「専門家に障害年金の申請代行を頼みたいが費用が気になる。」
「自分でしたほうが得かもしれない。」
障害年金の申請について、こんな悩みを抱えていませんか?
障害年金は制度上、自分で申請することが可能です。 では、弁護士や社労士に申請代行を依頼する人が多いのはなぜでしょうか?
今回は、「障害年金申請代行は本当に費用に見合うメリットがあるのか」についてご説明したいと思います。
この記事を読んでいただければ、あなたが障害年金申請を専門家に依頼するかどうかを決めるためにきっと参考になると思います。
1 障害年金の手続き代行とは?
障害年金申請代行とは、障害年金の申請手続きや手続きに必要な書類の作成、準備などを「弁護士」あるいは「社会保険労務士」(以下、「社労士」といいます)に代行してもらうことを言います。
2 障害年金申請代行には4つのメリットがある。
障害年金申請代行を依頼するかどうかは、「依頼のメリット」とそれにかかる「費用」を検証して決める必要があります。
では、障害年金申請代行を弁護士や社労士に依頼するメリットはどのような点にあるのでしょうか?
具体的なメリットしては、以下の4つをあげることができます。
メリット1:不支給の可能性を最小限にできる。
メリット2:自分で申請するより受給開始が早くなる。
メリット3:年金事務所に自分で対応する手間やストレスを避けることができる。
メリット4:更新のときも相談できるため、長く受給しやすい。
順番に内容を見ていきましょう。
2-1 メリット1:不支給の可能性を最小限にできる。
障害年金申請代行を依頼するメリットの1つ目が「不支給の可能性を最小限にできる。」という点です。
障害年金の申請には、例えば以下のようなノウハウが必要です。
- 医師が作成した「診断書」に追記や修正をお願いすべき点がないかをチェックできること
- 障害年金の必要書類である「病歴・就労状況等申立書」を詳細かつわかりやすく作成できること
- 自分にとってベストな請求方法を選択できること
- 初診日(年金を請求する病気やけがで最初に病院に行った日)がいつかについて必要な書類を正確に集めることができること
障害年金の申請を自分でした場合、これらの点が足りずに、不支給の結果になってしまうことがあります。
「一度自分で申請してみて、だめだったら、申請代行を依頼する。」というのも1つの方法ではあります。
しかし、実は、後で弁護士や社労士に申請代行を依頼して手続きをやり直して結果的に受給できたとしても、完全に失敗を取り戻すことはできません。それは、障害年金の受給開始が遅れることにより、本来もらうことができたはずの年金が一部もらえなくなるからです。
実際に私の事務所でご相談いただいたケースの中でも以下のようなケースがありました。
自分で申請したために228万円分の年金が受給できなくなった失敗事例
このケースは、脳梗塞後の後遺症について自分で障害年金を申請したが、不支給となり、ご相談にお越しいただいたケースです。
診断書の記載が不十分だったことが不支給の原因と思われましたので、弁護士が診断書の記載例を作成し、それをもとに主治医に診断書を再度作成していただきました。
そのうえで、弁護士が再度手続きをやり直したところ、無事、申請を通すことができました。
しかし、障害年金の申請を自分でされた後、弁護士にご相談いただき再度申請をやり直すまで、約35か月がたっていました。
この35か月分の年金約228万円は支給を受けることができません。
この方が、自分で手続きをせずに最初から弁護士に申請代行をご依頼いただいていれば、約228万円分、障害年金を多く受給することができた計算になります。
ご自身で申請して失敗し苦労されていたので、請求が通ったときは、非常に喜んでいただきましたが、私としては、「もっと早くご依頼いただければもっと早くから年金をもらえたはずだ」と思うと残念だったケースです。
自分で申請したことにより永遠に申請が通らなくなる最悪のケースもある。
自分で申請することによる失敗として想定される最悪のケースは、自分で一度申請したことにより、年金事務所に不利益な記録が残ってしまい、あとで弁護士や社労士に申請代行を依頼して申請をやりなおしても、申請が通らなくなるケースです。
このようなケースはまれではありますが、現実に存在します。
詳しい事例は
害障年金は社労士依頼が得?失敗談からわかる依頼のメリットと選び方
で紹介していますので、ご参照ください。
このように申請方法や申請書類に不備があり不支給になると大きな損害が発生します。不支給の結果になる可能性を最小限にすることができるというのが、障害年金申請代行を依頼するメリットの1つです。
2-2 メリット2:自分で申請するより受給開始が早くなる。
次に、障害年金申請代行を依頼するメリットの2つ目として、「自分で申請するより受給開始が早くなる」という点があります。
