ネットでの誹謗中傷!書き込んだ人物を特定するための手順

スマホで誹謗中傷をされているのをみつけた女性

TwitterやFacebookの匿名アカウントで、自分の悪口を書かれた場合や、個人が開設するブログなどで自分の悪口を書かれた場合に、犯人を特定する方法があることをご存知でしょうか?

悪口が法律的に見て名誉棄損に該当する場合は、一定の手続きを踏めば、投稿者の住所や氏名の特定が可能です。

私は、これまでもこの方法で、ネット上の誹謗中傷について、投稿者の特定に成功しました。

インターネット上での誹謗中傷は、ネットで匿名だからこそ行われるという性質があり、投稿者を特定して警告すればたいていの場合の誹謗中傷は停止されます。

今回は、いざというときのために頭においておきたい、ネットで誹謗中傷された時の投稿者の特定の方法についてご紹介します。

 

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1 「発信者情報開示請求」でネット上の投稿者を特定できる!

「発信者情報開示請求」とは、SNSやブログなどインターネット上で名誉棄損に該当する投稿がされた場合に、投稿者の住所、氏名を特定する法律上の手続です。

投稿者を特定すれば、投稿者に対して法的な損害賠償請求を行うことができます。その結果、その後、安易な投稿が繰り返されることがなくなり、問題の拡大を防ぐことができます。

 


2 どんな投稿であれば特定可能か?

「発信者情報開示請求」で投稿者を特定できるのは、投稿の内容があなたの法律上の権利を侵害している場合に限られます。

例えば、以下のようなケースでは、あなたの権利の侵害にあたり、投稿者の特定が可能です。

 

ケース1:あなたの社会的な評価を下げるような嘘を記載した投稿

例えば、「不倫している」とか「前科がある」など、あなたの社会的な評価を下げるような投稿がされた場合で、その内容が嘘のときは、名誉棄損に該当し、投稿者の特定が可能です。

 

ケース2:あなたの個人情報を記載した投稿

例えば、あなたの住所をネット上であなたに無断で公開したり、あなたの電話番号や家庭内のプライベートな情報を投稿した場合は、プライバシーの侵害にあたり、投稿者の特定が可能です。

 

ケース3:あなたの写真を無断でアップした投稿

あなたの許可なく撮影した写真を投稿するケースは、肖像権やプライバシーの侵害にあたり、投稿者の特定が可能です。
このような、名誉棄損にあたる投稿や、プライバシー侵害、肖像権侵害にあたる投稿が、「発信者情報開示請求」で投稿者を特定できる対象になります。

 

2-1 記載が真実であっても名誉棄損として投稿者特定が可能なケースもある。

前述のケース1では嘘を記載した投稿をとりあげましたが、記載内容が真実であっても名誉棄損に該当し、投稿者特定が可能なケースもあります。
真実であっても名誉棄損が成立することは刑法にも明記されています。

名誉棄損について定めた刑法第230条1項の内容は以下の通りです。

「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」

少しわかりにくい条文ですが、「その事実の有無にかかわらず」というのは「真実であるかどうかにかかわらず」という意味になります。

そのため、例えば、「不倫している」などの投稿については、真実の投稿かどうかにかかわらず、名誉棄損に該当し、投稿者の住所、氏名の特定が可能です。裁判所の判例の中にも投稿内容が真実かどうかを問題にすることなく、投稿者を特定する情報の開示を認めたものがあります(平成24年 3月27日金沢地方裁判所判決など)。

ただし、例外として、投稿が「公共の利害に関する事実に関するもので、かつ、公益目的でなされている場合」は、真実であれば、法律上名誉棄損には該当しません。

例えば、政治家など公的な立場の人物についての不倫の事実の投稿については、政治家としての資質を問題にする公益目的の投稿とみる余地があります。このような場合は、投稿内容が嘘である場合に限り名誉棄損になります。

投稿の対象とされた人物が公的な立場にない一般人の場合は、原則通り、真実かどうかにかかわらず名誉棄損として投稿者の特定が可能です。

 


3 誹謗中傷記事投稿者特定に必要な手続きの流れは5ステップ!

