障害年金の審査項目と審査に通りやすくするための3つのポイント

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平成294月から、すべての障害年金の審査は東京にある「障害年金センター(以下、本部)」で行われることになりました。

今回の記事では、障害年金の審査の内容をご紹介したうえで、特に重視されているポイントを3点ご説明いたします

 

1.障害年金の審査について

障害年金の審査の流れを簡単にまとめてみました。

 

障害年金 審査流れ

障害年金の審査は平均36か月かかり、年金事務所で初めて相談をした日から申請するまでに平均2か月かかることをふまえると、半年以上にもなります。では、長い期間の中でなにが審査されているのか、以下でご説明いたします。

 

1-1.3つの審査項目

障害年金を申請すると、並行して以下の3点を審査されます。

(1)添付書類:住民票などの本人確認書類や家族に関する書類を審査する

(2)支給要件:受診状況等証明書などから初診日を確認し、支給対象者かどうかの審査する

(3)障害の程度:診断書や病歴・就労状況等申立書の内容から、認定医が等級に該当するかなどを審査する

以下で順番に見ていきましょう。

 

添付書類

ここでいう添付書類とは、年金請求書、住民票やマイナンバーカードによる本人確認書類、本人名義の銀行口座が確認できる書類、家族に関する書類(※)(戸籍謄本、配偶者の所得証明書または非課税証明書、子供の学生証など)のことを指します。

(※)家族に関する書類とは、請求者に以下の家族があるとき年金の加算が発生するために必要な書類です。

障害基礎年金を申請する方:18歳到達年度の末日(331日)を経過していない子ども

障害厚生年金を申請する方:18歳到達年度の末日(331日)を経過していない子ども、配偶者

 

これらの書類は申請書類を提出した年金事務所で確認され、ほとんどの場合そのまま本部へ送られて次の審査に移りますが、添付書類に不備があればその場で修正するか、年金事務所とやりとりすることになります。

 

支給要件

障害年金を受給するためには、前提として【初診日要件】と【保険料納付要件】を満たしていることが必要です。この2つをあわせて「支給要件」といいます。

【初診日要件】初診日のときに、

・国民年金、厚生年金、共済年金に加入していた方

 

または

 

・全てを満たす方

 →60歳以上65歳未満の方
 →過去に国民年金の被保険者であった方
 →日本国内に住所を有する方
 →老齢基礎年金の繰り上げ受給をしていない方

 

または

 

・20歳未満であった方

上記初診日要件のうちいずれかを満たし、かつ、

【保険料納付要件】

・初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること(原則)

または

・初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(特例)

上記保険料納付要件のうちどちらかを満たしていることが、支給要件です。

初診日を基準として、年金機構が管理している年金の納付記録と照らし合わせて支給要件を審査されます。スムーズな審査が行われるには、初診日が明確に特定されていることが必要不可欠です。

 

障害の程度

初診日要件と保険料納付要件を満たすと、次に本部にいる「認定医」と呼ばれる医師が診断書の内容を審査します。このとき診断書に書かれている障害の程度がどの等級に該当するのか判断する基準として認定基準が用いられていますが、あくまでも基準なので診断書の内容を詳しく確認した上で等級を検討する必要があるのです。

「医師の診断による」診断書の内容と、「本人の申告による」病歴・就労状況等申立書の内容についても、矛盾点がないかなどが見られ、矛盾点があると場合によっては年金機構から診断書を作成した病院に医療照会が行われます。

医療照会とは、診断書を記入した医師に対して、意見書や診断書の内容のもとになった資料(カルテなど)の提出を求めたりすることをいいます。例えば医師が書いた診断書には「軽労働は可能」と書かれているのに、本人の申し立てでは「病気によって軽労働もおこなえなくなった」と書かれていた場合、2枚の書類に矛盾が生じるために医療照会がおこなわれることがあります。

以上、障害年金の審査項目を3点お伝えしました。次の項ではここまでの内容をふまえた上で、審査に通りやすくするためのポイントを3点ご説明いたします。

 

