障害年金の配偶者加算とは?わかりやすく解説

障害年金の配偶者加算について
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障害年金には配偶者がいるとプラスして受け取れる加算があるってご存知ですか?

今回は、そんな配偶者加算の制度から気になる疑問まで徹底解説します。

 

1.障害年金の配偶者加算とは?

障害年金には、受給者に配偶者がいると通常の年金に加えて支払われる年金があります。これを障害年金の配偶者加算といいます。正しくは「配偶者加給年金」ですが、配偶者加算と呼ばれることもあります。

配偶者加算は、障害厚生年金の受給者にのみ支払われるもので、残念ながら障害基礎年金の受給者には支給されません。ちなみに、配偶者だけでなく18歳未満の子(若しくは障害のある20歳未満の子)がいる場合には「子の加算」を受け取ることができます。子の加算は配偶者加算とは異なり、障害基礎年金の受給者も受け取ることができます。

ここからは、障害年金の配偶者加算について詳しくご説明します。

 

(1)どんな人が対象になるの?

配偶者加算を受けるためには一定の条件があります。以下の条件をすべて満たした場合に配偶者加算がつきます。

 

  • 1.初診日に厚生年金に加入しており、障害厚生年金1級又は2級の受給権者であること
  • 2.生計同一関係があること
  • 3.配偶者の年収が850万円未満(または所得が655.5万円未満)であること
  • 4.配偶者が障害年金や老齢年金、退職年金等を受け取っていないこと
  • 5.配偶者が65歳未満であること

 

ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

 

1.初診日に厚生年金に加入しており、障害厚生年金1級又は2級の受給権者であること

障害年金では、病気やケガのために初めて病院を受診した日(これを初診日といいます)に加入していた年金制度によって支払われる年金の種類が異なります。初診日に厚生年金に加入していた方には障害厚生年金が、初診日に国民年金に加入していた方には障害基礎年金が支給されます。

先ほどお伝えしたとおり、配偶者加算は障害厚生年金の受給権者にのみ支払われるものです。そのため、初診日に厚生年金に加入していた方のみが配偶者加算の対象になります。また、配偶者加算は障害等級が1級若しくは2級の方にしか支給されません。

障害厚生年金では年金を受け取ることができる等級が障害の程度によって1~3級まで決められていますが、3級に認定された方は残念ながら配偶者加算を受けることはできません。

 

2.生計同一関係があること

加算の対象になるのは、受給権者と同じ家計で生活している配偶者です。これを生計同一関係と言います。

具体的に言えば、下記に当てはまる場合は生計同一関係があると認定されます。

 

▶︎参考情報:生計同一に関する認定要件

ア 住民票上同一世帯に属しているとき
イ 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
ウ 住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき

(ア)現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
(イ)単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき

(ア)生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
(イ)定期的に音信、訪問が行われていること

・参照元:厚生労働省「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて(国民年金法)」

 

必ずしも同居している必要はなく、別居していても仕送りをしていたり、扶養に入っている等の事実があれば生計同一関係であると認定されます。

ちなみに配偶者加算の対象者は夫か妻かを問いません。たとえば、妻が専業主婦で夫がサラリーマンで妻が障害年金を受給する場合、配偶者加算の条件を満足していれば夫についての加算をうけることができるのです。実際にどちらが扶養しているかは関係がありません。

 

3.配偶者の年収が850万円未満(または所得が655.5万円未満)であること

加算の対象になるためには、年収が850万円未満若しくは所得が655.5万円未満の配偶者です。一定の年収を超えてしまうと加算の対象から外れてしまいます。

ただし、請求時に850万円を超える年収があっても、おおむね5年以内に定年退職や降格等の理由から年収が850万円未満若しくは所得が655.5万円未満になることが確実である場合は加算の対象になることがあります。

 

▶︎参考:所得とは?

