障害年金をアルコール依存症でもらうために重要なポイント

横になる男性 アルコール依存症
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アルコール依存症単体は障害年金の対象外ですが、認知障害や意識障害、人格変化などの精神障害がみられている場合、障害年金が受給できる可能性があります。

では、どの程度の症状であれば受給できるのでしょうか。

今回の記事では、障害年金が受給できる条件や、申請に必要な書類の取り付け方などをご説明いたします。

もしもあなたが基準を満たしているのであれば、障害年金の申請を検討しましょう。

 

1 アルコール依存症でも症状によっては障害年金がもらえる!

アルコールは高頻度で多量に摂取すると脳に異常をきたします。

障害年金制度ではアルコール依存症による症状も対象疾患とされていますが、【イライラして人にあたる・人に傷つける(人格変化)、記憶が飛ぶといったブラックアウトの症状・善悪の判断がつかなくなる(認知障害)、うつ状態・躁状態(精神障害)】といった精神疾患を生じている場合のみ認定対象となり、精神病性の症状がない急性中毒、明らかな身体依存がみられないものは認定の対象になりません。

アルコールによる認知障害・人格変化のため、仕事や日常生活に支障が出ているのであれば、障害年金の申請を検討しましょう。

障害年金とは?

 

病気やケガなどによって日常生活や仕事に支障が出ている方が受給できる年金です。

申請は20歳から65歳になる前々日までに行う必要があります。

日本年金機構が認定し、支給している国の制度で、年金の納付要件や障害の程度などの受給できる条件を満たしていれば、受給することができます。

 

障害年金の等級は1~3級で、初診日(病気のために初めて病院に行った日)に加入していた制度によって該当する等級が変わります。

 

・初診日に国民年金に加入していた、または20歳前に初診日がある場合(障害基礎年金)

→1級もしくは2級

・初診日に厚生年金に加入していた場合(障害厚生年金)

→1級、2級、3級、もしくは障害手当金(共済年金は現在、厚生年金と一元化されています)

 

 

2 アルコール依存症で障害年金を受給するための2つの条件

障害年金を受給するためには、(1)認定基準に該当する障害状態であること、(2)初診日までの一定期間年金を納めていること、の2つの条件があり、両方とも満たしている必要があります。

まずは認定基準からみていきましょう。

 

2-1 認定基準に当てはまる症状か

障害年金では、傷病によって「このくらいの障害の程度であれば〇級相当」と基準が定められており、これを認定基準と言います。

アルコール依存症に対する認定基準は以下の通りです。

等 級 障  害  の  状  態
1 級 高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の援助が必要なもの
2 級 認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3 級
(障害厚生年金のみ)
1 認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの
2
 認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの
障害手当金
(障害厚生年金のみ)
認知障害のため、労働が制限を受けるもの

おおまかにいえば、常に誰かの援助がなければ日常生活がおくれない場合が1級、日常生活・仕事に支障が出ている場合が2級、仕事に制限がある場合は3級(もしくは障害手当金)です。

なお平成28年9月より、認定基準をより具体的に示した「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が発表され、新たに審査の基準となっています。

この等級判定ガイドラインでは、診断書の記載事項である「日常生活能力の判定」及び「日常生活能力の程度」に応じて等級の目安が定められています。

※「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」とは

■日常生活能力の判定

日常生活にどのような支障があるかを7つの場面に分けて評価したものです。

※請求者が一人暮らしをした場合、可能かどうかで判断します。

(1)適切な食事 配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることができる
(2)身辺の清潔保持 洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。また、自室の清掃や片付けができる
(3)金銭管理と買い物 金銭を自力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできる
(4)通院と服薬 定期的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができる
(5)他人との意思伝達及び対人関係 他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行える
(6)身辺の安全保持及び危機対応 事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができる
(7)社会性 銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。また、社会生活に必要な手続が行える

各項目を

できる
自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる
助言や指導をしてもできない若しくは行わない

 

■日常生活能力の程度

日常生活能力を総合的に評価したものです。

精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。
精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
精神障害を認め、家庭内の単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。

上記の5つの選択肢から症状にもっとも近いものを選びます。

 

具体的な等級の目安は次の通りです。
障害等級の目安(PDF)

まったくこのとおりに認定されるわけではありませんが、あなたが障害年金を受けられるか検討していただく、ひとつの大きな判断基準になるのではないでしょうか。

 

2-2 初診日までの一定期間年金を納めている

2つ目の条件は、年金の納付に関する条件(納付要件)です。アルコール依存症のため、初めて病院を受診した日(初診日)までの一定期間、年金を納めているかについては、お近くの年金事務所で確認しましょう。

条件は以下の通りです。

初診日の時に、国民年金、厚生年金、共済年金に加入していた方、もしくは20歳未満の方で

 

(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること(原則)

または

(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(特例)

