障害者手帳と障害年金の等級の違いについて

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病気やケガなどが原因で障害が生じた時、私たちの生活を支えてくれる2つの制度、「障害者手帳」と「障害年金」。
障害者手帳はもらったけど、障害年金はまだもらっていないという人も多いのではないでしょうか?

この記事では障害者手帳をお持ちの方が、障害年金を申請することによって得られるメリットや、障害年金をもらうために必要な条件について、できる限りわかりやすく説明していきます。

この記事を読んで障害年金を申請できる場合は、ぜひ申請をしてください。
障害年金を申請することは、あなたの生活にとって心強い手助けとなることは間違いありません。

1 障害者手帳の等級と障害年金の等級は一致しない

障害者手帳をもっている人が障害年金を申請する場合に重要なことは、「障害者手帳の等級と障害年金の等級は一致しない」ということです。

例えば、両耳の聴力が90デシベル以上の難聴は、障害年金では2級ですが、障害者手帳の等級は3級です。
このように同じ症状でも、障害者手帳と障害年金では違う等級になることはごく普通です。

 

1-1 障害者手帳の等級と障害年金の等級が一致しない理由

障害者手帳の等級と障害年金の等級が一致しない理由は以下の通りです。

 

理由1:障害者手帳と障害年金では等級の基準が違う。

障害者手帳は、厚生労働省が定める「身体障害認定基準」、「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準」などにより、基準が決められています。
一方、障害年金については、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」という全く別の基準が等級の基準です。
このように、等級の基準が違うので、手帳の1級と年金の1級では全く意味が違います。

 

理由2:障害者手帳と障害年金では障害を審査する機関が違う。

障害者手帳は市町村が障害の程度を審査する制度です。
これに対して、障害年金は国の機関である日本年金機構が障害の程度を審査します。
審査する機関が違うため、障害者手帳の等級と障害年金の等級は関係がありません。

このように、障害者手帳と障害年金の等級は一致しませんので、「自分は障害者手帳が4級だから、3級までしかない障害年金はもらえない」というような考え方は、間違いです。
障害者手帳の等級と障害年金の等級は関係がないことを理解しておきましょう。

 

2 障害年金をもらうためには4つの条件を満たすことが必要

障害年金は、毎月約6万円から多い場合で約15万円の年金が障害者に支給される制度です。
一般的な年金とは違い、若い人にも支給されます。

ただし、障害者手帳は、基準以上の障害があれば交付を受けられるのに対し、障害年金は、障害があること以外にも申請のために満たさなければならない条件があります。
具体的には、障害者手帳を持っている人が、障害年金をもらうためには以下の4つの条件をクリアする必要があります。

条件1:障害年金請求時に原則として20歳から65歳であることが必要。
条件2:最初の通院日以前の年金の納付状況に問題がないことが必要。
条件3:障害の程度が障害年金認定基準を満たすことが必要。
条件4:原則として最初の通院日から1年6か月たっていることが必要。

それでは順番に見ていきましょう。

 

2-1 条件1:障害年金請求時に原則として20歳から65歳であることが必要。

障害者手帳は何歳でも請求が可能ですが、障害年金は申請時に年齢が20歳から65歳までであることが原則として必要です。
65歳以上の場合に障害年金の対象とならないのは、65歳以上は基本的には老齢年金の対象となることが1つの理由とされています。

ただし、あなたが以下の3つのケースのいずれかにあたる場合は、65歳以上であっても、例外的に障害年金をもらうことができます。

ケース1:初診日が65歳未満で、初診日から1年半の時点で障害認定基準に該当する障害の状態にあった場合
ケース2:初診日が65歳以上でも、その初診日のときに厚生年金に加入していた場合
ケース3:初診日が65歳以上でも、その初診日のときに国民年金の任意加入者だった場合

なお、初診日とは障害年金を請求する障害のきっかけとなった病気やけがであなたが最初に通院した日のことです。

 

2-2 条件2:最初の通院日以前の年金の納付状況に問題がないことが必要。

次に、障害年金の支給を受けるためには、初診日の時点の国民年金または厚生年金の納付状況が基準以上であることが必要です。
障害年金は、年金加入者から集めた年金保険料を障害の状態になった人に支給する制度です。
そのため、受給するためには、障害の状態になる前に、年金を誠実に納付していたことが必要という考え方をといっています。
具体的には、初診日以前の年金の納付状況が以下の2つのどちらかを満たせば、障害年金の申請が可能です。

(1)初診日において65歳未満で、かつ初診日のある月の前々月からさかのぼって1年間の間に年金の未納がないこと
(2)20歳から初診日のある前々月までの期間のうち、年金の未納期間が3分の1未満であること

なお、初診日より前に年金の納付について免除手続きを行っていた場合は、(1)(2)の条件に関する判断において「年金の未納」とは扱われず、年金を納付していたのと同じ扱いを受けることができます。

自分の年金の納付状況がわからなくなってしまった場合は、年金事務所や障害年金専門の弁護士・社労士に相談すれば調べてもらうことが可能です。

 

初診日が未成年のときは納付要件は不問

初診日の時点であなたが未成年だった場合は、上記の例外として、年金の納付状況を確認する必要はありません。
国民年金の加入は20歳以上からなので、初診日のときに未成年だった場合は、初診日以前に年金を納付していたということは通常考えられません。そのため、年金の納付状況の確認は不要とされています。

 

2-3 条件3:障害の程度が障害年金認定基準を満たすことが必要。

次に障害年金の支給を受けるためには、障害の程度が障害年金認定基準を満たすことが必要です。
障害年金認定基準は、障害の内容ごとに、日本年金機構が下記の通り定めています。

