HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症の障害年金認定基準と審査のポイント

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症に感染すると身体の免疫力が低下し、普段は感染しないような病原体に感染しやすくなります。

そのため、倦怠感、吐き気、発熱等の症状がたびたび出現したり、生鮮食品の制限や人混みの回避など日常生活への制限は決して小さなものではありません。

中には、病気による症状や治療の副作用によって、働くことや日常生活を送ることもままならない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんなHIV患者の生活を支えてくれる制度のひとつに障害年金があります。

障害年金が受給できた場合、最低でも年間58万4500円が支給されます。障害年金があるかないかで生活は大違いです。

今回はHIV感染症の障害年金の認定基準や申請する際のポイントをご説明します。

この記事を読めば、ご自身が障害年金を受給できるかどうかおおよその目安がわかるはずです。

 

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1 HIVは障害年金の対象疾患!

HIV感染症で障害年金を受給できることをご存知の方は少ないのではないでしょうか。

HIV感染症は障害年金の対象疾患です。

しかし、障害年金は申請すればすべての方に支給されるものではありません。障害年金を受給するためには、日本年金機構の定める一定の条件を満たしている必要があります。

障害年金は治療をしても日常生活や仕事に支障が生じている方を対象に支給されるため、治療・服薬によって症状が抑えられている方は基本的には障害年金は支給されません。

詳しい基準をご説明する前に、まず、障害年金の制度について簡単にご説明します。

障害年金とは・・・?

病気やケガなどが原因で日常生活や仕事に支障が出ている方を対象に支給される年金です。

原則、病気やケガのために初めて病院を受診した日(初診日といいます)から1年6ヶ月後から受給することができます。

また、障害年金は原則として20歳から64歳までの方が請求することができます。

障害年金には初診日に加入していた年金制度に応じて2つの種類があります。

 

障害基礎年金

<支給対象>

〇病気やケガのために初めて病院を受診した日の加入年金制度が国民年金の方

・自営業、アルバイト、学生等

・厚生年金加入者の配偶者(第3号被保険者)

・20歳より前に初診日があり年金に加入していなかった方(先天性疾患等)

<年金額>

1級 年間97万4125円(月 8万1177円)

2級 年間77万9300円(月6万4941円)

障害厚生年金

<支給対象>

・初診日に厚生年金に加入していた方

※20歳より前に初診日があっても、厚生年金に加入していれば障害厚生年金の対象者です。

<年金額>

1級 報酬比例の年金額×1.25+障害基礎年金1級(年間97万4125円)

2級 報酬比例の年金額+障害基礎年金2級(年間77万9300円)

3級 報酬比例の年金額(最低保障額 年間58万4500円)

障害基礎年金では日本年金機構の定める障害等級1級又は2級に認定された方に、障害厚生年金では1級から3級に認定された方に障害年金が支給されます。

 

障害年金を受給するためにはおおまかにいうと2つの条件を満たしている必要があります。

(1)初診日の前日時点で、初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。

若しくは、初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。【保険料の納付要件】

 

(2)障害の程度が日本年金機構の定める基準に該当していること【障害の程度の要件】

(1)の保険料の納付要件を満たしていなければ、どんなに症状が重くても障害年金を受給することはできません。自分が納付要件を満たしているかは、お近くの年金事務所で確認することができます。

納付要件を満たしていることがわかれば、次に重要なのは(2)の障害の程度の要件です。初診日に国民年金に加入していた方は1級又は2級、厚生年金に加入していた方は1~3級のいずれかに認定される必要があります。

 


