障害年金受給中の結婚にまつわる手続きや疑問、加給年金を徹底解説!

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結婚することによって障害年金が支給停止になってしまうのではないか・・・不安に思っていませんか。

実は結婚によって障害年金が支給停止になることはありません。
受給している障害年金の種類によっては受給額が増えることもあるのです。

今回は結婚に伴う障害年金の手続きやよくある疑問についてお答えします。

 

1 結婚しても障害年金は支給される!

健康保険など、結婚によって受けられる保障が変わる制度がたくさんあります。

障害年金も結婚するともらえなくなるのではないか、そうお考えの方も多いのではないでしょうか。
実は、障害年金は結婚したからといって支給停止になったり、減額されたりすることはありません。

結婚しても障害の程度が障害年金の支給に相当する限りは障害年金を受給し続けることができます。
受け取っている障害年金の種類によっては、結婚することによって増額することもあるのです。

これについては2章で詳しくご説明します。

 

2 障害厚生年金受給中の方は金額が増えることも!

障害年金には、受給者に配偶者がいると通常の年金に加えて支払われる年金があります。

これを障害年金の「配偶者加給年金」といいます。加給年金の額は一律年間22万4300円です(平成29年度)。

配偶者加給年金は障害厚生年金1級又は2級の受給者にのみ支払われるもので、残念ながら障害厚生年金3級の受給者や障害基礎年金の受給者には支給されません。

どんな人が対象になるのか、どんな手続きが必要か、以下で簡単にご説明します。

 

2-1 加給年金を受けるための条件

加給を受けるためには一定の条件があります。以下の条件をすべて満たした場合に配偶者加給年金を受けることができます。

(1)初診日に厚生年金に加入しており、障害厚生年金1級又は2級の受給権者であること
(2)生計同一関係があること
(3)配偶者の年収が850万円未満(または所得が655.5万円未満)であること
(4)配偶者が障害年金や老齢年金等を受け取っていないこと
(5)配偶者が65歳未満であること

 

(1)初診日に厚生年金に加入しており、障害厚生年金1級又は2級の受給権者であること

障害年金では、病気やケガのために初めて病院を受診した日(これを初診日といいます)に加入していた年金制度によって支払われる年金の種類が異なります。

初診日に厚生年金に加入していた方には障害厚生年金が、初診日に国民年金に加入していた方には障害基礎年金が支給されます。

先ほどお伝えしたとおり、配偶者加算は障害厚生年金の受給権者にのみ支払われるものです。そのため、初診日に厚生年金に加入していた方のみが配偶者加算の対象になります。

また、配偶者加算は障害等級が1級若しくは2級の方にしか支給されません。障害厚生年金では年金を受け取ることができる等級が障害の程度によって1~3級まで決められていますが、3級に認定された方は残念ながら配偶者加算を受けることはできません。

 

(2)生計同一関係があること

加算の対象になるのは、受給権者と同じ家計で生活している配偶者です。これを生計同一関係と言います。
具体的に言えば、下記に当てはまる場合は生計同一関係があると認定されます。

 ア 住民票上同一世帯に属しているとき

 イ 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき

 ウ 住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき

 (a)実際に日常生活を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき

 (b)単身赴任、就学又は病気療養等のやむを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、日常生活を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき

 (ⅰ)生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること

 (ⅱ)定期的に音信、訪問が行われていること

必ずしも同居している必要はなく、別居していても仕送りをしていたり、扶養に入っている等の事実があれば生計同一関係であると認定されます。

ちなみに配偶者加算の対象者は夫か妻かを問いません。たとえば、妻が専業主婦で夫がサラリーマンで妻が障害年金を受給する場合、配偶者加算の条件を満足していれば夫についての加算をうけることができるのです。

実際にどちらが扶養しているかは関係がありません。

 

(3)配偶者の年収が850万円未満(または所得が655.5万円未満)であること

加算の対象になるためには、年収が850万円未満若しくは所得が655.5万円未満の配偶者です。一定の年収を超えてしまうと加算の対象から外れてしまいます。

ただし、請求時に850万円を超える年収があっても、おおむね5年以内に定年退職や降格等の理由から年収が850万円未満若しくは所得が655.5万円未満になることが確実である場合は加算の対象になることがあります。

※所得とは・・・所得とは収入額からその収入を得るためにかかった必要経費と障害者控除等の諸控除を除いたものです。市町村役場で発行される所得証明書等で確認することができます。

 

(4)配偶者が障害年金や老齢年金、退職年金等を受け取っていないこと

配偶者が公的年金制度から年金を受給している期間については加算を受けることができません。公的年金制度とは以下のようなものをさします。

  • 厚生年金保険法の老齢厚生年金および障害厚生年金
  • 旧厚生年金保険法、旧船員保険法の老齢年金および障害年金
  • 国民年金法の障害基礎年金および旧国民年金法の障害年金
  • 各種共済組合等の退職共済年金および障害共済年金、退職年金および障害年金等

