障害年金は1年6ヶ月経たないともらえない?例外とやっておくべき3つの準備

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障害によって以前のように仕事をこなすことができなくなったり、治療費によって生活が苦しい時、障害者の生活を支えてくれる障害年金ですが、実は病気やけがのために初めて病院を受診してから原則1年6ヶ月経過しないと請求することができません。

今回は障害年金がなぜ1年6ヶ月経たないと請求できないのか、そして一日でも早く障害年金を受給するために準備しておくべきことと障害年金が請求できるようになるまでに利用できる福祉制度をご紹介します。

 

1 障害年金は原則1年6ヶ月経たないと請求できない

障害年金は、原則初診日から1年6ヶ月経過しないと請求することはできません。初診日とは病気やけがのために初めて医療機関を受診した日のことです。

この、障害年金の申請が可能になる日のことを障害認定日と言います。次の章でこの障害認定日について詳しくご説明します。

 

1-1 障害認定日とは

障害年金は請求すれば全ての方が受給できるものではなく、その障害の程度が障害年金の受給に相当するか審査を受ける必要があります。障害の程度が障害年金の受給に相当するか判断する基準となる日を障害認定日と言います。

障害認定日は原則、障害年金を請求する傷病の初診日から1年6ヶ月を経過した日です。
障害認定日に到達していない期間は、どれだけ症状が重くても障害年金を受給することはできません。

なぜ1年6ヶ月という期間が設けられているかというと、病気やケガが「障害」と呼べるような状態になるまでに少なくとも1年6ヶ月の期間が必要とされているためです。
病気やケガは全てが障害になるわけではありません。中には治療によって数ヶ月で完治するものもあります。

このような短期間の治療によって治る病気やケガは障害とは言えず、障害年金を請求することはできません。
病気やケガが「障害」と判断される基準として、1年6ヶ月の期間が設けられています。

ただし、障害認定日には例外があり、1年6ヶ月を経過していなくても障害年金を請求できるケースがあります。

 

1-2 障害認定日の例外

 

症状固定している場合

1-1で初診日から1年6ヶ月経過しないと障害年金を請求できないとご説明しましたが、実は障害認定日には例外があります。
1年6ヶ月経過していなくても、症状が固定してこれ以上治療の効果が期待できない状態になっている場合(症状固定)は、その状態になった日が障害認定日とみなされ、障害年金を請求することができます。

症状固定と判断されるケースをいくつかご紹介します。

 

障害 障害認定日
人工透析 透析開始日から3ヶ月を経過した日
在宅酸素療法 開始日
人工弁、心臓ペースメーカー、ICD
CRT
CRT-D装着
装着日
心臓移植、人工心臓装着 移植日または装着日
人工血管挿入置換 挿入置換日
人工肛門造設、尿路変更、新膀胱造設 造設日から6ヶ月を経過した日
人工骨頭、人工関節挿入置換 挿入置換日
肢体の切断 切断した日
遷延性植物状態(遷延性意識障害) 遷延性植物状態になった日から3ヶ月経過した日
喉頭全摘出 喉頭全摘出日

ただし、これらの日が初診日から16ヶ月経過した日より後にある場合は、16ヶ月経過した日が障害認定日となり、障害年金を申請することができます。

たとえば、人工透析で障害年金を請求する場合、人工透析の原因となった傷病が糖尿病性腎症だとすると初診日は糖尿病と診断された日です。障害の程度が障害年金の支給対象になるかどうかは別として、糖尿病と診断されてから16ヶ月経過した時点から障害年金を請求する権利があります。

人工透析を開始した日から3ヶ月経つのを待つ必要はありません。

 

先天性疾患など20歳より前に初診日がある場合

もう一つの例外が、知的障害などの先天性疾患や20歳より前に初診日がある場合です。

障害年金を請求することができるのは原則20歳から64歳までです。20歳より前に初診日があり、初診日から16ヶ月経過しても20歳に到達しない場合は、20歳になるまでは障害年金を請求することはできません。

請求人が「20歳になった日」と「16ヶ月経過した日または1-2-1であげた症状固定した日」を比べて一番遅い日が障害認定日になります。

 

2 1年6ヶ月経過するまでに準備しておくべき3つのこと

1章でご説明したとおり、障害年金は一部の例外を除き初診日から1年6ヶ月経過しないと請求することができません。

また、障害年金を申請してすぐに年金を受け取れるわけではなく3~4か月の審査期間があり、申請をしてから実際の支払までに半年以上かかることも少なくありません。

そのため障害年金を少しでも早く受け取ることができるよう1年6ヶ月が経ったらすぐに請求できるよう準備を進めておくことが重要です。

今回は1年6ヶ月が経過したらすぐに障害年金を請求できるようやっておくべき3つの準備についてご説明します。

 

2-1 初診日を調べる

障害年金の申請にあたって重要になるのが初診日です。初診日とは、病気やケガのために初めて医療機関を受診した日のことです。

障害年金では初診日に加入していた年金制度によって受給できる年金が変わります。

また、障害年金を受給するためには、初診日までに一定の保険料を納めている必要があります(これを保険料の納付要件といいます)。

加入年金制度や保険料の納付要件を満たしているかを確認するために、まずは初診日を明らかにする必要があるのです。

2-2でご説明する納付要件の確認も初診日が基点になります。まずは自分が病気やけがのために初めて病院を受診したのがいつだったかを確認しましょう。

ただし、障害年金においての初診日は初めて病気やケガについて診断された日とは限らないので注意が必要です。

初診日とは・・・?

