聴覚障害で障害年金が受け取れる基準と重要な3つのポイント

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障害年金は「ケガや病気のため、日常生活や仕事に支障がある」場合にはじめて支給対象になりますが、実際にはあなたの障害の程度が、日本年金機構が定める認定基準に該当し、かつ、初診日までの一定期間に年金の未納がないかといった条件をクリアしなければ受給できません。

今回の記事では、聴覚障害で障害年金を申請する前に確認しておいてほしい、「聴覚の障害に関する認定基準」や、「初診日までの年金の納付要件」についてご説明したうえで、申請時に重要な3つの書類の準備の仕方などについてご説明いたします。

1 聴覚の障害でも障害年金は受給できる!

障害年金は聴覚の障害も受給対象です。日常生活や仕事に支障が出ていれば申請を検討しましょう。

障害年金とは?

病気やケガなどによって日常生活や仕事に支障が出ている方が受給できる年金です。

申請は20歳から65歳になる前々日までに行う必要があります。

日本年金機構が認定し、支給している国の制度で、年金の納付要件や障害の程度などの受給できる条件を満たしていれば、受給することができます。

 

障害年金の等級は1~3級で、初診日(病気のために初めて病院に行った日)に加入していた制度によって該当する年金が変わります。

 

  • 初診日に国民年金に加入していた、または20歳前に初診日がある場合(障害基礎年金):1級もしくは2級
  • 初診日に厚生年金に加入していた場合(障害厚生年金):1級、2級、3級、もしくは障害手当金

(共済年金は現在、厚生年金と一元化されています)

 

 

2 障害年金の認定基準

 

2-1 聴覚の障害に関する認定基準

聴覚障害の認定基準は以下の通りです。数値は補聴器などの補助器具を使用しない状態で計測します

なお障害年金の等級は、身体障害者手帳の等級とは関係ありません。

平均純音聴覚デシベル値や最良語音明瞭度とは、あなたの聴覚レベルから計算して算出する平均値等を指します。

また、両耳の聴覚レベルが100デシベル以上の場合は聴性脳幹反応検査(ABR検査)と呼ばれる、音を聞いたときの脳の反応についての検査が必要です。

 

2-2 平衡機能の障害がある場合の認定基準

特に内耳性の聴覚障害の場合、耳の奥にある三半規管という身体のバランスをとるための器官がありますが、ここに何らかの異常が認められる場合はめまいを生じます。そのため、聴覚、内耳に異常がある場合は平衡機能障害を起こしやすいと言われています。(メニエール病などが一例です)

聴覚障害の診断書にはこれらの障害についても記載する欄があり、一定の基準を満たせば等級に該当し、併合認定される場合があります。

併合認定とは、複数の障害が等級に該当した場合、それらをあわせて1つの障害として認定することを指します。例えば聴覚の障害で2級、平衡機能の障害で2級であった場合、あわせて1級と認定される可能性があります。

 

平衡機能の障害の認定基準

これらは「四肢の体幹に内臓の障害や外観から確認できる異常」がない場合の障害がこの認定基準で判定されます。

例えば脊髄や脚の障害でよろけて歩けない、立った状態を保持できないという場合は「肢体の障害」として認定されるため、上記の平衡機能障害の基準では審査されないので注意しましょう。

 

3 初診日までの年金の納付要件を確認する

ここまでで、どの程度の障害であれば障害年金の等級に該当するかについてご説明しました。

しかし障害年金は、障害状態の他に、初診日までの「年金の納付要件(条件)」を満たしていなければなりません。以下を確認してください。

初診日の時に、国民年金、厚生年金、共済年金に加入していた方で

(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること(原則)

または

(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(特例)

(1)もしくは(2)に該当しなければ条件を満たしていないので、障害年金を受給することができません。

自分が納付要件を満たしているか分からない場合は、お近くの年金事務所で教えてもらいましょう。

 

4 障害年金を受給するための3つの重要書類と取付け方法

ここまでで、障害年金が受給できる人の条件についてご説明してきました。

続いて障害年金の申請準備にあたって、重要な書類の取り付け方や作成の方法についてご説明していきます。

 