 

(5)配偶者が65歳未満であること

加算の対象となるのは65歳未満の配偶者です。
例えば、63歳のときに障害年金の受給権が発生した女性の夫が66歳の場合、配偶者加算を受けることはできません。

 

2-2 加給年金を受けるための手続き

障害厚生年金1級または2級の受給者が障害年金の受給権発生後に結婚した場合、申請をすれば配偶者加給年金を受け取ることができます。申請には以下の書類が必要です。

(1)障害給付加算額・加給年金額加算開始事由該当届(PDF)
(2)戸籍謄本
(3)世帯全員の住民票
(4)配偶者の所得証明書や課税(非課税)証明書、源泉徴収票等

書類が準備できたら最寄りの年金事務所へ提出しましょう。

※現在、3級の障害厚生年金を受給中の方でも、今後障害が悪化し障害年金の等級が上がった場合には配偶者加給年金を受け取ることができます。

ちなみに、子どもが生まれた場合には「子の加算」を受け取ることができます。子の加算は配偶者加給年金とは異なり、障害基礎年金の受給者も受け取ることができます。

配偶者加給年金、子の加算について詳しくはこちら
障害年金の配偶者加算の条件、対象者・支給額・必要書類を徹底解説!
徹底解説!障害年金の子の加算の対象者、支給額、必要書類について

 

3 障害年金受給者が結婚したときの手続き

3-1 名前の変更

結婚することで、名字が変わる方もいらっしゃるのではないでしょうか。氏名が変わった場合は年金機構へ指名変更届を提出する必要があります。

年金受給権者氏名変更届PDF
〇年金証書
〇戸籍抄本または住民票の写し

変更届に市町村長からの証明若しくはマイナンバーを記入することで省略することができます。

※ただし、マイナンバーを記入する場合は下記のいずれかの書類を提出する必要があります。

  • マイナンバーカード両面の写し
  • マイナンバーが確認できる書類(通知カード等)と身分証明書(運転免許証、パスポート、障害者手帳等)の写し

提出先は最寄りの年金事務所です。郵送でも提出することができます。手続が完了すると氏名が変更された年金証書が届きます。

また、それに伴い、年金の振込先に指定している金融機関の氏名変更も行う必要があります。

年金機構登録の氏名と金融機関登録の氏名が異なる場合、年金の受け取りができなくなってしまいますので、忘れずに手続きをしましょう。

 

3-2 住所の変更

結婚をきっかけに引越しをする方も多いと思います。障害年金を受給している方が引越した時は、住所変更届の提出が必要です。

すべての方が住所変更手続が必要なわけではなく、中には全く手続が必要のない方もいます。
住所変更が必要なケースと必要のないケースにわけてご紹介します。

住民票コードもしくはマイナンバーの登録をしている場合

日本年金機構へ住民票コードもしくはマイナンバーの登録をしている場合は、原則住所変更の届出は必要ありません。
住民票コードもしくはマイナンバーを登録している場合、住基ネットを利用して年金機構側で自動的に住所が変更されるためです。

 

住民票コードもしくはマイナンバーの届出をしていない場合

住民票コードもしくはマイナンバーの届出をしていない場合は、自動的に住所は変更されないので自分で住所変更届を提出する必要があります。

年金受給権者 住所変更届(PDF)

提出先は最寄りの年金事務所です。郵送でも提出することができます。

住所変更が反映されるまでに通常1ヶ月程度の時間がかかります。

重要な書類が届かなくなる可能性もあるので、できる限り早く手続きをしましょう。

 

4 障害年金を受け取っていても健康保険や年金の扶養にはいれる?

結婚して、配偶者の扶養に入ろうと考えている方もいらっしゃると思います。

基本的には障害年金を受給していても扶養に入ることができますが、障害年金の受給額やその他の収入額によっては扶養に入れないことがあるので注意が必要です。

障害年金とその他の収入をあわせて年間180万円以上の収入がある場合、配偶者の健康保険の扶養や第3号被保険者になることはできません。

障害年金は非課税のため、税法上は収入とはみなされず所得税がかかることはありませんが、健康保険や年金制度上では収入とみなされます。

そのため、180万円以上の収入がある場合は、自分で国民健康保険に加入する必要があり、国民年金も第1号被保険者となり、自分で保険料を支払う必要があります。

 

5 まとめ

今回は、障害年金の受給者が結婚したときの手続きやよくある疑問についてご説明しました。

結婚したからといって、障害年金が支給停止になったり、減額されることはありません。

受給している年金が障害厚生年金で2級以上に認定されている方は、結婚することによってもらえる年金額が増えるかもしれません。

また、結婚に伴い、名前や住所が変わる場合は、年金機構に届出が必要になります。

様々な手続きがあり大変ですが、手続きを忘れてしまうと一時的に障害年金が支給停止になることもありえます。忘れず手続きしましょう。

 

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  • この記事の監修者
  • 西川 暢春
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    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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