認知症でも障害年金をもらえる?失敗しないためのポイントを解説!

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認知症は進行すると記憶力や注意力の低下、失語、妄想等の症状を引き起こし、社会生活や日常生活に多大な影響を及ぼします。

認知症患者やその家族の生活を支える制度のひとつに障害年金があります。

今回は、障害年金の認知症の認定基準から、申請のポイントなどをご紹介します。

 

1 認知症で障害年金がもらえる!

認知症で障害年金が受給できることをご存知の方は少ないのではないでしょうか。

実は、認知症は障害年金の支給対象疾患です。
ただし、単に申請書類を提出すれば支給されるものではなく、日本年金機構の定める一定の基準を満たしている必要があります。

どのような場合に支給されるのか理解し、ポイントをおさえて申請することで障害年金を受給できる可能性が上がります。

まず、障害年金の制度について簡単にご説明します。

障害年金とは・・・?

原則、病気やケガのために初めて病院を受診した日(初診日といいます)から1年6ヶ月後から受給することができます。

障害年金には初診日に加入していた年金制度に応じて2つの種類があります。

障害基礎年金

<支給対象>

〇病気やケガのために初めて病院を受診した日の加入年金制度が国民年金の方

・自営業、アルバイト、学生等

・厚生年金加入者の配偶者(第3号被保険者)

・20歳より前に初診日があり年金に加入していなかった方(先天性疾患等)

<年金額>

1級 年間97万4125円(月 8万1177円)

2級 年間77万9300円(月6万4941円)

障害厚生年金

<支給対象>

・初診日に厚生年金に加入していた方

※20歳より前に初診日があっても、厚生年金に加入していれば障害厚生年金の対象者です。

<年金額>

1級 報酬比例の年金額×1.25+障害基礎年金1級(年間97万4125円)

2級 報酬比例の年金額+障害基礎年金2級(年間77万9300円)

3級 報酬比例の年金額(最低保障額 年間58万4500円)

障害基礎年金では日本年金機構の定める障害等級1級又は2級に認定された方に、障害厚生年金では1級から3級に認定された方に障害年金が支給されます。

 

障害年金を受給するためにはおおまかにいうと2つの条件を満たしている必要があります。

(1)初診日の前日時点で、初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。

若しくは、初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。【保険料の納付要件】

 

(2)障害の程度が日本年金機構の定める基準に該当していること【障害の程度の要件】

 

(1)の保険料の納付要件を満たしていなければ、どんなに症状が重くても障害年金を受給することはできません。自分が納付要件を満たしているかは、お近くの年金事務所で確認することができます。

納付要件を満たしていることがわかれば、次に重要なのは(2)の障害の程度の要件です。初診日に国民年金に加入していた方は1級又は2級、厚生年金に加入していた方は1~3級のいずれかに認定される必要があります。

それでは、実際どのくらいの症状であれば認定されるのでしょうか。ここからは認知症の認定基準についてご説明します。

 

2 認知症の認定基準

障害年金では、傷病によって「このくらいの障害の程度であれば〇級相当」と基準が決まっています。これを障害年金の認定基準と言います。

認定基準によると、認知症で各等級に相当する障害の状態は以下のように定められています。

等級 障害の状態
1級 高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、 常時の援助が必要なもの
2級 認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級

1 認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働 が制限を受けるもの

2 認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの
(※ただし、障害基礎年金の場合は3級の時は障害年金が支給されません)

障害手当金

認知障害のため、労働が制限を受けるもの
(※ただし、障害基礎年金の場合は障害手当金は支給されません)

おおまかにいえば、常に誰かの援助がなければ日常生活がおくれない場合が1級、日常生活に支障が出ている場合が2級、仕事に支障が出ている場合が3級です。

平成28年9月より、認定基準をより具体的に示した「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が発表され、新たに審査の基準となっています。