(1)もしくは(2)に該当しなければ条件を満たしていれば、納付要件はクリアです。
年金事務所で確認する場合は、必ず年金手帳を持参しましょう。

 

3 審査で重視される2つの書類

ここまで、障害年金が受給できる条件についてご説明しました。
つづいて障害年金の申請準備にあたって、書類の取り付け方や作成方法についてご説明します。

 

3-1 診断書

障害年金を申請するにあたり、診断書は一番重要な書類です。

認定基準の項目でご説明したように、障害年金では、傷病によって「このくらいの障害の程度であれば〇級相当」と基準が定められおり、等級判定ガイドラインでは、診断書の記載事項を基に等級の目安が定められています。

そのため、障害年金はほとんど診断書の内容で決まると言っても過言ではありません。

アルコール依存症で申請する場合は「精神の障害用の診断書(PDF)」を使用しましょう。

診断書作成のポイント

診断書の作成を依頼する前に、日常生活状況についてまとめておく

アルコール依存症の等級判定においては、日常生活能力の程度が重視されています。

しかし受診するたびに主治医に日常生活状況を伝えきれている方はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。

医師が十分理解していないと、診断書の内容が実際の症状とそぐわないものになり、結果的に不支給になってしまうこともありえます。

どんな症状があって、日常生活や仕事にどんな影響が出ているか伝え、症状に応じた診断書を書いてもらうことが重要です。

診断書を依頼する前に、事前に日常生活のどんな部分に支障があるか、どんなことに困っているのかまとめて病院へ持参しましょう。

 

3-2 病歴・就労状況等申立書

最後に、請求者が記入するもので最も重要な病歴・就労状況等申立書についてご説明します。

この書類は、発症から現在までの日常生活状況や就労状況を記載するもので、診断書のように医師に書いてもらうものではなく、請求者が自分で作成するものです。

どう書いていいのかわからない、何を書けばいいのかわからないと簡単に書いてしまう方もいますが、病歴・就労状況等申立書は日常生活にどのような支障がでているか、どんなことに困っているかを自分で伝えることができる唯一の書類です。

診断書では伝えきれない日常生活状況を伝えることのできる重要な書類なので、ポイントをおさえてしっかり記載することが重要です。

 

病歴・就労状況等申立書作成のポイント
(1)初診日から現在までの状況を3~5年に分けて記載する

病歴・就労状況等申立書には病気のために初めて病院を受診した日から現在までの日常生活状況や就労状況を記載する必要があり、記載要領では3~5年に分けて記載するように求められています。

覚えていないからといって10年、20年をまとめて書いてしまうと年金機構から書き直しを求められることがあるので、必ず3~5年の期間に区切って作成しましょう。

(2)具体的に記載する

病歴・就労状況申立書は主観ではなく客観的かつ具体的に記入することが重要です。

自分がどう感じたかではなく実際にどんなことがあったかを具体的に記入するように注意しましょう。

とは言っても実際にどんなことを書けばいいのかわからない方も多いと思いますので、病歴・就労状況等申立書に記載するべき事項を一部例示します。

病歴・就労状況等申立書の記載事項

  • 周囲の人(家族や友人等)との関係(人間関係でトラブルになることはなかったか等)
  • 日常生活でできなかったことや困っていたこと
  • 家族や周囲の人からの援助の有無やその内容
  • 施設の入所歴や福祉サービスの利用状況とその程度
  • 妄想や徘徊、異常行動の有無やその内容や頻度
  • その他障害に関する印象的なエピソード    等
(3)診断書との整合性に注意する

障害年金の審査においては医師の作成した診断書と請求者の作成する病歴・就労状況等申立書の整合性が重視されます。

例えば、診断書ではできないと書かれているのに、病歴・就労状況申立書ではできると書かれている場合、病歴・就労状況等申立書の内容が足を引っ張って、適切な等級に認定されないこともありえるのです。

アルコール依存症の場合、ご本人ではなくそのご家族が病歴・就労状況等申立書を作成することも多いのではないでしょうか。

自分の家族のできないことばかり書くことは気がすすまないかもしれませんが、ここは割り切って、客観的に見てどうかを考えることが重要です。

また、ずっと一緒に生活している家族だと周囲から見るとできていないことでも当たり前になってしまって症状を認識できていないこともあります。

病歴・就労状況等申立書を書くときは、客観性を意識して書くようにしましょう。

そして、申請書類を提出する前に医師の作成した診断書と病歴・就労状況等申立書を見比べて、記載内容や症状の程度に矛盾がないかを確認してください。

 

4 まとめ

今回はアルコール依存症で障害年金を受給できる条件についてご説明いたしました。

大きな基準としては、依存症単体ではなく、精神的な症状が出ていることが重要です。

うつ病や統合失調症などを合併しているものも障害年金が受給できる可能性がありますので、早めに申請の準備をはじめましょう。

 

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  • この記事の監修者
  • 西川 暢春
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    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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