所得とは収入額からその収入を得るためにかかった必要経費と障害者控除等の諸控除を除いたものです。市町村役場で発行される所得証明書等で確認することができます。

 

4.配偶者が障害年金や老齢年金、退職年金等を受け取っていないこと

配偶者が公的年金制度から年金を受給している期間については加算を受けることができません。公的年金制度とは以下のようなものをさします。

 

  • 厚生年金保険法の老齢厚生年金および障害厚生年金
  • 旧厚生年金保険法、旧船員保険法の老齢年金および障害年金
  • 国民年金法の障害基礎年金および旧国民年金法の障害年金
  • 各種共済組合等の退職共済年金および障害共済年金、退職年金および障害年金等

 

5.配偶者が65歳未満であること

加算の対象となるのは65歳未満の配偶者です。

例えば、63歳のときに障害年金の受給権が発生した女性の夫が66歳の場合、配偶者加算を受けることはできません。

 

(2)いくら支給されるの?

配偶者加算の額は、一律年間22万4900円です。

 

(3)どんな書類が必要なの?

配偶者加算を受けるために必要な書類は、これから障害年金を申請する場合か既に障害年金を受給している方が結婚して配偶者加算を受ける場合によって異なります。

 

1.これから障害年金を請求する場合

これから障害年金を請求する方が配偶者加算を受けるためには、以下の書類が必要です。

 

  • (1)戸籍謄本(請求者と配偶者の続柄の確認のため)
  • (2)世帯全員の住民票(請求者との生計同一関係を確認するため)
  • (3)配偶者の所得証明書や課税(非課税)証明書、源泉徴収票等(配偶者の収入の確認のため)

 

所得証明書は請求する前年のもの(前年のものが取得できない場合は前々年のもの)を準備しましょう。書類が準備できたら年金請求書や診断書などの障害年金申請書類とあわせて年金事務所へ提出します。障害の程度が1級又は2級に認定された場合は、障害年金とあわせて配偶者加算を受け取ることができます。

※遡及請求をする場合は、前年分だけでなく遡って請求しているすべての年分の所得証明資料が必要になります。例えば、平成30年まで遡って請求する場合は、平成29年から現在までのすべての年の所得証明資料が必要です。

 

2.障害年金受給中に結婚した場合

すでに障害厚生年金1級または2級の受給者が障害年金の受給権発生後に結婚した場合、申請をすれば配偶者加算を受け取ることができます。申請には以下の書類が必要です。

 

  • (1)障害給付加算額・加給年金額加算開始事由該当届(書式)
  • (2)戸籍謄本
  • (3)世帯全員の住民票
  • (4)配偶者の所得証明書や課税(非課税)証明書、源泉徴収票等

 

書類が準備できたら最寄りの年金事務所へ提出しましょう。

※以前は、障害年金の受給権発生時点で結婚していた配偶者のみが加算の対象となっており、受給権発生後に結婚した場合は配偶者加算を受けることができませんでした。しかし平成23年4月に法改正があり、現在は受給権発生後に結婚した配偶者についても加算を受けることができるようになりました。

 

2.配偶者加算が支給停止になるケース

配偶者加算の条件に該当しなくなれば当然、支給停止になってしまいます。ここからは障害年金が支給停止になるケースをご紹介します。

 

(1)離婚した又は配偶者が亡くなったとき

離婚した場合や、配偶者が亡くなった場合、配偶者加算は支給停止になります。

以下の届出が必要になります。

 

▶︎参考情報:加算額・加給年金額対象者不該当届の書式については以下をご参照ください。

「加算額・加給年金額対象者不該当届」(pdf)はこちら

 

配偶者と離婚をしたり、配偶者が亡くなったにも関わらず手続きをしなかった場合、受け取りすぎた加算分の年金を返金する必要が生じます。なるべく早く手続きをしましょう。

 

(2)障害の等級が3級になったとき

障害年金では一部の方を除いて、数年に1度、診断書の提出が義務付けられています。提出された診断書を元に障害の程度の見直しが行われ、症状が改善していることが確認された場合は、等級が下がることもあります。

(1)どんな人が対象になるの?」でもご説明しましたが、配偶者加算は障害厚生年金の1級又は2級でなければ受け取ることができません。

もし、2級の障害年金を受け取っていた方が、障害の程度の見直しによって等級が3級に変更になった場合、残念ながら配偶者加算も支給停止になってしまいます。

 

(3)配偶者が公的年金を受給できるとき

配偶者が障害年金等の公的年金を受け取ることができるとき、配偶者加算は支給停止になります。

配偶者が公的年金を受け取ることができる場合は、以下の届出を提出しましょう。

 