メリット1では、自分で申請して失敗したケースについてご説明しましたが、自分で申請して無事受給に成功したケースでも、実は「自分で申請して受給開始が遅れることによるロス」が発生しているケースがほとんどです。
「なぜ、成功した場合でもロスが発生するのでしょうか?」
それは、自分で申請すると、何度も年金事務所や病院に足を運んだり、何度も書類の訂正を指摘されることにより、申請自体が遅れてしまうためです。これに対して、専門家に申請代行を依頼すれば、弁護士や社労士は手続きの流れや段取りを完全に把握しているため、年金事務所に行く必要もありませんし、書類の訂正も最小限で済みます。
そのため、自分で申請をした場合、申請代行を依頼して申請するよりも申請が例えば3か月以上遅れてしまうということはよくあるのです。
そして、この場合、前述のとおり、障害年金は年金事務所に申請した月の翌月分から支給されることが多いため、遅れた3か月分の年金が受給できず、ロスが発生してしまいます。
2-3 メリット3:年金事務所に自分で対応する手間やストレスを避けることができる。
障害年金申請代行を依頼するメリットの3つ目としては、「年金事務所に自分で対応する手間やストレスを避けることができる」という点があります。
障害年金の申請のために年金事務所に何回も足を運ぶことは、想像以上の手間とストレスです。担当者にもよりますが、残念ながら、現時点では、年金事務所の説明は、わかりにくく不親切なケースが多くなっています。
また、年金事務所で相談をした場合、注意しなければならないのは、相談の内容について記録が残されるという点です。そのため、いったん年金事務所に間違ったことを伝えてしまうと、年金事務所に相談の記録が残り、後で訂正がきかなくなることがあります。
その結果、後日請求が認められなくなることにつながるケースがあるので注意が必要です。
こういった年金事務所の問題点は、年金事務所が障害年金の申請をサポートする役所というよりは、障害年金の審査をする役所であることから、ある程度やむを得ない面があります。
障害年金の申請代行を弁護士や社労士に依頼した場合、年金事務所に自分で対応する手間やストレスを避けることができることもメリットの1つになります。もし、どうしても自分で年金事務所に相談されるときは、後日の不利益を避けるため、正確な情報を伝えるようにしてください。
2-4 メリット4:更新のときも相談できるため、長く受給しやすい。
障害年金の申請代行を依頼するメリットの4つ目が「更新のときも相談できるため、長く受給しやすい。」という点です。
精神疾患や人工透析などの傷病で障害年金の受給が決まった場合、1年後か2年後に再度診断書を提出して、年金の受給を継続できるかどうかの審査がされます。
これを「更新」といいます。「更新」をしなくても一生、障害年金をもらえるケースはわずか3パーセント程度にすぎません。
そして、審査の結果、症状が軽いとみられた場合は、障害年金の支給が打ち切られます。
このことから、障害年金では、認定後の更新も重要です。
最初の申請の時に申請代行を依頼した場合、更新のときも弁護士や社労士に相談でき、結果的に支給の打ち切りをできるだけ防ぎ、長く受給できることにつながります。
このように長い受給につながりやすいことも、障害年金の申請代行を依頼するメリットの1つといえるでしょう。
3 障害年金申請代行の費用
これまで、メリットについてご説明していきましたが、障害年金申請代行を依頼するには、費用がかかります。
費用は依頼する弁護士や社労士にもよりますが、一般的な請求である事後重症の請求では、年金額の2か月分を費用としている事務所が多くなっています。そして、このような費用は障害年金の申請が通った場合だけ発生し、申請が通らなければ費用は一切発生しない成功報酬型の費用体系の事務所も多く存在します。
では、これらの費用がかかることをどのように考えるべきでしょうか?
障害年金を自分で申請して成功したとしても、申請代行を依頼するよりも申請が遅れてしまっていることが多いのが実情です。前述のとおり3か月程度遅れることは普通です。そうだとすると、2か月分の年金を費用として支払っても、3か月遅れて3か月分の年金をロスするよりは、経済的にメリットがあります。
さらに、自分で申請すると不支給となってしまうリスクが高いことも考えれば、障害年金の申請代行には、費用に見合うメリットが十分ある場合がほとんどであるといえるでしょう。
費用について詳しくは、以下の記事で解説していますので、参考にご覧下さい。
▶参考情報:障害年金に関する社労士費用ってどれくらい?必要な費用と相場を解説!
4 申請代行を依頼する事務所の選び方
では、具体的に申請代行を依頼する事務所をどのように選んでいけばよいのでしょうか?
障害年金の申請代行をしている事務所をインターネットで探そうとすると、かなりの数の事務所が見つかります。
「どこも同じように見えて、どこに頼めばいいかわからない」などと悩んでいませんか?