2 HIV感染症の認定基準

障害年金では、それぞれの傷病について「このくらいの障害の程度であれば〇級相当」と基準が設けられています。これを障害年金の認定基準と言います。

認定基準では、診断書の記載事項を元に1級から3級のそれぞれの等級に該当する障害の状態を次のように定めています。

等級 障害の程度
1級 (ア+イ+ウ)または(エ)を満たす場合
CD4値が200/μl以下
(4
週以上間隔を置いた直近の連続する2回の平均値)
以下の項目のうち、3つ以上を満たす
(4
週以上の間隔を置いた直近の検査において2回以上続く)
 白血球数が3000/μl未満
 ヘモグロビン量が男性12g/dl 女性11g/dl未満
 血小板が10/μl未満
 ヒト免疫不全ウイルスーRNA量が5000コピー/ml以上
以下の項目のうち、4つ以上を満たす
 a 11時間以上の安静臥床を必要とするほどの強い倦怠感及び易疲労感が月に7日以上ある
 病態の進行のため、健常時に比し10%以上の体重減少がある。
 月に7日以上の不定の発熱(38℃以上)2ヶ月以上続く。
 d 1日に3回以上の泥状ないし水様下痢が月に7日以上ある。
 e 1日に3回以上の嘔吐あるいは30分以上の嘔気が月に7日以上ある。
 動悸や息苦しくなる症状が毎日のように出現する。
 HIV療法による日常生活に支障を生じる副作用がある(af以外)(HIV療法を実施している場合)
 生鮮食料品の摂取禁止等の日常生活活動上の制限が必要である。
 i 1年以内に口腔内カンジダ症、帯状疱疹、単純ヘルペスウイルス感染症、伝染性軟属腫、尖圭コンジローム等の日和見感染症の既往がある。
 医学的理由(投薬による肝障害や白血球現症などの副作用等)により、抗HIV療法ができない状態である。
回復不能なエイズ合併症のため介助なくしては日常生活ができない状態である。
2級 (ア+イ+ウ)または(ア+エ)を満たす場合
CD4値が200/μl以下
(4
週以上間隔を置いた直近の連続する2回の平均値)
以下の項目のうち、2つ以上を満たす
(4
週以上の間隔を置いた直近の検査において2回以上続く)
 白血球数が3000/μl未満
 ヘモグロビン量が男性12g/dl 女性11g/dl未満
 血小板が10/μl未満
 ヒト免疫不全ウイルスーRNA量が5000コピー/ml以上
以下の項目のうち、3つ以上を満たす
 a 11時間以上の安静臥床を必要とするほどの強い倦怠感及び易疲労感が月に7日以上ある
 病態の進行のため、健常時に比し10%以上の体重減少がある。
 月に7日以上の不定の発熱(38℃以上)2ヶ月以上続く。
 d 1日に3回以上の泥状ないし水様下痢が月に7日以上ある。
 e 1日に3回以上の嘔吐あるいは30分以上の嘔気が月に7日以上ある。
 動悸や息苦しくなる症状が毎日のように出現する。
 HIV療法による日常生活に支障を生じる副作用がある(af以外)(HIV療法を実施している場合)
 生鮮食料品の摂取禁止等の日常生活活動上の制限が必要である。
 i 1年以内に口腔内カンジダ症、帯状疱疹、単純ヘルペスウイルス感染症、伝染性軟属腫、尖圭コンジローム等の日和見感染症の既往がある。
 医学的理由(投薬による肝障害や白血球現症などの副作用等)により、抗HIV療法ができない状態である。
エイズの発症の既往歴がある
3級 (ア+イ+ウ)または(ア+エ)を満たす場合
CD4値が350/μl以下
(4
週以上間隔を置いた直近の連続する2回の平均値)
以下の項目のうち、2つ以上を満たす
(4
週以上の間隔を置いた直近の検査において2回以上続く)
 白血球数が3000/μl未満
 ヘモグロビン量が男性12g/dl 女性11g/dl未満
 血小板が10/μl未満
 ヒト免疫不全ウイルスーRNA量が5000コピー/ml以上
以下の項目のうち、2つ以上を満たす
 a 11時間以上の安静臥床を必要とするほどの強い倦怠感及び易疲労感が月に7日以上ある
 病態の進行のため、健常時に比し10%以上の体重減少がある。
 月に7日以上の不定の発熱(38℃以上)2ヶ月以上続く。
 d 1日に3回以上の泥状ないし水様下痢が月に7日以上ある。
 e 1日に3回以上の嘔吐あるいは30分以上の嘔気が月に7日以上ある。
 動悸や息苦しくなる症状が毎日のように出現する。
 HIV療法による日常生活に支障を生じる副作用がある(af以外)(HIV療法を実施している場合)
 生鮮食料品の摂取禁止等の日常生活活動上の制限が必要である。
 i 1年以内に口腔内カンジダ症、帯状疱疹、単純ヘルペスウイルス感染症、伝染性軟属腫、尖圭コンジローム等の日和見感染症の既往+B43:B61がある。
 医学的理由(投薬による肝障害や白血球現症などの副作用等)により、抗HIV療法ができない状態である。
以下の項目のうち、2つ以上を満たす
 a 11時間以上の安静臥床を必要とするほどの強い倦怠感及び易疲労感が月に7日以上ある
 病態の進行のため、健常時に比し10%以上の体重減少がある。
 月に7日以上の不定の発熱(38℃以上)2ヶ月以上続く。
 d 1日に3回以上の泥状ないし水様下痢が月に7日以上ある。
 e 1日に3回以上の嘔吐あるいは30分以上の嘔気が月に7日以上ある。
 動悸や息苦しくなる症状が毎日のように出現する。
 HIV療法による日常生活に支障を生じる副作用がある(af以外)(HIV療法を実施している場合)
 生鮮食料品の摂取禁止等の日常生活活動上の制限が必要である。
 i 1年以内に口腔内カンジダ症、帯状疱疹、単純ヘルペスウイルス感染症、伝染性軟属腫、尖圭コンジローム等の日和見感染症の既往+B43:B61がある。
 医学的理由(投薬による肝障害や白血球現症などの副作用等)により、抗HIV療法ができない状態である。