では、具体的にどのような手続きをすれば投稿者の特定が可能になるのでしょうか。

投稿者に関する情報はこれらの投稿者のプライバシーにかかわるものであり、TwitterやFacebookあるいは2ちゃんねるなど投稿が行われた媒体の運営者に問い合わせても簡単に回答することはありません。

そのため、投稿者を特定するためには、裁判所からTwitterやFacebookに対して投稿者の特定のための情報を開示するように命令をだしてもらう必要があり、裁判所での手続きが必要になってきます。裁判所の手続きは弁護士に依頼して進めることになるでしょう。

具体的な手続きの流れには5つのステップがありますので、以下で順番に見ていきましょう。

 

3-1 まず弁護士に開示が認められる見込みの程度を相談する

まず、弁護士に相談して、手続きを進めていけば開示が認められそうかどうかを相談することが必要です。

これは、発信者情報開示請求の手続きを進めていっても、投稿内容が名誉毀損に該当しないとして裁判所が開示を認めないケースも少なくないためです。

裁判所に投稿が名誉毀損に該当すると認めてもらうためには、以下の3つが重要なポイントです。

 

ポイント1:あなたについての投稿であることがわかること

名誉毀損に該当するとして投稿者情報の開示が認められるためには、投稿を見れば閲覧者が「これはあなたのことを書いている」ということが理解できる内容であることが必要です。

名誉毀損とは、人の社会的評価を下げることをいいます。そのため、閲覧者が見て、誰に関する投稿かがわからないようなケースでは、たとえ書かれた本人にとっては自分のことだとわかったとしても、あなたの社会的評価を下げるとは言えず、名誉毀損に該当しません。

投稿内にあなたの氏名が書かれていない場合は、その投稿があなたについてのものであり、一般のネットユーザーもあなたについての記載であると理解する状況にあることを、裁判所に資料を提出して立証していく必要があります。

 

ポイント2:社会的評価を下げる具体的な事実が記載されていること

次に問題になるのが、名誉毀損に該当するためには、投稿にあなたの社会的評価を下げるような具体的事実が記載されていることが必要であるという点です。

過去の裁判例で名誉毀損に該当しないと判断された例として以下のものがあります。

 

事例1:

漫画家に対して、「かつて自分に本当に興味がある人だけに関心を持ってもらいたいと言っていたが,読者層を拡大する必要から大々的に宣伝し始めた。」とか「何ごとにも冷めている風にみせかけてほんと自己顕示欲の塊だよな」などと投稿された例(平成22年11月24日東京地方裁判所判決)。

漫画家は投稿者特定に関する情報の開示を請求しましたが、裁判所は投稿の内容は漫画家の社会的評価を下げるような具体的なエピソードを含んでいないことから、名誉毀損には該当しないと判断されました。

 

事例2:

読み終わった成人向けの漫画本を20円で販売しているという内容の投稿がSNSにされた事例(平成25年6月25日東京地方裁判所判決)。

投稿された被害者は投稿者特定に関する情報の開示を請求しましたが、裁判所は、この投稿内容だけでは社会的評価を下げるような内容とまではいえないとして、名誉毀損に該当しないと判断しました。

 

特に事例1の例でもわかるように、単に批判的なコメントや感情的なコメントが記載されているというだけでは名誉毀損にあたらず、あなたの社会的な評価を下げるような具体的エピソードが記載されていることが必要だということ注意しておきましょう。

例えば、「卑怯な奴だ」とか「失礼な奴だ」、「あいつは頭がおかしい」というような投稿は、具体的エピソードをともなわない批判的なコメントにすぎず、名誉毀損にはあたらないことが多いです。

 

