障害年金の請求書は記入すべき項目が多くて面倒ですよね。
今回はズバリ、年金請求書の中で重要な項目の書き方や、押さえておくべきポイントについてわかりやすく解説します。
初診日を書き間違えてしまうと審査に時間がかかったり、場合によっては障害年金を受給することができない可能性があります。
記事の中で解説しますのでよくご確認の上、記入してください。
また、平成27年に開始されたマイナンバー制度に伴う、年金機構でのマイナンバーの取り扱いや、申告した場合のメリットについてもご説明します。
監修者:「西川 暢春」からのワンポイント解説!
今回の記事では、障害年金の年金請求書について解説していますが、その他にも障害年金の申請に関連する基礎知識やお役立ち情報を以下でご紹介しておきますので、あわせてご覧下さい。
・障害年金をもらうために必要な書類を解説!これでバッチリ把握できる
・障害年金をもらうために診断書は必須!作成依頼のポイントを解説
1,障害年金の年金請求書とは?
障害年金の請求書は、初診日に加入していた制度によって様式が違います。
様式を間違えないようにご注意ください。
請 求 書 様 式 | 請 求 書 使 用 者 |
初診日時点で厚生年金または共済年金に加入していた方 |
|
初診日時点で、国民年金に加入していた方・配偶者の扶養に入っていた方・20歳未満だった方・60歳以上65歳未満だった方 |
記入欄が多く手間取ってしまうこともあるかもしれませんが、落ち着いて記入いただければ大丈夫です。
もし書き間違ってしまったら、二重線と修正印を押して、正しいものを近くに記入しましょう。
2,初診日などを記入する項目に注意!
請求書は、初診日などを記入する項目に気を付けて記入して頂ければ、大きな問題は有りません。
もし間違った記載があったとしても年金事務所から訂正の指示があるだけで、審査に影響はありません。
その他記入欄については、以下の年金機構から出ている記入例を参考にして下さい。
▶参考情報:日本年金機構「障害厚生年金の記入例」(PDF)
▶参考情報:日本年金機構「障害基礎年金の記入例」(PDF)
初診日などを記入する項目は、障害基礎年金請求書であれば(カ)欄、障害厚生年金請求書であれば(14)欄を指します。(請求書の最後のページです。)順に確認して行きましょう。
2-1,障害給付の請求事由欄
「(1)欄」から順に説明します。
障害年金には様々な請求方法がありますが、請求書を記入する場合に限って言えば、4通りの請求方法があります。
下の表をご確認いただき、1~3のうちいずれか1つを〇で囲みましょう。
請求方法 | 診断書枚数 | 請 求 方 法 |
障害認定日請求 →「1」を〇で囲む |
1枚 | 初診日から1年6ヶ月経った日(障害認定日)から3ヶ月以内の障害状態がわかる診断書1枚で請求する方法。 |
障害認定日請求 (さかのぼり請求) →「1」を〇で囲む |
2枚 |
障害認定日から3か月以内の症状と、請求日から3ヶ月以内の現在の障害状態がわかる診断書の各1枚(計2枚)の診断書で請求する。 |
事後重症請求 →「2」を〇で囲む |
1枚 |
障害認定日頃は症状が軽度で、障害年金が受給できる程度ではなかったが、その後悪化して症状が重くなった。 もしくは 障害認定日頃の症状で以前請求したが、不支給になった。といった場合に、請求日から3か月以内の現在の障害状態がわかる診断書1枚で請求する方法。 |
初めて1級または2級に該当したことによる請求 →「3」を〇で囲む |
2枚以上 |
65歳より前に、1つの障害と他の障害をあわせて、初めて認定基準の2級以上の障害状態になったときに請求する方法。1級または2級の障害年金を受け取ったことがある人は、この方法ではなく、改めて他の障害で障害認定日請求または事後重症請求をおこないましょう。 |
このうち「2.事後重症による請求」を〇で囲んだ方は、表記の中からあてはまる請求の理由を選択します。
初診日から1年6ヶ月目(障害認定日)の障害状態がわかる診断書が入手できなかった、障害認定日時点で病院を受診していなかったなどの場合は、「3.その他」を選択して、その旨を記入してください。
▶参考情報:障害認定日については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
