発症している場合

糖尿病が原因となる下記のような合併症を発症している方はいらっしゃいませんか。

合併症を引き起こしている方は、糖尿病の症状・合併症の症状それぞれで3級に該当しそうな症状であれば、その障害に関しても診断書を提出することで、総合的な認定となり上位等級に認定される場合があります。

視力や視野障害があるときは眼の障害用の診断書を、糖尿病壊疽や神経障害など手足に障害があるときは肢体用障害用の診断書を、糖尿病の診断書とあわせて提出します。

腎疾患があるかたは、糖尿病の診断書の表面が腎疾患用の診断書になっているので、必要事項を主治医に記入してもらいましょう。

診断書が異なると、それぞれの認定基準も変わります。詳しくはそれぞれのページで認定基準をご確認ください。

 

5 まとめ

糖尿病の認定基準は、他の疾病に比べて原則等級が3級しか認められておらず、初診日に厚生年金保険料を自身で支払っていなかった場合、認定を受けるのが非常に難しくなっています。

申請をお考えの方は、まずは認定基準に該当する症状か主治医に確認をとった上で、障害厚生年金・障害基礎年金のどちらを請求することができるのかよく確認する必要があります。

障害基礎年金しか請求することができない方で、合併症を発症している場合は診断書を2通以上提出するとよいですが、その分提出書類が煩雑になりやすいので、障害年金専門の社労士に相談しましょう。

 

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