2.審査に通りやすくするための3つのポイント

前項の3つの審査項目をふまえて、審査に通りやすくするためのポイントを3お伝えします。

  1. できる限り初診日を特定する
  2. 診断書を書いてもらう前に自分の症状を医師へ伝える
  3. 書類の内容に矛盾点がないようにする

以下で順にご説明します。

 

2-1.初診日を特定するために参考資料を提出する

障害年金を受給するためには、初診日の特定が絶対条件です。初診日は申請する症状のために最初に受診した病院で受診状況等証明書を書いてもらうことで特定することが可能です。

しかしながら初診日にかかった病院で受診状況等証明書が書いてもらえない場合は、他の客観的な資料の提出や第三者証明によって初診日をなるべく特定した上で申請をしなければなりません。

最初の病院で初診日証明がとれなかった場合、下記のような資料の写しと、「受診状況等証明書が添付できない申立書」の提出が必要です。下記資料の写しは多ければ多いほど信憑性が増しますので、可能な限り探して提出しましょう。

 

【初診病院名、診察日、診療科がわかるもの】
  • 身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳
  • 身体障害者手帳などの申請時の診断書
  • 生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書
  • 事業所等の健康診断の記録
  • 母子健康手帳(20歳前障害の場合)
  • 健康保険の給付記録(レセプトも含む)
  • お薬手帳・糖尿病手帳・領収書・診察券
  • 小学校・中学校等の健康診断の記録や成績通知表
  • 盲学校・ろう学校の在学証明・卒業証書
  • 第三者証明
  • 血液検査、尿検査などの検査結果通知書      など

 

2-2.診断書を書いてもらう前に自分の症状を医師へ伝える

障害の程度を審査するとき、診断書の内容が重要な材料になります。病歴・就労状況等申立書はあくまでも請求者本人の申立なので、医証となる診断書の内容は特に重要です。

診断書に間違いがあれば実際よりも軽い等級で認定されてしまうこともあるので、診断書を書いてもらう前に必ず医師に自分の症状を伝えてください。自分の自覚症状や日常生活状況をメモに記入して一緒に渡したり、医師と面談しながら診断書を書いてもらうようにお願いすることは、診断書の不備を防ぐことに役立ちます。

医師の仕事は患者の診察がメインですので、診断書を書き慣れておらず、不備があるまま患者に診断書を渡していることが少なくありません。せっかく診断書に費用を払うのですから、ぜひもらったその場で診断書の内容を確認し、少しでも「おかしいな?」と思ったら必ず主治医と面談して加筆・修正を検討してもらいましょう。

 

2-3.請求前に書類に矛盾点がないか、誰かに書類を確認してもらう

障害の程度で述べたように、診断書と病歴・就労状況等申立書の内容には矛盾点がないように記入しなければなりません。大きな矛盾点があると審査が長引くので、可能であれば全ての書類が提出できるようになった段階で、誰かに1度一通りの書類を見てもらいましょう。特に診断書の日付や症状に関する欄(障害の程度、日常生活活動能力及び労働能力の欄)に記載漏れや間違いがないように確認する必要があります。診断書は原則記入した医師しか加筆・修正ができないので、不備があれば早めに医師に相談し、加筆・修正を検討してもらうようにしてください。

例えば以下の2つのような書類の矛盾がよく見られます。

(1)糖尿病性腎症のため人工透析をおこなうことになったAさん(55歳)は、障害年金を事後重症請求しようと書類を集めてみましたが、初診病院にカルテが残っていなかったため、受診状況等証明書を添付できない申立書と参考資料、第三者証明の3つを、初診日の証明として提出しました。

矛盾 提出書類例①

一見して初診日にずれが生じているとわかりますがAさんに第三者証明を依頼されたBCさんの記憶のうえで、初診日があやふやだったため、このようなことが起こったとします。たった12年の差ですが、年金機構では極力初診日を限定させるようにしているので、この場合初診日が特定できず不支給となる可能性がかなり高くなります。不支給の確立を下げ、審査の期間を短くするためにも、第三者証明をお願いする時は他の書類と矛盾しないように注意しましょう。

 