ポイント3:公共の利害にかかわる投稿については真実でないこと

投稿が「公共の利害に関する事実に関するもので、かつ、公益目的でなされている場合」は、真実であれば、法律上名誉棄損には該当しません。

例えば、ある会社についての「社内でパワハラが横行している」とか「定価の倍以上の料金を請求している」などといった投稿ついては、このような会社に就職してパワハラ被害にあうことや、このような会社と取引をして不当に高い料金を支払わせる被害を防ぐための投稿という側面があります。

そのため、「公共の利害に関する事実に関するもので、かつ、公益目的でなされている場合」に該当する可能性が高く、投稿内容が真実でないことを立証することが投稿者に関する情報の開示を認めてもらうために必要になります。

不快な投稿がされているが本当のことが書かれているという場合は、投稿者に関する情報の開示は認められません。

このようなポイントを踏まえて、弁護士に開示が認められる見込みの程度を正確に判断してもらうことが必要です。

なお、問題の投稿が同じfacebookアカウントやTwitterアカウントで、名誉毀損の投稿が複数回されているときは、基本的に同一人が投稿していると考えられます。

その場合、必ずしも問題のあるすべての投稿を対象に発信者情報開示請求を行うのではなく、対象とする投稿をしぼりこむことが効果的です。

これは、対象とする投稿が増えるとその分弁護士の労力がかさみ、手続きが遅くなったり、費用がかさんだりするためです。

上記でご説明した3つのポイントを踏まえて開示請求が認められる見込みの高い投稿のみを対象に発信者情報開示請求を行うことで、労力や費用を最小限にして投稿者を特定することができます。

 

3-2 投稿者のIPアドレスとタイムスタンプを特定する

開示が認められるかどうかの見込みの判断や対象とする投稿の選別が終われば、いよいよ実際に投稿者を特定する手続きに入ります。まず、投稿者が問題の投稿をしたときのIPアドレスとタイムスタンプをTwitterやFacebookに開示させることが手続きの最初のステップになります。

IPアドレスとは、Webサイトに記事の投稿をする際に、投稿を行うパソコンやスマートフォンなど1台1台に対して、割り当てられる識別符号です。

インターネット上の住所のようなものとも言われます。このIPアドレスとタイムスタンプ(投稿日時の記録)がわかれば、問題の投稿がどのパソコンやスマートフォンから投稿されたかを特定することができます。

IPアドレスとタイムスタンプをTwitterやFacebookに開示させるためには、「発信者情報開示仮処分命令申立」という裁判所の手続きが必要です。

「発信者情報開示仮処分命令申立」は、TwitterやFacebookなどといった、投稿が行われたサービスを運営している会社に対して、裁判所から投稿者のIPアドレスとタイムスタンプを開示するように命じる決定を出してもらう手続です。

例えば、問題の投稿がTwitterで行われた場合は、Twitterを相手として、Facebookで行われた場合は、Facebookを相手として手続きをすることになります。

また、例えば、はてなブログで問題の投稿が行われた場合は株式会社はてなを相手として手続きをすることになります。

 

手続きを成功させるためには証拠の準備が重要!

「発信者情報開示仮処分命令申立」にあたって具体的な裁判所での対応は弁護士にまかせたほうがよく、あなた自身が裁判所に行く必要はありません。

ただし、前述した「一般のネットユーザーが投稿を読んだときにあなたについての投稿であることがわかること」や「公共の利害にかかわる投稿については真実でないこと」などのポイントについて十分な証拠を裁判所に出す必要があります。

そうでなければ、裁判所に投稿内容が名誉毀損に該当すると認めてもらうことができないためです。そして、この点が、発信者情報開示請求の手続きの中で一番苦労が多いポイントです。

必要な証拠は、あなたとあなたの弁護士が協力して提出していく必要があり、あなたとしても証拠として提出できるものを準備してく必要があります。例えば次のようなイメージです。

 

(例1) 投稿内であなたの実名が記載されておらず、「あだな」などが記載されているにすぎない場合

その「あだな」があなたのことを指しているということがわかるネット上の他の投稿を集めるなどして、「一般のネットユーザーが投稿を読んだときにあなたについての投稿であることがわかること」を立証する必要があります。