▶︎参考情報:老齢・障害給付加給年金額支給停止事由該当届の書式については以下をご参照ください。

「老齢・障害給付加給年金額支給停止事由該当届」(pdf)はこちら

 

ただし、一度支給停止になったからと言って、一生加算が受けられないわけではありません。配偶者が公的年金を受給することができなくなった場合は再度、配偶者加算を受けることができます。

配偶者が公的年金を受け取ることができなくなったときは以下の届出を提出しましょう。

 

▶︎参考情報:老齢・障害給付加給年金額支給停止事由消滅届の書式については以下をご参照ください。

「老齢・障害給付加給年金額支給停止事由消滅届」(pdf)はこちら

 

3.別居、別世帯でも受け取れる?

つぎに、配偶者加算についてよくある質問の1つ、「別居、別世帯でも受け取れるのか?」について解説します。

答えはイエスです。別居、別世帯でも配偶者加算を受け取ることができます。

2.生計同一関係があること」でご説明しましたが、加算の対象になるのは「生計同一関係」がある配偶者です。この生計同一関係については必ずしも同居していることや同一世帯であることを必要としません。実際に同じ生計で生活している事実があれば配偶者加算の対象になります。

ただし、生計同一関係の証明のためにいくつかの書類を提出する必要があります。

 

(1)別世帯になっているが、住所は同じ場合

  • それぞれの住民票
  • 生計同一関係に関する申立書

 

▶︎参考情報:別世帯になっているが、住所は同じ場合の申立書記入例は以下をご覧ください。

「生計同一関係に関する申立書(別世帯)記入例」(pdf)はこちら

 

(2)住民票上の住所が異なっているが、実際は一緒に住んでいる場合

  • それぞれの住民票
  • 生計同一関係に関する申立書
  • 第三者の証明書または表1の書類

 

▶︎参考情報:住民票上の住所が異なっているが、実際は一緒に住んでいる場合の申立書記入例は以下をご覧ください。

「生計同一関係に関する申立書(住所が違う)記入例」(pdf)はこちら

 

(3)別居しているが、経済援助や定期的な面会等がある場合

  • それぞれの住民票
  • 生計同一関係に関する申立書
  • 第三者の証明書または表1の書類

 

▶︎参考情報:別居しているが、経済援助や定期的な面会等がある場合の申立書の記入例は以下をご覧ください。

「生計同一関係に関する申立書(別居)記入例」(pdf)はこちら

 

【表1】

  • 健康保険被保険者証等の写し(健康保険の被扶養者になっている場合)
  • 給与簿又は賃金台帳等の写し(扶養手当等の対象になっている場合)
  • 源泉徴収票又は課税台帳の写し(扶養親族になっていることが確認できる場合)
  • 預金通帳、振込明細書又は現金書留封筒等の写し(定期的に送金がある場合)
  • その他、扶養関係や経済的な援助があることが確認できる書類

 

書類の内容を元に審査が行われます。審査の結果、生計同一関係が認定され、「(1)どんな人が対象になるの?」であげたその他の条件を満たしている場合は配偶者加算を受けることができます。

 

4.事実婚でも受け取れる?

また、「事実婚でも受け取れるのか?」についてもよくある質問の1つですので、以下で解説します。

答えはイエスです。事実婚でも配偶者加算を受け取ることができます。

現代では家族のあり方は多様化しており、何らかの事情によって事実婚(内縁関係)を選択している方も少なくありません。婚姻届を提出していない場合であっても、夫婦の共同生活と認められる関係があり、実際に同じ生計で生活している事実があれば配偶者加算の対象になります。

事実婚の場合も、生計同一関係の証明のためにいくつかの書類を提出する必要があります。

 

(1)住民票上同一世帯の場合

  • 世帯全員の住民票

 

(2)別世帯になっているが、住所は同じ場合

  • それぞれの住民票
  • 生計同一関係に関する申立書

 

▶︎参考情報:別世帯になっているが、住所は同じ場合の申立書記入例は以下をご覧ください。

「生計同一関係に関する申立書(別世帯)記入例」(pdf)はこちら

 

(3)住民票上の住所が異なっているが、実際は一緒に住んでいる場合

  • それぞれの住民票
  • 生計同一関係に関する申立書
  • 第三者の証明書または表2の書類

 

