障害年金を受給している場合、国民年金の保険料は支払わなければならないのでしょうか?
実は等級や経済状況によって、保険料の支払いを免除してもらうことができます。
今回の記事では、障害年金と国民年金保険料の関係、受けられる保険料納付の免除制度についてご紹介したいと思います。
1 障害年金が2級以上に認定された場合は、保険料の全額免除を受けられる
障害年金の2級以上に該当された方は、国民年金保険料の全額免除(「法定免除」と言います)を受けることができます。
もちろん、法定免除を申請せずに国民年金保険料を払い続けることもできますが、もしも保険料を払うことができない場合は、未納のままにせずに必ず法定免除の申請をおこなってください。
ちなみに、厚生年金保険料は対象外なので、たとえ障害年金1,2級に該当していても免除を受けることはできません。
配偶者の扶養に入っている場合は、厚生年金を払っている人があなたの国民年金保険料を負担しているので、免除を受ける必要はありません。
1-1 認定日を含む月の前月分から全額免除を受けられる
全額免除を申請した場合、認定された日を含む月の前月の保険料から免除を受けられます。(認定された日が平成30年5月だったら、平成30年4月分の保険料から免除になります。)認定された日は、年金証書の「受給権を取得した年月」の日付です。確認してみてください。
審査の結果が出るまで払っていた場合は、払い過ぎた分をさかのぼって返還してもらうことも可能です。
1-2 全額免除を受けるには、自治体に申請が必要
該当すると自動で全額免除になるのではなく、市区町村役場の年金課で申請する必要がありますが、簡単な書類(「国民年金保険料免除理由該当届」)を1枚記入して、年金証書を見せるだけなので、障害年金の請求より手間はかかりません。自治体によっては郵送で手続き可能な場合もあるので、電話で確認してみましょう。
1-3 毎年申請する必要はない
全額免除は一度申請すれば、障害年金の支給が止まらない限り受け続けることができます。
手続きは障害年金が受給できた時と、支給が止まった時の2回だけです。
2 保険料の全額免除を受けるとどうなるのか
まずは全額免除を受けた場合のメリット、デメリット等をご紹介します。表にすると以下のようになります、順に詳しく説明していきますのでご確認ください。
メリット | デメリット |
・保険料を支払わなくても半額は支払ったことになるので、 (1)未納にしてしまうより、老齢基礎年金の受給金額が増える。 (2)将来別の病気で障害年金を申請しようとした場合、納付要件を満たすので申請できる。(未納の場合は要件を満たさないので申請ができない。)
(3)10年間は追納が可能。(未納の場合は2年間) |
・全額払った場合と比べると、老齢基礎年金の金額が下がる。 |
2-1 受けた場合のメリット
全額免除を受けると、国民年金保険料を一切支払わなくても2分の1(税金分)は支払ったことになります。
そのため、(1)全額免除を受けた期間については老齢年金をその分受給することができ、(2)今受給している障害年金の対象疾患と原因や症状の出ている部位が異なる病気で障害年金を請求することになったとき、納付要件を満たしているとされますので、障害年金を申請することが可能です。
(2)を具体的に説明しますと、例えば精神疾患で障害年金2級に該当し全額免除を受けていて、全額免除期間中に交通事故などの大きな事故で両脚に障害が残ってしまった場合、両脚の障害について新たに障害年金を請求することができます。症状が重い場合は、もともと受給していた等級とあわせることで、上位等級に認定される可能性もあるので重要です。
全額免除を受けず保険料を未納にしてしまった期間については、上記を受けることができません。
さらに未納期間は2年間しか後払いできませんが、(3)全額免除の期間は10年間もさかのぼって後払いをすることが可能です。後払いは、老齢基礎年金の金額を増やすために必要です。
必ずしも後払いが必要なわけではありませんが、経済的に余裕ができた時に支払いたいと思っているのであれば、支払いの猶予期間は長い方が良いでしょう。
2-2 受けた場合のデメリット
一方で全額免除を受けた場合のデメリットとしては、当然かもしれませんが、保険料を全額払っていた場合と比べると老齢基礎年金の金額が下がってしまうことです。
