障害年金に一時金があるってご存知ですか?
障害の程度が軽いから障害年金はもらえない・・・そんな方も、一時金の対象になるかもしれません!
今回は障害年金の一時金(障害手当金)についてご説明します。
目次
1 障害年金の一時金(障害手当金)とは?
障害年金の一時金は「障害手当金」と言います。
障害手当金は障害年金の支給に相当しない程度の障害が残った時に支給される一時金です。
厳密に言えば、一回のみ支払われるものなので「年金」ではありません。
障害手当金の額は、報酬比例額の2年分です。
報酬比例額はそれぞれの方がこれまでにいくら保険料を納めたかやどのくらいの期間厚生年金に加入していたか等によって異なりますが、最低でも116万9000円(平成29年度)を受け取ることができます。
障害手当金を受け取るためには年金機構の定めるいくつかの条件を満たしている必要があります。
2 一時金(障害手当金)を受給するための4つの要件
2-1 初診日に厚生年金に加入していること
初診日とは、病気やケガのために初めて病院を受診した日のことです。
障害手当金は、厚生年金独自の給付であり、初診日時点で厚生年金に加入していた方しか請求することができません。
残念ながら、初診日に国民年金に加入していた方については、障害手当金を受給することはできないのです。
2-2 初診日までに一定の保険料を納めていること
障害手当金を受給するためには、初診日までに一定の保険料を納めている必要があります。これを「保険料の納付要件」と言います。
障害手当金を受給するためには以下のいずれかの条件を満たしている必要があります。
初診日前日時点で
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。
2-3 初診日から5年以内に症状固定していること
症状固定とは、「症状にこれ以上の改善の可能性を期待できない状態」のことをさします。
例えば、脳梗塞の後遺症等で肢体に麻痺が残っているような場合で、リハビリをしてもこれ以上回復しないと医師が判断した時は、この症状固定状態に該当します。
2-4 一定の障害状態にあること
障害手当金を受給するためには、障害の状態が年金機構の定める一定の障害状態にあることが必要です。
一般的に障害年金3級に相当する障害の程度よりやや軽いものが障害手当金の対象と説明されることが多いですが、それだけではなかなかイメージできないと思いますので、障害手当金の支給対象となる障害の程度を一部例示します。
障害の種類 | 障 害 の 状 態 |
眼の障害 | 一眼の視力が0.1以下に減じたもの(矯正視力) |
両眼の視力が0.6以下に減じたもの(矯正視力) | |
両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの | |
両眼による視野が2分の1以上欠損したもの又は両眼の視野が10度以内のもの | |
両眼の調節機能及び輻輳機能に著しい障害を残すもの | |
耳の障害 | 一耳の平均純音聴力レベルが80デシベル以上のもの |
そしゃく・言語 鼻の障害 |
そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの |
鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの | |
脊柱の障害 | 脊柱の機能に障害を残すもの |
骨の障害 | 長管状骨に著しい転位変形を残すもの |
上肢の障害 | 一上肢の3大関節のうち、1関節の用を廃したもの |
一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの | |
一上肢に偽関節を残すもの | |
下肢の障害 | 一下肢の3大関節のうち、1関節の用を廃したもの |
一下肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの | |
一下肢が3センチメートル以上短縮したもの | |
一下肢に偽関節を残すもの | |
手指の障害 | 一上肢のおや指を指節間関節で欠き、かつ、ひとさし指以外の1指を近位指節間関節以上で欠くもの |
ひとさし指を併せ一上肢の2指を近位指節間関節以上で欠くもの | |
おや指及びひとさし指以外の一上肢の3指を近位指節間関節以上で欠くもの | |
一上肢のひとさし指を近位指節間関節以上で欠くもの | |
おや指及びひとさし指以外の一上肢の2指を近位指節間関節以上で欠くもの | |
一上肢のおや指を指節関節以上で欠くもの | |
一上肢のおや指及びひとさし指の用を廃したもの | |
おや指又はひとさし指を併せ一上肢の3指以上の用を廃したもの | |
一上肢のおや指を併せ2指の用を廃したもの | |
一上肢のおや指の用を全く廃したもの | |
ひとさし指を併せ一上肢の2指の用を廃したもの | |
おや指及びひとさし指以外の一上肢の3指の用を廃したもの | |
足指の障害 | 一下肢の5趾を中趾節関節以上で欠くもの |
一下肢の第1趾を併せ2以上の趾を中趾節関節以上で欠くもの | |
一下肢の第1趾又は他の4趾を中趾節関節以上で欠くもの | |
一下肢の5趾の用を廃したもの | |
精神の障害 | 精神又は神経系統に労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
身体の障害 | 身体の機能に労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
『障害認定基準より引用』
3 どうやって申請するの?
障害手当金の申請方法や必要書類は、「障害厚生年金」の請求方法と同一です。
初診日を証明する書類や診断書等の必要書類を揃えて、年金事務所に提出をします。詳しい申請の方法や必要書類についてはこちらの記事をご参照ください。
『これなら私もできるかも!?障害年金の申請手続き7つのステップ』
ただし、共済年金では独自の請求方法がある場合がありますので必ず事前に加入の共済組合へ問い合わせてください。
4 症状が悪化したら障害年金に変更も可能
障害手当金は、症状が固定していることが前提になりますが、数年たって症状が悪化したという場合もあるかもしれません。
そんな時は、障害年金を請求することも可能です。障害の状態が3級以上に認定された場合は、障害年金を受給することができます。
ただし、障害年金を受給できる場合は、受け取った障害手当金を返還する必要があるので注意が必要です。
5 症状固定した日から5年経つと支給されないので要注意!
障害手当金には請求に期限があり、症状が治った日から5年以内に請求する必要があります。
5年が経過してしまうと障害手当金の対象であっても支給されなくなってしまうのです。障害手当金が支給される、されないで生活は大違いです。
申請が遅れて受給できなくなることがないよう注意しましょう。
6 まとめ
今回は、軽度の障害が残ったときに支給される、障害手当金についてご説明しました。
障害年金の対象にはならなくても、障害手当金の対象になるかもしれません。
最低でも116万9000円を受け取ることができるので、対象になる方はもらい忘れることのないよう請求しましょう。
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