障害年金において初診日として扱われる日には以下のようなものがあります。

(1)現在かかっている医師または歯科医師にはじめて診療を受けた場合

→治療行為または療養に関する指示があった日

(2)同一の傷病で転医があった場合

→一番初めに医師または歯科医師の診療を受けた日

(3)過去の傷病が治癒し(社会復帰し、治療の必要のない状態)、同一傷病で再度発症している場合

→再度発症し医師または歯科医師の診療を受けた日

(4)傷病名が特定されておらず、対象傷病と異なる傷病名であっても同一傷病と判断される場合
  (例:不安神経症→うつ病)

   →一番初めの傷病名の初診日

(5)じん肺症(じん肺結核を含む)

   →じん肺と診断された日

(6)障害の原因となった傷病の前に相当因果関係があると認められる傷病がある場合
  (例:糖尿病→糖尿病性腎症、肝炎→肝硬変、ステロイド投薬が必要な傷病→大腿骨頭壊死等)

   →最初の傷病の初診日

(7)先天性の知的障害

   →出生日

(8)先天性心疾患、発達障害、網膜色素変性症など

   →日常生活や労働に支障をきたすような具体的な症状が現れはじめて診療を受けた日

(9)健康診断で異常が発見された場合

   →健康診断の結果を受けて初めて医師の診察を受けた日

※ただし、健康診断日を初診日とできる場合があるので注意!

「初めて治療目的で医療機関を受診した日の医証(受診状況等証明書)が得られない場合であって、医学的見地からただちに治療が必要と認められる健診結果である場合については、請求者から健診日を初診日とするよう申し立てがあれば、健診日を初診日とし、健診日を証明する資料(人間ドックの結果など)を求めた上で、初診日を認めることができることとする。」(平成27年9月改正)

 

2-2 保険料の納付要件を調べる

障害年金を受給するためにはいくつかの条件があり、そのひとつに保険料の納付要件があります。

保険料の納付要件を満たさない限りは、残念ながらどれだけ障害の程度が重くても障害年金が受給できないのが現状です。

納付要件を満たしているかどうかは、年金事務所で調べてもらうことができます。初診日がわかったら自分が納付要件を満たしているかを確認しましょう。

保険料の納付要件は以下のとおりです。

初診日の前日時点で、

①初診日の属する月の前々月迄の過去1年間に年金保険料の未納がないこと

②20歳に達した月~初診日の属する月の前々月迄の年金加入期間において、保険料を2/3以上納めていること(学生猶予期間や免除期間は納付と同じ扱いです。20歳前に厚生年金に加入している場合はその期間も含めて計算します。)

ただし、一部例外あり

初診日が20歳前にある場合

20歳前障害の場合は年金に加入できないため、納付要件については問われません。(20歳前に厚生年金に加入しており、その期間に初診日がある場合は通常通りです)

※免除申請は遡って行うことができます。納付要件は初診日の前日時点の状況で確認されるため、
初診日以降に免除申請をしたものについては納付扱いになりません。

 

2-3 初診日の証明書類を取り付ける

2-1でご説明したとおり、障害年金の申請にあたっては初診日が重要になるため、初診日がいつであるかを証明する書類を提出する必要があります。

代表的なものが「受診状況等証明書」という書類です。これは病気やケガのために初めて受診した病院(初診病院)で書いてもらう書類です。

ただし、初診病院と診断書を書いてもらう病院が同一である場合は初診日の証明は不要です。

初診病院でカルテの廃棄、廃院等の事情で受診状況等証明書の作成ができない場合は、その次に受診した医療機関に受診状況等証明書の作成を依頼します。

その病院でも取得できなければ、その次の医療機関・・・という形で記録が残っている中で一番古い病院で作成してもらいます。その際に、前医からの紹介状がある場合は必ず添付してもらいましょう。

その上で、受診状況等証明書が提出できない医療機関については、「受診状況等証明書が添付できない申立書」という書類を作成します。

受診状況等証明書が添付できない申立書には、初診日や通院時期が特定できる資料の添付が必要です。
(下記は資料の一例)

  • PC上に残った来院日の記録、カルテの表紙等(カルテが残っていなくても受診日等の記録を残していることもあるので何らかの記録が残っていないか確認する)、前医からの紹介状
  • レセプト、処方箋、領収書、診察券、お薬手帳、母子手帳等
  • 過去に作成された診断書(保険会社に提出するものや障害者手帳取得の際に作成したもの)
  • 初診日に関する第三者からの申立書(第三者証明) 等

