障害年金を請求する際、請求方法によっては「障害認定日」を特定する必要があります。
障害年金を請求するにあたって、まずは障害認定日とはどう行った日なのかご説明した上で、ケース別の障害認定日もご紹介します。
あなたの障害認定日がいつになるのか、きっと確認できるはずです。
1 障害認定日とは
障害年金の請求において、初診日から1年6ヶ月たった日のことを障害認定日といいます。
障害認定日は、「障害の程度の認定を行う基準日のこと」で、障害年金は障害認定日から請求することが可能になります。
障害年金を申請するには、第一条件として障害認定日を経過している必要があります。
1-1 障害年金の3つの請求方法
障害年金は「障害認定日頃の症状」または「障害認定日を過ぎて申請する頃の症状」の診断書でしか申請することができません。
障害年金が申請できるタイミング
基本的には障害認定日の時点で請求するか、申請する頃の症状(現症)の時点で障害年金を請求する方が多いのではないでしょうか。
ただし、まだまだ障害年金の知名度が低いこともあり、制度を知った時点で障害認定日を1年以上過ぎていた、という場合も多いのではないでしょうか。
このような場合は障害認定日までさかのぼって請求すること(遡及(そきゅう)請求)もできますが、さかのぼれる期間は最長5年までとなっています。
障害年金の3つの請求方法
特に「障害認定日請求」、「遡及請求」をする方は、障害認定日頃の診断書が必要ですので、障害認定日が重要であることがわかります。
1-2 障害認定日が初診日から1年6ヶ月後ではない場合
基本的には「障害の原因となった病気やケガで初めて病院を受診した日(初診日)から、1年6ヶ月を経過した日」を障害認定日としますが、その日よりも前に「症状が固定した」場合は、症状が固定した日(症状固定日と言います。)を障害認定日とすることもあります。
ちなみに「症状固定」とは、医学的にみて、治療を続けても症状改善の見込みがない状態のことを指します。
障害年金は障害認定日から申請できるようになりますので、申請準備の段階で必ず確認したい日です。また、症状固定日が障害認定日になれば、初診から1年6ヶ月待たなくても申請できる場合が多いです。
以下でケース別に、障害認定日がいつになるのかご案内いたします。また、症状固定日を障害認定日として障害年金を請求する場合の注意点についてもご説明していきます。
2 障害認定日を前倒しできる9つのケース
年金機構の規定でもうけられている症状固定日は以下の通りです。
初診日から1年6ヶ月を経過する前に以下の日をむかえたときは、その日が障害認定日になります。
- 人工透析開始日から3ヶ月たった日
- 人工肛門、人工膀胱、尿路変更術をした日
- 心疾患のため、ペースメーカーまたは人工弁を装着の手術をした日
- 人工血管、心臓移植、人工心臓、CRT/CRT-D装着の手術をした日
- 人工骨頭または人工関節の挿入手術をした日
- 切断、離断した日
- 喉頭を全摘出した日
- 在宅酸素療法を行った日
申請する病気やケガが上記のようなものではないときは、原則通り、初診日から1年6ヶ月たった日が障害認定日になります。
2-1 人工透析治療を受けている場合
初診日から1年6ヶ月経過する前に、「人工透析開始日から3ヶ月たった日」を迎えた場合は、この日が障害認定日になります。
分かりにくいので時間軸でお伝えすると、下の図のとおりです。
「初診日から数えて1年6ヶ月経つ前」に、「人工透析を受け始めた日から3ヶ月たった日」があればその日が障害認定日になります。
人工透析治療を受けている場合の障害認定日
下の図のように「人工透析を受け始めた日から3ヶ月たった日」が「初診日から数えて1年6ヶ月たった日」より後だった場合、また、そもそも「初診日から数えて1年6ヶ月たった日」の後に人工透析治療を初めて受け始めた方の場合は、障害認定日は「初診日から数えて1年6ヶ月たった日」になります。
注意すべきポイント
障害認定日を特定するためには、まず初診日がいつなのか確認する必要がありますが、人工透析を受けている方が障害年金を申請する場合は誤った初診日で申請しないように注意しましょう。
初診日は、「申請する病気の原因疾患で初めて病院を受診した日」をさします。腎不全の症状の原因が糖尿病であるなど、医師から原因疾患を告げられている方は気を付けてください。
また、診断書には必ず「症状固定している」ことを記載してもらう必要があります。診断書「(7)傷病が治ったかどうか」、「(9)手術歴」、「(12)の(3) 人工透析開始日」の欄には一律『人工透析を受け始めた日』を記入してもらうようにしましょう。
この記載がなければ、症状固定日を障害認定日として申告することができないので注意してください。
