障害年金の支給はいつまでか、これといった案内がなく疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は次回診断書提出年月までは、20歳前に初診日のある方以外は所得額などに左右されず支給されます。
今回の記事では受給期間について説明するとともに、受給し続けるためのポイントや支給停止になるケースとその対応方法などを理解することができます。
1 次回更新時期までは障害年金が支給される
障害年金の受給期間は人それぞれ異なり、ほとんどの方は、初めて認定を受けた年から1~5年後に診断書を再提出しなければなりません。
これをいわゆる「障害年金の更新」といいます。この更新時期までは障害年金の支給が続きます。更新の診断書で症状が継続・悪化している場合はさらに支給が続き、症状が改善されて等級に該当しない場合は支給停止になります。
症状の固定性が高いご病気(人工透析やペースメーカー置換など)は5年周期の更新、精神疾患については1,2年の周期で更新になる方が多いようです。(障害年金の受給者のおよそ7割は更新があります。)
1-1 次回更新時期は年金証書で確認する
あなたの次回更新時期は年金証書で確認することができます。
年金証書の右下に「次回診断書更新月」が記載されているので確認してみましょう。その月の初旬に日本年金機構から診断書が送られてきます。提出期限は月末と非常に短いですが、なるべく遅れないように提出してください。
この「次回診断書更新月」の欄に数字がなく、「****年****月」などと書かれている場合は障害年金が永久認定であることを示しています。この場合更新はなく、請求者が死亡した月の分まで障害年金が支給されます。
1-2 移植手術の術後1年間は同額支給される
すでに障害年金を受けている方が臓器移植を受けた場合、原則術後1年間は、臓器移植を受ける前の等級と同じ等級のまま、継続して障害年金が支給されます。
なお、心臓移植、人工心臓の移植手術を受けた方に限り、手術後は1級に認定されます。
2 障害年金を受け続けるポイント
障害年金を受け続けるには、更新の診断書に現在の症状をきちんと書いてもらうことが重要です。
自覚症状や日常生活で困っていることは必ず主治医に伝え、診断書に記入してもらいましょう。
また、診断書の内容が実際よりも軽く書かれていると支給停止になる可能性があります。必ず確認して、修正してもらいましょう。
特に現在一人暮らしをしている方や、仕事をしている方は以下の点に注意してください。
現在一人暮らしをしている方
- ヘルパーや訪問介護、別居している家族などの定期的な訪問がある
- 介護施設や療育施設に住んでいる
→当てはまる方は必ず診断書の備考欄などに記入してもらいましょう。
仕事をしている方
- 勤務形態や週の平均勤務日数、1日の労働時間
- 就労支援所での勤務かどうか
- 仕事をするうえで配慮してもらっていること
→これらを診断書の裏面下部の「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」の欄に記入してもらいましょう。
詳しくは「不安解消!障害年金更新の診断書の作成、記載、提出について」の記事をご確認ください。
3 障害年金が支給停止になる3つのケース
ここまででお伝えしたように、障害年金は原則、更新時に症状の改善が認められて等級が下がらなければ支給停止になるようなことはありません。
以下のような場合は障害年金の支給が停止してしまうので注意しましょう。
3-1 症状が認定基準に該当しなくなった場合
更新時に提出した診断書の内容が、認定基準に該当しない場合は障害年金が支給停止になります。
万が一支給停止になってしまった場合、支給を再開してもらうためには「支給停止事由消滅届」と診断書などを年金事務所に提出しましょう。
詳しくは「これならできそう!障害年金を支給停止事由消滅届で再開させる方法」の記事をご確認ください。
3-2 提出物を期限内に出せないと支給停止になる場合も
障害年金を受給しているときは、以下のような書類を定期的に提出しなければなりません。
〇障害状態確認届(障害年金を更新する際の診断書。)
〇現況届(受給者の生存確認の書類。マイナンバーを登録している場合は提出不要。)
〇生計維持関係確認届(配偶者や子の加算を受けている人が年に1回提出する。)
〇所得状況届(20歳前に初診日がある方のみ。毎年7月に所得証明書の提出が必要。)
上記の書類は、あなたの誕生月や毎年7月のはじめに年金機構から送られてきます。届いたら必ず提出期限内に年金機構へ返送するようにしましょう。
提出期限を過ぎてしまうと、年金機構が「障害年金受給者の現状が確認できない」として、障害年金の支給を停止してしまいます。どうしても期限内に間に合わない場合は、必ず年金事務所に事前に相談してください。
障害年金を受給している人が定期的に提出しなければならない書類について、詳しくはこちらの記事も参考にして下さい。
3-3 20歳前に初診日がある方は所得によって支給停止になる
20歳前に初診日があって障害基礎年金を受けている方は、障害状態が改善したことによる停止以外にも、所得額によっては支給停止になります。
毎年7月に「所得状況届」という書類を提出する必要があり、この書類の提出が遅れた場合や提出しなかった場合でも、障害年金が一時的に支給停止になります。
受給者本人の年間所得が360万4000円以上の場合、障害年金の額が減額、または支給停止になります。
障害年金申請時、 年金事務所に所得証明書を提出して、下記を証明する必要があります。
受給権者の年間所得 | 360万4000円未満 | 360万4000円以上 | 462万1000円以上 |
障害年金額 | 全額支給 | 1/2支給停止 | 全額支給停止 |
※所得とは…収入額からその収入を得るためにかかった必要経費と障害者控除等の諸控除を除いたものです。
市町村役場で発行される所得証明書等で確認することができます。
扶養家族がいる方は、扶養家族1人につき38万円を加算した額が所得制限額になります。
ただし、70歳以上の老人扶養親族については1人につき48万円、16歳以上23歳未満の特定扶養親族については1人につき63万円が加算されます。
所得制限額を超えた場合、その年の8月分から翌年の7月分までの1年間、障害年金が支給停止、もしくは減額になります。
支給停止、減額されても毎年所得状況届の提出が必要で、所得が基準より下がっていることが確認できた年の8月分から支給が再開されます。
20歳前に初診日がある方は、次のいずれかに該当するときも、障害年金が支給停止になります。 〇刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されているとき |
4 まとめ
今回の記事では、障害年金の受給期間について、認定された年月から
〇更新がある場合:次回更新月まで支給される→症状が等級に該当しなくなれば支給停止になる
〇更新がない場合:受給者が死亡した月の分まで支給される
また、障害年金を受給し続けるポイントと、障害年金が支給停止になるケースを3つご紹介いたしました。
少しでも不安が解消されれば幸いです。
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