依頼先を迷ってしまい、申請が進まないのは大変もったいないです。
以下では、申請代行を依頼する場合の、良い事務所の見つけ方をご紹介します。
4-1 ポイント1:着手金の不要な事務所を選ぶ。
申請代行を依頼する事務所の選び方のポイントの1つ目として、着手金の有無があげられます。
前述のとおり、成功報酬型の費用体型の事務所も多く存在しますが、一方で依頼時に2万円程度の着手金が必要な事務所も多く存在します。
着手金が必要な事務所の場合、障害年金の申請が通っても通らなくても着手金はあなたの負担となります。
これに対して着手金が不要な事務所の場合は、障害年金の申請が通った場合に限り、支給される年金の中から費用を支払えば問題ありません。
そのため、できれば着手金のいらない事務所を選んだ方がよいです。
着手金があるかないかは、事務所のホームページに記載がある場合がほとんどですので確認してみましょう。
4-2 ポイント2:資格者に相談できる事務所を選ぶ。
あなたが障害年金の相談に行った時に、誰が相談を受けてくれるのかは大変重要です。
一部の社労士事務所では、社労士資格がない職員が「専門職員」などとして相談にのるケースもあります。
しかし、障害年金の相談業務は、場合によっては非常に難しい専門的な判断を伴うこともありますので、資格者が相談を受けてくれる事務所を選ぶことがおすすめです。
4-3 ポイント3:事務所の体制を確認する。
依頼先の事務所の体制も、選択の際の重要なポイントです。
中には、弁護士や社労士が1人でしている事務所や、補助者がいてもパート社員だったりする事務所があります。
この場合、例えば、弁護士や社労士が外出していると、「電話がつながらない」、「折り返しが遅い」など、様々な問題点が生じてきます。
申請を早く進めるために頼んでいるのに、電話がつながらず申請が進まなければ、頼んでいる意味がありませんよね。
依頼する事務所を選ぶときは、その事務所の「所属人数」や「電話対応の時間帯」も確認しておきましょう。
4-4 ポイント4:相談時間についても確認が必要
通常の事務所は平日のみの営業で土曜日、日曜日は相談を受けていません。
もし、あなたが平日の相談が難しく、土曜日、日曜日に相談を希望する場合は、土曜日、日曜日に相談を受けてくれるかも事務所を選ぶ際の重要なポイントです。
正しい事務所の選び方については、以下の記事でも詳しく解説していますので参考にご覧下さい。
▶参考情報:障害年金の申請代行を社労士に依頼する方法は?わかりやすく解説!
5 できれば弁護士に依頼することがベスト!
最後に、お伝えしておく必要があるのが、障害年金の申請代行を依頼するのであれば、社労士よりも障害年金を取り扱っている弁護士に依頼することがベストであるということです。
これは弁護士に依頼することには、社労士に依頼することよりもさらに有利になるポイントが3つもあるためです。
以下でこの3つのポイントを見ていきましょう。
5-1 ポイント1:弁護士にしかできない調査方法により受給につながることがある!
障害年金の請求では、初診日がわからないケースでは、原則として年金申請を認めてもらうことができません。
この点、弁護士には、弁護士のみに法律上認められている独自の調査方法があり、「23条照会」と呼ばれています。この23条照会により、初診日が判明して、年金の受給に成功するケースがあります。
5-2 ポイント2:弁護士に頼めば裁判により年金申請が認められることもある!
障害年金の制度は、複雑な制度上の問題や年金事務所のマニュアルの欠陥が原因で、本来、明らかに年金が認められなければおかしいケースで不当に認められないことがまれにあります。
この場合、弁護士であれば、裁判により認定を求めることができ、実際に裁判で認定されたケースも多数存在します。
5-3 ポイント3:弁護士に頼めば病院が協力的でないケースでも申請を成功させることができる!
障害年金の申請を通すためには、病院に診断書の修正をお願いしたり、カルテの開示をお願いしなければならないケースがあります。そして、診断書の修正やカルテの開示については、必ずしも協力的な病院ばかりではなく、非協力的な病院も存在します。
このように病院が協力的でないケースであっても、弁護士が申請を担当している場合、病院は不合理に依頼を断ることができなくなります。これは、弁護士が担当することで、病院としても不合理な理由で協力を断れば法的なペナルティを受けるリスクを感じることになり、緊張感を持って対応することになるからです。弁護士が担当したからこそ、病院に協力してもらうことに成功し、認定につながる例もあります。
このような3つの点で、もし、あなたの近くに障害年金の申請代行を扱う弁護士事務所があれば、弁護士に依頼することが本当はベストです。
5-4 弁護士に依頼する場合の注意点
前述のとおり弁護士への依頼がベストですが、すべての弁護士が障害年金の請求に対応しているわけではないことには注意が必要になります。
弁護士の専門分野は、離婚や相続から企業の相談まで多岐にわたりますので、障害年金を専門分野としている弁護士はごく一部です。
障害年金の申請代行のメリットは、プロのノウハウを生かして、早く申請を通すことができるという点ですので、障害年金の申請を取り扱っていない弁護士に依頼してもあまり意味がありません。
弁護士に申請代行を依頼する場合は、必ず、障害年金を取り扱っている実績の豊富な弁護士事務所に依頼しましょう。
6 まとめ
今回は、「障害年金の申請代行が費用に見合うメリットがあるのか?」という点についてご説明しました。
費用がかかっても申請代行を依頼したほうが、結果的には得な場合がほとんどです。
また、申請代行を依頼する事務所の上手な選び方についてもご説明しました。
障害年金の申請はとにかく早く進めることがポイントです。
ぜひ、この記事をあなたの障害年金の申請の参考にしてください。
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