そのほかこちらの記事もご参考ください。
診断書の記載例
2-2 人工肛門、人工膀胱、尿路変更術をした場合
初診日から1年6ヶ月経過する前に、「造設・変更手術をした日から6ヶ月たった日」を迎えた場合は、その日が障害認定日になります。
人工肛門、人工膀胱、尿路変更術をした場合の障害認定日
下の図のように「造設・変更手術をした日から6ヶ月たった日」が「初診日から数えて1年6ヶ月たった日」より後だった場合、また、そもそも「初診日から数えて1年6ヶ月たった日」の後に手術を受けた場合、障害認定日は「初診日から数えて1年6ヶ月たった日」になります。
注意すべきポイント
初診日から1年6ヶ月経過する前に人工肛門、人工膀胱または尿路変更などの手術を受けたときは、その手術をした日に症状が固定したことになり、その日が障害認定日になります。
これらの病気で障害年金を申請する時は「血液・造血器・その他の障害用の診断書」を使用しますが、診断書表面「(7)傷病が治ったかどうか」、「(9)手術歴」、裏面「(15)の(3) 人工臓器等」の欄に、手術を受けた日を記入してもらう必要があります。
この記載がなければ、症状固定日を障害認定日として申告することができないので注意してください。
そのほかこちらの記事もご参考ください。
診断書の表面の記載例
診断書裏面の記載例
2-3 ペースメーカーや人工弁・人工血管手術をした場合
初診日から1年6ヶ月経過する前に、「心臓ペースメーカー(ICD,CRT,CRT-D含む)、人工弁、人工血管(ステントクラフトを含む)、心臓移植、人工心臓を装着した日」を迎えた場合は、その日が障害認定日になります。
ペースメーカーや人工弁・人工血管手術をした場合の障害認定日
注意すべきポイント
初診日から1年6ヶ月経過する前に心臓ペースメーカー、人工弁、人工血管、心臓移植、人工心臓装着などの手術を受けたときは、その手術をした日に症状が固定したことになるので、手術を受けた日が障害認定日になります。
これらの病気で障害年金を申請する時は「血液・造血器・その他の障害用の診断書」を使用しますが、診断書表面「(7)傷病が治ったかどうか」、「(9)手術歴」、裏面「(15)の(3) 人工臓器等」の欄に、手術を受けた日を記入してもらう必要があります。
この記載がなければ、症状固定日を障害認定日として申告することができないので注意してください。
診断書表面の記載例
診断書裏面の記載例
そのほかこちらの記事もご参考ください。
2-4 人工骨頭や人工関節を挿入した場合
初診日から1年6ヶ月経過する前に、「人工関節または人工骨頭を装着した日」を迎えた場合は、その日が障害認定日になります。
人工骨頭や人工関節を挿入した場合の障害認定日
注意すべきポイント
初診日から1年6ヶ月経過する前になどの手術を受けたときは、その手術をした日に症状が固定したことになり、その日が障害認定日になります。
これらの病気で障害年金を申請する時は「血液・造血器・その他の障害用の診断書」を使用しますが、診断書表面「(7)傷病が治ったかどうか」、「(9)手術歴」、裏面「(15)の(3) 人工臓器等」の欄に、手術を受けた日を記入してもらう必要があります。
この記載がなければ、症状固定日を障害認定日として申告することができないので注意してください。
診断書の記載例
【診断書裏面】
そのほかこちらの記事もご参考ください。
2-5 腕や脚を切断または離断した場合
初診日から1年6ヶ月を経過する前に「腕や脚といった、四肢を切断または離断した」場合は、その切断または離断した日が障害認定日になります。
腕や脚を切断または離断した場合の障害認定日
注意すべきポイント
腕や脚の切断、離断によって障害年金を申請する時は、「肢体の障害用の診断書」を使用しますが、診断書表面「(7)傷病が治ったかどうか」、「(11)切断又は離断・変形・麻痺」の欄に、切断・または離断した日をを記入してもらう必要があります。
この記載がなければ、症状固定日を障害認定日として申告することができないので注意してください。
診断書の記載例
2-6 脳血管障害による身体の機能障害の場合
脳梗塞、くも膜下出血といった脳卒中を発症し、身体の機能にまひなどの後遺症が残ったときは障害年金を請求することができます。
このとき、初診日から1年6ヶ月を経過する前に、「リハビリや投薬などの治療を続けてもそれ以上改善しない、症状が固定した」と医師が判断した場合は、その日が障害認定日になります。
脳血管障害による身体の機能障害の場合の障害認定日
注意すべきポイント
脳出血障害の後遺症で申請する時は、症状によって異なる診断書を使用します。
症 状 | 使 用 す る 診 断 書 | 症状固定日で申請できるか |