2-2,過去に障害給付を受けたことがあるか
過去に障害年金、障害手当金を受給したことがある場合は、「1.はい」に〇を付けてください。
その上で右欄に、給付の名称(障害年金なら、障害基礎年金もしくは障害厚生年金など)、基礎年金番号もしくは4ケタの年金コードを記入しましょう。
これらは年金証書で確認することができますが、不明であれば年金事務所で確認してください。
過去に障害給付を受けたことが無い場合は、「2.いいえ」に〇をつけましょう。
2-3,傷病名・傷病の発生した日・初診日の欄
1,「傷病名」
傷病名は、診断書に記載された通りに記入してください。
2,「傷病の発生した日」と「初診日」は、受診状況等証明書(受診状況等証明書がなければ診断書)に記載された通りに記入してください。
傷病の発生した日や初診日は、請求者が申し立てた日付よりも、医師や医療機関が証明した日が正式なものと判断されます。
特に初診日は、できるだけ全ての書類で一致していることが望ましいので注意して記入しましょう。
請求書と共に提出する証明書や診断書と記載が一致していないと、請求者の申立てに統一性がないとみなされ、確認作業に時間がかかり、審査が長引いてしまうので注意してください。
▶参考情報:初診日について詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせてご覧下さい。
2-4,加入していた年金制度や現在の傷病に関する欄
1,初診日において加入していた年金制度
それぞれあてはまるものに〇を付けてください。
「1.国年」 |
初診日において国民年金に加入していた方(昭和61年4月以降に初診日がある20歳以上の方は、年金保険料を支払っていなくても強制加入になっています)、配偶者の扶養に入っていた方、免除申請をしていた方 |
「2.厚生」 | 初診日において厚生年金に加入していた方 |
「3.共年」 | 初診日において共済年金に加入していた方 |
「4.未加入」 | 初診日において20歳未満だった方、もしくは初診日において60歳以上65歳未満で年金制度に加入していなかった方 |
2,現在傷病は治っていますか?
傷病が治っている(症状が固定している)場合は、「1.はい」に〇をつけましょう。
治っていない場合は「2.いいえ」に〇をつけてください。
「症状が固定した日」とは以下のような日を指します。「1.はい」を選択した場合は、確認して日付を記入しましょう。
障害 | 施術、障害 | 症状が固定した日 |
聴覚など |
咽頭全摘出の手術 | 咽頭全摘出の手術を受けた日 |
肢体 |
人工骨頭、人工関節の挿入手術 |
挿入手術を受けた日 |
切断または離断による肢体の障害 |
切断又は離断日 | |
脳血管障害(脳梗塞後遺症など)による機能障害 |
診断書の「⑦傷病が治ったかどうか。」の欄に書かれた日 | |
呼吸器 |
在宅酸素療法 |
開始日(常時使用の場合) |
循環器 (心臓) |
人工弁、心臓ペースメーカー、植込み型除細動器(ICD)の装着手術 |
装着手術を受けた日 |
心臓移植、人工心臓、補助人工心臓の挿入手術 |
移植手術を受けた日 または装着手術を受けた日 |
|
CRT(心臓再同期医療機器)、CRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)の装着手術 |
装着手術を受けた日 | |
胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤により人工血管(ステントグラフトも含む)の装着手術 |
装着手術を受けた日 | |
腎臓 | 人工透析療法 |
透析開始日から起算して3ヶ月を経過した日 |
その他 |
人工肛門造設、尿路変更術、新膀胱造設の手術 |
手術後6ヶ月経過した日 |
遷延性意識障害(遷延性植物状態) |
その状態に至った日から起算して3ヶ月を経過した日 |
診断書でも確認することができますので、自分の症状固定日がよくわからない場合は、ひとまず「2.いいえ」に〇をしておきましょう。
記入が間違いであったとしても、診断書で確認できれば修正が必要な欄ではありません。
2-5,傷病の原因が業務上かどうか?