▶︎参考情報:住民票上の住所が異なっているが、実際は一緒に住んでいる場合の申立書記入例は以下をご覧ください。

「生計同一関係に関する申立書(住所が違う)記入例」(pdf)はこちら

 

(4)別居しているが、経済援助や定期的な面会等がある場合

  • それぞれの住民票
  • 生計同一関係に関する申立書
  • 第三者の証明書または表2の書類

 

▶︎参考情報:別居しているが、経済援助や定期的な面会等がある場合の申立書の記入例は以下をご覧ください。

「生計同一関係に関する申立書(別居)記入例」(pdf)はこちら

 

【表2】

  • 健康保険被保険者証等の写し(健康保険の被扶養者になっている場合)
  • 給与簿又は賃金台帳等の写し(扶養手当等の対象になっている場合)
  • 結婚式場等の証明書又は挙式、披露宴等の実施を証明する書類(1年以内に挙式、披露宴をした場合)
  • その他、内縁関係を証明する書類(連名の郵便物、公共料金の領収証、生命保険の保険証、未納分の税の領収証又は賃貸借契約書の写し等)

 

書類の内容を元に審査が行われます。審査の結果、生計同一関係が認定され、「(1)どんな人が対象になるの?」であげたその他の条件を満たしている場合は配偶者加算を受けることができます。

ただし、住所が異なっているが実際は一緒に住んでいる場合や別居している場合、現実にはかなり難しいと言わざるを得ません。
事実婚にあることの証明書類はたくさんあればあるほど認定されやすくなるので、できる限り多くの証明書類を提出しましょう。

 

5.等級が3級→2級に上がった場合は配偶者加算を受け取れる?

さらに、「等級が3級→2級に上がった場合も配偶者加算を受け取れるか?」についてもよくある質問の1つですので、以下で解説します。

答えは当然イエスです。等級が3級→2級に上がった場合も配偶者加算を受け取ることができます。

障害年金では一部の方を除いて、数年に1度、診断書の提出が義務付けられています。提出された診断書を元に障害の程度の見直しが行われ、症状が悪化していることが確認された場合は、等級が上がることもあります。

これまで3級の障害厚生年金を受給していた方が2級に等級が上がった場合、それまでは受けることができなかった配偶者加算を受けることができます。

 

6.配偶者の所得確認は毎年必要?

最後に、「配偶者の所得確認は毎年必要か」についても解説しておきます。

配偶者の所得確認を毎年行う必要はありません。

実は配偶者加算を受けるために所得の確認が行われるのは、申請をするはじめの1回だけです。それ以降は特に所得証明書を提出する必要はありません。

ここで注意していただきたいのは、「3.配偶者の年収が850万円未満(または所得が655.5万円未満)であること」でご説明したとおり配偶者の年収が850万円以上あっても、今後5年以内に配偶者の年収が850万円未満になることが確実である場合は、配偶者加算を受けることができますが、申請時にその旨を申告していなければ加算を受けることができません。

現在、配偶者の年収が850万円以上ある方で5年以内に配偶者の年収が850万円未満になる見込みの方は、申請時にしっかり申告をしておきましょう。

 

7.まとめ

今回は障害厚生年金につく配偶者加算についてご紹介しました。

まず配偶者加算を受けるために下記の5つの条件があることをご説明しました。

 

  • (1)初診日に厚生年金に加入しており、障害厚生年金1級又は2級の受給権者であること
  • (2)生計同一関係があること
  • (3)配偶者の年収が850万円未満(または所得が655.5万円未満)であること
  • (4)配偶者が障害年金や老齢年金、退職年金等を受け取っていないこと
  • (5)配偶者が65歳未満であること

 

その後、申請に必要な書類や支給停止になるケースをご紹介し、別居や事実婚等の特殊なケースにおいてどうすればいいのかをご説明しました。

年間22万4900円の加算がつくかつかないかで生活は大違いです。別居、別世帯だからといって加算をあきらめる必要はありません。しっかり書類を準備して配偶者加算を受けましょう!

 

記事更新日:2023年3月18日

 

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  • この記事の監修者
  • 西川 暢春
  • 西川 暢春

    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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