半身まひなど身体の機能障害 | 肢体の障害用の診断書 | できる |
そしゃくや食べ物を飲み下すこと(嚥下)に障害があるとき、および音声又は言語機能の障害があるとき | 聴覚・鼻腔機能・平衡機能、そしゃく・嚥下機能、音声または言語機能障害用の診断書 | できる |
認知機能障害、精神障害 | 精神障害用の診断書 | できる |
身体の機能障害、そしゃくや嚥下障害・音声又は言語機能障害であるときは、初診日から1年6か月経過する前に症状が固定した時、その症状固定日を障害認定日として申請することができますが、一方、脳血管障害による認知機能障害、精神障害は「症状が固定することがない」ため、初診日から1年6か月経過してから初めて申請できるようになります。
また、症状固定日で申請する時は診断書に必ず症状固定日を記入医して頂くよう、医師にお願いしましょう。
この記載がなければ、症状固定日を障害認定日として申告することができないので注意してください。
診断書の記載例
そのほかこちらの記事もご参考ください。
2-7 遷延性植物状態・意識障害の場合
遷延性植物状態、意識障害は障害年金1級に該当します。初診日から1年6ヶ月経過する前に、植物状態・意識障害に至った日から起算して3ヶ月経過した日を迎えたときは、その日を障害認定日として障害年金を請求することが可能です。
ただし、植物状態・意識障害に至った日から起算して3ヶ月経過した日の時点で、医学的観点から機能回復がほとんど望めないと認められる状態であることが必要です。医師にそのような状態であるか確認の上、診断書の作成を依頼するようにしましょう。
遷延性植物状態・意識障害の障害認定日
下の図のように「植物状態・意識障害に至った日から3ヶ月たった日」が「初診日から数えて1年6ヶ月たった日」より後だった場合、また、そもそも「初診日から数えて1年6ヶ月たった日」の後に植物状態・意識障害に至った場合は、障害認定日は「初診日から数えて1年6ヶ月たった日」になります。
注意すべきポイント
症状固定日で申請する時は診断書に必ず症状固定日を記入して頂くよう、医師にお願いしましょう。
この記載がなければ、症状固定日を障害認定日として申告することができないので注意してください。
診断書の記載例
2-8 喉頭を全摘出した場合
初診日から1年6ヶ月を経過する前に「喉頭を全摘出した」場合は、全摘出の手術を受けた日が障害認定日になります。
喉頭を全摘出した場合の障害認定日
注意すべきポイント
喉頭全摘出手術をして、発話に障害があるときは、「聴覚・鼻腔機能・平衡機能、そしゃく・嚥下機能、音声または言語機能障害用の診断書」を使用して障害年金を申請します。
症状固定日で申請する時は診断書に必ず症状固定日(手術を受けた日)を記入して頂くよう、医師にお願いしましょう。
この記載がなければ、症状固定日を障害認定日として申告することができないので注意してください。
診断書の記載例
2-9 在宅酸素療法をおこなっている場合
初診日から1年6ヶ月を経過する前に「在宅酸素療法を受けるようになった」ときは、在宅酸素療法を受け始めた日が障害認定日になります。
在宅酸素療法をおこなっている場合の障害認定日
注意すべきポイント
診断書は「呼吸器疾患用の診断書」を使用しますが、在宅酸素療法を受け始めた日(症状固定日)を障害認定日とするときは、診断書に細かく記入して頂く必要があります。
下記で診断書作成のための注意事項をあげてみましたのでご確認ください。
診断書の記載例1
診断書の記載例2
そのほかこちらの記事もご参考ください。(呼吸器疾患での請求について解説しています。)
3 20歳前に初診日があるときの障害認定日
20歳前に初診日があるときは、「初診日から1年6か月経過した日」か「20歳に到達した日」のいずれか遅い方が障害認定日になります。
基本的には「20歳に到達した日」が障害認定日になることが多いと思いますが、初診日の時点で18、19歳だった方は注意してください。
20歳前に初診日があるときの2つの障害認定日
3-1 先天性疾患で申請するときは20歳到達日が障害認定日
先天性疾患(知的障害、発達障害を含む)は、初診日が「申請者の出生日」になります。障害認定日は20歳の誕生日の前日になります。
4 まとめ
今回の記事では、障害年金申請の準備をはじめる際に確認しておきたい、障害認定日についてご説明いたしました。
障害年金は障害認定日の時点から申請が可能になります。
通常の障害認定日(初診日から1年6ヶ月たった日)よりも早く申請できる場合がありますので、損をしないように十分注意しましょう。
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