20歳前障害の場合は、初診病院を特定しなくても初診日が20歳前にあることが証明できればよいので、20歳前に通院していた病院がないか、学校の成績表に症状や通院に関する記載がないか、障害者手帳の取得時期が20歳前にないか等を検討します。

初診日の証明について詳しくはこちらの記事をご参照ください。

さて、ここまで1年6ヶ月が経過するまでにしておくべき3つの準備についてご説明しました。

この他にも障害年金の申請には診断書等の書類が必要になりますが、書類には指定の期間に取得されたものと条件のある書類もあり、特に診断書は障害認定日以降の特定の期間のものが必要になります。

障害認定日が来る前に作成してしまうと無駄になってしまうので、診断書は必ず障害認定日が来てから作成してもらうようにしましょう。

ただし、知的障害等の先天性疾患や幼いころに初診日がある障害の場合はこの限りではありません。

障害年金は20歳以降でなければ請求することができません。先天性疾患や幼いころに初診がある障害の場合、1年6ヶ月時点では20歳に到達していないため障害年金を請求することはできず、20歳になった時点から障害年金を請求することができます。

この場合は、診断書は20歳の誕生日前後3ヶ月の症状がわかる診断書を提出すればよいので、20歳の誕生日まで3ヶ月を切った時点で診断書を依頼してしまってもよいでしょう。

 

3 障害年金を請求するまでに利用できる4つの制度

 

3-1 傷病手当金

傷病手当金は健康保険の加入者が、業務外の病気やケガで働くことができない状態になったとき、給与の約2/3の額を最長で1年6ヶ月間受け取ることができる制度です。

傷病手当金は健康保険協会、健康保険組合、共済組合から支給される給付です。そのため、国民健康保険の加入者は支給の対象になりません。

また、傷病手当金の支給にはいくつかの条件があります。

■傷病手当金の4つの条件

  • 業務外の病気やケガで療養中であること
  • 仕事ができない状態であること
  • 4日以上仕事に就けない状態であること
  • 休業期間中に給与の支払いがないこと

傷病手当金は所定の申請用紙や診断書等を加入している健康保険に提出することで受給することができます。
傷病手当金について詳しくはこちらの記事をご参照ください。「傷病手当金」の記事へリンク

 

3-2 障害者手帳

障害者手帳は障害よって身体障害者手帳、精神障害者手帳、療育手帳の3種類があり、障害をお持ちの方が市町村に申請することによって取得できるものです。

障害者手帳を持っていることで様々なサービスを受けることができます。障害の程度や種類、自治体によって受けることができるサービスは異なりますが、下記のようなものがあります。

  • 所得税、住民税等の各種税金の控除
  • 各種公共交通機関の運賃割引
  • 各種公共施設(博物館、美術館、映画館)の利用料の割引
  • 携帯電話料金など、通信費の割引

直接的に金銭を受け取ることができるものではありませんが、生活にかかる費用を少しでも抑えることができます。

 

3-3 自立支援医療制度

精神疾患の方に限られますが、精神科の病気で治療を受ける場合、医療費の一部を公的に支援してもらえる制度が自立支援医療です。

個々の方の収入や障害の程度によりますが、月毎の自己負担額の上限金額が決められており、それを超える医療費については市町村が医療費を負担してくれます。

 

3-4 生活保護

障害のために働くことができなくなり、経済的に困ったときに、最低限度の生活を保障してくれる制度が生活保護です。障害の程度によっては生活保護に障害者手当がつくこともあります。

障害のため働くことができず経済的に苦しい、生活ができない場合、国が定める基準をクリアしていれば、生活保護を受給することも可能です。

ただし、障害年金と生活保護には併給調整があり、生活保護を受給しながら障害年金を受給した場合、これまで受け取っていた生活保護に加えて障害年金を受け取ることはできません。

生活保護費から障害年金分が控除され、残額が生活保護として支給されることになります。

生活保護と障害年金の併給調整について詳しくはこちらの記事をご参照ください。
同時受給できる?生活保護受給者が障害年金を申請するメリットを解説

 

4 まとめ

今回は障害年金が原則として初診日から1年6ヶ月経過しないと申請できないこととその例外についてご説明しました。

1年6ヶ月経過するまでにしておくべき準備として以下の3つをご紹介しました。

(1)初診日を調べる
(2)保険料の納付要件を調べる
(3)初診日の証明書類を取り付ける

また、障害年金を請求できるようになるまでの期間に利用できる制度として以下の4つをご紹介しました。

(1)傷病手当金
(2)障害者手帳
(3)自立支援医療制度
(4)生活保護

1年6ヶ月の期間を有効活用し、障害認定日がきたらすぐに障害年金を請求できるよう準備しましょう!

 

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  • この記事の監修者
  • 西川 暢春
  • 西川 暢春

    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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