就職や結婚、療養など、様々な理由で引越しが必要になる方も多いのではないでしょうか。
「引越したらもらえなくなるのではないか」「複雑な手続が必要なのか」不安になっていませんか。
実は、障害年金の受給者が引越した時に必要な手続きはたった一つだけです。
今回は障害年金受給者の住所変更手続きについてご説明します。
1 障害年金受給者の住所変更手続き
障害年金を受給している方が引越した際に必要な手続きはたったひとつ、住所変更届の提出だけです。
すべての方が住所変更手続が必要なわけではなく、中には全く手続が必要のない方もいます。
ここからは、住所変更が必要なケースと必要のないケースにわけてご紹介します。
1-1 住民票コードもしくはマイナンバーの登録をしている場合
日本年金機構へ住民票コードもしくはマイナンバーの登録をしている場合は、原則住所変更の届出は必要ありません。
住民票コードもしくはマイナンバーを登録している場合、住基ネットを利用して年金機構側で自動的に住所が変更されるためです。
1-2 住民票コードもしくはマイナンバーの届出をしていない場合
住民票コードもしくはマイナンバーの届出をしていない場合は、自動的に住所は変更されないので自分で住所変更届を提出する必要があります。
提出先は最寄りの年金事務所です。郵送でも提出することができます。住所変更が反映されるまでに通常1ヶ月程度の時間がかかります。重要な書類が届かなくなる可能性もあるので、できる限り早く手続きをしましょう。
住民票コードとは・・・
1人に1つ割り振られている11桁の番号です。国などの行政機関が、法律で決められた規定された事務を執行するために利用されており、住民票や住基カードに記載されています。
2 知っておきたいその他の手続き
障害年金の受給者が引越した時、必要な手続きは障害年金の住所変更だけではありません。
ここからは知っておきたいその他の手続きについてご紹介します。
2-1 障害者手帳
障害年金を受給している方の中には障害者手帳をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
障害者手帳も引越しによって住所変更等の手続きが必要になります。
身体障害者手帳・精神保健福祉手帳の場合
基本的には障害年金と同じで住所変更の手続きだけで現在持っている手帳の等級を引き継ぐことが可能です。
以下の書類を持って転入先の市町村役場の福祉担当課で手続きをしましょう。
- 障害者手帳
- 印鑑
療育手帳の場合
療育手帳については、同じ県内や政令都市内の引越しであれば、身体障害者手帳や精神保健福祉手帳と同様、住所変更の手続きだけで現在持っている手帳の等級を引き継ぐことが可能ですが、県や政令都市をまたいで引越しをする際は一から新たに申請が必要な場合があるので注意が必要です。
これは、療育手帳は自治体毎に判定基準が異なり等級の区分も異なるためです。(例えば、東京都では障害の程度に応じて等級を1~4度に分けているのに対し、大阪府ではA、B1、B2に分けられています。)
引越しによって他の自治体に転入した場合は、転入先の自治体の基準で判定を受けて、再度手帳を交付してもらう必要があるのです。
自治体によっては住所変更のみで対応してもらえることもありますが、残念ながら多くの自治体では、再度申請が必要になっているのが現実です。
いずれにしても障害者手帳は障害年金とは異なり、都道府県や政令都市毎に交付されているもので、細かい必要書類や手続き方法は自治体によって異なります。事前に転入先の市町村役場へ問い合わせることをおすすめします。
障害者手帳によって様々な福祉サービスや助成制度を受けることができますが、利用できる制度の内容や対象者も自治体によって様々です。引越したことによってこれまで利用していた福祉制度が使えなくなってしまうこともありえます。また、利用する制度によっては、通帳や所得証明書等の書類が必要になることもあります。
転入先でも引き続き制度が利用できるか、また制度を利用するためにどのような書類が必要かも事前に確認しておきましょう。
2-2 健康保険の手続き
(1)健康保険(協会けんぽ)や共済組合に加入している場合
健康保険や共済組合に加入している場合は、自分で手続きをするのではなく勤務先の会社を通じて手続きをします。勤務先に新しい住所を申告し、手続きをしてもらいましょう。
(2)国民健康保険に加入している場合
国民健康保険に加入している場合は、自分で市町村役場へ行き手続きをする必要があります。同じ市内で引越す場合と、他の市町村役場へ引越す場合で手続きが異なります。
同じ市内に引越す場合
以下の書類を持って市町村役場の保険年金担当課の窓口で住所変更の手続きをしましょう。
- 健康保険証
- 印鑑
他の市町村や他県に引越す場合
他の市町村や他県に引越すときは少し手続が複雑です。国民健康保険は市町村毎に加入するもののため、転出する場合は、一度資格喪失の手続きをして健康保険証を返還し、転入先の市町村で加入手続きを行う必要があるのです。
現在の住居地の市町村役場での手続き |
1.転出届の提出する 2.保険年金担当課で国民健康保険の資格喪失手続きをして健康保険証を返還する 【必要書類】 ※転出届を提出してから14日以内に手続きを行いましょう! |
引越し先の市町村役場での手続き |
1.転入届を提出する 2.保険年金担当課で国民健康保険の加入手続きをする 【必要書類】 ※転入届を提出してから14日以内に手続きを行いましょう! |
ただし、細かい必要書類や手続きの方法は自治体によって異なるため、事前に転入先の市町村役場へ確認することをおすすめします。市町村のホームページにも掲載されています。
健康保険証を返還してから、新しい健康保険証を受け取るまでの間に病院にかかった場合の医療費は全額自己負担になってしまいます。健康保険証を受け取り、加入手続きが完了すれば払いすぎた医療費は払い戻しされますが、思わぬ出費を避けるためにも早めの手続きをおすすめします。
また、自己負担で受診した医療費の領収書は払い戻しを受けるために必要になるので大切に保管しておきましょう。
2-3 障害年金の受取口座の変更手続き
こちらについては引越しをしたときとは限りませんが、障害年金の振込先に指定している口座を別の口座に変更したいとお考えの方も多いのではないでしょうか。年金の受取口座の変更に必要な書類は以下の2点です。
- 年金受給権者 受取機関変更届(書式)
- 金融機関の証明または通帳のコピー(金融機関名、口座番号、支店名、口座名義人のフリガナが確認できるページ)
出先は最寄りの年金事務所です。郵送でも提出することができます。受取口座の変更には変更届の提出から1ヶ月程度の期間がかかります。余裕を持って手続きをしましょう。
3 まとめ
今回は障害年金受給者の住所変更手続きについてご紹介しました。
障害年金の受給者が引越しても複雑な手続きは一切必要ありません。
住民票コードもしくはマイナンバーを登録している方は特に手続きをする必要がなく住民票コードやマイナンバーを登録していない方についても必要な手続きは住所変更届の提出だけです。
住所変更の手続きが遅れた場合、年金機構からの重要な書類が届かなくなってしまう可能性があります。更新手続きに関する書類が届かず、更新手続きをしなかった場合、一時的に障害年金が支給停止になってしまうことありえるのです。
障害年金の支給が止まってしまったら一大事です。引越しをしたらすみやかに手続きをしましょう!
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