 

ご自身の血液検査の結果や日常生活の状況から、自分が等級に該当しそうかおおよその見込みがわかるのではないでしょうか。

さて、こまでHIV感染症の認定基準についてご紹介してきました。
ここからは実際に障害年金を申請する際のポイントをご紹介します。

 


3 診断書を依頼する際の注意点

障害年金を申請するためには医師の作成した診断書を提出する必要があります。

診断書は障害年金の申請にあたって一番重要な書類です。

障害年金は書類審査であり、審査官と一度も面談することなく提出した書類の内容ですべてが決まってしまいます。

どんなに症状が重くても、日常生活に支障が出ていても、提出した書類でそれが伝わらなければ不支給になってしまうこともありえるのです。

診断書には自分の状況や症状について余すことなく書いてもらいましょう。

HIV感染症による合併症(悪性腫瘍や肝炎等)がある場合や他の障害を併発している場合は、それについても記載してもらうことが重要です。

血液・造血器・その他の障害用の診断書(PDF)

診断書を記入してもらうときの注意点がいくつかあります。以下の診断書の記入例を見て、診断書を作成してもらったら記入漏れがないかしっかり確認してください。

 


4 初診日はいつになるの?

HIV感染症で障害年金を申請する際に問題になることが多いのが初診日です。

初診日とは、簡単に言えば、「病気のために初めて病院を受診した日」のことです。障害年金を申請する際には、必ずこの初診日を明らかにする必要があります。

HIV感染症で障害年金を申請する際に、この初診日が問題になることがたびたびあります。それは、障害年金における初診日とはが必ずしも「HIV感染症」と診断された日ではないためです。

障害年金における初診日とは、「請求傷病と因果関係のある傷病で初めて受診した日」のことをさします。

HIV感染症は初期症状が発熱、嘔吐、下痢等、風邪とよく似ています。そのため、最初は風邪だと思い、近所の内科を受診したという方も多いのではないでしょうか。

すぐにはHIV感染症とわからず、病院を転々とした方もいらっしゃるかもしれません。

そういった場合、たとえHIV感染症と診断をされていなくても、これらの症状で病院を受診した日が、障害年金における初診日になります。

ただし、初めからHIV感染症を疑い保健所で検査を受け、保健所の紹介で病院を受診したというケースでは、保健所で検査を受けた日は初診日にはなりません。

保健所の紹介で病院を受診した日が初診日になります。

これは、初診日はあくまでも初めて医療機関を受診した日であり、保健所は医療機関ではないためです。

 


5 まとめ

今回は、障害年金におけるHIV感染症の認定基準と診断書作成する際の注意点についてご説明しました。

障害年金は1級に認定されれば、少なくとも年間97万4125円、2級に認定されれば少なくとも年間77万9300円、3級に認定されれば少なくとも年間58万4500円が支給されます。

HIV感染症は、治療費の負担も少なくなく、日常生活にも大きな支障が生じる障害です。障害年金はHIV感染症患者の生活の大きな支えになるはずです。

この記事が皆さんの障害年金申請のお役に立てば幸いです。