(2)統合失調症の姉(40歳)をもつ妹のMさんは、病識がなく一人では家事もできない状態の姉のために障害年金を事後重症請求しようとおもい、病院に診断書の作成をお願いしています。「診断書を待っている間に病歴・就労状況等申立書を作成したほうがよい」と知り、年金事務所に記入するよう指示を受けた欄は全て記入して待っていました。そして、診断書等を病院から受け取ったその日のうちに年金事務所に書類を提出しました。

矛盾 提出書類例②

ちなみに今回の場合、診断書は受診している本人(姉)の申告をもとに医師が作成していますが、病識が無い人は自分の症状をうまく伝えることができない場合が多いです。診断書と病歴・就労状況等申立書の記載にこのような矛盾があると、ほとんどの場合、軽い方に寄って認定されてしまいますので特に注意が必要なのです。このような事態を防ぐために必ず診断書の記載内容をチェックする必要があり、その上で不備があれば医師へ加筆・修正をお願いしたり、病歴・就労状況等申立書の内容を修正するようにしましょう。

 

3.審査中のよくある疑問3選

障害年金の審査に関して、よくあるご質問にお答えします。

 

3-1.審査に時間がかかるケース

残念ながら上記で述べたポイントを徹底しても、申請先や方法によって、どうしても審査に時間がかかってしまう方がいらっしゃいます。以下に該当する方は通常の請求よりも審査に時間がかかる傾向にありますのでご注意ください。

  • 提出書類に矛盾点がある方
  • 2つ以上の傷病で請求をおこなっている方
  • 不確定事項がある方(初診日などの日付が特定できていないなど)
  • 共済組合に請求をおこない、2級以上に認定された方(共済組合と年金機構で審査があります)
  • 以前に申請をおこなったことがある方(前回提出書類も審査の材料になるため)

 

3-2.審査中に働いても大丈夫

審査に時間がかかっているうちに病状が軽くなったから、生活が困窮しているから、働きたい。でも審査中に働いたら不支給になるのではと思われる方もいらっしゃると思いますが答えはNOです。

障害年金の審査はあくまでも申請時の書類をもとに審査されるので、書類を全て提出してしまえばその後の就労状況に照会がかかることはありません。

 

3-3.年金は払うか免除の申請をする

「審査中は年金を納めなくてよい」という誤解をよく聞きますが、納めなくてよいものではありません。もちろん審査中に年金を支払わないからといって障害年金が不支給になるようなことはありませんが、納付しないことでその分将来もらえる老齢年金の額が減ってしまうことになります。

納付が経済的に負担になるようであれば市区町村役場の年金課、もしくは年金事務所で「免除申請」を行いましょう。基礎年金番号がわかるもの(年金証書や年金手帳)を持って行くとスムーズに手続きをおこなってもらえます。

ちなみに審査中に年金を支払った場合、障害年金が認定されれば受給権獲得月(障害認定日もしくは申請月の翌月)から保険料を返金してもらうことができます。

 

4.まとめ

今回の記事では、障害年金の審査について、大まかに以下の2点をご説明しました。

 

  • (1)障害年金の審査は書類審査のみで、審査項目は「障害の程度」、「支給要件」、「添付書類」の3
  • (2)正確に審査してもらうためのポイントは「初診日を特定する」、「診断書を書いてもらう前に自分の症状を医師に伝える」、「書類に矛盾点がないようにする」の3点

 

また、審査中によくある疑問を3つご紹介しました。

最後に、自分が申請した書類がいまどこまで審査されているのか、あとどれくらいで結果がでるのか気になるという方は、「審査の進捗確認ダイヤル【03-5155-1933】」へ電話してみましょう。名前と基礎年金番号を伝えると、進捗状況を教えてもらうことができます。ご活用ください。

 

 

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  • この記事の監修者
  • 西川 暢春
  • 西川 暢春

    弁護士法人
    咲くやこの花法律事務所
  • 出身地:奈良県 出身大学:東京大学法学部卒業。事務所での精神疾患、知的障害、身体障害に関する障害年金の相談経験、請求実績を活かし、障害年金に関する情報を継続的に発信中。
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