障害者手帳にはどのような種類があるのでしょうか。
大きくわけると「身体障害者手帳」、「精神障害者保健福祉手帳」、「療育手帳」の3つに分けられますが、それぞれの手帳制度の中でさらに障害等級が細かく分かれています。
今回はそれぞれの手帳制度の細かな等級についてご説明するとともに、実際に受けられる各種割引制度や、税金の控除などについてもご紹介します。
福祉サービスは、受けられる人が自主的に申し出ないと受け取ることができません。
この記事をお読みいただき、受けられるものは全て受けられるように、申請をおこないましょう。
1 障害者手帳は3種類
障害者手帳には、「身体障害者手帳」、「精神障害者手帳」、「療育手帳」の3種類があります。
3つの種類共に市区町村の障害福祉担当者に申請したいと伝えることがスタートになります。
今回の記事では、各障害者手帳の種類と手続きの方法などをご説明していきます。
2 身体の障害と内臓疾患は身体障害者手帳
身体障害者手帳は、腕・脚のおケガやご病気、内臓疾患に対して支給されるものです。
2-1 身体障害者手帳は15種類6等級
身体障害者手帳の種類は症状ごとに異なり、細かく分けると全部で15種類あります。
- 視覚障害
- 聴覚障害(+平衡機能障害)
- 音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害
- 上肢機能障害(肩、腕、手指など上半身の障害)
- 下肢機能障害(腰、脚、足指など下半身の障害)
- 体幹機能障害
- 乳幼児期以前の脳病変による運動機能障害(上肢機能)
- 乳幼児期以前の脳病変による運動機能障害(移動機能)
- 心臓機能障害
- じん臓機能障害
- 呼吸器機能障害
- ぼうこうまたは直腸の機能障害
- 小腸機能障害
- ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害
- 肝臓機能障害
さらに各障害ごとに1級から6級の等級がもうけられています。(実際には7級までもうけられていますが、7級障害単独では手帳交付の対象にならず、7級の障害が2つ以上ある場合は6級に認定されます。)
また、同じ等級の障害が2つ以上みられる場合は、それらを考慮されて上位等級に認定される場合もあります。
審査は各都道府県でおこなわれますが等級判定の基準は厚生労働省からの通達で統一されています。厚生労働省から出ている等級表をご紹介しますので、判定の目安にして下さい。
2-2 手続きの方法
15歳未満の場合は保護者が、15歳以上は本人が申請します。
お住まいの市区町村役場で手帳取得申請をおこない、専用の診断書、意見書をもらって医師に記入してもらいます。
記入してもらえたら市区町村役場に提出すると、その後約1ヶ月程度で取得できます。取得後は必要に応じて更新が必要になるので、更新時期は忘れないようにしてください。
〇大阪市の場合〇
各区役所 保健福祉課で申請。申請時には以下の書類が必要です。
- 印鑑
- 証明写真(脱帽、上半身 縦4cm×横3cm)
- マイナンバーカード、通知カード、健康保険証などの本人確認書類
- 診断書(区役所保健福祉課、大阪市HPからも取得できます。)
市民病院などでは、身体障害者手帳の交付申請に必要な診断を無料で受けることができます。
(大阪市総合医療センター、十三市民病院など指定有)
制度を利用される場合は、診断を受ける前に区役所の申請窓口で申し出てください。
診断書を書ける医師は「身体障害者福祉法第15条の指定を受けている医師」のみです。
かかりつけの医師に「身体障害者手帳用の診断書がかけるか」確認してもらいましょう。
かかりつけ医がいなかったり、診断書が書けない医師だった場合は、市区町村役場の窓口で医師を紹介してもらうことができます。
3 こころの病気は精神障害者保健福祉手帳
うつ病、統合失調症、非定型精神病、てんかん、中毒性精神病、器質性精神病(認知症や脳梗塞による精神疾患)、気分障害、双極性障害などの精神障害のため長期にわたり日常生活または社会生活に不便が生じているかたが対象です。
パニック障害やパーソナリティ障害などの神経症単独では、取得できない可能性が高いですので主治医に相談して下さい。
3-1 精神障害者手帳は3等級
精神障害者手帳の等級は1級から3級です。判定の目安として以下の表が厚生労働省から出ています。
手帳の等級によって受けられるサービスが異なります。詳しくはお住まいの自治体へお問い合わせください。
等 級 | 基 準 |
1級 | 精神障害であって日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの (精神疾患のため、長期の入院、施設で生活せざるをえない状態の方など) |
2級 | 精神障害であって日常生活が著しい制限を受けるか、または制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 精神障害であって日常生活もしくは社会生活が制限を受けるか、または日常生活もしくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの |
(障害年金とは全く別の制度です。手帳の等級と障害年金の等級はイコールではありません。)
3-2 手続きの方法
精神障害者手帳の申請は、病院で初めて診察を受けてから6ヶ月経過していることが条件です。
6ヶ月の間に病院が変わっている場合は医師にその旨を申し出ましょう。
お住まいの市区町村役場で手帳取得申請をおこない、専用の診断書を医師に記入してもらいます。
記入してもらえたら市区町村役場に提出すると、その後約1、2ヶ月で取得できます。取得後は2年ごとに更新が必要になるので、更新時期は忘れないようにしてください。
また、手帳を申請する前に障害年金の年金証書をお持ちであれば、診断書の提出をはぶくことができます。
年金証書を市区町村の窓口で提示することで、障害者手帳を取得することができます。
〇大阪市の場合〇