 

(例2)あなたの会社について「定価の倍以上の料金を請求している」などと投稿されている場合

以下のような資料を出して投稿が嘘であることを立証する必要があります。

  • 実際に行った取引の契約書をいくつかピックアップしたうえで定価表と一緒に裁判所に提出し、不当な料金を請求しているわけではないことを理解してもらう。
  • 営業マンからの報告書や営業マニュアルなどを裁判所に提出するなどして、正当な営業方法、販売方法で営業していることを理解してもらう。

なお、会社が発信者情報開示請求をする場合の流れやポイントについては以下の記事でも解説していますので合わせてご覧ください。

発信者情報開示請求の流れを弁護士が解説

「発信者情報開示仮処分命令申立」を成功させるためには、このような資料を段取り良く準備していくことや、できるだけ裁判所にわかりやすい資料を提出するための工夫が重要です。

裁判所の期日はおおよそ週1回くらいのペースで開催されます。順調にいけば「約1か月」で、裁判所から開示決定を出してもらい、IPアドレスとタイムスタンプの開示を受けることができます。

 

TwitterやFacebook、2ちゃんねるなどは海外法人に対する仮処分が必要

「発信者情報開示仮処分命令申立」の概要については上記の通りですが、投稿がTwitterやFacebook、2ちゃんねるなどでされている場合は、これらのサービスを運営している海外の法人が裁判の相手方になります。

具体的には、TwitterについてはTwitter本社(米国法人)が相手方です。Facebookについては、日本国内のユーザーはfacebookの利用規約により、「Facebook Ireland Limited」というアイルランド法人と契約している形式となっているため、このアイルランド法人が相手方です。

 

2ちゃんねる、5ちゃんねるについては裁判の相手方に注意!

2ちゃんねるについては裁判の相手方に注意が必要です。いわゆる「2ちゃんねる」は2014年にドメインが”2ch.net”のものと”2ch.sc”のものに分裂し、2ちゃんねるが2つ存在する状態になりました。

さらに、ドメインが”2ch.net”のものは、2017年10月に「5ちゃんねる」と名称が変更されました。

このように電子掲示板が2つあるため、投稿がどちらの掲示板でされているのかを確認し、発信者情報開示請求の相手方を決める必要があります。

ドメインが”2ch.net”のものについては運営主体がPACKET MONSTER INC.というシンガポール法人とされており、このシンガポール法人が裁判の相手方です。

この会社はこれまでも日本の裁判所が開示命令を出した案件については投稿者特定必要なIPアドレスとタイムスタンプを開示する対応を行ってきました。

一方、「5ちゃんねる」については、2017年10月に運営主体がLoki Technology Incというフィリピン法人に変更されており、このフィリピン法人が裁判の相手方です。

運営主体が変更されて間がないため、今後この会社が日本の裁判所の命令に従うかどうかが注目されますが、「5ちゃんねる」のサイトに記載されている削除体制の内容を見る限り、日本の裁判所が開示命令を出せばこの会社もIPアドレスとタイムスタンプを開示する対応を行うものと思われます。

このため、2ちゃんねる、5ちゃんねるについては裁判の相手方を間違えないように注意すれば、その後の手続きに大きな支障が生じることはありません。

 

TwitterやFacebookについては最新のログの開示を求める。

TwitterやFacebookについては、ログインやログアウトのログが残されているだけで、各投稿ごとのIPアドレスとタイムスタンプの記録が残されていないという特徴があります。

そのため、名誉毀損に該当する投稿についてのIPアドレスとタイムスタンプの開示を求めるのではなく、そのアカウントについての最新のログインがされたときのIPアドレスとタイムスタンプの開示を求めることが必要です。

また、TwitterやFacebookに対する裁判に提出する書類は、裁判所から相手方であるTwitterやFacebookに送ってもらう必要があります。そのため、書類を英訳することが必要になり、英訳費用が通常の弁護士費用とは別にかかります。