この等級判定ガイドラインでは、診断書の記載事項である「日常生活能力の判定」及び「日常生活能力の程度」に応じて等級の目安が定められています。

※「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」とは

■日常生活能力の判定

日常生活にどのような支障があるかを7つの場面に分けて評価したものです。

※請求者が一人暮らしをした場合、可能かどうかで判断します。

(1)適切な食事 配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることができる
(2)身辺の清潔保持 洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。また、自室の清掃や片付けができる
(3)金銭管理と買い物 金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできる
(4)通院と服薬 規則的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができる
(5)他人との意思伝達及び対人関係 他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行える
(6)身辺の安全保持及び危機対応 事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができる
(7)社会性 銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。また、社会生活に必要な手続が行える

各項目を

できる
自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる
助言や指導をしてもできない若しくは行わない

の4つの段階にわけて評価します。

※(4)の通院と服薬については、知的障害の方は基本的に定期的な通院や服薬が必要な傷病ではないので、記入されていなくても問題ありません。

 

■日常生活能力の程度

日常生活能力を総合的に評価したものです。

精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。
精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
精神障害を認め、家庭内の単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。

上記の5つの選択肢から症状にもっとも近いものを選びます。

具体的な等級の目安は次の通りです。

障害等級の目安(PDF)

まったくこのとおりに認定されるわけではありませんが、ひとつの大きな判断基準になるのではないでしょうか。

さて、ここまで認知症の認定基準についてご紹介してきました。
ここからは実際に障害年金をもらうためにどうすればいいのか、ポイントをご紹介します。

 

3 審査で重視される2つの書類

障害年金は書類審査です。審査官と一度も面談することなく提出した書類の内容ですべてが決まってしまいます。

どんなに症状が重くても、日常生活に支障が出ていても、提出した書類でそれが伝わらなければ不支給になってしまうこともありえるのです。

ここからは、障害年金の申請で特に重要な2つの書類とその記載のポイントをご説明します。

 

3-1 診断書

障害年金を申請するにあたって、一番重要なのは医師に作成してもらう診断書です。

2でご説明したように障害年金では、傷病によって「このくらいの障害の程度であれば〇級相当」と基準が定められており、等級判定ガイドラインでは診断書の記載事項を元に等級の目安が定められています。

そのため、障害年金はほとんど診断書の内容で決まるといっても過言ではありません。

 

診断書作成のポイント

(1)受診前に日常生活状況についてまとめておく

2の認定基準でご説明したとおり、認知症の等級判定においては日常生活能力の程度が重視されています。

しかし、日常生活の状況について医師と十分に話ができている方は少ないのではないでしょうか。限られた診察時間内で症状のすべてを伝えることは困難です。

医師に十分に伝わっていないために診断書の内容が実際の症状とそぐわないものになり、結果的に不支給になってしまうこともありえるのです。

もちろん実際の症状よりも重く書いてもらうことはできませんしするべきではありませんが、どんな症状があって日常生活や仕事にどんな影響が出ているかを伝え、症状に応じた診断書を書いてもらうことが重要なのです。

医師に症状を十分に伝えるために、事前に日常生活のどんな部分に支障があるか、どんなことに困っているのかまとめてから受診することをおすすめします。

 

3-2 病歴・就労状況等申立書

診断書と並んで重要な書類が、病歴・就労状況等申立書です。

病歴・就労状況等申立書とは、発症から現在までの日常生活状況や就労状況を記載するもので、診断書のように医師に書いてもらうものではなく障害年金の請求者が自分で作成するものです。

どう書いていいのかわからない、何を書けばいいのかわからないと簡単に書いてしまう方もいますが、病歴・就労状況等申立書は日常生活にどのような支障がでているか、どんなことに困っているかを自分で伝えることができる唯一の書類です。

診断書では伝えきれない日常生活状況を伝えることのできる重要な書類なので、ポイントをおさえてしっかり記載することが重要です。

 