各区保健福祉センター(区役所隣接)または保健所で申請。申請時には以下の書類が必要です。
- 印鑑
- 診断書(障害年金を受けている場合は、年金証書、年金裁定請求通知書、直近の振込通知書または支払通知書の写しのうちいずれか1つ)
診断書を保健福祉センターに提出したあと、約1ヶ月で手帳交付の連絡が来ます。
可能な限りは窓口での受領が必要ですが、必要があれば郵送で受領することもできます。(別途手続きが必要)詳しくは申請時の保健福祉センターに問い合わせてください。
窓口で手帳を受け取る際に「証明写真(脱帽、上半身 縦4cm×横3cm)」が必要です。
4 知的障害は療育手帳
各都道府県の児童相談所や、知的障害者更生相談所、保健福祉センターなどで知的障害であると判定された場合、療育手帳が交付されます。(お住まいの市区町村によっては、愛の手帳、みどりの手帳など名称が異なります。)
各都道府県ごとに判定基準や等級が異なるので、3種類の手帳のうち唯一、手帳取得後に市町村をまたいで引っ越したときは改めて取得する必要があります。
4-1 療育手帳は3等級
厚生労働省の通達では、障害の程度および判定基準として重度(A)とそれ以外(B)とされていますが、都道府県レベルではBのレベルをさらに2つに分けています。
【厚生労働省の等級と基準】
等 級 | 基 準 |
重 度 (A) |
1.知能指数(IQ)がおおむね35以下であって、次のいずれかに該当する者
2.知能指数がおおむね50以下であって、盲、ろうあ、肢体不自由を有する者 |
重度以外のもの(B) | 上記以外の者 |
【都道府県レベルでの等級と基準】
等 級 | 障 害 の 程 度 | ||
A | 重 度 | IQ35未満 | 日常生活全般に常時の援助が必要 |
B1 | 中 度 | IQ50未満 | 日常生活に援助が必要 |
B2 | 軽 度 | IQ70未満 | 日常生活は可能、援助 |
認定区分や基準は各自治体により若干異なります。また、等級は知能や実際の生活習慣、問題行動などを総合的に判断したうえで判定されます。
4-2 手続きの方法
療育手帳の取得には、専門の知的障害判定機関(自治体の児童相談所など)でテストや面談を受ける必要があります。テストの案内や手帳自体の案内を聞くためにも、まずはお近くの市区町村役場の保健福祉窓口に行きましょう。手帳はテストを受けた日から約1ヶ月で取得できます。
申請者本人は知能指数(IQ)にかかわるテストをおこない、幼少期の頃がわかる保護者が面談を受けます。該当するような人がいない場合は、福祉事務所などの担当者が必要な情報を集めて面接に立ち会います。
〇大阪市の場合〇
各区保健福祉センター(区役所隣接)で申請。印鑑が必要です。
保健福祉センターで申請後、後日判定機関から電話または郵送で来所日の連絡が入ります。
指定日にテスト・面談を受けて、その日から約1ヶ月で療育手帳が受領できるようになります。
(完成した手帳は区役所で手渡し受領となります。郵送などはおこなっていません。)
【大阪市の判定機関】
・18歳未満の方:
名 称 |
大阪市こども相談センター 平日9時~17時30分 土日祝休み |
南武こども相談センター 平日9時~17時30分 土日祝休み |
所 在 地 | 大阪市中央区森之宮中央1-17-5 | 大阪市平野区喜連西6-2-55 |
担 当 区 域 | 右の4区を除く20区 | 平野区、阿倍野区、住吉区、東住吉区 |
お問い合わせ | TEL 06-4301-3100 | TEL 06-6718-5050 |
・18歳以上の方:
名 称 |
“はーとふる”ぷらざ (大阪市立心身障がい者リハビリテーションセンター) |
開 館 時 間 | 平日9時から17時30分、土日祝日休み |
所 在 地 |
大阪市平野区喜連西6丁目2番55号 地下鉄谷町線「喜連瓜破」駅 1番出口から200m |
お問い合わせ | TEL 06-6797-6562 |
5 障害者手帳を取得することによるメリット
障害者手帳の取得によるメリットは以下の通りです。
ただしいずれも各市区町村によって制度がことなりますので、詳細は各市区町村へお問い合わせください。
- 顔写真付きの身分証明書になる
- 障害者枠で仕事を探せるようになる
- 公共交通機関(電車、バス、有料道路)の乗車賃の割引、タクシー利用割引
- 博物館、美術館などの入館料割引
- レジャー施設、テーマパークなどの入場料割引
- 携帯電話料金の割引
- NHK利用料の免除
- 医療費の支援
- 所得税・相続税の控除、贈与税の非課税
- 自動車税、自動車取得税の減免措置
- 公営住宅の優先入居 など
5-1 障害者手帳はたくさん取得した方が得か
2つ以上の手帳を取得していても、受けられる福祉サービスが2倍になることはありません。
また、それぞれの手帳の等級は独立しているので、併合して高い等級に認定されるといったこともありません。
ただし障害者手帳は3種類それぞれ受けられるサービスが違うこともあるので、自分は2つ以上の手帳を受けた方がいいのか、取得を検討されるのであれば市町村役場の保健福祉課などで相談しましょう。
むやみにいくつも取得しても、診断書費用が無駄になってしまうこともあるので注意してください。
5-2 大阪市内で生活する場合、受けられる福祉サービス
一例として、大阪市内で生活する方が障害者手帳を取得した場合に受けられる割引制度や、減免措置をご紹介します。(平成30年4月時点のものです)
障害者手帳メリット(大阪市)(別PDF)
6 まとめ
今回は障害者手帳の種類と、受けられる福祉サービスや減免措置などをご説明いたしました。
手帳を取得すると受けられる福祉サービスはお住まいの市区町村によって違いがありますので、詳細はお近くの役場へお問い合わせください。
ただし税金の控除やNHKの受信料などは全国統一されていますので、手帳を取得していれば受けることができます。必ず手続きをおこなって損のないようにしましょう。
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