 

3-3 投稿者が利用したプロバイダを特定する

IPアドレスとタイムスタンプが開示されればその後の手続きはそれほど難しくありません。開示されたIPアドレスの情報をもとに、投稿者が投稿時に利用したプロバイダを特定することが次のステップになります。

プロバイダとは、インターネットへの接続サービスを提供する会社のことです。日本では、NTTコミュニケーションズやソフトバンク、KDDIなどの会社があります。投稿者は、投稿時にインターネットへの接続のために、必ずプロバイダのサービスを利用しています。

投稿者のIPアドレスとタイムスタンプの情報をもとに、投稿者が投稿時に利用したプロバイダを特定したうえで、そのプロバイダにプロバイダ契約の契約者の氏名や住所を開示させることで、投稿者を特定するというのが発信者情報開示請求の全体の流れです。

現在、投稿者のIPアドレスとタイムスタンプの情報を入力すれば、簡単に投稿者が利用したプロバイダを特定することができるサイトが開設されています。例えば以下のようなサイトがその例です。

ドメイン/IPアドレス サーチ 【whois情報検索】
このようなサイトを利用して、投稿者が利用したプロバイダを特定します。

 

3-4 プロバイダの記録を保存する

プロバイダがわかれば、あとはプロバイダに契約者の氏名、住所を開示させるだけです。プロバイダはIPアドレスとタイムスタンプの情報があれば、どの契約者が契約しているサービスで投稿が行われたかを特定することができます。

ただし、プロバイダのIPアドレスとタイムスタンプの記録は、投稿から3か月から6か月くらい経つと消えてしまうという問題点があります。そこで、まずは、記録が消えないように、記録が消えるのをとめる手続きを早急に行う必要があります。

具体的には、プロバイダの会社に対して、投稿者特定に必要な記録の消去を禁止する裁判所の命令を出してもらう手続を行います。
この手続を「発信者情報消去禁止仮処分命令申立」といいます。

この手続きはそれほど難しくありません。順調にいけば2週間ほどで、裁判所から、プロバイダ会社に対して、投稿者の特定に必要な記録の消去を禁止する命令を出してもらうことができます。

 

3-5 プロバイダから契約者の氏名、住所を開示させる

記録の消去を禁止する命令を出してもらうことができれば、最後に、プロバイダに対して裁判を起こして、投稿の際に利用されたプロバイダの契約者の氏名、住所を開示させる手続を行います。

この手続は「発信者情報開示請求訴訟」と呼ばれる訴訟手続で、通常は6か月くらいかかります。1か月から2か月に1回くらいのペースで裁判所で期日が開かれ、審理が進められます。

裁判手続きについては弁護士にまかせればよく、あなた自身が裁判に出席する必要があることはほとんどありません。

審理の中心は「投稿が名誉棄損にあたるかどうか」あるいは「投稿がプライバシー侵害にあたるかどうか」であることが多いです。これらの点については先行する「発信者情報開示仮処分命令申立」ですでに証拠を裁判所に提出しているはずですので、その証拠を流用することができます。

裁判所が「投稿は名誉棄損にあたる」あるいは「投稿はプライバシー侵害にあたる」などと判断すれば、裁判所からプロバイダに対して、記事投稿の際に利用されたプロバイダの契約者の氏名、住所を開示することを命じる内容の判決が出されます。

そして、判決に基づき、氏名、住所の開示を受けることにより、投稿者を特定することができます。

 


4 投稿者の特定を成功させるための重要なポイント

ここまで、投稿者を特定するための手続きの流れをご説明しました。

この手続きをする場合に覚えておいていただきたい重要な注意点が「投稿者特定のための手続きは、問題となる投稿が行わたらすぐに始めたほうがよい」ということです。これは、投稿から時間がたてば、プロバイダにおいて、投稿者の特定に必要な記録が自動的に消去されてしまうためです。

