思うように歩けないと、とても不便に感じますよね。
歩行できないと外出はおろか、自宅の中でも思うように動けず四苦八苦してしまうことと思います。
病気やケガのために、日常生活に大きな支障がある場合には、申請すれば障害年金を受給することができます。ただしどれくらいの症状であれば支給する、といった基準が年金機構で定められているので、その基準をクリアしなければなりません。
この記事では、脊柱管狭窄症・ヘルニアの症状で障害年金を申請する前に確認しておきたい、障害年金の支給条件や、重要な提出書類についてご説明いたします。
1 脊柱管狭窄症・ヘルニアでも障害年金の申請が可能!
脊柱管狭窄症・ヘルニアも障害年金の対象です。
症状が重く、仕事や日常生活に大きく支障が出ている場合は、障害年金の申請を検討しましょう。
障害年金とは?
病気やケガなどによって日常生活や仕事に支障が出ている方が受給できる年金です。
申請は20歳から65歳になる前々日までに行う必要があります。
日本年金機構が認定し、支給している国の制度で、年金の納付要件や障害の程度などの受給できる条件を満たしていれば、受給することができます。
障害年金の等級は1~3級で、初診日(病気のために初めて病院に行った日)に加入していた制度や、症状の程度によって該当する等級が変わります。
- 初診日に国民年金に加入していた、または20歳前に初診日がある場合(障害基礎年金):1級もしくは2級
- 初診日に厚生年金に加入していた場合(障害厚生年金):1級、2級、3級、もしくは障害手当金
(共済年金は現在、厚生年金と一元化されています)
2 認定の条件
障害年金を受給するには、
- 日本年金機構が定めている基準に該当する障害状態であること
- 初診日の時点で一定期間年金を納付(または免除)していること
の2つを満たしていなければなりません。
以下で順にご説明いたします。まずは日本年金機構の認定基準を確認しましょう。
2-1 障害状態の認定基準
脊柱管狭窄症・ヘルニアは「体幹・脊柱の認定基準」で認定されます。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | いすの腰かけ、正座、あぐら、横すわりのいずれもできないもの |
横になっている状態や座っている状態から、自力のみで立ち上がれず、他人、柱、杖、その他の器物の介護または補助によりはじめて立ち上がることができる程度 | |
2級 | 室内において杖、松葉杖、その他の補助用具を必要とせず、起立移動が可能であるが、野外ではこれらの補助用具の助けを借りる必要がある程度 |
脊柱の障害のため、日常生活における動作が一人でできるが非常に不自由な場合
【日常生活における動作】はおおむね次のとおり。 ・ズボンの着脱(どのような姿勢でもよい) ・靴下を履く(どのような姿勢でもよい) ・座る(正座、横すわり、あぐら、脚なげ出し) ・深くおじぎ(最敬礼)をする ・立ち上がる |
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3級 (障害厚生年金が申請できる方のみ) |
身体の後ろ側、首から尻までの部分に明らかな外的要因からくる変化のため、脊柱の可動域が通常の1/2以下に制限されたもの |
簡単にご説明すると、
座ること・立ち上がることが、一人ではまったくできない状態は1級、
室内では必要でなくても、屋外では補助器具がなければまったく歩行できない状態は2級、
脊柱の可動域が通常の1/2以下に制限されているものは3級に認定される見込みです。
現在確認して頂いた認定基準は簡素的なものですので、あくまでも目安としてお考えください。
実際には、診断書で上記の認定基準に該当することが認められれば、等級に認定されます。
続いて、もう一つの受給条件である、年金の納付要件についてご説明します。
2-2 年金の納付要件
生命保険や入院保険などと同じく、年金も保険の一つです。
そのため、症状のために初めて病院を受診した日(初診日)までの年金の納付状態が審査されます。(初診日が20歳前の場合は所得額が審査対象になります。詳しくは→「障害年金 20歳前障害の記事に飛ばす」)
以下の条件のうち、どちらかに当てはまれば障害年金の支給対象になります。
初診日の時に、国民年金、厚生年金、共済年金に加入していた方で (1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること(原則) または (2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(特例) |