障害年金を請求する障害・ケガの原因が業務上である場合は、「1.はい」に〇を付けてください。
その上で、下の欄にあるいずれかの法律によって労災保険の給付を受けることができる場合は、この請求書で申告が必要ですので適宜記入してください。
なお、厚生年金保険法第56条3号により、労災の障害補償給付を受ける権利がある場合は労災給付が優先されるため、障害手当金は支給されません。
▶参考情報:障害手当金とは、障害厚生年金を申請した方が対象で、障害の程度が手当金の支給基準に該当した場合に支給される一時金です。以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
2-6,障害の原因が事故によるか?
記入欄には、「障害の原因が第三者の行為によるか」と記載されていますが、自損事故も含まれます。「障害の原因が事故による」ものであれば、「1.はい」を選択してください。
事故に相手がいる場合は、わかる範囲で相手(第三者)の氏名と住所を記入しましょう。
ここに記入した方は、請求書と一緒に「交通事故証明書」や「確認書」、「事故状況届」を提出する必要があります。
2-7,特別一時金を受けたことがあるか?
昭和61年4月以前に配偶者の扶養に入っていた方、(または平成3年4月以前に学生だった方)には当時、国民年金に加入してもしなくてもよいといった「任意加入制度」が取られていました。
その結果、任意加入制度だったことで加入していなかった期間に発病日や初診日があった方が障害年金を受け取ることができないといった弊害がおこってしまい、そういった方への救済措置として「特別一時金(特別障害給付金)」を支給するといった制度があります。
この特別一時金を以前受けたことがある方は、「1.はい」に〇をつけてください。
▶参考情報:「特別一時金(特別障害給付金)」については、以下の日本年金機構の制度解説ページをご覧下さい。
3,年金加入記録の履歴の書き方
厚生年金用請求書の3ページ目、基礎年金用請求書の2ページ目に過去の年金加入記録の履歴を書く項目があります。
記入例には、勤務先や国民年金加入時の住所を記入するように記載されていますが、実際は白紙でも提出することができます。
このような履歴は、年金機構内での本人確認作業時に確認されるもので、年金記録に不備がないか改めて確認するためにも使用されます。
この項目について詳しく記入したい時は、年金事務所で加入記録を取り寄せてみましょう。
郵送で取得できる場合もありますので、詳しくはお近くの年金事務所に問い合わせて見てください。
4,請求書にマイナンバーを登録するメリット
平成27年10月から、国民1人につき12ケタのマイナンバーが通知されました。
▶参考情報:「マイナンバー総合サイト」をご覧下さい。
このマイナンバーと基礎年金番号が結びつくことによって、氏名や住所が変わった時に年金事務所に届け出る必要がなくなります。
障害年金は受給後も年金機構から以下のような通知が届きます。
【受給後に年金機構から届く通知】 更新の診断書(障害状態確認届)、所得状況届(20歳前に初診日がある方のみ)、支給額変更通知書など |
これらの確認・返送が遅れると受給中の障害年金が止まってしまうことがあるので、氏名や住所が変わったときは必ず届け出なければなりません。
ただし各市区町村で管理しているマイナンバーと基礎年金番号がひもづいていれば、市区町村に転入届を出すだけで年金事務所でも住所を変更したことがわかるようになります。
4-1,請求書にマイナンバーを記入した時の必要書類
マイナンバーを請求書に記入した場合、請求書と共に以下の書類の提示(郵送の場合はコピーの提出)が必要です。
マイナンバーがわかる書類と、身元確認ができる書類を持参しましょう。
マイナンバーカードを持っている場合 |
マイナンバーカード1枚でOK |
マイナンバーカードを持っていない場合 |
身元確認ができるものと、マイナンバーがわかるものが必要。 【身元確認ができるもの】 ・運転免許証、運転経歴証明書
【マイナンバーがわかるもの】 ・通知カード |
5,まとめ
障害年金の請求書の作成方法、お分かりいただけましたでしょうか。
請求書と言えど、とくに初診日の項目については非常に重要なものであるとお伝えしました。
マイナンバー制度も上手に活用しながら、障害年金の申請を進めてください。
患者団体や病院の方、あるいは報道機関から、この記事を利用したいとのお問い合わせをいただくことがあります。
障害年金の制度を患者の方にお伝えいただく目的で使用いただくのであれば、無償で利用していただいて結構です。
ただし、以下のルールを必ず守っていただきますようにお願いいたします。
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