発信者情報開示請求の手続は、投稿者のIPアドレスとタイムスタンプの情報を、投稿者が投稿時に利用したプロバイダの記録と照らし合わせることによって、投稿者の住所、氏名を特定します。

ところが、このプロバイダの記録は、一般的には、「3か月から6か月程度」で自動的に消去されるため、投稿からすでに日がたっているときは、投稿者を特定することができなくなるのです。

そして、発信者情報開示請求の手続開始後も、3-4の「プロバイダの記録を保存する」のところでご説明した、プロバイダに対して記録の消去を禁止する裁判所の命令を出してもらうまでは、投稿者の特定に必要な記録が消去される危険があります。

そのため、「手続を開始してからプロバイダの記録を保存するように命じる裁判所の命令が出るまでに要する期間」も見越して、誹謗中傷記事が投稿されてから「1か月以内」に発信者情報開示請求をスタートさせることが、投稿者の特定に成功するための重要なポイントになります。

 


5 SNSでのなりすましも犯人の特定が可能

ここまで、主にあなたを誹謗中傷する投稿がされたケースでの投稿者の特定についてご説明してきましたが、今回ご説明した発信者情報開示請求の方法はTwitterやFacebookでのなりすまし投稿の犯人を特定するためにも有用です。

なりすまし投稿というのは、TwitterやFacebook上で、赤の他人があなたになりすまして、卑猥な投稿をしたり、他人を罵倒する投稿をしたりするケースです。

このなりすましは、第三者から見ればあなた自身がそのような投稿をしているように見えるため、場合によっては、あなたを誹謗中傷する投稿がされるケースよりも、あなたの周りに人間関係に深刻なダメージを与えることがあります。このようななりすましのトラブルについても、今回の記事でご説明したのと同じ方法で、犯人を特定することが可能です。

過去の裁判事例でも、例えば、「会社にいる時はパソコンに向かってれば安全」,「仕事してるふり。バカばっかだから」,「口を聞かない嫁。不燃物に出せないか」,「上司がばか」などの投稿をTwitterやFacebookでなりすまし投稿された被害について、裁判所は投稿者の住所、氏名の開示を命じています。

 


6 ネットカフェや職場での投稿の場合も特定可能

比較的特定が難しいケースとして、投稿者がネットカフェや職場のパソコンから投稿しているケースがあります。この場合、発信者情報開示請求で特定できるのはプロバイダの契約者の住所、氏名です。

例えば、ネットカフェでの投稿の場合、「どのネットカフェで投稿されたのか」までしかわかりません。
また、職場での投稿の場合、「どの会社のパソコンから投稿されたのか」までしかわかりません。

しかし、最近では、ほとんどのネットカフェで、インターネット利用の際に身分証明書の提示が求められています。そのため、ネットカフェに対して、弁護士から照会をかけて、投稿日時にインターネットを利用した者の住所、氏名について回答を求めれば、最終的に投稿者個人を特定できる可能性は十分あるといえるでしょう。

また、職場での投稿の場合についても、その会社に対して弁護士から照会をかければ、最終的に投稿者個人を特定できる可能性は高いです。筆者の経験でも、職場での投稿のケースでは、会社に対して弁護士から照会をかけて投稿者個人を特定できています。

 


7 投稿者特定に必要な期間と費用

発信者情報開示請求の手続きで投稿者を特定するために、通常、3回の裁判上の手続きが必要です。

そのため、手続きをスタートしてから投稿者の氏名や住所を特定できるまでに6か月から場合によっては1年の期間がかかります。

また、裁判上の手続きを3回行うことになるため、弁護士費用も少なくとも70万円程度かかることが多くなっています。

 


8 犯人を特定できた後に請求できる慰謝料は100万以上になることも!