国民年金・厚生年金保険障害認定基準

あなたが初診日に国民年金に加入していた場合は、上記の認定基準で2級以上に該当することが必要です。
一方、あなたが初診日に厚生年金または共済年金に加入していた場合は、上記の認定基準で3級以上に該当すれば障害年金を受給できます。

 

人格障害や神経症については原則として障害年金は申請できない。

障害年金も障害者手帳と同様、全ての病気や怪我による障害が対象になります。
ただし、1つだけ重要な例外があります。

それは、人格障害やパニック障害、不安障害、強迫性障害、解離性障害など神経症に分類される精神疾患については、原則として障害年金の対象とはならないとされていることです。

これらの精神疾患については、うつ病や統合失調症の症状が出ている場合に限り例外的に障害年金の対象となります。障害年金を申請する前に、医師にうつ病や統合失調症の症状が出ているかを確認してみましょう。

 

2-4 条件4:原則として最初の通院日から1年6か月たっていることが必要。

最後に、障害年金をもらえるのは、初診日から1年6か月が経過した後です。

このように1年6か月待つ必要があるのは、障害年金の制度では、初診日から日がたち、障害の内容がある程度安定した状態になってから年金が支給されることになっているからです。
まだ初診日から日がたっていない人は、1年6か月をまって請求しましょう。

ただし、以下の病気や怪我については、例外として、初診日から1年6か月が経過しなくても申請が可能です。

障害の部位 障害の内容 障害年金の申請ができる日
上肢、下肢 人工骨頭又は人工関節を入れた場合 手術の日
手足を切断又は離断した場合 切断又は離断の日
呼吸器 喉頭全摘出の場合 全摘出した日
在宅酸素療法を行っている場合 在宅酸素療法を開始した日
心臓 心臓ペースメーカーやICDあるいは人工弁を装着したとき 装着の日
腎臓 人工透析をしている場合 透析開始後3か月を経過した日
膀胱 新膀胱を造設した場合 造設の日
肛門 人工肛門の造設、尿路変更術を施術した場合 手術後6か月を経過した日

 

3 障害年金は年金事務所に申請する

障害年金は、障害者手帳とは異なり、国の機関である年金事務所に申請します。
最後に障害年金の申請方法の概要をご紹介したいと思います。
なお、障害年金の請求の方法は何種類かありますが、ここでは、一番標準的な本来請求と呼ばれる請求方法の手順をご説明します。

 

3-1 Step1:受診状況等証明書の記載を病院に依頼する。

受診状況等証明書は、初診日を病院に証明してもらうための書類です。
初診の病院(障害年金を申請する症状についてはじめてかかった病院)に作成を依頼することが原則です。

受信状況等証明書

 

3-2 Step2:診断書の記載を医師に依頼する。

診断書は、あなたの症状の内容について記載してもらうための書類です。
病院の主治医に記載してもらうことになります。
下の画像は、統合失調症やうつ病など精神疾患の場合の診断書です。

診断書

 

3-3 Step3:病歴・就労状況等申立書を作成する。

病歴・就労状況等申立書は、発症から現在までの経緯や就労への支障の程度、日常生活への支障の程度などを記載する書類です。
病歴・就労状況等申立書は、自分で作成することになりますが、弁護士や社労士に申請代行を依頼する場合は弁護士や社労士が作成してくれます。

病歴・就労状況等申立書

 

3-4 Step4:通帳のコピーと住民票を準備する。

あなたが障害年金の入金を希望する通帳のコピーを準備します。
また、世帯全員の記載のある住民票も必要です。
そのほか、あなたの家族の状況によっては、戸籍謄本や所得証明書、子供の学生証などが必要になることがあります。

 

3-5 Step5:すべてそろったら裁定請求書を作成して年金事務所に提出する。

Step1からStep4の書類がすべてそろったら、「裁定請求書」を作成して年金事務所に提出しましょう。
「裁定請求書」の用紙は、年金事務所で入手できます。

 

3-6 Step6:通常は裁定請求書を提出後3か月程度で結果が出る。

障害年金の申請が認められときは、年金事務所から年金証書が送られてきます。
一方、障害年金の申請が認められなかったときは、年金事務所から不支給決定通知が送られてきます。

以上が障害年金の申請方法の概要になりますが、より詳しい手順は以下を参照してください。

障害年金の申請手続き7つのステップ

 

4 まとめ

今回は、障害者手帳の等級と障害年金の等級が一致しないことをまず最初にご説明しました。
そのうえで、障害会社手帳をお持ちの方が障害年金をもらうための条件や申請方法の概要についてご説明しました。
障害者手帳も障害年金もあなたの生活にとって経済的にプラスになるものです。
障害年金を請求できる場合は、ぜひ申請しておきましょう。

 

患者団体や病院の方へ

患者団体や病院の方、あるいは報道機関から、この記事を利用したいとのお問い合わせをいただくことがあります。
障害年金の制度を患者の方にお伝えいただく目的で使用いただくのであれば、無償で利用していただいて結構です。
ただし、以下のルールを必ず守っていただきますようにお願いいたします。

 

  • 記事は修正しないでそのまま使用してください。
  • 咲くやこの花法律事務所の記事であることは使用の際に明示をお願いいたします。
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  • 患者団体または病院関係者、報道機関以外の方の使用は禁じます。

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  • この記事の監修者
  • 西川 暢春
  • 西川 暢春

    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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