病歴・就労状況等申立書作成のポイント

(1)初診日から現在までの状況を3~5年に分けて記載する

病歴・就労状況等申立書には病気のために初めて病院を受診した日から現在までの日常生活状況や就労状況を記載する必要があり、記載要領では3~5年に分けて記載するように求められています。

覚えていないからといって10年、20年をまとめて書いてしまうと年金機構から書き直しを求められることがあるので、必ず3~5年の期間に区切って作成しましょう。

(2)具体的に記載する

病歴・就労状況申立書は主観ではなく客観的かつ具体的に記入することが重要です。

自分がどう感じたかではなく実際にどんなことがあったかを具体的に記入するように注意しましょう。とは言っても実際にどんなことを書けばいいのかわからない方も多いと思いますので、病歴・就労状況等申立書に記載するべき事項を一部例示します。

病歴・就労状況等申立書の記載事項

  • 周囲の人(家族や友人等)との関係(人間関係でトラブルになることはなかったか等)
  • 日常生活でできなかったことや困っていたこと
  • 家族や周囲の人からの援助の有無やその内容
  • 施設の入所歴や福祉サービスの利用状況とその程度
  • 妄想や徘徊、異常行動の有無やその内容や頻度
  • その他障害に関する印象的なエピソード    等

(3)診断書との整合性に注意する

障害年金の審査においては医師の作成した診断書と請求者の作成する病歴・就労状況等申立書の整合性が重視されます。

例えば、診断書ではできないと書かれているのに、病歴・就労状況申立書ではできると書かれている場合、病歴・就労状況等申立書の内容が足を引っ張って、適切な等級に認定されないこともありえるのです。

認知症の場合、ご本人ではなくそのご家族が病歴・就労状況等申立書を作成することも多いのではないでしょうか。自分の家族のできないことばかり書くことは気がすすまないかもしれませんが、ここは割り切って、客観的に見てどうかを考えることが重要です。

また、ずっと一緒に生活している家族だと周囲から見るとできていないことでも当たり前になってしまって症状を認識できていないこともあります。病歴・就労状況等申立書を書くときは、客観性を意識して書くようにしましょう。

そして、申請書類を提出する前に医師の作成した診断書と病歴・就労状況等申立書を見比べて、記載内容や症状の程度に矛盾がないかを確認してください。

 

4 原則65歳未満でなければ障害年金を請求できない

認知症で障害年金を申請する際に一番問題となるのが、請求者の年齢です。一部のケースを除いて65歳の誕生日の2日までに請求しなければ障害年金を受給することはできません。

アルツハイマーをはじめとした認知症は、高齢になって発症することが多い病気です。70歳、80歳を過ぎて認知症を発症する方も多いですが、障害年金の対象となるのは65歳未満で発症した若年性認知症に限られるので注意が必要です。

また、65歳未満であっても「老齢年金の繰上げ請求」をしている場合は、残念ながら障害年金を受給することができません。

例外的に65歳以降でも請求できるケースは下記の通りです。65歳以上の方は自分が以下のケースに該当していないが一度確認してみてください。

65歳以降でも請求できるケース

〇病気やケガのために初めて病院を受診した日が65歳の誕生日の2日前までにあり、かつ、初診日の1年半後若しくはそれ以前の症状固定日(障害認定日といいます)時点での障害の状態が障害年金の支給に相当する程度である場合

〇因果関係のない複数の症状をあわせてはじめて障害等級2級になる場合(はじめて2級請求)

〇65歳以降の初診日時点で国民年金に任意加入している場合、又は厚生年金に加入している場合

 

5 まとめ

今回は、障害年金における認知症の認定基準をご説明し、審査において重視される書類として

(1)診断書
(2)病歴・就労状況等申立書

をあげ、それぞれの書類を作成する際のポイントをご説明しました。

障害年金があるかないかで生活は大違いです。しっかりポイントを抑えた申請をして障害年金を受給しましょう。

 

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ただし、以下のルールを必ず守っていただきますようにお願いいたします。

 

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  • この記事の監修者
  • 西川 暢春
  • 西川 暢春

    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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