発信者情報開示請求により、投稿者を特定した後は、投稿者に対して慰謝料の請求が可能です。
過去にもインターネット上の誹謗中傷について慰謝料を請求した事件は多数あります。

以下では、裁判にまで発展したケースの中から、特徴的なものをピックアップして3つご紹介したいと思います。

 

8-1 facebookによる国会議員に対する中傷事件(平成28年12月 5日東京高等裁判所判決)

これは、facebook上での参議院議員に対する中傷的なコメントをした投稿者が、参議院議員から慰謝料請求された事件です。裁判所はfacebookでの投稿者に対して110万円の慰謝料の支払いを命じました。

この事件で問題になったコメントは以下の5行程度のコメントです(アンダーラインは筆者)。

また聞きなので実名は記しませんが,国会の指差しクイズ王と呼ばれ,1秒間に約30回の他者への指差しを行うスピードと,憲法に関する比類なき我田引水的で枝葉末節的な知識を何より誇る某氏は官僚時代,ある意にそまぬ部署への異動を指示された際,1週間無断欠席し,さらに登庁するようになってもしばらく大幅遅刻の重役出勤だったそうです。現在のあの異様なまでの態度のでかさ,根拠の全く分からない偉そうな態度は,昔からだったということでしょうね。

このように一応実名を挙げない形でコメントしている場合であっても、多くの人が誰のことを指しているかわかるようにして記載されている誹謗中傷のコメントについては名誉棄損に該当します。

わずか5行程度のコメントでも裁判所は110万円の慰謝料を認めています。

 

8-2 2ちゃんねる投稿者特定事件(平成28年7月1日東京地方裁判所判決)

この事件は、2ちゃんねるで中古車販売業者に対する嘘の誹謗中傷のコメントをした投稿者が、発信者情報開示請求により住所、氏名を特定され、中古車販売業者から慰謝料請求された事件です。裁判所は2ちゃんねるでの投稿者に対して169万円の慰謝料の支払いを命じました。

2ちゃんねるでは、特にその時にネット上でたたかれている会社や人物に対して安易に中傷的なコメントが投稿されやすい傾向にあります。

しかし、こういった群集心理的な投稿についても裁判所は慰謝料の支払いを命じています。

 

8-3 阪大生Twitter事件(平成28年11月30日大阪地方裁判所判決)

この事件は、大阪大学の大学生が、大学教授が授業中に「阪神タイガースが優勝すれば無条件で単位を与える」と発言したという嘘の投稿をTwitterでしたことについて、大学教授から慰謝料請求された事件です。裁判所は学生に対して30万円の慰謝料の支払いを命じました。

裁判所はその理由として、「Twitterでの投稿を見た者の中には、大学教授が実際にこのような発言をし,正しい成績評価をしていないと受け取った者が一定数はいるものと解される」としています。このように一種の冗談のつもりだったとも思える投稿についても裁判所は慰謝料の支払いを命じています。

インターネット上の誹謗中傷についての慰謝料の額は、投稿の内容や投稿を見たと思われるネットユーザーの数などによって大きく異なってきます。上記の例からもわかるように慰謝料額が100万円を超えることも珍しくありません。

特に、8-2でご紹介した「2ちゃんねる投稿者特定事件」のように、慰謝料請求者が簡単に投稿者を特定できず、この記事でご紹介した発信者情報開示請求の方法で投稿者を特定したケースでは、慰謝料額が高額化する傾向にあります。

これは、慰謝料請求者が発信者情報開示請求のために費やした弁護士費用の支出が考慮されているためです。

このように、2ちゃんねるや各種掲示板における匿名での投稿は、投稿者が特定された場合に支払いを命じられる慰謝料額が特に高額になっています。

 


9 まとめ

今回は、いざというときのために頭においておきたい、ネットで誹謗中傷された時の投稿者の特定の方法についてご紹介しました。

インターネット上とはいえ、他人を不当に傷つける投稿やなりすましのいたずらが許されるわけではありません。

プロバイダの記録の保存期間の問題があるため、被害にあった場合は、泣き寝入りせずに早急に専門の弁護士に相談することが必要です。