ちなみに20歳から60歳の全期間中に国民年金保険料を全額支払った場合と、全期間中法定免除を受けた場合の老齢基礎年金の金額は以下のように変わります。目安としてご確認ください。
【老齢基礎年金額】
国民年金保険料を、
40年納付した場合 781,700円(年額)※未納の期間があるとその分減額になります。
40年全額免除を受けた場合 390,850円(年額)
2-3 老齢基礎年金と障害基礎年金は同時に受給できない
メリット・デメリット以外でお伝えしておきたいのですが、老齢基礎年金と障害基礎年金は同時に受給することができません。老齢年金の受給権が発生したタイミングで障害年金も受給できる場合は、どちらか一方を選択する必要があります。
ここで2つの基礎年金の金額を確認してみましょう。
障害基礎年金額は2級が781,700円、1級が977,125円です。 金額は固定されています。
老齢基礎年金は、保険料を20歳から60歳までの全期間納付した場合に限り781,700円。未納や免除を受けるとその分金額は減額されます。
もし65歳の時に障害年金と老齢年金の2つの受給権を持っていた場合、ほとんどの方は障害年金の金額が高くなります。障害年金は老齢年金と違い非課税ですので、税金面でも障害年金をお選びいただくことが多いのではないでしょうか。
2-4 障害年金はいつか止まってしまう可能性が高い
障害年金を受給している方の約70%の人は更新がある有期認定です。実際、この更新のタイミングで提出した診断書の記載内容によっては、障害年金の認定基準に該当しない症状として支給が止まる場合が少なくありません。つまり、更新がある方は障害年金がいつ止まってもいいように備える必要があると思います。
65歳の時に老齢基礎年金しか受給権がない場合のために、全額免除を受けてなるべく老齢基礎年金の額が下がらないようにし、将来余裕ができたときに後払いできるようにしておくとよいでしょう。
2-5 全額免除は受けるべき!
以上をふまえて、全額免除を受けられるのであればぜひ受けてください。
理由はここまででお伝えしたとおり、受けた場合のデメリットよりメリットの方が高いからです。弊事務所でも、障害年金の2級以上に該当された方に対して全額免除を受けるようにお伝えしております。
3 障害年金が3級でも免除を受けられる場合がある
障害年金が2級以上に該当しなくても、収入の減少や失業等により保険料を納めることが難しい場合は、市区町村へ申請をして承認を受けると、国民年金保険料の免除を受けることができます。また、以下に該当する場合は申請のみで法定免除を受けることができます。
【以下の場合も国民年金保険料の全額免除(法定免除)を受けられます】
・障害年金の等級が1・2級から3級に下がった方(期間限定)
・生活保護の生活扶助を受けている方
・国立および国立以外のハンセン病療養所などで療養している方
3-1 免除の種類
経済的に保険料を支払うことが難しい場合の免除には、全額免除と、4分の1、半額、4分の3免除といった一部免除があり、申請時に提出した経済状況がわかる書類などで免除額が決定されます。
3-2 申請先
申請は自治体の国民年金課の窓口でおこなうことができます。郵送でも可能ですが、念の為一度あなたの住んでいる市町村役場へお問い合わせください。
手続としては申請書と所得証明書などの添付書類を提出するだけですが、ある程度の審査が行われ、認定されたのちに免除を受けることができます。
3-3 免除を受けるとどうなるのか
免除を受けるとどうなるのか、メリット・デメリットなどについては2級以上で免除を受けた場合と同じです。
4 まとめ
ここまでで、
- 障害年金の2級以上に認定された場合、国民年金保険料の全額免除(法定免除)を受けることができること
- デメリットよりメリットの方が高いことので、全額免除は受けるべきであること
- 障害年金が3級の場合でも申請すれば、免除を受けられる場合があること
を詳しくご説明させて頂きました。
国民年金保険料の免除を受けるには必ず申し出が必要です。
免除を受けるメリット・デメリットをよく理解していただいた上で、市区町村役場への申請を忘れないで下さい。
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