4-1 受診状況等証明書

受診状況等証明書」とは、聴覚障害のために初めて病院を受診した日(初診日)を証明するための書類です。

障害年金の受給資格や納付状況を確認するために、かならず初診日を証明しなければなりません。

初診日のある病院で作成を依頼しましょう。(診断書を書いてもらう病院が初診病院である場合は必要ありません。)

もしもあなたが先天性の聴覚障害である場合は、聴覚障害が判明した病院で受診状況等証明書を書いてもらう必要がありますが、20年以上前であると病院に記録が残っていない可能性があります。

そのような場合は、母子手帳や学校でおこなわれた聴力検査時の結果などの参考資料と一緒に「受診状況等証明書が添付できない申立書」という書類を提出しましょう。

この時、参考資料に初診病院の名前、初診日頃の日付の記載があると、初診日の証明が通りやすくなります。

初診日証明について、詳しくは「障害年金の申請に必須!初診日証明の方法と書類の確認ポイントを解説」を参考にして下さい。

 

4-2 診断書

聴覚の障害用の診断書を主治医に書いてもらいましょう。

ただし両耳の聴力レベルが100デシベル以上である場合は、脳の反応の検査(ABR検査など)の数値を診断書に記載する必要があります。

タウンクリニックや診療所には検査機器が置かれていない場合があるので、主治医に相談してください。

医師に診断書を書いてもらえましたら、必ず以下の点を確認してください。
診断書に不備があると、年金機構から診断書が戻ってきてしまいますので注意してください。

 

1.診断書に赤字で書かれている以下について記載漏れはありませんか。

(8)診断書作成医療機関における初診時所見の初診年月日および所見
(10)障害の状態の現症時の日付
(11)現症時の日常生活活動能力及び労働能力
(12)予後

 

2.診断書(10)障害の状態について
  • 補聴器をはずして測定した数値か
  • オージオグラムや語音明瞭度曲線(90デシベル以下の場合)に記載漏れはないか
    →特にオージオグラムの場合、〇、×、[、]のすべての記号が記載されているか確認しましょう。

上記はオージオグラムの記入例です。
〇は右耳の気導聴力、×は左耳の気導聴力、[ は右耳の骨導聴力、] は左耳の骨導聴力を表しています。

 

4-3 病歴・就労状況等申立書

病歴・就労状況等申立書」とは、発病したときから現在までの経過を3~5年に区切って申告するための書類です。

受診状況等証明書や診断書と違い、請求者が作成する書類です。

いままでの病状や日常生活、就労状況について請求者が直接申告できる唯一の書類ですので、下記をご参考にして頂き、具体的に記入してください。

受診していた期間について ・どのくらいの期間、どのくらいの頻度で受診したか
・入院した期間やどんな治療をして、改善したかどうか
・医師や看護師から言われていたこと
(補聴器をつけるように言われた、手話教室に参加するように言われた等)
・日常生活状況
(具体的にどんな症状があって、どう困っていたか。例:回転性のめまいや大きな耳鳴り、吐き気などの症状で家から出られないことが多い等)
・就労状況
(週に何日、1日何時間働いているか。仕事中や仕事後に体調に変化があれば記入する。聴力の障害のために生じている仕事の制限や職場での配慮があれば記入する。例:週に2日、障害者雇用で働いているが、指示が全てメモで振られてくるので細かく理解しにくい等)
受診していなかった期間について ・受診していなかった理由
(自覚症状がなかった、経済的に行けなかった等)
・自覚症状の程度
(いつどんな症状がどの程度あったか。例:耳鳴りやトンネルを抜けるような大きな音が突然聞こえることがあった等)
・日常生活状況
(普段通りではなかったことがあれば記入する)
・就労状況
(聴力の障害によって仕事に支障がでていたか等を記入する)

 

5 まとめ

今回の記事では、聴覚の障害で障害年金を申請する際に確認して頂きたい、聴覚と平衡機能の認定基準と、年金保険料の納付状況についてご説明し、その上で申請時に重要な3つの書類についてご説明いたしました。

障害年金は書類審査です。あなたが障害年金を受けられるかどうかは、診断書や病歴・就労状況等申立書などの提出書類で決まります。

この記事をご参考にして頂き、慎重に書類準備を進めていきましょう。

 

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  • この記事の監修者
  • 西川 暢春
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    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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