ご自身が上記の納付要件を満たしているか確認してください。
未納期間や免除期間がある場合は、お近くの年金事務所でご相談いただくと確認することができます。
3 障害年金を受給するための3つの重要書類
2章では障害年金が受給できる人の条件についてご説明しました。
続いて障害年金の申請準備にあたって、3つの重要な書類の取り付け方や作成の方法についてご説明していきます。
3-1 受診状況等証明書
「受診状況等証明書」とは、脊柱の症状(手足のしびれや歩行が続かないなど)のために初めて病院を受診した日(初診日)を証明するための書類です。
医療機関で記入してもらう書類ですので、接骨院・整骨院や鍼灸院などではなく、整形外科などの病院で記入してもらいましょう。
もしも初診日のある病院で、すでにカルテが破棄されていたり、廃院になっていて受診状況等証明書がとれない場合は、病院の診察券や健康診断時の病院への紹介状、生命保険等の給付申請時の診断書などの参考資料と一緒に「受診状況等証明書が添付できない申立書」という書類を提出しましょう。
この時、参考資料に初診病院の名前、初診日頃の日付の記載があると、初診日が認められやすくなります。
初診日証明について、詳しくは「障害年金の申請に必須!初診日証明の方法と書類の確認ポイントを解説」を参考にして下さい。
3-2 診断書
初診日から1年6ヶ月経過していれば、「肢体の障害用の診断書(PDF)」を主治医に書いてもらいましょう。
記入漏れがあると、適正な審査がおこなわれず障害年金を受給できない事もあります。
記入漏れがないか確認しましょう。 |
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たとえば裏面「(19)補助用具使用状況」については、起床から就寝まで常時使用しているのか、屋外で歩行する際のみ使用しているのか細かく記入が必要です。
診断書に不備があると、その都度病院へ行って修正してもらう必要があるので非常に手間と時間がかかります。なるべく1度で済むように、診断書をよく確認してください。
3-3 病歴・就労状況等申立書
「病歴・就労状況等申立書」とは、発病したときから現在までの経過を3~5年に区切って申告するための書類です。受診状況等証明書や診断書と違い、請求者がみずから作成する書類です。
いままでの病状や日常生活、就労状況について請求者が直接申告できる唯一の書類ですので、下記をご参考にして頂き、具体的に記入してください。
また、診断書と矛盾がないように記載するとなおよいでしょう。
たとえば、診断書裏面の日常生活能力の程度の欄の下半身の動作に関して、「一人でできない」を選択されているのであれば、病歴・就労状況等申立書には「歩行器がないと歩けない、痛みで脚に力が入らなくなるので壁を伝って歩くこともできない。」など、記入するとよいでしょう。
受診していた期間について | ・どのくらいの期間、どのくらいの頻度で受診したか |
・入院した期間やどんな治療をして、改善したかどうか | |
・医師から言われていたこと | |
・日常生活状 (具体的にどんな症状があって、どう困っていたか。) |
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・就労状況 (週に何日、1日何時間働いているか。仕事中や仕事後に体調に変化があれば記入する。障害のために生じている仕事の制限や職場での配慮があれば記入する。) |
受診していなかった期間について | ・受診していなかった理由 (症状が固定していて病院に行く必要がなかった、経済的に行けなかった等) |
・自覚症状の程度 (いつどんな症状がどの程度あったか。) |
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・日常生活状況 (普段通りではなかったことがあれば記入する。) |
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・就労状況 (障害によって仕事に支障がでていたか等を記入する。) |
4 まとめ
今回の記事では、脊柱管狭窄症・ヘルニアの症状で障害年金を申請する際に確認しておきたい、
・障害年金が受給できる条件(程度の基準と一定額の年金を納めているか)
・申請に重要な3つの書類(受診状況等証明書、診断書、病歴・就労状況等申立書)
を説明いたしました。
診断書、病歴・就労状況等申立書は特に重要な書類です。記入漏れや記載ミスなどがあれば必ず提出前に修正するようにしましょう。
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